出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/12/17 15:26:18」(JST)
煙害(えんがい)とは、煙による住民・動植物に対する被害のこと。狭義では大気汚染に関連し、煙突煙からの被害をさす。広義では煙の発生源は問われず、自動車・機関車(特に蒸気機関車)・ディーゼルエンジン・たき火・タバコ・野焼きなどからの煙による被害も含まれる。
煙害は、様々な行為によって発生した煙によって生じる不都合・被害(社会問題、健康問題、環境問題など)のことである。公害の一種であり、四日市ぜんそく(工場の煤煙が原因とされる)や光化学スモッグ(車の排気ガスが原因とされる)などは煙害とされる。大規模な焼畑農業の野焼きや稲藁焼き等、農業によって発生することもある。
昭和後期の高度経済成長期の公害を踏まえた大気汚染公害対策による大気汚染防止法悪臭防止法[1]によって、日本の工場の煙突の排出は、白い煙があっても殆ど水蒸気であり、有害物は規制されて十分に希釈される。不法産業廃棄物処理業者の焼却処理が地域で問題となったり、住宅地での家庭ごみ焼却も問題となる。道路や建設機のディーゼルの黒煙・白煙のSPMが問題となった[2]。
粒子状物質、化学物質、化合物、気相成分、光化学反応物に分けられ、人への生理的影響は、臭いと感じる濃度で避けられないことが多い。臭いは感じず自覚症状のない状態で、幹線道路沿線など快晴・低湿度時に1km程先のビルや塔が僅かに霞む状態でPM2.5において50μg/m以上と推察される。
PM2.5による死亡リスクの上昇があることが明らかとなっている[3]。PM2.5濃度が10μg/m3上昇すると事故を除く全死亡や呼吸器系、循環器系の死亡リスクが0.数%~数%程度増加すると推計されている[4]。
2010年中国の工業化の躍進と追いつかない環境施策のため発生した煙害のPM2.5について、2010年の中国の死亡者数の約15%が、PM2.5が原因で亡くなったとする研究報告が発表された[5]。 2008年春の黄砂によって日本に飛来して多くのTV・新聞報道がなされて、日本政府と多くの自治体が対策に追われた。PM2.5対応空気清浄機の利用やPM2.5 80μg/m3で外出を控えるように報道された。
大気汚染防止法以外に環境基準の「大気汚染に係る環境基準」[6] で以下の基準がある。
たばこの煙 ETSについては、2005年の米国カリフォルニア州環境保護庁による大気汚染度調査があるが、近年は職場や家庭などでの受動喫煙問題に関連して言及されることが多い。身近での目に見える煙の発生であり臭いの好き嫌いなどの感情論に置き換えられがちであるが、喫煙者本人・受動喫煙者にかかわらず、PM2.5、気相成分、有害・発ガン性化学物質の観点で生理的急性被害と化学物質過敏症と、慢性健康被害をもたらすことが問題となっている[7]。
煤煙による被害は化石燃料の利用が進んだ産業革命以降に深刻化した。こと化石化燃料の燃焼ガスには硫黄化合物が含まれ、これが環境汚染を招いたのである。特にロンドンでは、1952年12月に、スモッグでロンドン市民約1万人以上が健康被害で死亡している。
また、煙の浮遊粉塵はマイクロメートル単位と非常に粒子が細かく、長期間に渡って大気中を漂う。このため大規模な煙害では、太陽光の照射量が不足して、地域の植物の生育に深刻なダメージを与え、結果としてそれらを食べる動物にもダメージを与える。
また、煙による洗濯物の汚れ、建造物(歴史的建造物を含む)汚損、煙の悪臭などが挙げられる。
明治の殖産興業政策の中の1893年に、別子銅山での銅精錬時に発生する排気ガスによると思われる水稲・麦被害が広範囲に発生し、補償を求める住民と、補償を拒む住友鉱業の間で紛争になった。しかし結局、精錬所側が賠償金を支払うこととなった。
1907年には、茨城県日立鉱山北側の集落の蕎麦に被害が発生したが、その後の交渉で補償契約が成立、山上に大煙突を建てるなどの対策を行った。
戦後は高度成長期に大気汚染が進み、各工業地域での大気汚染は深刻化し、四日市ぜんそくなどの問題が出現した。このため、1962年に「ばい煙規制法」が制定され、国が指定した地域において「すすその他の粉じん」及び「亜硫酸ガス又は無水硫酸」の排出が規制されることとなった。1967年には公害対策基本法が、1968年には大気汚染防止法が成立し、厳しい排出総量規制が敷かれるようになった。1970年、佐藤首相は、公害は「国民の最大の関心事」と位置づけ、環境庁を新設。煤煙を含む公害対策にさらに深く取り組むようになった。
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たばこの煙は、受動喫煙による臭いなどの不快感や健康被害だけでなく、電子機器へも影響を及ぼしうる。たばこの煙を強制的に吸わせられる行為は、日本においてセクシャルハラスメント(セクハラ)に準えて「スモークハラスメント(スモハラ)」と呼称する場合もある(和製英語)。これらには、職場の上司等から受動喫煙を強いられる、あるいは喫煙を強要されるなど、パワーハラスメントの範疇に入るものある。
米国の調査では、たばこの煙に接する機会は、社会の様々な場面で減少しつつあることが報告されている。
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