出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/08/01 14:23:29」(JST)
気嚢(きのう)は、鳥類が持つ呼吸器官である。
陸上四足動物は肺呼吸を行う。哺乳類では肺呼吸の効率化のために横隔膜を持ち、腹式呼吸を発達させた。哺乳類は、横隔膜による肺の拡大・縮小による吸気・排気を行う。
鳥類では呼吸の効率化のために、肺の前後に気嚢を持つ。肺は何本かの管を束ねたような形状で、前後の開口部が気嚢につながっている。肺への吸気・排気は、気嚢の拡大・縮小により、一方向に空気を流す形で恒常的に行われ、酸素を消費した後の空気が肺にとどまることはない。前後の気嚢は、それぞれ前気嚢・後気嚢と呼ばれる。
このようなシステムは哺乳類のそれよりもはるかに呼吸効率が高い。そのため鳥類ははるか上空の空気密度の低い空間でも呼吸が可能である。例えばアネハヅルやインドガンはヒマラヤ山脈を越えて渡りをすることで知られている。マダラハゲワシは、高度12,000メートルで飛行機のジェットエンジンに吸い込まれたという記録がある[1]。
鳥類は獣脚類の恐竜から分岐して進化した。現存鳥類の呼吸システムを、獣脚類(もしくは恐竜全体)が既に持っていたという仮説があり、研究がすすめられている。2005年には、マジュンガトルスの脊椎骨の構造の研究から獣脚類が気嚢を持つ証拠が提出され、この仮説の実証が前進した。
中生代に恐竜が哺乳類よりも繁栄を成功させたのは、この呼吸システムのためとも言われており、古生代末から中生代はじめにかけての低酸素時代(火山活動の増大による大気中の二酸化炭素濃度の増大による)にこの形質が著しく適応的な形質となって、恐竜の台頭を招いたのではないかとの仮説も提唱されている。これに対し哺乳類は横隔膜を発達させて対抗したが、呼吸効率においては気嚢に劣るものであった。
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