出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/04/08 07:30:47」(JST)
椅子(いす)とは、室内外で人が腰を掛け座る際に体を支えるために用いる器具[1]。こしかけるための家具である[2]。 「腰掛け(こしかけ)」とも言う。
椅子とは、こしかけるための家具である[2]。
座るための道具であることから構造的に全ての椅子は「座面」を持っている。典型的な椅子ではこの座面を支えるため「脚」をもっており、さらに「背もたれ」や「肘掛け」が付いているものもある。
椅子は一人掛けと二人以上で腰掛けられる複数掛け(座部が複数あるいは座部が長い等)に分けられる[3]。
構造的に座面や脚部を折り畳めるものもある[3]。また、劇場等では座面をはね上げることができるものもある[3]。このほかテーブル、収納部、音響装置、足乗せ台を付加するものもある[3]。
椅子はある特定の人物の座席として用いられることから、地位の象徴でもある[4]。王や貴族などの君主が公的な場所で用いる椅子は玉座という。椅子であること以上に権威の象徴として用いられる。そのために豪奢な装飾が施されている場合がほとんどであるが、機能的には一般的に通常の四つ脚の椅子で、しばしば肘掛けが付く。また逆に「玉座」と言った場合に、それに座るであろう者の権威を暗喩している事もある。
日本では「いす、腰掛け及び座いす」として家庭用品品質表示法の適用対象となっており雑貨工業品品質表示規程に定めがある[5]。
このほか自動車、鉄道車両、航空機、遊技用乗物等に設置するものもある[3](座席を参照)。
椅子などに腰掛けた姿勢を椅座(いざ)と呼ぶが、馬の鞍や自転車のサドルなど、物にまたがった姿勢を特に跨座(こざ)と呼ぶ。
座面にはクッション材や張り材が用いられることもあり、クッション材の種類としてはスポンジゴム、ウレタンフォーム、鋼製ばねなどがあり[5]、張り材の種類としては皮革や合成皮革などがある[5]。
椅子の構造部材には、天然木、合板、パーティクルボード、竹、籐(とう)、ステンレス鋼、アルミニウム、天然石、陶磁器などがある[5]。
公共機関の椅子は、耐久性や清掃のしやすさが優先されることもある。屋外に設置される椅子には、耐雨性・耐光性なども求められる場合がある。
中世では王侯貴族などが権威を誇示するための椅子のデザインが発達した。中世キリスト教装飾に影響を受けた様式となっている。ゴシック、ルネサンス、バロック、ロココ、ディレクトワールなどである。
近代では実用性と芸術性を追求した機能的なデザインが発達する。伝統的には北欧やイタリアが有名であり、戦後ではイームズなどのアメリカ・モダンも有名である。
イギリス発祥とされるウィンザー・チェア(これはスウェーデン製)
アアルト。テーブルと椅子
チャールズ・イームズ。ラウンジチェア&オットマン
チャールズ・レニー・マッキントッシュ
アルネ・ヤコブセン。アント・チェア(1952年)
アルネ・ヤコブセン。セブン・チェア(1955年)
座面の高さは姿勢と作業性に最も大きな影響を及ぼす。例えば浴室の椅子などは座面が低いほど体全体が安定し、手先に力を入れやすくなる。ただし立位への移行が難しく、背中が丸まってしまうため長時間の使用は体に負担がかかる。一方座面が高い場合、上体の姿勢は良くなる。しかし下肢への負担は多くなる。作業性は高く、ほぼ立位なので、歩行への移行もスムーズである。また、座面の角度や柔らかさ、奥行きも重要な要因である。
事務作業などで長時間使う椅子には背もたれが必須である。背もたれの角度や高さ、背もたれと座面の間の角度が考慮される。
バランスチェアは、立位と正座の中間姿勢を取る椅子である。座面が前傾し、前にずり落ちようとする動きを膝で支える、奇妙な外観を持つ。発明者が子ども時代に、学校の椅子の座面を前傾させて座る遊びをしていたことから生まれた。また、Hans Christian Mengshoelがヨーガの姿勢からヒントを得たともいわれる[10]。体重が尻と膝に分散されるとともに、座れば自然に背筋が理想的なS字カーブを描いてまっすぐ立つため、腰肩首への負担が劇的に改善される。太ももの圧迫も少なくなるため、血行が妨げられて足が痺れたりむくみやすくなる問題も劇的に軽減される。事務作業向きの椅子といえる。人間の骨格は背骨と大腿骨を90度に曲げて長時間保持できる構造になっておらず、座面が水平の椅子に座ると、腰への負担を軽減するために必ず背骨を丸めた猫背の姿勢を取ろうとする点に着目して作られた、人間工学的にきわめて優れた設計になっている。
サドルチェアは乗馬の姿勢で座る、鞍型をした、疲労を軽減できる椅子である。北欧の歯科医の90%が採用しており、長時間座ったまま動き回る職人仕事に適している。バランスチェア同様、無理なく自然に背筋を立てる座り方が可能であり、通常の座面の椅子と比較して、体重によって血行を妨げられる要素や、腰などへの負担が劇的に改善される。
西欧同様に中国は「イス文化」の歴史を持つ。中国では北方遊牧民の北魏の風俗から椅子の普及が始まり、宋の時代に一般階層まで行き渡った。一方、日本や朝鮮では椅子をあまり用いない生活様式をしてきた歴史がある。
日本では平安時代に身分によって、椅子、床子などが用いられることがあったが、広く継続・普及しなかった。屋外では、戦場などで折りたたみ椅子(「床几(しょうぎ)」)や、露天の茶店などでベンチに相当する椅子(「縁台(えんだい)」)は用いられた。ただしこれらは一時的に腰を掛けるものであり、普段は畳に直接座る生活習慣を持っていた。また、仏教寺院では曲彔が用いられる事もあった。邦楽の世界では合曳(あいびき)と呼ばれる現代の正座椅子に酷似した形状の指物の椅子が長く使われてきた。江戸時代以前でも西洋と交流・交易のあった場所や、教会や洋館などでは用いられていた。
ロシアの使節プチャーチンの秘書ゴンチャロフは、1853年(嘉永6年)12月8日、長崎を訪れた際に見た日本人がいかに椅子に不慣れであるかを彼の著書『日本渡航記』(1857年)に書き記している。これによると、ロシアの使節団と幕府の要人との間でまず両代表による会見時の座り方をどのようにするかが話し合われたが、ロシア人が畳の上に5分も座っていられなかったのと同様、日本人も椅子の上に座ることができなかったという。日本人は椅子に座ることに「慣れないために足が痺れるのである」と書かれている[11]。このように、江戸時代までは椅子は一般には普及しておらず、そのため椅子に座るという生活習慣もなかった。
明治時代に入って文明開化を経ると、学校や役場などでは椅子が用いられるようになったが、一般家庭に普及するにはまだ時間がかかった。和室・畳文化の生活習慣の中では座布団などが椅子の役目を担っており、椅子を用いる必然性が低かったためである。その後、西洋文化の影響で洋間が取り入れられるようになると、一般家庭でも椅子が用いられるようになった。現代では学校や一般家庭を始め、多くの場所で用いられている。
日本の昭和時代の学校の椅子(二十四の瞳映画村)
日本の座椅子
飲食店の子供用(ガスト)
「エレベーターチェア」(非常時には便器となるスツール)
各部(パーツ)の名称には背もたれ、肘掛け、脚などがある。ダイニングチェアではパーツ名が細分類される場合がある[12]。
中国語においては、背もたれの有無によって、「椅(椅子)」と「凳(凳子)」に明確に区分されるという[13]。
椅子の脚と床面の摩擦が起こす騒音(移動音)は、嫌悪されることがある(特にフローリングの場合)。椅子にゴムやフェルトが元々付いていることや、使用者側が付けるという場合もある[14]。日本の小学校では近年、騒音緩和対策として、使用済みテニスボールを椅子の脚に嵌める動きもある。しかし、「微量の化学物質放散による健康被害」を指摘する声もある[15]。
極めて低い背もたれ(カウンター席。)
テニスボール
バーバーチェア
ディレクターズチェア
網(メッシュ)
エレベーター内に設置
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