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整体(せいたい)とは、脊椎・骨盤・肩甲骨・四肢(上肢・下肢)等の体全体の骨格や関節の歪み・ズレの矯正と、骨格筋の調整などを、手足を使った手技と補助道具にておこなう医業類似行為の一種であるとされる。「整体術」「整体法」「整体療法」と呼ばれることもある。
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現在に於ける整体は、日本武術の柔術や骨法等の流派に伝わる手技療法を中心とする整体、伝統中国医学の手技療法を中心とする整体、大正時代に日本に伝わったオステオパシーやカイロプラクティックなどの欧米伝来の手技療法を中心とする整体、各団体らの独自の理論や思想などを加えた整体など多種多様である。 かつて柔術や骨法等では、正体・正體・整體・整胎術等と呼称されていた。なお、現在の整形外科学をベースとした柔道整復(接骨・整骨)とは、施術に対する思想、施術内容が全く異なる。
2012年に代替医療に関する国際的な学術雑誌であるEvidence-Based Complementary and Alternative Medicineにおいて、整体療術と鍼治療、マッサージ治療の3群による治療効果に関するランダム化比較試験についての論文が、一般社団法人 日本鍼灸療術医学会より発表された。整体療術に関する研究が国際的な学術雑誌に取り上げられるのはこれが初である。この論文において整体療術に客観的な効果が確認され、医学的な効果が存在する事が示唆された。また、整体療術群は他の2群に対して有意に筋緊張とVAS(Visual-Analogue-Scale)等の低下が観察された[1]。
伝統中国医学の手技療法や、大正時代に日本に伝わったオステオパシーやカイロプラクティックなどの欧米伝来の手技療法と、当時の施術家たちの独自の工夫や独自の思想などを加え、集大成したものが現在「整体」と呼ばれるものである。整体創設初期においては整体の事を、正体・正體・整胎術等と呼称していた。 整体は「正體」・「正体」・「正胎」という名で呼ばれていた自己改善療法が、野口により「整体」と呼ばれるようになった。現在では野口の整体法は「野口整体」と呼ばれている。現在も整体は各営利団体によって更なる変貌を続け、様々な独自の手法、独自の思想、独自の理論が展開されており、これらを統一した手技療法とすることは困難であるとされる。 しかしながら、2012年、Evidence-Based Complementary and Alternative Medicineにより発表された「Randomized Comparison of the Therapeutic Effect of Acupuncture, Massage, and Tachibana-Style-Method on Stiff Shoulders by Measuring Muscle Firmness, VAS, Pulse, and Blood Pressure」によると、ランダム化比較試験の1群として取り上げられた「立花療術」に、医学的根拠(エビデンス)が示唆されている。このことにより「SEITAI=整体」及び「RYOJUTSU=療術」が国際的な医学論文に初めて記載された。
整体とは、体全体の骨格を形作る関節(脊椎・骨盤・肩甲骨・四肢・顎関節等)の歪み・ズレの矯正と、骨格筋のバランス調整等を、主に手足を使った手技(道具は、あくまで補助として使用する)にて施術する事で体を整え、体幹から四肢への脈絡の流れを良くし、脈絡改善によって各症状の改善を期待する健康法であると言われている。整体師の施術は、国家資格である柔道整復、あん摩、マッサージ、指圧とはまったく異なるものである。その施術は抹消対象ではなく、中枢を対象にした施術である。 施術自体は(整体)操法、整体療術とも呼ばれる。上記の国家資格である柔道整復・あん摩・マッサージ・指圧との違いが分かりにくいとの声もあるが、その技術体系はまったく異なるものである。
国家資格を推奨する関係団体は、整体師が医業類似行為を業として行う事に対して、1960年最高裁判所昭和35年1月27日大法廷判決が「憲法22条は何人も公共の福祉に反しない限り職業選択の自由を有することを保障している。しかし、人の健康に害を及ぼすおそれのある業務行為に限れば、法律でこれを禁止することは合憲である。」と判示した前半部分のみを取り上げ、それを根拠に、合法であるとする主張がある。しかしながら、この判決は、医業類似行為を客に行った被告人が、無資格診療を行ったとして刑事訴追された刑事事件に関する判決である。仙台高等裁判所に事件を差戻している。そして、仙台高等裁判所は、当該事件の医業類似行為が「人の健康に害を及ぼすおそれのある業務行為」であることを認定して有罪判決を維持し、再度上告された最高裁判所で有罪判決が確定している(それぞれ、仙台高裁判決昭和38年7月22日、最高裁判所決定昭和39年5月7日)。
これに対し主に整体やその他の療術業(アロママッサージ、エステ、足裏リフレクソロジー、アーユルヴェーダ、タイ古式マッサージ等)側からは「治療行為ではなく、リラクゼーション、リフレッシュである。また整体は医業類似行為であるが、人の健康に害を及ぼすおそれがない以上、整体は法律に違反しない。」と主張されている。しかし、主に国家資格者であるあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師や医療従事者からは、「骨折や脱臼、神経麻痺などを起こすおそれがある。また、悪性腫瘍などの重大疾患が隠れているような場合に、医療機関への受診遅れにもつながりかねない。したがって、整体は『人の健康に害を及ぼすおそれがある医業類似行為』であり、無資格でこれを行うことは違法で、国民の利益に反する。」「医業類似行為と人の健康に害を及ぼすおそれがないというのは矛盾する。良い方向へ作用するものは、悪い方向へも作用する可能性を秘めている。」と懸念されている(後述)。これら「認定証」ないし「修了証」は技術レベルを客観的に示す指標としては有効であるように思えるが、これら整体の名称の入った「認定証」や「修了証」は個人・団体・企業の誰しもが独自に・勝手に発行が出来うる上に法律の規定がないため十分な判断材料とは言えない。
通信教育で取得出来る整体師民間資格や認定証などや数ヶ月の講習受講で取得出来るプログラム(資格商法)も横行している。また就業年限が長いからといって、公的資格制度が存在しない以上は技術レベルを保証するものではない。整体を生業にする者は自らを整体師・整体士・整体療法士・整体指導者・トレーナー・セラピストなどと自称している。整体師の一部からは、法制化による国家資格化を期待する意見もあるが、各流派・会派・団体・企業・店舗間で、その理論や思想の違いがあり、組織的な統合の合意がなされていない。
なお、国家資格である鍼灸・按摩マッサージ・指圧・柔道整復を教育する学校では、整体術は明確な体系化がなされていないためカリキュラムには含まれてはいない。そのため、国家資格者は卒業後、整体やカイロプラクティック、その他の手技療法を学んでいる傾向が強い。
「医業類似行為」も参照
医業類似行為を行なって良い者は、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復である(あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法第一条/第十二条)。それ以外の療術業は昭和二十三年四月一日迄に開業届を出した者だけである(あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法第十九条)。
「あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復」以外の医業類似行為については、「当該医業類似行為の施術が医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となる」とされている[2]。
日本に整体の教育を公的に評価する機関は存在しない。よって営利目的の整体団体や整体スクール、整体チェーン企業によって「認定証」または「修了証」が独自に発行されるのみである。これは仮にある者が「国際整体免許皆伝協会」なる団体を創立して、独自の判断から「国際整体免許皆伝認定証」を自らに発行できるという事である。
よって、頻繁に国家資格保有者である他の療術業から、整体士は『法律により国家資格保持者のみが施術を許される施術をしている』と指摘される。これに対して整体士の側の主張は、按摩・マッサージ・指圧を施術しているのでは無く、『触診法・骨格矯正法・揺さ振り法・開節法・弛緩法・操作法・筋整流法(腱引き療法)・操体法・牽引法等』などの健康法を行っているに過ぎないというものだが、国家資格者たる按摩マッサージ、柔道整復師などからは、整体行為は如何に体の歪みを矯正する健康法であったとしても、その施術の範囲内にあるとの指摘がされており、整体士の施術の見解については意見が分かれる。
ただし厚生労働省では、「整体は指圧の類ではないか」との疑義照会に対して、昭和47年7月9日付旧厚生省医務局長からの回答で『整体は脊椎等の調整を目的とする点において、あん摩、マッサージ又は指圧と区別される。従って、あん摩、マッサージ又は指圧に含まれないものと解する』と回答している[要検証 – ノート]。
また特にチェーン展開のスーパー銭湯内の整体店などで多く見られるが、法逃れの為に整体の看板を隠れ蓑に客を寝かせ安易にアルバイトが背中や腰を押すだけと言った、実質的にマッサージ行為を行っている違法の悪質業者も多く散見する。
「カイロプラクティック#医療・医業等との関連」も参照
整体術(カイロプラクティックなど)の対象とすることが適当でない疾患として、厚生労働省通達[4]において、腫瘍性、出血性、感染性疾患、リュウマチ、筋萎縮性疾患、心疾患等とされている。さらに、椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、環軸椎亜脱臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症などと明確な診断がなされているものについては、注意が必要である。
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