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二日酔い、宿酔(ふつかよい)とは、酒などのアルコール飲料(エタノール)を、自身の代謝能力以上に摂取することにより引き起こされる、不快な身体的状態。エタノールがアセトアルデヒドに代謝され、体内にまだ残ったそれが二日酔いの症状を引き起こす。基本的には、夜間に酒を飲み、翌朝の起床後、顕著に現れる現象を指す。また、宿酔(しゅくすい)とも云われる。急性アルコール中毒とは異なり、生命に直接の危険はないが、しばしば、吐き気や頭痛などの著しい不快感を伴う。なお、飲酒後短時間に現れるものは悪酔い(わるよい)という。一般的に二日酔いは悪酔いが翌日になって現れる状態を指す。
アルコールを摂取すると、体内でアルコールはアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに分解される。さらにアセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素により酢酸へと分解され、最終的には水と二酸化炭素に分解されることにより体外へと排出される。
アルコールの中間代謝物質であるこのアセトアルデヒドは毒性が非常に強く、その毒性により引き起こされる症状が二日酔いである。つまり二日酔いの原因はアルコールそのものではなく、代謝過程におけるアセトアルデヒドによって引き起こされると考えられている。
二日酔いは主に飲みすぎ、すなわち自身のアルコール分解能力(正確には、アセトアルデヒドの代謝能力)を超えた量の酒を飲むことで起きる。
アセトアルデヒドの代謝酵素であるアセトアルデヒド脱水素酵素は、人種あるいは個人の遺伝的体質によりその代謝能力に差がある。
モンゴロイドのほぼ半数はアセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い「低活性型」か、全く働かない「失活型」である、そのためモンゴロイドには酒に弱く二日酔いになりやすいタイプが多く、全く酒を飲めないタイプ(いわゆる「下戸」)も存在する。それに対しコーカソイド・ネグロイドはこの酵素がよく働く「活性型」であり、酒に強く二日酔いにもなりにくい体質の者が多い。なお人類のアセトアルデヒド脱水素酵素のタイプは元々「活性型」が基本タイプであり、「低活性型」及び「失活型」は突然変異によって生まれたハプロタイプである。
筑波大学の原田勝二による研究は、日本においては九州地方と東北地方に「酒豪遺伝子」が多い(すなわち二日酔いになりにくい「活性型」が多い)という結果を示している[1]。
頭痛、嘔吐・吐き気、喉の渇き、胸のむかつき、体の震え、アルコール性胃炎による悪心などの自覚症状がある。 二日酔いの最中にはひどく喉が渇くが、これはアルコールの利尿作用により体内の水分が排出され、脱水症状状態になっているからと考えられている。また、胃が空の状態で大量の酒を飲むと顕著であるが、アルコールが胃粘膜を刺激し、胃酸分泌が過多になり、胃炎をおこしている状態であることも多い。アルコールがアセトアルデヒドに分解されず、まだアルコールのまま体内に残っている場合は、酩酊感、ふらつき、ろれつがまわらないといった一般的な酒酔い症状が残っていることがある。その場合不快感はむしろ少ないが遅かれ早かれやってくることは避けられない。
また、肉体的だけではなく、精神的にもひどい自己嫌悪に陥る場合が多い。英国の作家、キングズリー・エイミスはこれを肉体的二日酔いに対して「形而上的二日酔い」(訳:吉行淳之介)と呼んだ[2]。
肉体的には脱水症状を起こしている為、大量に水分を補給することがまず第一である。さらに肝臓でのアルコール分解には糖分が必要であり、糖分をとることも有効となる。水分補給時、ただの水・お湯よりは、スポーツドリンクの方が水分糖分を同時に摂取できるので望ましい。ただし、お茶・コーヒーはカフェインの利尿作用があるため避けた方がよく、胃炎を起こしている場合、胃への刺激となるため冷たい飲み物は好ましくない。なお、この2点は前夜就寝前に行っておくことである程度二日酔いの予防策ともなるものである。もっともそれをやりとおせるだけの理性が残っている程度の飲酒量なら二日酔いにはなりにくいし、先のエイミスの言葉を借りれば「君はまだまだ飲み足りない」ということになる。
睡眠が効果的な対処法である。他にも風呂やサウナに入って汗として有害物質を出してしまうという方法を取る人もいるが、心臓の弱い人には勧められない上に、睡眠と比べて血中アルコールの減少速度は遅いというデータもある(参考:[1])。血流が全身に拡散してしまい、肝臓に血液が集まらないためとされる。また、「迎え酒」と称してまた酒を飲み症状を緩和させるということが世界各国で行われていたが、単にアルコールで不快感を麻痺させるだけであり、肉体への負担が大きいため行うべきではない(主にアルコール依存症の罹患者に多い行為である点に留意)。
胃炎を起こしている場合は、適切な胃腸薬の摂取が有効である。
漢方では、五苓散や黄連解毒湯を用いることが多い。
アセトアルデヒドの分解をわざと妨げ、少しでも飲酒すると強制的に不快感を引き起こす薬品(シアナミド、ジスルフィラム等)は嫌酒薬としてアルコール依存症の治療に使われている。ヒトヨタケをアルコールと同時に摂取すると悪酔いするのも同様のメカニズムである。
しかしながら最近の研究では、二日酔いは血中のアセトアルデヒド濃度が下がった後におこるためアセトアルデヒドが直接の原因ではないのではないかという説もある。アルコールがドーパミンニューロンに作用すること、血中のカテコールアミン量が上昇することなどが要因の一つではないかということで研究が進められている。
いみじくもロバート・キャパが「神はこの世を六日間で創り給うた。そして七日目には二日酔いを与え給うた。」との言葉を残したように、二日酔いは洋の東西を問わず人類を古くから悩ませてきた。現代医学が発達する以前から、二日酔いに対処する民間療法は各地に伝わっている。
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