出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/02/28 21:25:18」(JST)
ロンベルグ試験(ロンベルグしけん、英: Romberg's test)は、脊髄後索の障害の有無を評価するための神経学的試験で[1]、位置覚(さらに振動覚も含めた固有覚)の基本的な検査である。
ロンベルグ試験で被験者に体の揺れが見られること(これをロンベルグ徴候が陽性であるという、後述)は、失調症状が感覚性であること、すなわち位置覚の消失によることを示唆する。逆にロンベルグ徴候が陰性であることは、失調が小脳性であること、すなわち小脳の機能不全があることを示唆する。
この試験を飲酒運転の可能性を示す目的で行うこともある[2]。
被験者に足をそろえ、目を閉じて直立するように言う。実施者は被験者の近くに立ち、被験者が倒れて怪我をしないように注意する。被験者の動きを周囲の垂直な物(部屋の柱やドア、窓など)と比較して観察する。体の揺れがあれば、陽性と記載する(時として不規則に揺れたり、転倒したりすることもあるので注意する)。基本的な特徴は、被験者が開眼しているときよりも不安定になるということである。
試験の基本的要領は次の通り。
この試験では、閉眼によって被験者が倒れることがあるため、倒れた際には受け止められるように、実施者は被験者のすぐ近くに立っておくことが望ましい。
ロンベルグ徴候が陽性であるとは、次の2点をどちらも満たすことをいう。
次のような場合は陽性とはいえない。
あるいは
じっと直立した姿勢を保っていられるのは、感覚神経路、感覚運動統合中枢、運動神経路がいずれも正常である場合に限る。
この際に必要な感覚入力は
である。
重要なことだが、脳は固有覚と視覚のどちらかが正常ならば、平衡を保つために充分な入力が得られる。一方感覚系と運動系の統合は小脳で行われる。また運動神経路は皮質脊髄路(錐体路)である。
ロンベルグ試験の第一段階(開眼して立った状態)は、上記二つの感覚神経路のうち少なくとも一つ、そして感覚運動統合中枢および運動神経路は正常であることを示している。
第二段階では閉眼によって視覚路からの入力を消去する。このとき固有覚伝導路が正常なら姿勢は維持できる。しかし、固有覚が障害されていると、二つの感覚入力がなくなることになるので、被験者はすぐに倒れてしまうのである。
ロンベルグ試験で陽性となるのは、次のような感覚性運動失調の原因が存在する場合である。
広く誤解されているが、ロンベルグ試験は小脳機能を評価する検査ではない。小脳性運動失調(小脳失調)のある患者は一般に、開眼した状態でも平衡を保つことは不可能である[3]。すなわち、小脳失調があれば、試験は第一段階で終わりとなる。この場合はロンベルグ徴候陽性と記載するべきではない。ロンベルグ試験は固有覚の受容器および神経伝導路の機能を診る検査である。
ロンベルグ試験の名は、ドイツの神経内科医モーリッツ・ハインリッヒ・ロンベルグ(1795年 - 1873年)にちなんでいる。彼の名は、パリー・ロンベルグ症候群にも冠せられている。
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