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この項目では、推理小説に始まって多様なメディアで展開されるようになったフィクションのジャンルについて説明しています。神秘劇については「神秘劇」をご覧ください。 |
ミステリ (mystery) は、神秘的、謎、不可思議なこと。ミステリアス、ミステリー、ミステリイともいう。
文学などフィクションのジャンルで「ミステリ」と言えば、事件や犯罪の問題解決への捜査を描いた推理小説などのミステリを用いた創作物を指すことが多い。超常現象やそれらを扱ったオカルト、ホラー、SFなども含めて呼ぶ場合もある(その場合、サスペンスと称されることが多い)。
ミステリとは小説、漫画、テレビドラマ、ゲームなどの創作物におけるジャンルの一つ。例えば仁賀克雄によるミステリ小説の定義では、「発端の不可思議性」「中途のサスペンス」「結末の意外性」が挙げられている[1]。
「発端の不可思議性」とは、最初に奇妙な事件や謎を提示して読者を引きつけることを指す。これを作者は論理的に解明していくが、同時に読者が自ら推理を試みることを期待し、作者との知恵比べが行われる。「中途のサスペンス」は謎の提示と最終的な解明をつなぐ部分をいう。不安感を煽る事件を起こしたり、推理の手がかりを提供したりして、エンターテインメントとして読者の興味を引き離さない工夫がなされる。「結末の意外性」はそれらを受けた最も重要な部分であり、読者の予想を裏切る形で謎や真相の解明がなされる結末のことである。広くは、完全犯罪が成立して終結する場合と、その解決に向けての捜査活動および推理がなされて犯人が逮捕されたり真相が明らかにされる場合がある。
後者において特に事件解決に貢献する推理を主に行う個人がいる場合、主人公にする場合もある。このような個人は一般に探偵と(職業が探偵でなくても)呼ばれる。こうしたことから推理物、探偵物と呼ばれることもある。
なお、辞書によっては「ミステリ」と「推理小説」を同義に扱う場合もあるが、厳密に使い分けられている場合もある。原語の mystery が小説以外も含めて指す語であるため、メディアの多様化によって現代では小説に限定されずに用いる用法が行われている。
仁賀によるとミステリの生みの親はエドガー・アラン・ポーだといわれる。ただし、その作品のうちミステリと呼べるものは数編に留まり、『モルグ街の殺人』が史上初のミステリとされる。直感ではなく証拠と論理的推論によって謎の解明を行うというミステリの形式はこの作品によって生み出されたという。また、ポーは同作を含む数編で、密室殺人、名探偵とその言動を記す主人公、心理的盲点といったその後のミステリ全体の原型を提示している[1]。 同時期にチャールズ・ディケンズは双子トリックを使った『荒涼館』を発表、必ずしもミステリを目したわけではないが、犯罪の謎とその論理的解明を全編を通じて描いた。
続くアーサー・コナン・ドイルによる『シャーロック・ホームズ』シリーズの人気は、ポーによって生み出されたミステリをエンターテインメントとして一つの分野を形成するまでに押し上げた。4冊の長編と5冊の短編集を世に問い、シャーロキアンと呼ばれる熱狂的ファンを生み出して今日まで世界各国でホームズ研究が続けられることになった。さらにホームズの成功に対抗する動きから、いくつかの重要な機軸が生まれた。オースティン・フリーマンは倒叙形式を提示し、マシュー・フィリップ・シールは安楽椅子探偵の創造者とされる[1]。
1920年代は「本格ミステリの黄金時代」という。1920年にフリーマン・ウィルス・クロフツは『樽』を執筆し、アリバイ崩しというジャンルを確立した。そして同じく1920年に『スタイルズ荘の怪事件』でデビューしたのが、ミステリの女王と呼ばれるアガサ・クリスティである。この作品で登場した探偵エルキュール・ポアロのシリーズ、ミス・マープルのシリーズ、その他長編66作短編集19作にも及ぶ作品からなる。中でも『そして誰もいなくなった』や『ねずみとり』は自ら戯曲化し、前者は何度も映画化され、後者はその後長く舞台上演が続くことになった[1]。
クリスティに戯曲作家としての側面があったように、推理小説からはじまったミステリはやがて舞台化、映画化、テレビドラマ化がなされていくことになる。既に1893年にホームズが登場する舞台として「時計の下に」が上演され、1903年には米国で『シャーロックホームズの当惑』が映画化されていた。やがて諸媒体独自のミステリも生まれ、今では漫画やゲームにいたるまで幅広いメディアにおいてミステリというジャンルの作品が存在する。
犯罪の発生における犯人や犯行方法、動機その他の真相は、一部または全部が物語終盤まで隠されていることが多い。かつては真相は犯人が誰かということに関心が集中する傾向もあったが(いわゆる、"Who done it?"。欧米では、この形式のミステリ自体をもじって"Whodunit"と呼ぶ)、動機や犯行手段(それぞれ、"Who done it?"をもじって、"Why done it?"、"How done it?"と呼ばれたりもする)などのその他の面に関心を持たせる作品も増えている。意図的にその効果を狙う方法として『刑事コロンボ』や『古畑任三郎』にみられるように倒叙と呼ばれる技法が用いられることもある。
また、小説から始まったミステリにも、媒体による特性の違いが見られるようになってきた。例えば漫画におけるミステリにおいては、『金田一少年の事件簿』にみられるように台詞や説明文によらずコマ絵中に視覚的に手がかりを忍ばせる手法が用いられている。またゲームにおけるミステリには、プレイヤーが物語の進行に参加するメディアとしての特徴をふまえた特徴的な作品が見られる[2]。プレイヤーの選択によってミステリ・サスペンス・ホラーといった物語の展開自体が変化するもの、映像や音楽といったサウンドノベルならではの要素によって真相を見えにくくするというトリックが用いられているものもある。
推理の楽しみを増す単純な方法は、簡単には真相を見抜けなくすることである。こうして真相を隠すためには様々なトリックが用いられる。読者(視聴者、ユーザー)が推理を楽しむために、製作者側との間である程度の暗黙の約束が存在するとされる(詳細はトリックにまつわる暗黙の了解、ノックスの十戒、ヴァン・ダインの二十則を参照のこと)。ただし全ての作家が同意した約束が存在するわけではなく、この通りに厳密に守られることも必ずしも多くはない。ある程度原則を崩すことによって意外な真相を提示することも広く行われている。
密室とは、一般に内外での人の出入りが不可能な空間を指す。古典的な例としては中に死体がある部屋で、犯人がそこにどうやって入り、どうやって出たのか方法が見あたらないケースを指す。ミステリにおいては様々な活用が可能な状況である。詳細は密室殺人を参照。
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登場可能な容疑者が何らかの理由で内部にいる一定人数以下に限られる状況を指す。詳細はクローズド・サークルを参照。
ミステリにおけるアリバイとは、ある容疑者に犯行の機会が存在しないことと定義できる。この意味で先述の密室は全員にアリバイを証明可能な状況と言い直すことも出来る。現実の刑事訴訟法同様にミステリにおいても探偵役は容疑者に犯行の機会があることを証明しない限り真犯人とすることはできない。ゆえに犯人の側は様々なトリックを用いてアリバイを偽装することになる。このようなアリバイを巡る攻防を中心としたミステリはアリバイ崩しものと呼ばれる。
ミステリにおいては、魔法やファンタジー、超科学といった現代の常識では扱えない要素に否定的な立場が見られる[要出典]。しかしこれらの要素を用いたミステリは広く存在する。その扱い方にはいくつかの手法が用いられる。まず一般的なミステリに多く見られるものとしては、一見ファンタジーにしか見えない現象が、実際は現代の常識の範囲で行われた現象に何らかの偽装を施したものであるというケースが挙げられる。さらに作品中で魔法や超科学などに関する法則を提示し、それに基づいた推理を求める作品も見られる[要出典]。よりファンタジーに近いケースとしては、基本的には事前に法則性を提示するといった形式にとらわれずファンタジーとして展開しながら、作品中で何らかの謎解きを要求する場合も見られる[要出典]。
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