オプスミット
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マシテンタン
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IUPAC命名法による物質名 |
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IUPAC名 N-[5-(4-Bromophenyl)-6-[2-[(5-bromo-2-pyrimidinyl)oxy]ethoxy]-4-pyrimidinyl]-N'-propylsulfamide |
臨床データ |
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販売名 |
Opsumit |
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胎児危険度分類 |
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法的規制 |
- US: ℞-only
- FDA approved drug
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投与方法 |
Oral |
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薬物動態データ |
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代謝 |
Hydrolysis, oxidation (CYP3A4) |
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排泄 |
2/3 urine, 1/3 faeces |
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識別 |
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CAS番号
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441798-33-0 |
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ATCコード |
C02KX04 (WHO) |
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PubChem |
CID: 16004692 |
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ChemSpider |
13134960 |
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KEGG |
D10135 |
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ChEBI |
CHEBI:76607 |
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別名 |
ACT-064992 |
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化学的データ |
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化学式 |
C19H20Br2N6O4S |
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分子量 |
588.273 g/mol |
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SMILES
Brc1ccc(cc1)c3c(ncnc3OCCOc2ncc(Br)cn2)NS(=O)(=O)NCCC
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InChI
InChI=1S/C19H20Br2N6O4S/c1-2-7-26-32(28,29)27-17-16(13-3-5-14(20)6-4-13)18(25-12-24-17)30-8-9-31-19-22-10-15(21)11-23-19/h3-6,10-12,26H,2,7-9H2,1H3,(H,24,25,27) Key:JGCMEBMXRHSZKX-UHFFFAOYSA-N
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マシテンタン(Macitentan)はエンドセリン受容体拮抗薬(英語版)(ERA)の一つであり、肺高血圧(PAH)の治療に使用される[1]。デュアルエンドセリン受容体拮抗薬であり、2種類のエンドセリン(ET)受容体(ETA(英語版)およびETB(英語版))に結合する[1]が、ETBへの結合力に比べてETAへの結合力は50倍強い[2]。米国では2013年10月に承認された[3]。商品名オプスミット。日本では2015年2月に薬事・食品衛生審議会が審議、承認了承し[4]、2015年3月に厚生労働省に承認された[5]。開発コードACT-064992。
作用機序
エンドセリンおよびエンドセリン受容体
エンドセリン(ET)は内皮細胞によって分泌される非常に強力な血管収縮物質である[6]。肺においては、分泌されるのは主にET-1である。ET-1を分泌する経路には、構成的経路および非構成的経路の2つがある。分泌されると、ET-1は肺の動脈平滑筋細胞と線維芽細胞上に発現しているET受容体に結合する。ET受容体はG蛋白質共役受容体であり、活性化される事によりGαq(英語版)経路で細胞内カルシウム濃度を上昇させる。細胞内カルシウム濃度の増加は肺動脈の平滑筋収縮を惹起し、細胞増殖に基づく血管のリモデリング[7]が発生する。血管収縮の持続と線維化は、PAHの要因である[1]。
マシテンタンの働き
マシテンタンはET受容体に結合し、ET-1依存性細胞内カルシウム増加を阻害する。肺動脈の平滑筋細胞ではETA受容体の方がETB受容体より遙かに多く、PAHの病態においてはETA受容体の方が重要であると考えられる[6] 。
実験的薬物動態
マシテンタンの作用は遅い[6]。肺動脈平滑筋細胞にマシテンタンを120分間接触させると、10分間接触させた場合の6.3倍の効果を発揮する。またマシテンタンの受容体占有率の半減期は約17分で、ボセンタンの約70秒やアンブリセンタンの約40秒よりも長い。半減期が長いという事は、マシテンタンが非競合的にET受容体を阻害することを意味する[6]。片やボセンタンやアンブリセンタンは競合的拮抗薬である。
薬物動態
マシテンタンは1日1回10mg服用する[1]。ヒトでの血中半減期は約16時間で、服用を始めて3日目に平衡に達する[8]。吸収後の血中濃度はゆっくりと上昇する[9]。マシテンタンの活性代謝物ACT-132577は、投与後30時間後に最高血中濃度に到達し、半減期は約48時間である[9]。ACT-132577のET受容体親和性はマシテンタンよりも低い[2]が、血中濃度はマシテンタンよりも高い[9]。両化合物は共に腎臓および肝臓から排泄される[8] 。
シクロスポリンを併用すると、マシテンタンと活性代謝物の濃度が若干上昇する。ケトコナゾールを併用すると薬物血中濃度の曲線下面積(AUC)が約2倍に増加する。一方、リファンピシンを併用するとAUCが79%減少する。これはマシテンタンが主に肝酵素CYP3A4で代謝されることを示している[10]。
マシテンタンの活性代謝物
ACT-132577の構造式
出典
- ^ a b c d Hong, I.S., Coe, H.V., & Catanzaro, L.M. (2014). Macitentan for the treatment of pulmonary arterial hypertension. The Annals of Pharmacotherapy, 48, 1-10.
- ^ a b Iglarz, M., Qiu, C., Fischli, W., Morrison, K., Binkert, C., Clozel, M., Hess, P., Capeleto, B., Buchmann, S., Boss, C., Bolli, M.H., Weller, T., Treiber, A., & Gatfield, J. (2008). Pharmacology of macitentan, an orally active tissue-targeting dual endothelin receptor antagonist. Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 327(3), 736-745.
- ^ Actelion receives us fda approval of Opsumit (macitentan) for the treatment of pulmonary arterial hypertension Archived 2013年10月23日, at the Wayback Machine.. Actelion. Retrieved 22 October 2013.
- ^ “薬食審・第一部会 新薬等6製品審議、承認了承は5製品 イグザレルトの適応追加は継続審議に”. ミクス (2015年2月23日). 2015年2月23日閲覧。
- ^ “肺動脈性高血圧症治療剤「オプスミット錠10mg」の製造販売承認取得のお知らせ”. 日本新薬 (2015年3月26日). 2015年5月3日閲覧。
- ^ a b c d Gatfield, J., Grandjean, C. M., Sasse, T., Clozel, M., & Nayler, O. (2012). Slow receptor dissociation kinetics differentiate macitentan from other endothelin receptor antagonists in pulmonary arterial smooth muscle cells. PLoS ONE, 7(10), e47662.
- ^ 組織の平衡状態が病理学的慢性的に偏移する事。
- ^ a b Bruderer, S., Hopfgartner, G., Seiberling, M., Wank, J., Sidharta, P.N., Treiber, A., & Dingemanse, J. (2012). Absorption, distribution, metabolism, and excretion of macitentan, a dual endothelin receptor antagonist, in humans. Xenobiotica, 42(9), 901-910.
- ^ a b c Sidharta, P.N., van Giersbergen, P.L., Halabi, A., & Dingemanse, J. (2011). Macitentan: entry-into-humans study with a new endothelin receptor antagonist. Eur J Clin Pharmacol, 67, 977–984.
- ^ Bruderer, S.; Äänismaa, P. I.; Homery, M. C.; Häusler, S.; Landskroner, K.; Sidharta, P. N.; Treiber, A.; Dingemanse, J. (2011). “Effect of Cyclosporine and Rifampin on the Pharmacokinetics of Macitentan, a Tissue-Targeting Dual Endothelin Receptor Antagonist”. The AAPS Journal 14 (1): 68–78. doi:10.1208/s12248-011-9316-3. PMC: 3282010. PMID 22189899. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3282010/.
外部リンク
- 肺動脈性肺高血圧症におけるマシテンタンとイベントおよび死亡
- マシテンタンによりPAH患者の入院リスク低下
- Actelion home page
UpToDate Contents
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- 1. 成人における肺動脈性肺高血圧症の治療(グループ 1):肺高血圧症に特異的な治療treatment of pulmonary arterial hypertension group 1 in adults pulmonary hypertension specific therapy [show details]
…strongest level of data support the following combinations: Macitentan plus sildenafil – The SERAPHIN trial compared the oral ERA, macitentan, to placebo in 250 patients with moderate to severe PAH; 85 …
- 2. 小児の肺高血圧症:マネージメントおよび予後pulmonary hypertension in children management and prognosis [show details]
…ambrisentan, and macitentan ERAs bind to receptors on endothelial cells and block the actions of endothelin-1 (ET-1), which is a potent endogenous vasoconstrictor and mitogen. Bosentan and macitentan are nonselective …
- 3. 肺疾患や低酸素血症による肺高血圧症(第3群の肺高血圧症):治療および予後pulmonary hypertension due to lung disease and or hypoxemia group 3 pulmonary hypertension treatment and prognosis [show details]
…cyclase stimulators (riociguat) and endothelin receptor antagonists (ERA; eg, bosentan, ambrisentan, macitentan). While many of these agents have efficacy in the treatment of patients with group 1 PAH , their …
- 4. 先天性心疾患のある成人の肺高血圧症のマネージメントと予後management and prognosis of pulmonary hypertension in adults with congenital heart disease [show details]
…not been established. Options for combination therapy include ambrisentan plus tadalafil or macitentan plus sildenafil or tadalafil. The combination of bosentan plus sildenafil (or tadalafil) has been …
- 5. 成人の肺静脈閉塞症/肺毛細血管腫症の治療と予後treatment and prognosis of pulmonary veno occlusive disease pulmonary capillary hemangiomatosis in adults [show details]
Japanese Journal
- 新規デュアルエンドセリン受容体拮抗薬マシテンタン(オプスミット<sup>®</sup>錠)の薬理学的特性及び臨床試験成績
- 高橋 修哉,堀江 利津子,横山 由斉
- 日本薬理学雑誌 149(1), 49-58, 2017
- … <p>マシテンタン(製品名:オプスミット<sup>®</sup>錠)はActelion Pharmaceuticals Ltd.において創製された新規エンドセリン受容体拮抗薬(ERA:endothelin receptor antagonist)であり,肺動脈性肺高血圧症(PAH:pulmonary arterial hypertension)を効能・効果として,米国において2013年10月,欧州において2013年12月,本邦においては2015年3月に製造販売承認を取得した新規ERAである.マシテンタンはエンドセリ …
- NAID 130005188229
Related Links
- 通常、成人には、マシテンタンとして10mgを1日1回経口投与する。【使用上の注意】 1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること) ⑴ 投与開始前の肝酵素(AST、ALT)値のいずれか又は両方が基準 値上限の3倍を超える患者
- 「肺動脈性高血圧症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品のオプスミット錠10mg(一般名:マシテンタン)が2015年3月26日に承認されました! オプスミットはエンドセリン受容体拮抗薬
- オプスミット[マシテンタン]の作用機序、特徴 肺高血圧症は、肺動脈が何らかの影響で狭く狭窄していることが原因です。 そのため、肺動脈血管を拡張する薬=血管拡張薬が通常使用されます。 オプスミットは、エンドセリン受容体 ...
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
オプスミット錠10mg
組成
成分・含量
添加物
- 乳糖水和物、結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、ポリソルベート80、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、酸化チタン、タルク、大豆レシチン、キサンタンガム
効能または効果
- WHO機能分類クラスIにおける有効性及び安全性は確立していない。
- 本剤の使用にあたっては、最新の治療ガイドラインを参考に投与の要否を検討すること。
- 通常、成人には、マシテンタンとして10mgを1日1回経口投与する。
慎重投与
- 投与開始前の肝酵素(AST、ALT)値のいずれか又は両方が基準値上限の3倍を超える患者[使用経験がない。「重要な基本的注意」の項参照。]
- 透析中の患者[使用経験がない。]
- 重度の貧血のある患者[「重要な基本的注意」の項参照。]
- 低血圧の患者[「重要な基本的注意」の項参照。]
重大な副作用
貧血(4.0%)注2)
- 貧血、ヘモグロビン減少が起こる可能性があるので、定期的な検査及び十分な観察を行い、異常が認められた場合はその程度及び臨床症状に応じて、投与中止など適切な処置をとること。[「慎重投与」、「重要な基本的注意」の項参照。]
薬効薬理
血管収縮の阻害16)
- マシテンタンはラットから摘出した内皮剥離大動脈のエンドセリン(ET)-1刺激誘発収縮(ETA受容体媒介性)及び上皮剥離気管のサラフォトキシンS6c刺激誘発収縮(ETB受容体媒介性)を阻害し、そのpA2値はそれぞれ7.6±0.2(ETA受容体)及び5.9±0.2(ETB受容体)であった。
病態モデルに対する作用
肺高血圧モデル16)、17)
- マシテンタンはモノクロタリン誘発肺高血圧ラットにおいて、心拍数に影響することなく平均肺動脈圧を低下させ、また、肺動脈肥大及び右室肥大を抑制した。さらに、生存率を改善した。
高血圧モデル16)、18)
- マシテンタンはDahl食塩感受性(Dahl-S)高血圧ラット及び酢酸デオキシコルチコステロン(DOCA)食塩高血圧ラットにおいて、心拍数に影響することなく平均動脈圧を低下させた。
肺線維症モデル19)
- マシテンタンはブレオマイシン誘発肺線維症ラットにおいて、右室肥大及び肺ヒドロキシプロリン含量を抑制した。
作用機序16)、20)
- マシテンタンはETA及びETB受容体に対して拮抗作用を示し、125I-ET-1結合に対するIC50値(平均値±標準誤差)はそれぞれ0.49±0.07nM及び391±49nMであった。活性代謝物もマシテンタンと同様の拮抗作用を示し、そのIC50値はそれぞれ3.4±0.20nM及び987±92nMであった。
有効成分に関する理化学的知見
一般名:
化学名:
- N-[5-(4-Bromophenyl)-6-{2-[(5-bromopyrimidin-2-yl)oxy]ethoxy}pyrimidin-4-yl]-N '-propylsulfuric diamide
- 白色の結晶性の粉末である。ジクロロメタンに極めて溶けやすく、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド及びテトラヒドロフランに溶けやすく、アセトン、アセトニトリル及び酢酸エチルにやや溶けやすく、メタノール及びエタノールに溶けにくく、イソプロパノールに極めて溶けにくく、水にほとんど溶けない。
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薬効