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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/11/11 16:46:13」(JST)
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住血胞子虫 |
分類 |
ドメイン |
: |
真核生物 Eukaryota |
界 |
: |
原生生物界 Protista |
門 |
: |
アピコンプレックス門 Apicomplexa |
綱 |
: |
無コノイド綱 Aconoidasida |
目 |
: |
住血胞子虫目 Haemosporida Danilewsky, 1885 及び ピロプラズマ目 Piroplasmida Wenyon, 1926 |
|
英名 |
haemosporidia |
住血胞子虫(じゅうけつほうしちゅう、haemosporidia)類は、アピコンプレックス門に属し赤血球や白血球に寄生する原生生物の一群で、代表的なものとしてマラリア原虫などがある。基本的にはコクシジウム類と似た特徴を持っているが、常に宿主動物の体内に留まり環境中に出ることがないため、壁に包まれ環境耐性を示すいわゆる「胞子」の状態がない。ピロプラズマ (piroplasmida) 類を含める場合があり、その場合無コノイド綱 Aconoidasida あるいは Haematozoea という名称が使われることもある。
目次
- 1 住血胞子虫
- 2 ピロプラズマ
- 3 分類
- 4 参考文献
住血胞子虫
住血胞子虫目 Haemosporida Danilewsky, 1885 の原虫は吸血性のカやハエなどによって媒介され、主に脊椎動物の赤血球や白血球に寄生する。爬虫類に寄生する種ではヒルによって媒介されるものがある。
住血胞子虫の基本的な生活環は次の通りである。カやハエなど媒介者の唾液とともに侵入したスポロゾイト(種虫、sporozoite)は、まず肝臓などの固定の組織の細胞内でシゾゴニー(増員生殖、schizogony)を行い数を増やす。そのあと血液中に移行して血球内に寄生するようになるが、ここにはさまざまな差異がある。媒介者が吸血することによって生殖母体 (gamont) が媒介者に移り、消化管内で配偶子を生じて有性生殖が行われる。接合子はオーキネート(ookinete、虫様体)と呼ばれ、運動能があってすぐに消化管上皮細胞に侵入してスポロゴニー (sporogony) が行われる。これは減数分裂を含む他のアピコンプレクサ類の胞子形成に対応した過程ではあるが、オーシスト (oocyst) は薄い膜に包まれているだけですぐに破裂してスポロゾイトを放出する。スポロゾイトは体腔液中を漂って唾液腺に集合し、吸血に際して動物の体内に侵入する。
全てを プラスモジウム科にまとめる場合も多いが、ここでは生活環の違いに注目して以下の4科に分類する方法に従って説明する。
- プラスモジウム科 Plasmodiidae
- 陸上の脊椎動物に幅広く見られる。肝細胞で増殖したあと血液中に移行し、赤血球内でもシゾゴニーを行って増殖する。このため宿主は周期的な発熱を繰り返すことになる。マラリア原虫 Plasmodium spp. 等。
- Haemoproteidae 科
- 主として鳥類に寄生する。血液中ではマラリア色素を持った生殖母体が赤血球などに見られるが、シゾゴニーは行わない。Heamoproteus mansoni が家禽の病原体として注目される。鳥類においては Haemoproteus 属による疾病も鳥マラリアと称される。
- ロイコチトゾーン科 Leucocytozoidae
- 主として鳥類に寄生する。血液中では赤芽球、赤血球、単球、リンパ球などに発育中の生殖母体が見られるが、マラリア色素は生じない。鶏ロイコチトゾーン Leucocytozoon caulleryi は日本を含む東南アジアで頻発する養鶏業における重要な病原体である。それ以外にアヒルなどに寄生する L. simondi 、シチメンチョウに寄生する L. smithi などが病原体として注目される。
- Garniidae 科
- 主として爬虫類に寄生する。赤血球に寄生することがなく、またマラリア色素を生じない。Garnia 属、Fallisia 属などが知られているが、この科の全ての種を Plasmodium 属に含めることがある。
ピロプラズマ
ピロプラズマ目 Piroplasmida Wenyon, 1926 の原虫はマダニ類によって媒介され、主に哺乳動物の赤血球に寄生するが、種によっては白血球に寄生することもある。ピロプラズマという名は細胞が赤血球中で梨形(pirum 梨 + plasm 形)に観察されることに由来する。伝統的に大型のバベシア科と小型のタイレリア科に分類されるが、これは生物の系統を反映していない。また Babesia 属や Theileria 属は多系統的であることが明らかになっている。
家畜の病原体として警戒されているが、人間に対しても日和見感染を起こすことがある。感染した宿主動物は、貧血、黄疸、発熱、血尿などマラリアに似た症状を示し、死亡に至ることも多い。以下に病原体として重視されている種を例示する。
- Babesia
- バベシア科 Babesiidae。牛などに寄生するアルゼンチナ病の病原体 牛バベシア B. bovis、ダニ熱の病原体 フタゴバベシア B. bigemina 、大型ピロプラズマ B. ovata 、馬などに寄生する大形馬バベシア B. caballi 、犬などに寄生する犬バベシア B. canis 、ギブソン犬バベシア B. gibsoni、人間に寄生する多型バベシア B. divergens などが重要な種である。また人間に寄生するネズミバベシア B. microti、馬に寄生する小形馬バベシア B. equi も重視されているが、真の Babesia 属とはそれぞれ異なる系統に属することが示されている。
- Theileria
- タイレリア科 Theileria。東沿岸熱タイレリア T. parva はアフリカにおける牛および水牛の東海岸熱の病原体であり、致死率が高く獣医学上極めて重要な種である。他に熱帯ピロプラズマ病タイレリア T. annulata 、小型ピロプラズマ T. orientalis (シノニム: . sergenti )などが重視されている。
- Cytauxzoon
- C. felis がネコの病原体として知られている。
ごく初期には Anaplasma 属や近縁の諸属をピロプラズマ類に含めていたが、これらはリケッチア目に属する細菌であることがわかって取り除かれた。また Dactylosomatidae 科はコクシジウム類の中のアデレア亜目に移された。
分類
ピロプラズマは吸血性節足動物に媒介され、赤血球に寄生してこれを破壊し、宿主に発熱と貧血を引き起こすという類似点から、1950年頃までは広義の住血胞子虫と考えられていた。しかし明確な有性生殖が認められず、特に胞子に相当する形態(オーシスト、oocyst)を一切とらない点で、住血胞子虫と区別されるようになった。胞子虫が解体される傾向の元でピロプラズマも全く系統の異なる生物だと考えることが多くなり、1964年の合意体系では肉質虫の中に移されているほどである。しかし電子顕微鏡による微細構造観察が行われるようになると、ピロプラズマもアピカルコンプレックスを持つことが認識され、一転して近縁なものと考えられるようになった。
現在、数々の教科書では住血胞子虫は真コクシジウム目に所属する亜目、ピロプラズマは独立の目として記述されていることが多い。これは1980年の合意体系を反映したものであるが、これは双方を亜綱とする独立の綱にまとめるという意見と、双方を真コクシジウム目に所属する亜目にまとめるという意見の妥協の結果である。2005年の合意体系では住血胞子虫とピロプラズマを対等に位置づけ Aconoidasida という群にまとめている。この名はどちらもアピカルコンプレックスにコノイド(円錐体)を欠いていることに由来する。
参考文献
- Gediminas Valklunas and Gediminas Valkiunas, Avian Malaria Parasites and Other Haemosporidia, Taylor & Francis, 2004. ISBN 0415300975
- Levine, N. D. (1961). “Problems in the Systematics of the "Sporozoa"”. Journal of Protozoology 8: 442-451.
- Honigberg, B. M. et al. (1964). “A revised classification of the phylum Protozoa”. Journal of Protozoology 11: 7-20. PMID 14119564
- Levine, N. D. et al. (1980). “A newly revised classification of the protozoa”. Journal of Protozoology 27: 37-58. PMID 6989987
- Adl, S. M. et al. (2005). “The New Higher Level Classification of Eukaryotes with Emphasis on the Taxonomy of Protists”. Journal of Eukaryotic Microbiology 52 (5): 399-451. PDF available
- Reichard, M. V., van den Bussche, R. A., Meinkoth, J. H., Hoover, J. P., Kocan, A. (2005). “A new species of Cytauxzoon from Pallas' cats caught in mongolia and comments on the systematics and taxonomy of piroplasmids.”. Journal of Parasitology 91: 420-426.
- Maria T.E.P. Allsopp and Basil A. Allsopp (2006). “Molecular sequence evidence for the reclassification of some Babesia species”. Annals of the New York Academy of Sciences 1081: 509–517. doi:10.1196/annals.1373.076.
- 日本寄生虫学会用語委員会 「暫定新寄生虫和名表」 2008年5月22日 - 和名は左記のリンクを参照。
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Japanese Journal
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- 北海道空知管内のQ牧場は、再興した牛の小型ピロプラズマ病を、対策2年目で終息させた
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★リンクテーブル★
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- ラ
- Babesia
- 関
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ピロプラズマ
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