バラシクロビル
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バラシクロビル
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IUPAC命名法による物質名 |
(S)-2-[(2-amino-6-oxo-3,9-dihydropurin-9-yl)methoxy]
ethyl-2-amino-3-methyl-butanoate
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臨床データ |
胎児危険度分類 |
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法的規制 |
- S4 (豪州), POM (英国), ℞-only (米国)
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投与方法 |
経口 |
薬物動態データ |
生物学的利用能 |
55% |
血漿タンパク結合 |
13–18% |
代謝 |
肝臓(アシクロビルに転換) |
半減期 |
<30分(バラシクロビル)
2.5-3.6時間(アシクロビル) |
排泄 |
腎臓 40–50%(アシクロビル)
糞便 47%(アシクロビル) |
識別 |
CAS番号 |
124832-27-5 |
ATCコード |
J05AB11 |
PubChem |
CID: 60773 |
DrugBank |
APRD00697 |
化学的データ |
化学式 |
C13H20N6O4 |
分子量 |
324.336 g/mol |
バラシクロビル (Valaciclovir) は、ヘルペスウイルス感染症治療薬(抗ウイルス薬)の1種である。グラクソ・スミスクライン社から商品名バルトレックスが販売されている。
薬理
バラシクロビルはアシクロビル(商品名ゾビラックス等)のプロドラッグである。
バラシクロビルはアミノ酸の1種であるバリンのカルボキシ基に、アシクロビルがエステル結合した形状をしている。小腸のペプチドトランスポーターであるPEPT1により吸収された後、肝臓でエステラーゼによってバリンと抗ウイルス作用を持つアシクロビルとに加水分解されて薬効を発揮する。したがって前提条件として肝不全状態でないことが求められる。
バリンとの結合によって体内への吸収率が高まることにより、経口アシクロビルより生体利用率が高くなっている。
効能
1型および2型単純ヘルペスおよび水痘・帯状疱疹ウイルスに対して活性を有する。 口唇ヘルペスや性器ヘルペスに代表される単純疱疹、あるいは帯状疱疹の発症時の他、再発を繰り返す性器ヘルペス患者に対して、症状の再発をあらかじめ抑制するための投与法の他、水痘に対しても承認されている。
参考文献
- 田中千賀子、加藤隆一編集 『NEW薬理学 第6版』 南江堂 2011年 ISBN 9784524260881
関連項目
抗DNAウイルス薬(ATCコード:J05、S01AD、D06BB) |
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Baltimore I |
ヘルペスウイルス
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DNA合成
阻害剤
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TK活性型
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プリン誘導体
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グアニン(アシクロビル#/バラシクロビル、ガンシクロビル/バルガンシクロビル、ペンシクロビル/ファムシクロビル)
アデニン(ビダラビン、シタラビン)
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ピリミジン誘導体
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ウリジン(イドクスウリジン、トリフルリジン、エドクスウジン)
チミン(ブリブジン)
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TK不活性型
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ホスカルネット
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その他
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ドコサノール · 初期タンパク質(ホミビルセン) · トロマンタジン
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HPV/MC
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イミキモド/レシキモド · ポドフィロトキシン
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ワクシニア
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会合阻害: リファンピシン
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ポックスウイルス
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メチサゾン
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B型肝炎 (VII) |
ヌクレオシド誘導体/NARTI: エンテカビル · ラミブジン · テルビブジン · クレブジン
ヌクレオシド誘導体/NtRTI: アデホビル · テノホビル
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Multiple/general |
核酸阻害剤
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シドホビル
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インターフェロン
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インターフェロンα-2b · ペグインターフェロンα-2a
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複合/不明
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リバビリン#/タリバビリン†
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ErbB2/PI3K経路
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NOV-205§ · NOV-002†
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#WHO-EM. ‡市場から撤退。治験: †第III相。§第II相以下 |
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この項目は、薬学に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(プロジェクト:薬学/Portal:医学と医療)。 |
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 小泉 秀華,小泉 裕子,角田 孝彦,松田 幹夫
- Skin Cancer 26(1), 73-78, 2011
- … 右側腹部から背部の帯状疱疹に対して,バルトレックス内服(3000mg/日)で加療し初診から約2週間で略治した。 …
- NAID 130001480063
- 難聴、耳鳴を主訴とする内耳性疾患に対する塩酸バラシクロビル(バルトレックス)と漢方薬併用の治療効果
Related Links
- グラクソ・スミスクライン株式会社のバルトレックス錠500(化学療法剤)、一般名バラシクロビル塩酸塩(Valaciclovir hydrochloride) の効果と副作用、写真、保管方法等を掲載。 ... [成人] 単純疱疹:通常、成人は1回1錠(バラシクロビルと ...
- バルトレックスとは?バラシクロビルの効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も調べられる(おくすり110番:薬事典版) ... 用法用量は医師・薬剤師の指示を必ずお守りください。 すべての副作用を掲載しているわけではありません。
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
バルトレックス錠500
組成
成分・含量
- 1錠中にバラシクロビル塩酸塩556mg(バラシクロビルとして500mg)
添加物
- 結晶セルロース、クロスポビドン、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、ヒプロメロース、酸化チタン、マクロゴール400、ポリソルベート80、カルナウバロウ
禁忌
- 本剤の成分あるいはアシクロビルに対し過敏症の既往歴のある患者
効能または効果
単純疱疹
帯状疱疹
性器ヘルペスの再発抑制
水痘
- 性器ヘルペスの再発抑制に対する本剤の投与により、セックスパートナーへの感染を抑制することが認められている(「臨床成績」の項参照)。ただし、本剤投与中もセックスパートナーへの感染リスクがあるため、コンドームの使用等が推奨される。
単純疱疹
- 通常、成人にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回経口投与する。
帯状疱疹
- 通常、成人にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与する。
性器ヘルペスの再発抑制
- 通常、成人にはバラシクロビルとして1回500mgを1日1回経口投与する。なお、HIV感染症の成人(CD4リンパ球数100/mm3以上)にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回経口投与する。
水痘
- 通常、成人および体重40kg以上の小児にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与する。
- 免疫正常患者において、性器ヘルペスの再発抑制に本剤を使用している際に再発が認められた場合には、1回500mg1日1回投与(性器ヘルペスの再発抑制に対する用法・用量)から1回500mg1日2回投与(単純疱疹の治療に対する用法・用量)に変更すること。治癒後は必要に応じ1回500mg1日1回投与(性器ヘルペスの再発抑制に対する用法・用量)の再開を考慮すること。また、再発抑制に対して本剤を投与しているにもかかわらず頻回に再発を繰り返すような患者に対しては、症状に応じて1回250mg1日2回又は1回1000mg1日1回投与に変更することを考慮すること(「臨床成績」の項参照)。
- 腎障害のある患者又は腎機能の低下している患者、高齢者では、精神神経系の副作用があらわれやすいので、投与間隔を延長するなど注意すること。なお、本剤の投与量及び投与間隔の目安は下表のとおりである。また、血液透析を受けている患者に対しては、患者の腎機能、体重又は臨床症状に応じ、クレアチニンクリアランス10 mL/min未満の目安よりさらに減量(250mgを24時間毎 等)することを考慮すること。また、血液透析日には透析後に投与すること。なお、腎障害を有する小児患者における本剤の投与量、投与間隔調節の目安は確立していない。
(「慎重投与」、「重要な基本的注意」、「高齢者への投与」、「過量投与」及び「薬物動態」の項参照)
単純疱疹
クレアチニンクリアランス(mL/min):≧50
クレアチニンクリアランス(mL/min):30〜49
クレアチニンクリアランス(mL/min):10〜29
クレアチニンクリアランス(mL/min):<10
帯状疱疹
水痘(成人)
クレアチニンクリアランス(mL/min):≧50
クレアチニンクリアランス(mL/min):30〜49
クレアチニンクリアランス(mL/min):10〜29
クレアチニンクリアランス(mL/min):<10
性器ヘルペスの再発抑制
クレアチニンクリアランス(mL/min):≧50
- 500mgを24時間毎
なお、HIV感染症の成人(CD4リンパ球数100/mm3以上)には、500mgを12時間毎
クレアチニンクリアランス(mL/min):30〜49
- 500mgを24時間毎
なお、HIV感染症の成人(CD4リンパ球数100/mm3以上)には、500mgを12時間毎
クレアチニンクリアランス(mL/min):10〜29
- 250mgを24時間毎
なお、HIV感染症の成人(CD4リンパ球数100/mm3以上)には、500mgを24時間毎
クレアチニンクリアランス(mL/min):<10
- 250mgを24時間毎
なお、HIV感染症の成人(CD4リンパ球数100/mm3以上)には、500mgを24時間毎
- 肝障害のある患者でもバラシクロビルは十分にアシクロビルに変換される(「薬物動態」の項参照)。なお、肝障害のある患者での臨床使用経験は限られている。
慎重投与
- 腎障害のある患者[「用法・用量に関連する使用上の注意」、「重要な基本的注意」及び「薬物動態」の項参照]
- 高齢者[「用法・用量に関連する使用上の注意」、「重要な基本的注意」、「高齢者への投与」及び「薬物動態」の項参照]
重大な副作用
次のような症状がまれにあらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
アナフィラキシーショック、アナフィラキシー様症状(呼吸困難、血管浮腫等)
汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血小板減少性紫斑病
急性腎不全
精神神経症状
- 意識障害(昏睡)、せん妄、妄想、幻覚、錯乱、痙攣、てんかん発作、麻痺等がみられることがある。(頻度不明注1))
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)
呼吸抑制、無呼吸
間質性肺炎
肝炎、肝機能障害、黄疸
急性膵炎
薬効薬理
- 本剤はアシクロビルのプロドラッグであり、投与後速やかにアシクロビルに変換されて抗ウイルス作用を発現する。
抗ウイルス作用
単純ヘルペスウイルスに対する作用
- バラシクロビルの活性代謝物であるアシクロビルは、単純ヘルペスウイルス1型及び2型のin vitroにおける増殖を抑制し、IC50はそれぞれ0.01〜1.25μg/mL及び0.01〜3.20μg/mLであった23),24)。また、単純ヘルペスウイルス1型を鼻面に接種したマウスに、バラシクロビル1mg/mLを飲水に溶解し4日間投与すると、皮膚の病巣の悪化が抑制された。
水痘・帯状疱疹ウイルスに対する作用
- バラシクロビルの活性代謝物であるアシクロビルは、水痘・帯状疱疹ウイルスのin vitroにおける増殖を抑制し、IC50は0.17〜7.76μg/mLであった25)〜27)。また、サル水痘ウイルスを気道に接種したサルにバラシクロビル200及び400mg/kg/日を1日3回に分割し連続10日間経口投与したところ、皮疹の発現が抑制され、血中ウイルス価が減少した。
作用機序26),28)〜32)
- バラシクロビルは投与後、速やかにアシクロビルに変換される。アシクロビルは、単純ヘルペスウイルスあるいは水痘・帯状疱疹ウイルスが感染した細胞内に入ると、ウイルス性チミジンキナーゼにより一リン酸化された後、細胞性キナーゼによりリン酸化され、アシクロビル三リン酸(ACV-TP)となる。ACV-TPは正常基質であるdGTPと競合してウイルスDNAポリメラーゼによりウイルスDNAの3'末端に取り込まれると、ウイルスDNA鎖の伸長を停止させ、ウイルスDNAの複製を阻害する。
アシクロビルリン酸化の第一段階である一リン酸化は感染細胞内に存在するウイルス性チミジンキナーゼによるため、ウイルス非感染細胞に対する障害性は低いものと考えられる。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- バラシクロビル塩酸塩(Valaciclovir Hydrochloride)
化学名
- 2-[(2-Amino-1,6-dihydro-6-oxo-9H-purin-9-yl)methoxy]ethyl L-valinate monohydrochloride
分子式
分子量
性状
- 白色〜微黄白色の粉末である。水に溶けやすく、メタノールに溶けにくく、エタノール(99.5)に極めて溶けにくく、アセトニトリルにほとんど溶けない。
0.1mol/L塩酸試液に溶ける。
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- valacyclovir、valaciclovir
- 化
- 塩酸バラシクロビル, valaciclovir hydrochloride
- 商
- バルトレックス
- 関
- 抗ウイルス薬
適応
- 単純疱疹、帯状疱疹、性器ヘルペスの再発抑制、(水痘)