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バイオ燃料(バイオねんりょう)とは生物体(バイオマス)の持つエネルギーを利用したアルコール燃料、その他合成ガスのこと。石油のような枯渇性資源を代替しうる非枯渇性資源として注目されている他、二酸化炭素(CO2)の総排出量が増えない[1]と言われていることから、主に自動車や航空機を動かす石油燃料の代替物として注目されている。
産業用燃料は、第二次オイルショックで原油価格が1バーレル 4ドルから17ドルに値上がりしたのを契機に、石油より安価な石炭・天然ガス・原子力等で代替されたが、1980-2000年の間、輸送用燃料は原油価格1バーレル 15ドル前後だったため代替燃料は採算が合わなかった。しかし、中国・インドの自動車の普及・経済発展による輸送燃料需要の急増により、2005年から2008年にかけて原油価格が1バーレル150ドルに暴騰し、地球温暖化問題によるCO2削減要請の高まりもあって、近年低コスト輸送用バイオ燃料への投資が拡大して研究開発・実用化が大きく進展するかに見えたが、その後、原油価格が産油国の増産により2016年2月現在、1バーレル30ドル台まで下落しており、オイルシェール、シェールガス等と共に採算が取れなくなっている。
下記の3つに大別される。2008年現在、原油価格高騰は航空産業、漁業に大きな打撃を与えているが、動植物油のジェット燃料や船舶用ディーゼル及び焼玉機関への適用研究は自動車燃料への適用研究に比べて後手に回っており、生焚きした場合の問題点の解析、必要とされる化学処理の研究が急がれる。
ガソリンの代わりに、トウモロコシやサトウキビと言った安い穀物を発酵・濾過してアルコール(エタノール)を作り出し、乗用車・小型トラック用のガソリンを代替するバイオマスアルコール燃料として利用する。
穀物・廃糖蜜をアルコール発酵させて醸造する在来法と、食料にならない廃材/乾燥地生育植物であるサボテン・牧草・藁・トウモロコシ茎・間伐材のセルロースを熱や真菌で分解してからコリノ菌・酵母で醸造する第二世代セルロースエタノールがある。従来法は既にトウモロコシ価格が120ドル/tから150ドル/tに大幅上昇するなど食料との競合問題がでているために、食料と競合しないセルロースエタノールの経済的生産法の開発が急がれている。最近RITEとHONDAがセルロース法の大幅なコストダウンを可能とするRITE-HONDA法を開発し出光興産と三菱商事が合弁で大型プラントを立ち上げる計画がある。
バイオマスアルコール燃料は化石燃料であるガソリンより出力は劣るものの、向き不向きこそあれど大抵の穀物は原料に出来るために原料を選ばないこと、安い穀物や、穀物の搾りかす(従来から産業廃棄物のことが多い)を使うことでコストが抑えられること、硫黄酸化物や窒素酸化物の排出が極めて少ないこと、植物原料の燃料なので新たなCO2を作り出さないこと(カーボンニュートラル)などの長所がある。
アルコール燃料は自動車の初期の時代から使われていた。第二次世界大戦末期、日本ではビール工場の全てを軍事用(飛行機・自動車用)としてアルコール燃料生産用に改造することに着手していたといわれる。石油が低価格で安定供給されるようになってからは注目されない燃料となっていた。しかし、1970年のオイルショック以降、再びメタノールやエタノールといったアルコール燃料(バイオマス燃料)に注目が集まった。ブラジルが有名だが、アメリカでも、自動車燃料に10%のアルコール燃料を含んでいるものが標準となっている。 日本でも経済産業省が取り組みを始めた[2]。2007年時点では、廃却処理に苦労しているサトウキビやサトウダイコンの搾りかす(バガス)を使ったプラントでの試験を行なう予定。そのほかでは、材木の廃材や雑草を原料とする方法など、できるだけ食料を使わない方向で研究が進められている。
バス・大型トラック・建設機械・船舶・軍用車両用の軽油代替燃料である。ガソリン代替燃料が農産物/農林廃棄物のアルコール発酵を利用しているのに対して、バイオディーゼル燃料(BDF/BioDieselFuel)は一般の動植物油脂をそのままメタノール処理または水素化分解して製造する。第一世代のBDFは植物油をアルコール処理してグリセリンを除去した燃料で欧州では菜種BDFを軽油に5%前後混入して使用するのが進んでおり、2008年現在、菜種油の EU FOB価格は600ドル/tから800ドル/tに高騰した。日本で最近見られる廃食用油ディーゼル燃料も第一世代に属する。第一世代BDFは100%で使用した場合、燃焼力の強い触媒で排ガス処理をしないと粒子状未燃物が出やすいほか、コモンレールディーゼルの高圧噴射との相性の問題もあり、菜種/大豆油の場合は酸化しやすく、パーム油は低温固化しやすく、魚油はスラッジでエンジン焼付きが出易い等の問題がある。
第二世代のBHF(BioHydrocracking Fuel)とは、新日本石油が減圧軽油水素化分解装置を使って動植物油を分解するプロセスを試験して得られた、GTL同等の高品質のディーゼル燃料を指す。燃料中の酸素分が除去されて未燃の問題が、ワックスが分解されて固化の問題が改善するほか、グリセリンが分解されてグリセリンの廃棄問題が解決して歩留まりも改善する。但し水素化分解装置は石油精製残渣油水素化分解装置の転用が利くものの大規模な設備投資を必要とする。最も安価といわれるナンヨウアブラギリ油を原料にした場合でも2008年現在1バーレル 150ドルの原油価格が60ドルを切ると不採算になるといわれる。なお、船舶用エンジンでは元からA重油など低級な燃料油が使われていた事もあり、漁船用に魚油の生焚きも検討されている。
航空機用ジェット燃料、軍艦/戦車用ガスタービン燃料、コージェネ用マイクロガスタービン燃料として灯油、ジェット燃料、軽油を代替する。航空機用燃料としては1kgあたりの発熱量が高いことが絶対条件で、アルコールは発熱量が低いため使えず、動植物油かGTLが考えられている。陸海軍用はkg発熱量はそれ程重視されないが、戦闘中に引火しない事が条件のため、やはりアルコールは不適格と考えられている。
航空エンジン産業が米英露に偏在しているため、自動車用代替燃料に比べて研究者が少なく研究が遅れていたが、2004-2008年に原油価格がバーレル18ドルから150ドルに暴騰し航空会社が大打撃を受けた一方、植物油価格はバーレル50-70ドルのため、ヴァージン・アトランティック航空がココナツ油等をニュージーランド航空がナンヨウアブラギリ油を航空燃料の混和材として使用する[3]試験を開始した。
2009年1月JALが747の4基のエンジンの内、1基の燃料に従来の燃料50%にバイオ燃料50%を使用した「JALバイオ・フライト」として空のエコ活動を実施した [4]。 但し、JALは経営再建と効率化推進の為、2011年03月に全ての747を引退させた[5]。
材料は、トウモロコシ、サトウキビ、食用油、竹、木材、おがくずやトウモロコシの茎といった有機廃棄物など多岐にわたり、それらからアルコール燃料を作る方式はメタンガスの生産と共によく行われている方法である。
日本では、2007年4月27日よりバイオエタノールを含んだガソリンの試験販売が開始されており、ガソリン価格の高騰、地球温暖化への関心の高まりを受け注目されている。バイオ燃料E85(ガソリンにエタノールを85%混ぜた燃料:IPSJ)は、通常のガソリンよりもCO2の排出が70%少ない。価格もガソリンが1リットルあたり1.6ユーロのところ0.8ユーロ。バイオ燃料が利用できるフレックス燃料車が広く普及しているブラジルで2007年5月、トヨタ自動車もバイオ燃料の使用が可能な自動車を発売した[6]。
第一世代バイオ燃料ではサトウキビやトウモロコシを原料にバイオエタノールを製造していたが、これらの穀物の栽培により、飼料用穀物の作付面積が減り、穀物相場が高騰していた。第二世代バイオ燃料では藻類等のバイオマスや古紙、おが屑や牛糞などの廃棄物に含まれる有機物を分解することによってバイオ燃料を製造する。そのため、資源的な制約が無く、需要が増えても穀物相場には影響を与えにくいが、その反面、収率が低く、原材料は安いものの、熱量毎の製造費用が高くなる可能性がある[7][8][9][10][11]。2013年以降、各地でプラントが建設されつつあるが、セルロースの発酵のために超臨界水を使用する[12][13][14][15]など、ハードルが高い事が普及の妨げになっており、近年の原油相場の下落により、滞っている。
日本国内ではおからを原料にしたバイオエタノール精製への取り組みも行われており、静岡油化工業株式会社は、2008年3月から、現在産業廃棄物として処理されているおからを再利用したバイオ燃料の製造を開始している[16]。
セルロース細胞壁の分解は熱と化学処理を伴い、従来難しい問題であった[17]。またセルラーゼで分解することも実施されていたが、前処理に手間がかかり大変であった[9]。メリーランド大学カレッジパーク校のSteve Hutcheson はチェサピーク湾の沼地で発見されたバクテリア(サッカロファガス デグラダンス(英語版))が強力なセルロース細胞壁の分解能を有する事を突き止めた[18][9]。Zymetis社ではさらに効率よく糖に変更するために遺伝子を組み換えて、72時間で1トンのセルロースバイオマスを糖に変換できる事を実証した[19][9]。
また、シロアリの消化器官内の共生菌によるセルロース分解プロセスがバイオマスエタノールの製造に役立つ事が期待され、琉球大学や理化学研究所等で研究が進められる[20][21][22][23][24][25][26][27]。
また、世界中の池や湖などに生息し、自ら油を生成する藻の一種「ボトリオコッカス」を培養、抽出した油をバイオ燃料とする研究も行われている[28]。同じく藻のオーランチオキトリウムの研究も盛んになっている。
メタン菌による嫌気発酵により有機物を分解してメタンガスを生成する。主に下水や生ごみ等、主に廃棄物が原料となるのでバイオエタノール等の作物を原料として使用するバイオ燃料よりも資源の制約が少なく、既存の処理施設を改造する等、比較的少ない投資で実現可能である。また、下水処理施設等で生成されるメタンガスは地球温暖化の原因ともなっており、有効利用することによって一石二鳥の効果が見込まれる。
バイオ水素は水素生産菌や光合成細菌によって生成されるバイオガスである[29][30][31][32]。シロアリの消化器官内にいる共生菌の中には水素を生成する菌がいる事が確認されている[33]。
植物由来のあらゆる廃材を高温高圧で石炭に似た物質に変化させ、固形燃料として利用する。発酵を伴わず製造時の廃材のエネルギー損失がほぼ0で、原材料と比べ体積が5分の1以下になり、化学的に安定しているなど様々な利点がある。コークスの代替として既に実証段階に入っている。
バイオ燃料が普及する、あるいは増産するに当たり、以下の課題が存在している。
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