出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/05/25 13:18:35」(JST)
エウロパ (ユーロパ) |
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エウロパ(ガリレオ探査機撮影)
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仮符号・別名 | Jupiter II, J 2 | ||||||
視等級 (V) | 5.3(平均) | ||||||
軌道の種類 | ガリレオ衛星 | ||||||
発見 | |||||||
発見日 | 1610年1月7日 | ||||||
発見者 | ガリレオ・ガリレイ (シモン・マリウス) |
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軌道要素と性質 | |||||||
平均公転半径 | 670,900 km | ||||||
近木点距離 (q) | 664,862 km | ||||||
遠木点距離 (Q) | 676,938 km | ||||||
離心率 (e) | 0.009 | ||||||
公転周期 (P) | 3 日 13 時間 13.7 分 (3.551 日) |
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軌道傾斜角 (i) | 0.470 度 | ||||||
木星の衛星 | |||||||
物理的性質 | |||||||
赤道面での直径 | 3,138 km | ||||||
表面積 | 3.090 ×107 km2 | ||||||
質量 | 4.800 ×1022 kg | ||||||
木星との相対質量 | 2.526 ×10−5 | ||||||
平均密度 | 3.01 g/cm3 | ||||||
表面重力 | 1.314 m/s2 (0.135 G) |
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脱出速度 | 2.025 km/s | ||||||
自転周期 | 3 日 13 時間 13.7 分 (公転と同期) |
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アルベド(反射能) | 0.67 ± 0.03 | ||||||
赤道傾斜角 | 0.1 度 | ||||||
表面温度 |
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大気の性質 | |||||||
大気圧 | 1 ×10−6 kPa | ||||||
酸素 | 100 % | ||||||
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エウロパ (Jupiter II Europa) は、木星の第2衛星。2007年までに発見された衛星の中で内側から6番目の軌道を回っている。ギリシア神話の、ゼウスが恋に落ちたテュロスの王女エウローペーにちなんで名づけられており、そのラテン語形である。英語読みからユーロパとも表記される。なお、同名の小惑星 (52) エウロパも存在する。
この衛星はガリレオ・ガリレイによって発見されており、そのためイオ、ガニメデ、カリストとあわせてガリレオ衛星と呼ばれている。
比較的明るい衛星で、双眼鏡でも観察できる。
表面は少なくとも厚さ3km以上の氷で覆われており、所々にひび割れが走っている。イオの次に木星に近く、公転周期がイオの2倍、ガニメデの半分という軌道共鳴の状態にあるため、強い潮汐力の変動に晒されている。その潮汐力で発生する熱によって表面の固い氷層の下は深さ数十から百数十kmにわたって氷が融け、シャーベット状ないし液体の海になっており、地球の海洋深部にあるような熱水噴出孔も存在すると考えられている。生命が存在する可能性も示唆されている。
内部海の存在は、内部の熱的状態に関する理論的計算によって1970年代には既にそれを予想する説が出されていた。1990年代に行われたガリレオ探査機による調査では、エウロパの表面に氷が一度割れて再び固まったような地形が発見され、海の存在を強く想起させるものとして注目を集めた。
エウロパの表面を覆う氷は、潮汐力によるエウロパ自体の歪みのために裂け目が出来たり塞がったりを繰り返しており、「リネア(Lineae, 線状地形)」や「マキュラ(白斑)」のような独特の地形が多い。一方でクレーターは少なく、古いクレーターは侵食などによって消滅したと考えられている。これらの地形はギリシア神話とケルト神話、およびイギリス各地の新石器時代に作られた巨石記念物が残っている場所などから名付けられている。
エウロパは、惑星探査計画における調査対象天体の最有力候補のひとつとされている。かつてはアメリカ航空宇宙局 (NASA) が、エウロパを観測する周回衛星エウロパ・オービターによる探査計画を予定していたが、NASAの予算削減に伴い打ち切られた。続いてエウロパを含む4つのガリレオ衛星を重点的に調査するJIMO (Jupiter Icy Moons Orbiter) 計画も提案されたが、同様の理由で頓挫した。しかしこれはエウロパへの惑星科学的興味が失われたわけではない。
2007年には、欧州宇宙機関 (ESA) が将来の宇宙探査ミッションの候補の一つとして、NASAとの共同による、エウロパを中心とする木星圏探査ミッション「EJSM計画」を選定した。将来的には、エウロパ表面全体の高解像度地図の作成、氷の厚さの測定、氷の下の「海」の存在の確認、などを目標とした探査が期待される。
また2009年、NASAは次期惑星探査ミッションの第一候補としてエウロパ探査を選定している。2020年の打ち上げ、2025年末~2026年初頭の木星への到達、4つの衛星をフライバイして2028年にオービターがエウロパの周回軌道へ入る計画である。
氷に覆われた海は南極のボストーク湖[1]に近い環境であると推測されており、生命が存在する可能性が指摘されている。そのような環境に存在する生命は、地球の深海に存在する生命に近いものであると推測される[2]。エウロパにおける生命の存在はまだ確認されていないが、水の存在は、探索のための大きな動機となっている[3]。
1970年代まで、生命は、少なくとも一般的に理解される概念としては、太陽からのエネルギーに完全に依存していると考えられていた。地球表面の植物は太陽光のエネルギーをもとに、二酸化炭素と水から炭水化物を光合成し、その過程で酸素を放出している。酸素は動物の呼吸に使用され、そのエネルギーは食物連鎖へと繋がっていく。たとえ太陽光の届かない深海の生命であっても、表層から降り注ぐ養分の雨や、それを摂取した動物から養分を取り入れており、地球が生命を維持できるのは太陽光のためであると考えられていた[4]。
しかし、1977年、深海探査艇アルビン号によるガラパゴス海嶺の探索では、ジャイアントチューブワーム、貝類、甲殻類など、さまざまな生物がブラックスモーカーと呼ばれる熱水噴出孔の周りに群生しているものが発見された[4]。これらの生物は太陽光がまったく届かないにもかかわらず繁殖しており、また後に解明されたところによると、まったく独立な食物連鎖を形成していた。この食物連鎖の基盤は植物ではなく、化学物質の酸化反応からエネルギーを得ていたバクテリアだった。これらの化学物質とは、水素や硫化水素などであり、地球内部から噴出していた。このようなエネルギー合成システムを化学合成という。これは生命の研究において革命的な発見であり、生命には必ずしも太陽は必要ではなく、水とエネルギーがありさえすればよいということが明らかになった。また、この成果は宇宙生物学にも新たな道を開き、地球外生命の存在可能性を著しく広げることになった。エウロパの光の届かない海洋は、21世紀初頭において、太陽系の中でも最も地球外生命の存在が期待されている[5]。
化学合成のプロセスが発見されたのは地球だが、これはエウロパの生命モデルの可能性として有力である。しかし、このようなエネルギー源では、地球表面の光合成を源とする生態系のように、広範で多様な生態系を形づくることはできない[6]。エウロパでは、地球の熱水噴出孔のような熱源の周りに群生するか、地球の極地に生息する藻類や菌類のように、氷層の下部にすがりついて生息することしかできない。海洋に漂って生息することも考えられる[7] が、もし海洋の温度が低すぎれば、地球のような生命プロセスは進行しない。また、もし塩濃度が高ければ、極端な好塩菌しか生息することができない[7]。
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リンク元 | 「木星」「イオ」「カリスト」「ガニメデ」「Europa」 |
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