コショウ |
コショウの植物と果実
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分類 |
界 |
: |
植物界 Plantae |
門 |
: |
被子植物門 Magnoliophyta |
綱 |
: |
双子葉植物綱 Magnoliopsida |
目 |
: |
コショウ目 Piperales |
科 |
: |
コショウ科 Piperaceae |
属 |
: |
コショウ属 Piper |
種 |
: |
コショウ P. nigrum |
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学名 |
Piper nigrum |
和名 |
コショウ |
英名 |
pepper |
コショウ(胡椒、学名:Piper nigrum)は、コショウ科コショウ属のつる性植物、または、その果実を原料とする香辛料のこと。インド原産[1]。味は辛い[2] 。
目次
- 1 種類
- 2 歴史
- 3 産地
- 4 栽培
- 5 近縁種
- 6 文学に現れる胡椒
- 7 薬用
- 8 脚注
- 9 文献情報
- 10 関連項目
- 11 外部リンク
種類
収穫のタイミングや製法の違いにより以下の4種類が存在する。 ピペリン (piperine) という化学物質が胡椒に独特の風味を与える。
- 黒胡椒
- 別名『ブラックペッパー』とも呼ばれ、胡椒の木から取れた完全に熟す前の実を乾燥させたものである。世界中のどんな地域を旅しても、塩の隣にブラックペッパーの小瓶が並んでいると言われている。強い独特の風味があり、特に牛肉との相性が良い。
- 白胡椒
- 別名『ホワイトペッパー』とも呼ばれ赤色に完熟してから収穫した後、乾燥させた後に水に漬けて外皮を柔らかくして剥いたものである。ブラックペッパーより風味が弱く魚料理と相性が良い。薬用には一般的にこれが使われる(後述『薬用』節を参照)[1]。
- 青胡椒
- 実が熟していない状態で収穫し、塩漬けまたは短期間で乾燥したもの。「爽やかな特徴のある辛み」があり、肉料理や魚料理との相性が良いとされる[3]。タイ料理やカンボジア料理では、香辛料としてではなく、実を炒め物の「食材」として利用する。なお、別名として『グリーンペッパー』とも呼ばれるが、これはピーマンを指す場合もあるので注意が必要である。
- 赤胡椒
- 赤色に完熟してから収穫するが、ホワイトペッパーと異なり外皮をはがさずにそのまま使用する。ペルーなど南アメリカの料理で使用されることが多く、マイルドな風味であり、また色合いもよい。別名は『ピンクペッパー』と呼ばれる。なお、代用品として南アメリカ原産のウルシ科の植物「コショウボク」の実が『ピンクペッパー』の名前でインドやカンボジアなどで使用されることがあるが、別名「ポブレ・ロゼ」とよばれるこの実は正確にはコショウではない[4]。また、セイヨウナナカマドやサンショウモドキの実とも酷似している。赤胡椒を直訳すると『レッドペッパー』であるが、これは唐辛子のことをさす。
胡椒は、粉に挽いたものや、さらに塩と混ぜた「塩コショウ」として売られているものが多いが、本来の風味を愉しむなら、ペパー・ミルで、使うたびに挽くのが理想的である。ペパー・ミルは、使い捨ての「ミル付きコショウ」から、円筒形のボディに擬宝珠のようなハンドルの付いた、木製のデザインに優れた芸術品まで、いろいろな種類がある。
歴史
コショウは古代からインド地方の主要な輸出品だった。紀元前4世紀の初め頃、古代ギリシアの植物学者テオフラストゥスは『植物誌』の中でコショウと長コショウを考察している。コショウは当時から貴重で、紀元1世紀のローマの歴史家大プリニウスは1ポンド(約500グラム)の長コショウの価値は15デナーリ、白コショウは7デナーリ、黒コショウは4デナーリと記録している。古代の地中海世界では長コショウが成熟したものが黒コショウになると考えられており、その間違いは16世紀にガルシア・デ・オルタによって改められるまで続いた。
胡椒は、ピペリン(piperine)による抗菌・防腐・防虫作用が知られており、冷蔵技術が未発達であった中世においては、料理に欠かすことのできないものでもあり、大航海時代に食料を長期保存するためのものとして極めて珍重された。ヨーロッパの様々な料理に使われており、またその影響を受けた様々な料理でも使われている。このため、インドへの航路が見つかるまでは、ヨーロッパでは非常に重宝されていた。十字軍、大航海時代などの目的のひとつが胡椒であったという見方もある[6][7][8]。その取引における高値のさまは、1世紀のローマにおいて金や銀と胡椒が同重量で交換されたかのような表現もされ[9]、 中世ヨーロッパにおいては、香辛料の中で最も高価であり、貨幣の代用として用いられたりもした[10]。この代用は実際に金と胡椒が同重量で交換されたといわれ[8]、輸入をしていたヴェネチアの人々は胡椒をさして「天国の種子」と呼び、価値を高めることもしていたという[11]。
ゲルマン部族のリーダー(西ゴートの王)であったアラリック1世はローマ帝国に侵略を控える代わりに金、銀、そして胡椒を貢物として要求した(もっとも最終的には胡椒も街も略奪されてしまったという[12])。
中国では西方から伝来した香辛料という意味で、胡椒と呼ばれた(胡は中国から見て西方・北方の異民族を指す字)。日本には中国を経て伝来しており、そのため日本でもコショウ(胡椒)と呼ばれる。 天平勝宝8年(756)、聖武天皇の77日忌にその遺品が東大寺に献納された。その献納品の目録『東大寺献物帳』の中にコショウが記載されている。当時の日本ではコショウは生薬として用いられていた。コショウはその後も断続的に輸入され、平安時代には調味料として利用されるようになった[13]。
トウガラシが伝来する以前には辛味の調味料として現在よりも多用されており、うどんの薬味としても用いられていた。現在でも辛味の調味料としてさまざまな料理に用いられている(「胡椒茶漬け」という料理があったという記録もある)。 日本の九州北部地方をはじめ各地で、南米原産の唐辛子の事を「胡椒」と呼ぶ事がある。主に九州北部にて製造される柚子胡椒などは唐辛子を使って作る。P. nigrumは「洋胡椒」と呼び区別する。
産地
原産地はインド南西マラバール地方[1]。 現在ではインド・インドネシア・マレーシア・ベトナム・スリランカ・ブラジル・カンボジアが主な産地[14]。
栽培
通常は接木栽培であり、種から発芽させることは非常に困難である。高さは5〜9メートルに達し、木質になるつる茎は、支柱などに巻きつけ生育させる。さし木3年目から少しずつ花房をつけはじめ果実をつける。果実はひと房に50〜60個で7〜8年で最盛期を迎え、以降15-20年間収穫できる。1本のつるからの乾物年収量は約2kgである[14]。
連作障害があり土壌により植物寄生性線虫が発生したり[15]病害などにかかりやすく、南米での栽培では壊滅的な打撃が発生したことがある[16]。胡椒栽培は肥料代や労力のわりに価格が安く、放置される農園もある[17]。
近縁種
同じコショウ属に属する東南アジア原産のヒハツモドキ(P. retrofractum)も沖縄などで古くから香辛料として使われる。なお、ヒハツモドキと形状の似ているヒハツ(P. longum、長コショウ)はかつてはヨーロッパにおいてコショウと概ね混同されてはいたものの同様に利用されていた。
日本本土ではフウトウカズラ(風藤蔓、P. kadzura)が神奈川県・千葉県以南各地の海岸近くに自生するが、用途はない。
文学に現れる胡椒
薬用
成分としてアルカロイドに分類されるピペリンが含まれており、薬効を期待した薬膳料理に使用される[1]。効能としては消化不良、嘔吐、下痢、腹痛などの症状に対して[1]、また、抗がん作用、抗酸化作用[18]もあるとされる。ダイエット用などのサプリメント、他の成分の吸収率を高めるなどの効果があるとして健康食品にも使用され [19] [20] [21] 、一緒に摂取した医薬品の作用を増強することも報告されている[18]が、多量に摂取した場合に他の医薬品と相互作用を示すことから、健康被害が発生する可能性を否定できず注意が必要ともされる[22]。
脚注
- ^ a b c d e 難波 2000, p. 105
- ^ P.122。塩辛さとは違う辛さ。太田静行他 (1983), “鹹味に及ぼすコショウの影響” (PDF), 調理科学 (一般社団法人日本調理科学会) 16: 122-126, ISSN 09105360, NAID 110001171688, NCID AN00382866, http://ci.nii.ac.jp/naid/110001171688
- ^ “グリーンペッパー(青胡椒)”. GABAN (2004年). 2013年6月23日閲覧。
- ^ 中公新書「香辛料の民俗学」P115。
- ^ 高橋 1990, p. 247
- ^ 大航海時代のポルトガルの例。高橋 1990, p. 269
- ^ a b ハウス食品 1999, 「スパイスは貴重品だった!」節
- ^ 高橋 1990, pp. 249-250
- ^ 高橋 1990, p. 251
- ^ 高橋 1990, p. 252
- ^ 年表の注1より。"ローマ人は街を略奪しない代償として、1200kgのコショーを支払ったが、効果はなく、コショーも街も略奪されてしまった。"ハウス食品 1999, 「年表」
- ^ 鈴木晋一 『たべもの噺』 平凡社、1986年、pp.68-69
- ^ a b 日本胡椒協会. “胡椒の産地・種類”. 2015年6月閲覧。
- ^ 「ドミニカ共和国の胡椒栽培における植物寄生性線虫(植物線虫)」日本応用動物昆虫学会大会講演要旨[1]
- ^ 「ブラジル移民の100年 アマゾンのアグロフォレストリ」[2]
- ^ 大阪府社会科研究会HP「胡椒栽培と放置胡椒園」[3]
- ^ a b 長谷川貴志他 2010, PDFの1枚目
- ^ "他のサプリメント成分の吸収率を高めるなどの効果があるとして、いわゆる健康食 品の原材料として用いられている。"長谷川貴志他 2010, PDFの1枚目
- ^ ダイエット効果として。“脂肪燃焼系”. jimbo ClinicSendai (2009年). 2013年4月7日閲覧。 “ダイエット効果の高い辛み成分ピペリン”
- ^ サプリの例。“ダイエットパワー(刺激物なし)”. Boston Vitamin. 2013年4月7日閲覧。 “黒コショウ(ピペリン9%含有)100mg”
- ^ 長谷川貴志他 2010, PDFの3枚目
文献情報
- 「胡椒貿易と植付」大阪新報1921.2.8(大正8)(神戸大学附属図書館)[4]
- 「胡椒:その栽培から利用まで」後藤隆郎(国際農林業協力協会編1983.2.)書誌情報[5]
- 高橋保 『16世紀初頭までの南アジア・東南アジアにおける胡椒の生産と貿易』、1990年、247-272頁。 NAID 120002815816。 NCID AA1080427X。http://hdl.handle.net/10623/25363。
- 難波恒雄 「薬膳原理と食・薬材の効用(2) : 薬膳に用いる身近な食物」、『日本調理科学会誌』 (日本調理科学会誌) 第33巻100-106頁、2000年。 NAID 110001170018。 NCID AN10471022。http://ci.nii.ac.jp/naid/110001170018。
- 長谷川貴志他 「黒コショウを含有したいわゆる健康食品におけるピペリン含有量について」 (PDF)、『千葉県衛研年報』 (千葉県衛生研究所医薬品研究室) 第59巻70-73頁、2010年。http://www.pref.chiba.lg.jp/eiken/eiseikenkyuu/iyakuhin/documents/59tanpou2.pdf。
- アンドリュー・ドルビー; 樋口幸子訳 『スパイスの人類史』 原書房、2004年。ISBN 4562038004。
関連項目
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ウィキメディア・コモンズには、コショウに関連するカテゴリがあります。 |
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ウィキスピーシーズにコショウに関する情報があります。 |
外部リンク
- 胡椒の産地・種類 日本胡椒協会HP
- ハウスの出張授業
- ハウス食品 『歴史の中のスパイス(その1)』、1999年。http://housefoods.jp/activity/shokuiku/taiken/spice-world/history.html#valuables。
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