出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/01/01 20:43:05」(JST)
この項目では、一般的意味におけるクレームについて説明しています。
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クレーム(クレイム、英語: claim) はサービスに対する苦情や改善要求、契約或いは法上の権利請求を指す外来語。損害賠償請求やごり押し等による不当な強迫要求や請求の意味で用いられる場合もある。原語では正統な権利主張または請求の意味合いが濃く、苦情や不平については別の語('complaint')が対応する。
本来のクレームでは、自身の被った損害を説明して、その損害に対して責任のある相手に、損害の補償を要求することが挙げられる。例としては機能上で不備のある商品を購入してしまった際に、その製品を製造・販売しているメーカーに不良品を正常な製品と交換してもらうために交渉する行為などが挙げられる。企業間では、契約に違反した際の損害賠償請求を含む。
クレームは消費者や顧客が自身の被った不利益や損害に対する対応をしてもらうためになされることが多い。企業内では気づくことのできない自社の製品やサービスの潜在的な欠陥によって顧客に不都合を生じている場合、クレームがなければ企業側には原因が分からないままに顧客離れ(他社の製品やサービスへの切り替え)が進むおそれもあることから、近年では企業内に消費者からのクレーム部門と担当部署との意思疎通を積極的に図ることによって早期に製品やサービスの改善に対処するシステムを積極的に導入する企業も増えている。
このようにクレームによって製品やサービスの向上が図られることもあるが、その反面、度が過ぎたクレームをつける人が注目されていることもあり、本来であれば顧客側からの要望といった程度のクレームであっても、企業側あるいは企業の従業員の側からは悪意を含んだ要求と受け取られる可能性もある。
クレームはしばしば製品やサービスに不良品のような不具合ないし不足があった場合、または企業の活動に伴う「騒音」等の公害といった社会(およびこれを構成する個人)の側と企業間とのトラブルによって発生しうる。企業が顧客に対して行なった強引な営業手法に起因する混乱や不信感もクレームの原因となり得る。強引な営業手法としては、悪徳商法で問題視される脅迫や詐欺等の明確に違法なものがある。このようなケースでは、クレームをつけられた側に非があると判断されることが多い。
明確な非が、クレームをつけた側、つけられた側双方に見つけにくいタイプのクレームも存在する。 この種のクレームは、
等のように、契約の曖昧さ、心象の問題の双方が絡む問題である[1]。
また、事例も多岐にわたるが、「非の所在」、「非の有無」を含め、議論が平行線になる傾向がある。
また、個別事案における結論についての予見可能性が低く、必ずしも安定した法の適用ができないという問題がある[1]。
そのため、契約一切に関して、「何がどのように問題になり、誰が責任を負うべきか」に関するリストの集約が求められる[1]。
このような「クレームの原因」ではあるものの、必ずしも違法とは言い難いものに関しては、企業側にもクレームを避ける上で「有利誤認、優良誤認あるいはそれに準じる事態を避ける努力」が要求されると同時に、消費者側にも「宣伝で悪い部分を強調することは、ない」ことを考慮して、必要となる仕様、要求を購入前に明確にした上で、購入をすることが求められる。もっとも、有利誤認、優良誤認は、度が過ぎれば公正取引委員会より排除命令を受ける[2]。
マーケットクレームの一例として、最近では、意図的に有利誤認、優良誤認をさせた上で、顧客側が誤認によって損をした後になって個別に「それが客側の誤認であることを強調する」手口がよく報告される[3][4][5]。
誇大広告、有利誤認の例としては、携帯電話、不動産の契約[6]、宣伝形態が最近よく話題になる。 例えば、携帯電話では移動体通信の端末の販売と通話回線の契約形態などといった複雑な構造から損得・利害関係が判り難い側面もあり、これが混乱を招いて企業と顧客間の諍いに発展する場合もある[7]。
具体的には携帯電話契約における「全機種¥0 分割払いで『¥0』」のような誇大広告や、不動産賃貸物件で契約撤回が不可能、あるいは極めて難しい状態になった後に「月々の家賃のほかに毎年入館料(更新料)が必要」であるとか、割賦販売における「携帯電話は実質0円で違約金もありませんが、2年以内に解約すると7万円の月賦が残ります」などのように、契約を取り交わした後で顧客に不利な情報を説明し始めるなどの不誠実な対応が問題視される。不安になるような事柄に関する説明不足としては、料金の引き落とし(クレジットカード等)の仕組みや、そのタイミング等が明確になっていない、あるいは残高不足等で引き落としが出来なかった場合等のイレギュラーだが起こりえないとは限らない事柄へのペナルティや対応方法、支払方法等が明確に説明されていないケース等について、ネット上で相談が書かれることが多数ある。
暗黙の期待、あるいは顧客側が暗黙の了解事項と思っていたことに関するクレームもある[8][9]。
つまり顧客側が「まさかこの機能/サービスが勝手に追加/削除されることはないだろう」と思っていたことや、「本来あるべきだと顧客側が思っていた機能や表示、サービスがない場合/なくなった場合」[8]、その他「まさかそんなことにはならないだろう」ということが起こり、顧客が想定できなかった問題によって顧客が準備ができないままいやな思いをする場合にもクレームに発展することがある。顧客側にとって「まさかそんなことにはならないだろう」ということが起こったケースとしては、例えば、ある通信販売業者において、「ほしいものリスト」という「個人の私的な備忘録」を思わせる名前のリストが、実は、契約上は、通常設定では全世界に対して自分の「ほしいもの」を公開してしまう機能であったことから、気付かないうちに個人の趣味・嗜好といったものが公にされてしまう事態に至り、クレームの嵐が起こりまた、有名人のプライバシーがネット上にさらされる結果となった事例がそれにあたる[9]。
その根底にはそのような誤解をうけさせるようなキャッチコピー、名称などに反した予想外のことが起こり混乱することに加え、顧客側の過度な期待もある。過度の期待の例として、契約上は厳密な意味が存在するが、日常語の範囲では、意味が多様に存在する場合である。例えば、航空機の予約における「シャトル往復の未使用」がそれにあたる。未使用は日常語では「往路のみの使用の場合は復路分は未使用」という言い方をするが、往路分を使った場合には扱い上は「使用済み」となる。このことを知らなかった利用者が「復路の予約(オープン予約を含まない)時に電話が繋がらず、復路のキャンセルが出来なかった上、往路を使っていた為、未使用でもない。結果、券がただの紙切れになってしまった」というケースが発生する。この場合騙されたに近い印象を受けることになり、利用者の行動は良くて二度と航空機を利用しなくなるか、最悪の場合クレームへと発展する。 また、「安請け合いは当然」「納期は絶対に守らない」といった信頼以前の企業もあり、商社マンや資材部は、クリティカルパーツ[10]の調達の関係上、このような会社からの資材を調達を代行することもある。その際に業者の特性を一つ一つ記録に取り、商社側から見て客に当たる側には迷惑がかからないよう様々な工夫をしている[11]が、個人では業者の特性を一つ一つ分析して、比較検討をした上で、物の流れに問題が生じないように工夫することは困難である。このように特性の把握が困難な会社との取引もクレームの対象となる。
上記のケースはいずれも違法とは言えず、「消費者が内容を十分理解しきれないまま契約してしまったこと[12]」とみなされる傾向もあるが、一方で業者によっては説明する側の「従業員の質」や「説明すべき内容が複雑過ぎること」、あるいは「意図的に混乱を誘起し、有利誤認を起こさせるような広告戦略」等、以下にあげるような傾向が指摘されるケースがある[13]。
このような状況が慢性的に続いているとされる業者相手では、新聞記者等の取材のプロが、「分かりやすく説明してもらった」と判断するケースですら、本来簡単であるはずのことで合理的な説明を得るまでに20分以上かかることがあり[13]、まして素人が合理的な説明が得られまで粘った場合は企業の従業員を長い時間にわたって拘束することになりかねない。また説明を顧客側が理解ないし憶えきれなかったりすることや、場合によっては従業員側が質問や解答を理解できないまま話をするなどから、「言った言わない」を繰り返し、顧客が完全な納得をするまで問答を繰り返せば、悪質なクレーマー同様あるいはそれ以上に関係者側に精神的な苦痛を与えてしまう可能性すらある。さらに、時間をあけて再度ということになると、今度はサイズすら整っていない散逸した契約書や資料と闘うことになり、余計に混乱の原因になる。
クレームをつける消費者を「クレーマー」と呼ぶ。日本では度が過ぎたクレームをつける消費者を「クレーマー」と呼ぶこともある。クレーマーは、2000年代後半頃に徐々に注目を浴びるようになった。背景には、以下の要因が指摘されている。
インターネット(常時接続)、携帯電話の発達により、消費者の「モノを言う」場と手段が広がった[14]。
常時接続が地方に普及する前の時期では、消費者が企業への苦情は企業が設けたサポートセンターなどの電話のみで、なおかつフリーダイヤルは、ほぼ皆無であった。そのため、企業が用意した型に沿ってしか対応をしてもらえず、また苦情を言うためのコスト(時間、通話料金)が高く、他の消費者へ苦情の内容が伝わる事が出来無かった(フリーダイヤルであっても、通話に時間を要することは変わらない)。しかし、インターネットと常時接続の普及により、消費者苦情の環境が変わる。電子メールは、電話よりも遙かに効率的に企業の消費者対応部門や幹部へ多数の苦情を送りつけることができ、動画サイトやブログは、多くの消費者へ苦情の内容を伝えた。特に文字と違い、動画や写真を添付すればインパクトが強く、強力な武器となった。携帯電話の発達は、場所を選ばずに情報を集め、苦情を言うことができるようになった。
消費者は「企業は消費者の支払った金で生き延びている」という意識がある。さらに、雇用問題や資産問題で生活が不安定になっているときに、何か苦情を言おうとして企業へ問い合わせたら定型的なやりとりで延々と待たされれば、不満も爆発しやすくなる。一方企業側の意識は、詐欺や返品に対し防衛的になっている。
なお、クレーマー問題に対しては苦情を述べる側がクローズアップされ、それらのケースでも事件に発展するなど深刻化している場合では報道においてもえてして企業側に同情的な内容に落ち着きがちである。その一方、インターネット上のサービスの発達は、企業側の従業員(パートやアルバイトなど末端の接客担当者を含む)が常軌を逸した客を揶揄する形での言説を広めてしまうケースも見られる。これはことクレーム問題だけに限定されない傾向ではあるが、2000年代に入ってはブログやTwitterなどで不用意に書き込まれた内容や写真などから炎上したケースもみられる。
弁護士の横山雅文らによると以下の5種に分類される。
同語が日本国内に於いて広く一般に知られたのは、1999年に発生した東芝クレーマー事件である。同事件では報道を見た一般の視聴者に「要求者=クレーマー」ではなく、「理不尽な要求をも辞さない請求者」であると認識させてしまった。なお「クレーマー=理不尽な請求者」という認識は、東芝側の通常対応不能な総会屋などを主に担当する「渉外監理室(警察OBなどからなる)」という部署の担当者による発言の中にみられ、同担当者の認識がそのような形であったとみられている。これに関しては報道側の取り上げ方にも問題があったと思われるが、この録音の一部がテレビでも放送され、視聴者が威圧的な態度の東芝担当者側の横柄な態度が感じられる声に反発、同社への非難や不買運動に走った点も問題視されている。また同事件では、関係者らの応酬で常識から逸脱した対応が行われたとする報道も見られ、今日でも「ごね得(しつこく要求を繰り返せば、少々の無茶も通る・大企業をも屈服させられる)」といった認識を世間に与えてしまった感も否めない。同事件報道以降、暫くは消費者による「インターネット上のウェブサイトで企業を告発する」という活動が目立つようになり、この中には多額の金銭を要求するものや関係者を論う(消費者側の不利な情報は伏せて、企業側の欠点を並べ立てるなど)ケースも発生、逆に名誉毀損で訴えられたサイト設置者も見られた。
しかしその一方で、一見不当と思われる請求にも、よくよく話を聞けば、少なくとも請求者自身はもとより、企業側でも妥当だと考える妥協点が存在すると共に、それらの人々が発見し、また一般にはまだ表面化していない製品の問題点に関する情報が含まれるとみなされるようになってきている。一概にクレーマー(不当な請求者)であると無下に扱わず、責任の取れる担当者がきちんと対応することで、消費者の視点ではかろうじて問題提起できるが、メーカー側には全く見えていなかったビジネスチャンスが発見できると考える人もある[16]。
往々にして人は不利益を被ると、感情的になりやすい。このため企業のサポート側では感情的な電話が掛かる率が非常に高いと言える。その一方で、本当に不当で病的にクレーム請求をしてくる人も含まれる。この場合、無条件に相手の提示した案に応じると他の顧客が不当に差別されている状態を作り出してしまう。そのため、クレーマーを有効的に活用するためには関係部署にクレーマーの話に耳を傾けて公正な判断を下し、その判断を他の部署と折衝して適切に推し進められる人を配する必要がある[17]。
そのような理由により、建設的な思考の企業の顧客相談窓口の部署では、応対マニュアルの整備や適切な人員の選択に注意を払うとともに、一定の企業内に於ける発言権が確保されている。脅しによる不当要求があればただちに刑事告訴をするなど毅然とした対応が必要である。
クレーマーが常習化することで、関係者が事件を起こしたケースがある。また不当な請求という問題も多方面で発生している。
こういった不当要求は何も今に始まったことではなく、暴力団が組織的に企業を狙い撃ちして商品に因縁をつけて金品を脅し取るということは昔から存在していた。また、食堂において、意図的に自分の髪の毛をラーメンや蕎麦に入れて、「髪の毛が入っている、タダにしろ」というような、食事代を無料にするような不当要求も以前から存在していた。しかし、クレーマーが一般化し、悪質化している現状はここ最近とみによく見られる。中には暴力団の名前を出して不当要求を行ったり、たとえ業者側に落ち度や瑕疵がなくても、お詫びの品やサービス目当てにクレームをつけるいわゆる「プロクレーマー」もいる(なお指定暴力団の不当要求は暴対法により禁止、処罰の対象になる)。
2003年に東急不動産の物件を購入した者が隣地に建造物が建つことは知らなかったとして訴訟を起こし、原告の実質敗訴となった案件に関して、原告が東急不動産ならびに関連企業である東急コミュニティー、また、当時の販売担当者の転職先であるアソシアコーポレーションに対する誹謗中傷サイトを無数に立ち上げ、各社の営業を執拗に妨害するという事件が発生した[18]。なお当事件は現在でも進行中である。
2004年9月に因縁を付けてきた客に対しストレスを感じていた牛丼チェーン店の店長が、日常的にクレームを行っていた客を刺殺するという事件が発生している。同事件では弁当注文の際に「水を出されなかったこと」や「弁当が横になっていた」として被害者が前日より十数回立て続けに電話で苦情を述べ、他にも別のクレームで8月末頃より同店長をたびたび自宅へ呼び付け謝罪を要求するなど、トラブルが続いていた。このトラブルで頻繁にクレームをつける被害者に腹を立てた加害者が、刃物で十数か所を刺して殺害している。後日加害者店長は殺人容疑で逮捕・起訴され懲役10年が確定している。
2007年には、広島県に住む男が全国34都道府県の企業にクレームをつけ、お詫び品や見舞金の提供金品を「詐取」した容疑で逮捕されている(男は「企業が善意で渡した品をもらって何で罪になるんだ」と容疑を否認)。
2010年には、三重県で中学の長男が校内でけがをしたことに言い掛かりをつけ、教諭らから現金を脅し取ろうとしたとして、男が恐喝未遂の罪に問われ、地裁は25日、懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。判決理由で裁判官は「執拗に教諭らの自宅のインターホンを鳴らすなど、迷惑を全く省みない犯行で悪質」と指摘。判決によると、市立中に通う長男が部活動の休憩時間に傷を負ったことに因縁をつけて、校長や部活動の顧問の男性教諭宅に無断で押しかけ、「タクシー代がかかった」、「マスコミや議員に全部ばらす」などと怒鳴った[19]。
2015年には、パン店やケーキ店など全国の約1,200店に「髪の毛が入っている」などの内容の虚偽のクレームの電話を約7,000回に亘ってかけ、商品や現金などを騙し取っていたとして、兵庫県警察が伊丹市在住の無職女性を詐欺容疑で逮捕している[20]。
前述にもあるが、クレーム=理不尽な要求と断定するのは危険極まりない行為である。 利益機会の損失のみならず、対応によってはその後の会社活動に悪影響を及ぼす可能性もあるため 顧客の要求の内容、自社/スタッフの対応内容、お互いの正当性を客観的に十分検討の上で対応方針を決定する必要がある。
反社会的勢力による理不尽な要求、または会社/個人への過度な暴言、身体的な脅迫があったり、要求の度を過ぎる場合には 該当の内容は法に触れる恐れがあること、記録に残すこと、専門機関への対応依頼や、結果によっては法的手段に及ぶ場合があることを「確実に」宣言する この宣言が客観的に証明できない、また記録に残っていない場合は弁護士、法機関へ依頼を行うことは難しい。
内容証明郵便などを用い、記録に残る形で警告を行う。警告したにも関わらず不当な要求が改善されない場合は 契約解除を行うこと、これ以上の検討は行わない旨を内容証明郵便にて通知する。
上記にも関わらず不当要求が止まらない場合、業務妨害として警察に被害届を提出する。 また、社員の長時間に渡る拘束や、出張に関わる経費などの損害が発生している場合は 弁護士を経由しての民事訴訟も視野に入る。
教育の場では、一部の保護者が学校に対し理不尽な要求をするケースも見られる。これらは、通称「モンスターペアレント」と呼ばれる。
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