- 英
- celiothelioma, peritoneal mesothelioma
- 関
- 中皮腫
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/02/15 10:59:45」(JST)
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中皮腫(ちゅうひしゅ、英: Mesothelioma)とは、中皮細胞由来の腫瘍の総称である。悪性のもの、良性のものの双方がある。
発生場所は胸膜が多く、悪性胸膜中皮腫(PMM; Pleura Malignant Mesothelioma)として知られている。
目次
- 1 種類
- 2 疫学
- 3 病理
- 4 臨床像
- 5 検査
- 6 治療
- 7 予後
- 8 関連項目
- 9 外部リンク
 
種類[編集]
主な発生部位は以下の通り。
- 胸膜(Pleura):胸膜中皮腫(70%)
- 腹膜(Peritoneum):腹膜中皮腫(20%)
- 心膜(Pericardium):心膜中皮腫(0.5%)
肺癌の一種と説明する人がいるが、肺ではなく胸膜にできるものである。
疫学[編集]
多くの場合、石綿(アスベスト)曝露が原因とされている。青石綿(クロシドライト)や茶石綿(アモサイト)が白石綿(クリソタイル)より発癌性が高いと考えられている。
曝露から発病までの期間は、一般的に30~40年くらいといわれる。詳しい原因追求はいまだ待たれているが、吸い込んだアスベストによってなどに惹起されたインターロイキン6(IL-6)を中心とした炎症が中皮の腫瘍化を促進すると考えられている。
アスベスト被曝は職業上のものが圧倒的である(職業曝露)。しかし、アスベストを取り扱う事業所の近隣住民や、アスベストを取り扱う労働者の家族(労働者の衣服に付着したアスベスト被曝と推測される)にも患者が出ており、これらについてもアスベストとの関連が強く疑われる(環境曝露)。 近年は低濃度環境曝露の方が高濃度職業曝露よりも発癌性が高いと考えられている。
しかしながら、ごく少数ではあるが、アスベスト被曝の可能性が考えにくい群にも悪性中皮腫が認められることがあり、アスベストだけが単一の原因でないことが推測される。実際、凝灰岩などに含まれる沸石の一種エリオン沸石(Erionite)も同様に中皮腫を引き起こすことがカッパドキアやアメリカ合衆国で確認されており[1]、エリオン沸石はアスベスト同様に発癌性物質に位置付けられている。
アスベスト曝露と喫煙のリスクを併せ持つ人の肺ガンの罹患率が数倍~50倍になることが指摘されているが、中皮種と喫煙の関連はほとんどない。
また疫学的観点から、2020年前後にこの疾患はピークを迎えると考えられている。
病理[編集]
- Epithelioid
- Sarcomatoid
- Biphasic(mixead)
臨床像[編集]
初発症状に乏しいことが多い。進行例で症状が発現することが多い。症状としては胸膜浸潤による胸水の貯留による呼吸困難が強く出てくる。肺癌と異なり血痰を初発にすることはまずない。
転移形式や浸潤など、いまだ多くのことが不明である。そのため、固形の悪性腫瘍はTNM分類を用いて進行度を評価するが、その評価形式に疑問が投げかけられている。(現時点では肺癌のそれを用いて進行度を評価している。) 浸潤はびまん性で、横隔膜を伝うような形で腹膜に浸潤することもある。また縦隔を通って心膜に腫瘍を形成すると拡張不全による心不全がおこる。 びまん性の浸潤だが、腫瘤の形成もきたしうる。
腹膜発生のものは、進行すると腹部膨満、腹痛、食欲不振、悪心・嘔吐、腹水など。
末期では腫瘍が腸管に癒着し、腹腔内臓器が一塊となる。
検査[編集]
- 画像所見:多くの場合、X線ではextrapleural signや胸水貯留を認める。通常は片側性である。胸部CTでも同様の所見を得ることが出来る。またFDG-PETでは、集積像を認める。
- 胸水の細胞診では、腫瘍細胞を認めることがある。
- 組織:生検はきわめて重要で確定診断をする最大の根拠となる。HE染色では肺癌との鑑別が難しいことが多い。免疫染色が有用であり、カルレチニンなどの陽性マーカーとCEAなどの陰性マーカーとを組み合わせて診断する。
- 腫瘍マーカーとしてヒアルロン酸やCYFRAがある。CEAは陰性であり肺癌との鑑別に有用である。また血算では血小板が高値となる。
治療[編集]
肺癌に準じたTNM分類を用いてステージⅡまでには外科療法も行われる。ステージⅢ以降は化学療法が中心である。
- 手術適応症例は胸膜肺全摘術(胸膜と肺、横隔膜の一部を摘出して、再建を行う。)
- あまり奏効する薬剤は無いとされていたが、悪性胸膜中皮腫治療薬として2007年1月にペメトレキセド(商品名アリムタ®)が承認され、シスプラチン(CDDP)との併用である程度の効果をあげている。
- 支持療法:疼痛緩和、胸水のコントロールなどがある。
予後[編集]
臓器転移を起こすことはほとんどないものの、診断時にすでに広範囲に進展し、根治手術が不可能であることが多い。予後はきわめて不良で、1年生存率が50%、2年生存率が20%である。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 国立がん研究センターがん対策情報センターより
- 中皮腫・じん肺・アスベストセンター
- WS&H Asbestos Database(産業医科大学 産業生態科学研究所 作業病態学研究室)
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院:石綿(アスベスト)健診について
- 兵庫医科大学病院:中皮腫臨床試験センター
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|  呼吸器疾患(ICD-10 J00〜99) |  
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|  疾患 |  
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| 閉塞性肺疾患 | 
| 慢性閉塞性肺疾患 | 気管支喘息 | 慢性気管支炎 | 肺気腫 | びまん性汎細気管支炎 |  |  
|  |  
| 拘束性肺疾患 | 
| 特発性 | IPF | NSIP | COP | AIP | DIP | RB-ILD | LIP |  
|  |  
| 続発性 | 塵肺 | 放射線肺炎 | 薬剤性肺炎 |  
|  |  
| 無気肺 | 気胸 | 血胸 |  |  
|  |  
| 形態異常 | 気管支拡張症 | 肺分画症 | 肺嚢胞症 |  
|  |  
| 腫瘍 | 
| 良性腫瘍 | 肺過誤腫 | 硬化性血管腫 |  
|  |  
| 悪性腫瘍 | 低悪性度肺腫瘍 | 原発性肺癌 | 転移性肺癌 | 中皮腫 |  |  
|  |  
| アレルギー | 
| 気管支喘息 | アスピリン喘息 |  
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| 好酸球性肺炎 | Löffler症候群 | 急性好酸球性肺炎 | 慢性酸球性肺炎 | 好酸球増加症候群 |  
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| 過敏性肺臓炎 | サルコイドーシス | グッドパスチャー症候群 |  |  
|  |  
| 肺循環障害 | 肺血栓塞栓症 | 肺性心 | 新生児呼吸窮迫症候群 | 急性呼吸窮迫症候群 |  
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| 肺代謝異常 | 肺胞蛋白症 | 肺胞微石症 |  
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| 喉頭炎 | 急性喉頭蓋炎 - クループ |  
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| 咽頭炎 |  |  
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| 下気道 | 急性細気管支炎 |  
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| 肺炎 | 
| 原因 | 
| 定型肺炎 | 
| グラム陽性 | 肺炎球菌 - 黄色ブドウ球菌 |  
|  |  
| グラム陰性 | 肺炎桿菌 - インフルエンザ菌 - モラクセラ - 大腸菌 - 緑膿菌 |  |  
|  |  
| 非定型肺炎 | 
| ウイルス性 | RSウイルス - インフルエンザ肺炎 - 重症急性呼吸器症候群 |  
|  |  
| 肺真菌症 | ニューモシスチス肺炎 - クリプトコッカス症 - アスペルギルス症 |  
|  |  
| レジオネラ菌 - マイコプラズマ - クラミジア肺炎 - オウム病 |  |  
|  |  
| 抗酸菌症 | 結核 - 非結核性抗酸菌症 |  |  
|  |  
| 機序 | 市中肺炎 - 院内肺炎 - 誤嚥性肺炎 |  
|  |  
| 病態 | 
| 肺胞性肺炎 | 大葉性肺炎 - 気管支肺炎 |  
|  |  
| 化膿性肺炎 |  |  |  
|  |  
| 胸壁 | 膿胸 |  |  |  |  |  
|  |  
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|  症候・徴候 |  
|  |  
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| 異常呼吸 | 過呼吸 | 頻呼吸 | 徐呼吸 | 低呼吸 | 多呼吸 | 少呼吸 | 起坐呼吸 | 奇異性呼吸 | クスマウル呼吸 | チェーンストークス呼吸 | ビオー呼吸 |  
|  |  
| 咳嗽 | 痰 | 呼吸困難 | 胸痛 | 胸水 | ばち指 | チアノーゼ |  |  |  
|  |  
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|  所見・検査 |  
|  |  
| 聴診 | 胸部X線写真 | 胸部X線CT | 気管支鏡 | 胸腔鏡 | 血液検査 |  |  
|  |  
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| 呼吸器系の正常構造・生理 |  
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| 気道系 | 
| 解剖学的構造 | 
| 上気道 | 
| 鼻 | 鼻孔 | 鼻腔 | 鼻甲介 | 副鼻腔 |  
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| 咽頭 - 喉頭 |  |  
|  |  
| 下気道 | 
| 気管 |  
|  |  
| 気管支 | 主気管支 - 葉気管支 - 区域気管支 - 亜区域気管支 |  
|  |  
| 細気管支 | 小気管支 - 細気管支 - 終末細気管支 |  
|  |  
| 呼吸細気管支 |  |  
|  |  
| ガス交換器 | 肺 - 肺胞管 - 肺胞嚢 - 肺胞 |  
|  |  
| 顕微解剖学 | I型肺胞上皮細胞 | II型肺胞上皮細胞 | 杯細胞 | クララ細胞 | 気管軟骨輪 |  |  
|  |  
| 生理学・生化学 | 
| 生理学 | 肺気量 | 肺活量 | %肺活量 | 残気量 | 死腔 | 1回換気量 | 1秒率 | 肺サーファクタント | SP-A |  
|  |  
| 生化学 | PaCO2 | PaO2 | AaDO2 | FiO2 | SpO2 | 呼吸係数および酸素化係数 |  |  |  
|  |  
| 血管系 | 
| 肺循環系 | (右心室 -) 肺動脈 - 毛細血管 - 肺静脈 (- 左心房) |  
|  |  
| 気管支循環系 | (胸部大動脈 -) 気管支動脈 - 毛細血管 - 気管支静脈 (- 奇静脈/副反奇静脈) |  |  
|  |  
| 運動器系 | 
| 骨格 | 肋骨 | 胸骨 |  
|  |  
| 呼吸筋 | 横隔膜 | 内肋間筋 | 外肋間筋 | 胸鎖乳突筋 | 前斜角筋 | 中斜角筋 | 後斜角筋 | 腹直筋 | 内腹斜筋 | 外腹斜筋 | 腹横筋 |  |  
|  |  
| 神経系 | 
| 中枢神経系 | 呼吸中枢 | 呼吸調節中枢 | 前頭葉 |  
|  |  
| 末梢神経系 | 横隔神経 | 肋間神経 |  |  |  |  | 
 
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Japanese Journal
- P2-23-8 悪性腹膜中皮腫に対して広範囲腹膜切除を含む骨盤内除臓術後にペメトレキセド,シスプラチン療法を施行した1例(Group121 悪性卵巣腫瘍・症例3,一般演題,第63回日本産科婦人科学会学術講演会)
- 小笠原 仁子,鈴木 貴士,大谷 清香,出原 麻里,安達 博,中山 理,鳥居 裕一
- 日本産科婦人科學會雜誌 63(2), 861, 2011-02-01
- NAID 110008510004
 
 
- 井上 佳代,鍔本 浩志,金澤 理一郎,堀内 功,小森 慎二,田端 千春,中野 孝司,塚本 吉胤,廣田 誠一
- 産婦人科の進歩 63(2), 106-111, 2011
- … 悪性腹膜中皮腫(malignant peritoneal mesothelioma:MPM)と原発性腹膜癌(primary peritoneal carcinoma:PPC)は同じ腹膜中皮細胞由来であるが,病態や治療方針が異なり早期に鑑別する必要がある.またMPMはPPCに比してまれで本邦の年間女性死亡者数は30人に満たず,肉眼的に大網に限局した早期のMPMの報告は海外を含めて数件が報告されているのみである.今回経腟的腹水穿刺を行い,腹水細胞診を免疫染色することでMPMを診断し, …
- NAID 130000904751
 
 
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- 2006年10月1日 ... したがって、中皮腫には、その発生部位によって、胸膜中皮腫・腹膜中皮腫・心膜中皮  腫などがあります。 また、中皮腫には、悪性 ... 胸膜および腹膜中皮腫は、そのほとんど  がアスベスト(石綿)の吸引により発生します。アスベスト鉱山労働者 ...
- 腹膜中皮腫とは、腹膜「中皮」から発生した腫瘍のことを言います。 胸部の肺や ... 腹膜  中皮腫は良性のものと悪性のものにわかれます。 良性のもの ... 悪性の中皮腫は、  限局性以外にも、腹膜に沿って広がって発育するびまん性のものがあります。 悪性の  腹膜 ...
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- 英
- ascites, abdominal dropsy, hydroperitonia
- 同
- 腹腔内貯留液 intraperitoneal fluid
- 関
- 波動
概念
分類
- 血清蛋白質濃度は6.5-8.0g/dLが正常範囲
腹水の性状
比重、蛋白濃度による分類
病因
- 1. 門脈圧・静脈圧亢進
- 2. 膠質浸透圧の低下
- 3. リンパ液のうっ滞
- 4. 血管透過性の亢進
病態生理
肝硬変における腹水 HIM.1978
- 1. →内臓の血管内圧の上昇→腹水
- 2. →動脈血の減少→血管収縮機構と抗ナトリウム利尿機構の亢進→ナトリウム保持→血漿量の増加→腹水
 
貯留しやすい部位(QB.Q-205)
検査
- 500ml以上の貯留があれば、腹部超音波検査、腹部CT、腹部MRIで検出できる。
腹部単純X線写真
治療
HIM.1978
  [★]
- 英
- mesothelioma
- 同
- 中皮癌 mesothelial cancer、体腔癌 coelomic carcinoma
- 関
分類
部位
悪性度による分類
  [★]
- 英
- peritoneum (Z) < peritonaion < peritonos < peri-'around'+-tonos'stretched' ; perineumと勘違いしないように
- 関
- 漿膜
  [★]
- 英
- mesothelium
- 同
- 体腔上皮 celomic epithelium、漿膜上皮
- 関
- [[]]
組織学
発生学的由来
  [★]
- 関
- がん、腫瘍、腫瘤、良性新生物