100Cases 55
- ヒント:タイトルに騙されるな!
- 45歳 女性
- 主訴:肺炎
- 現病歴:過去6ヶ月の間、咳、発熱、および膿性痰をともなう3回のエピソードがあった。このうち1回のエピソードでは、右側の胸膜炎性胸痛があった。一連のエピソードはgeneral practitionerの外来で治療していた。これらのエピソードに加え、5年間の嚥下困難の既往がある。嚥下困難は最初は中等度であったが、だんだんと増悪している。食べ物が胸骨後部の下方に刺さる様だと言っている。どういう固形物であってもこのような症状がでる。体重は過去2ヶ月で5kg減少した。嚥下困難は食事中に改善することがあるようだ。最近、形のはっきりとした食物を嘔吐する問題を抱えている。
- 3年前外来で施行した上部消化管内視鏡では問題は認められなかった。器質的な問題がないことが保証されたが、症状はひどくなってきた。排尿障害はない。便秘傾向があるが、最近少し悪くなってきた。
- 既往歴:無し
- 家族歴:無し
- 社会歴:10年前まで4年間、アメリカ合衆国の北西の沿岸部にすんでいた。店員として働いている。
- 嗜好歴:喫煙なし。飲酒は週に5units以下。
- 服用薬:
- 身体所見 examination
- やせて見える。右の肺底部にcrackleを認める。心血管系、消化器系、およびそのほかの臓器系に異常を認めない。
- 検査所見 investigations
- 胸部単純X線写真(供覧)
- 問題
- 診断名は?
- どうやって診断をつけるの?
- 答え
- 噴門部のアカラシア
- ■嚥下障害の鑑別疾患
- DIF.125
- 嚥下というのは喉頭、咽頭、食道の機能で、1)機械的閉塞(ex. 腫瘍)、2)生理的閉塞(ex. 偽球麻痺)により機能が障害される。
- 機械的閉塞 喉頭、咽頭、あるいは食道自体の内的な疾患と周辺臓器の外的な疾患を考える。VINDICATEが有効。
- V vascular 大動脈瘤、心拡大
- I inflammatory 喉頭炎、扁桃炎、食道炎、縦隔炎。 infection シャーガス病
- N neoplasm 食道と気管の癌腫(carcinoma)、縦隔の皮様嚢腫
- D degenerative and deficiency Plummer-Vinson syndrome(鉄欠乏性貧血)
- I intoxication アルカリ狭窄(lye stricture)
- C congenital and acquired 食道閉鎖症(esophageal atresia)、食道憩室
- A autoimmune 強皮症
- T trauma 食道破裂
- E endocrine 甲状腺腫大(endemic goiter(風土病としての甲状腺腫)、グレーブス病)
- 生理的閉塞 神経から筋肉にいたるまでの障害であり、この経路を想像しながら鑑別を上げていく。
- 1. end organ 緊張性ジストロフィー、皮膚筋炎、アカラシア、びまん性食道痙攣
- 2. 神経筋接合部 重症筋無力症
- 3. 下位運動ニューロン 急性灰白髄炎、ジフテリア性神経炎、脳幹における感染症もしくは腫瘍
- 4. 上位運動ニューロン 偽性球麻痺(脳梗塞、脳塞栓、脳出血、多発性硬化症、認知症、びまん性脳動脈硬化症)、パーキンソン病や他の錐体外路症状を呈する疾患