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大学院(だいがくいん)とは、高等教育(学士課程)にて優秀な成績評価を取得した者を対象として、上級学位(修士号、博士号、専門職学位)を付与する機関である[1][2]。国際標準教育分類(ISCED)ではレベル6(第3期の教育ステージ2)に分類される[3]。
大学院とプロフェッショナル・スクール(職業学校)との違いは、一般的には上級職業学位を付与するところであり、分野には医学、看護学、ビジネス、工学、法学などがある。大学院と職業学校とは独立したものではなく、様々な職業学校でも学位を付与しているところがある(たとえばいくつかの看護学校は看護学修士号を付与している)。
大学の学部では多くが学士号を付与するが、大学院は学部と独立施設である必要はない。米国やカナダでは、大学院は単独で "graduate school" と呼ばれているが、一方で英語圏国(オーストラリア、カナダ、アイルランド、インド、バングラデシュ、ニュージーランド、英国)では "postgraduate education" と呼ばれている。
大学院に通う学生を、アメリカ英語とイギリス英語では"graduate students"と呼ぶ。またイギリス英語では "postgraduate students"、"postgraduates"、"postgrads"と呼ばれることがある。日本では大学院生(院生)などと呼ばれる。
Advanced Degree(上級学位)をとるための制度は国によって多少異なる。日本やアメリカなど多くの国では大学院に学生として所属し、必要な履修受講した講義の単位を修得した上で論文を書き、学位を取得するのが通常である。一方で、ドイツなどでは博士取得を目指す者は、教員に指導を受けるとしても、学生となる(学籍登録し授業料を払う)とは限らない。日本においても、学生として大学に所属せずに論文を書き、大学に提出して審査を経て博士の学位を取得する論文博士の制度が残されている。
1876年、アメリカ合衆国のジョンズ・ホプキンス大学に世界で初めて「大学院」が設置された[4]。
日本では、1880年(明治13年)に東京大学の法・文・理の3学部に設置された「学士研究科」が大学院の起源とされる[4]。1886年(明治19年)の帝国大学令により、帝国大学は「分科大学」(のちの学部)と「大学院」とで構成されると規定され、各帝国大学に大学院が設置されていくことになる。また、1887年(明治20年)の学位令により、博士号の授与が行われるようになった。1918年(大正7年)の大学令により、帝国大学以外にも大学が設置可能となるが、帝国大学が学部と「大学院」とで構成されるのに対し、帝国大学以外の大学は学部と「研究科」で構成されることになり、「大学院」の設置は認められなかった[5]。戦後、新制大学になって大学院の設置が旧帝国大学以外でも可能になった。
1991年に文部科学省の大学審議会が、大学院の量的整備の緩和を答申し、それまで研究者養成機関と考えられていた大学院に、高度職業人を養成するための夜間大学院や専門職大学院などが加わり、院生の数が大幅に増加した。
2003年(平成15年度)に、専門職大学院の制度が作られ、法科大学院などが作られた。それに伴い、学部をおくことなく大学院をおく大学(いわゆる大学院大学)も増加した。
日本では、大学の学部課程の上に設けられ、学部課程を卒業した人、およびこれと同等以上の学力を有すると認められた者を対象に、学術の理論および応用を教育研究し、文化の進展に寄与することを目的とするものである(学校教育法第99条)。
大学院には、博士前期課程、博士後期課程、一貫制博士課程、後期3年博士課程、4年制博士課程、修士課程、専門職学位課程などと通称される多数の課程がある。
課程 | 修士課程 | 博士課程 | 専門職学位課程 |
---|---|---|---|
概要 | 広い視野に立って精深な学識を授け、専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力を培うこと[6]。 | 専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行うこと。又、その他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うこと[7]。 | 高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うこと[8]。 |
付与される 学位 |
修士 | 博士 | 専門職学位 |
大学の中に学部と研究科が置かれており、大学院では専攻分野の大きな括りを「研究科」、研究科の分野を細分したものを「専攻」と呼んでいる。ただし、2000年(平成12年)4月1日以降は異なった名称・形態の下部組織も現れた。大学院には「修士課程」、「博士課程」、「専門職学位課程」がある。更に細分化された過程が置かれている場合もある。
大学院に進学するためには、一般的には大学の学部を卒業し学士号を取得するか、個別の入学資格審査に合格し学部卒業と同等の学力を有すると認められる必要がある。大学院によっては、学部の卒業を経ない飛び級の制度を設けている場合もある。その後、大学院に進学し大学院の課程を修了した者は、その課程に応じて修士号、博士号、専門職学位の学位が授与される。修士号、博士号、専門職学位はAdvanced Degree(上級学位)と呼ばれる。
大学(短期大学を除く)は、学位規則(昭和28年文部省令第9号)などに基づき、大学院(専門職大学院を除く)の課程を修了した者に対し、修士または博士の学位を、専門職大学院の課程を修了した者に対し専門職学位を授与する[9]。
大学は、学位規則などに基づき、大学院(専門職大学院を除く)の課程を修了することで博士の学位を授与された者と同等以上の学力があると認める者に対し、博士の学位を授与することができる[10]。大学院(専門職大学院を除く)の課程を修了することで授与をされる博士の学位を課程博士と呼ぶことがある。また、「大学院(専門職大学院を除く)の課程を修了することで博士の学位を授与された者」と同等以上の学力があると認められて授与される博士の学位を論文博士と呼ぶことがある。いずれも学位規則等に規定された正式な呼称ではなく、一般的には、どちらの取得方法であっても同じ博士の学位として扱われる。
日本の教育制度においては、大学院は、大学(短期大学を除く)におくことができる(学校教育法第97条)、とされている。
大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥を究め、または高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする(学校教育法第99条第1項)。また、大学院のうち、学術の理論および応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識および卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とされる[11]。
大学院をおく大学には、研究科をおくことを常例とされる[12]。研究科は、専門分野に応じて、教育研究上の目的から組織されるものである[13]。
ただし、当該大学の教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切である場合においては、文部科学大臣の定めるところにより、研究科以外の教育研究上の基本となる組織をおくことができる[14]。研究科以外の教育研究上の基本となる組織をおくことができるようになったのは、2000年4月1日からであるが、この日に、九州大学の全ての大学院が、学生が所属する教育部として学府、教員が所属する研究部として研究院という組織をもつ大学院へと改組され、東京大学では新たに教育部として学府を、研究部として学環をもつ大学院情報学環・学際情報学府が設置された。
大学院には、2以上の大学が協力して教育研究を行う研究科・課程をおくことができる方式が2つあり、一つ目は、連合研究科(れんごうけんきゅうか)、連合大学院などと呼ばれる方式(大学院設置基準第7条)で、例えば、東京学芸大学、横浜国立大学、千葉大学、埼玉大学よりなる東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科(教育学の博士課程)がある。その他に連合農学研究科、連合獣医学研究科、連合小児発達学研究科がある。二つ目は、共同教育課程を編成する方式(大学院設置基準第31条)で、共同大学院ともよばれ、例えば東京女子医科大学と早稲田大学による共同先端生命医科学専攻がある。なお、連合大学院では基幹となる研究科に組織を設置し、教員・学生は基幹校に所属し、基幹校の名義の学位を出す一方、共同教育課程ではすべての構成大学に組織を設置し、教員・学生はすべての構成大学に所属し、すべての構成大学の連名で学位を出すといった違いがある。
2000年代以降は、大学院において専門の教育と訓練を受けた、各分野において指導的役割を果たす、高度で専門的な職業能力を有する人材(高度専門職業人)の養成という社会的な要望から、主に社会人の経歴を有する者を教育する大学院の課程(社会人大学院などとも呼ぶ)の設置も相次いでいる。2003年度からは、専門職大学院の制度が作られ、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とする法科大学院などが作られた。専門職大学院については、学術の理論および応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識および卓越した能力を培うことが強調されている。大学院の設置基準としては、大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)などがあり、専門職大学院に関しては、加えて、専門職大学院設置基準(平成15年文部科学省令第16号)などが適用される。
文部科学省は国際競争力の向上のため「研究大学強化促進事業」を打ち出し、学部よりも大学院に重点を置いている大学を研究大学と銘打って、他の大学よりも大きな補助金を与えている。文部科学省により選出された研究大学は、北海道大学、東北大学、筑波大学、東京大学、東京工業大学、東京医科歯科大学、電気通信大学、名古屋大学、豊橋技術科学大学、京都大学、大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学、神戸大学、広島大学、岡山大学、九州大学、熊本大学、慶應義塾大学、早稲田大学である。[15]
日本においては、大学には学部(学部以外の教育研究上の基本となる組織を含む。以下この項で「学部等」という)を置くことを常例としている[16]。しかし教育研究上特別の必要がある場合においては、学部等を置くことなく大学院を置くものを大学とすることができる[17]。この大学は大学院大学(だいがくいんだいがく)などと呼ばれる。
日本初の大学院大学は1982年に財界主導で設立された国際大学である。大学院大学でない大学では、例えば工学部に対する工学研究科のように学部名と同一の名称をもつ、あるいは同一名称でなくとも直接関連する大学院を置くことが多く、これを2階建て大学院という。それに対して対応する学部を持たない大学院研究科は独立大学院あるいは独立研究科と呼ばれる。大学院大学のうち、大学以外の研究機関と協力しているものは、連携大学院(れんけいだいがくいん)などと呼ばれることもある。
大学院には、各種の課程がある。大学院設置基準(昭和49年文部省令第28号)においては、大学院における課程として、修士課程、博士課程、専門職学位課程(専門職大学院の課程)の3種類の課程が規定されている。専門職大学院の課程は、組織上、各大学がおく大学院に専門職学位課程としておかれる。大学院をおく各大学の学則などでの運用においては、3種類の課程の課程について、細かく分けたり、合わせたりして呼称している。各大学の学則などにおける呼称としては、主に修士課程・博士前期課程、博士後期課程・後期3年博士課程、一貫制博士課程、4年制博士課程、専門職学位課程などがある。
大学院における課程について表現するにあたってはいくつかの方法があり、方法ごとに意味が異なっている。
大学院設置基準に定められている大学院の課程は、「修士課程」「博士課程」「専門職学位課程」の3種のみである。修士課程は、大学卒業後の標準修業年限が一般に2年である課程であり、修了した者には修士の学位が授与される。博士課程は、大学卒業後の標準修業年限が一般に5年である課程であり、修了した者には博士の学位が授与される。専門職学位課程は、修了した者には専門職学位が授与される課程であり、大学卒業後の標準修業年限は一般に2年以内であり、法科大学院(もっぱら法曹の養成を行う課程)の標準修業年限は3年である。
このうち、博士課程は、前期2年と後期3年に区分するもの(学則等では主に「博士前期課程」「博士後期課程」などと呼称)と、後期3年のみの課程のもの(学則等では主に「後期3年博士課程」などと呼称)、区分を設けないもの(学則等では主に「一貫制博士課程」などと呼称)、医学・歯学・臨床薬学・獣医学を履修するもの(学則等では主に「4年制博士課程」などと呼称)に分かれる。博士課程のうち前期2年に区分された課程は、大学院設置基準上の修士課程とみなすことになっている。
各大学によって異なるが、しばしば学則等では、「博士前期課程」「博士後期課程」「一貫制博士課程」「後期3年博士課程」「4年制博士課程」「修士課程」「専門職学位課程」などに区分する方法が見られる。
博士前期課程と修士課程は、大学卒業後の修業年限を2年とし、修士の学位の授与が得られる課程である。両者の教育内容は同一であるが、当該課程の上に博士後期課程が設けられていれば「博士前期課程」とされ、博士後期課程が設けられていなければ「修士課程」とされる。
一貫制博士課程は、前期2年と後期3年に区分しない博士課程のことである。
後期3年博士課程は、博士前期課程(前期2年の博士課程)との接続がない後期3年のみの博士課程である。また4年制博士課程は、修業年限を6年とする学部に接続する医学・歯学・臨床薬学・獣医学を履修する博士課程である。
専門職学位課程は、修了した者には専門職学位が授与されるという専門職大学院の課程である。
俗な用法においては、学則等で用いられる「修士課程」と「博士前期課程」について単に「修士課程」と呼び、学則等で用いられる「博士後期課程」「一貫制博士課程」「後期3年博士課程」「4年制博士課程」を「博士課程」と呼ぶ表現も見られる。なお、学則で博士前期課程を修士課程と呼ぶと正式に定めている場合もある[18]。
日本では、一般的には、修士の学位や専門職学位を授与された後に、後期3年の博士課程に進学できるようになっている形態が多い。しかし、一貫制博士課程を設けて修士水準から博士水準までの一貫教育を行う大学院もある。
修士課程・博士前期課程、専門職学位課程では、一般的に2年以上在学して要件を満たすことで学位の授与を受けることができる。授与される学位は、修士課程・博士前期課程では「修士の学位」、専門職学位課程では「専門職学位」である。
「修士の学位」または「専門職学位」の授与を受けた後に、博士後期課程・後期3年博士課程で3年在学して要件を満たせば博士の学位の授与を受けることができる。また、「修士の学位」または「専門職学位」の授与を受けていなくても、一貫制博士課程で5年在学して要件を満たしても「博士の学位」の授与を受けることができる。
なお、以下の課程の分類においては、#学則等に見られる用法を用いた。
博士前期課程、修士課程は、「広い視野に立って精深な学識を授け、専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門性が求められる職業を担うための卓越した能力を培うこと」を目的している。学部を卒業した者などが入学者選考試験を経て、合格したものが入学できる。標準修業年限は2年。ただし、在学中に特に優れた成果を挙げたものは修業年限を短縮できる学校もある。修了するためには、規定の単位を取得し、研究指導を受け、各大学院による修士論文審査と試験に合格することが必要である。修士論文審査は、課程によっては、研究成果の審査(つまり修士論文を作成しなくてもよい)であることもある。修了すると修士の学位が授与される。
博士後期課程・後期3年博士課程は、「専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うこと」を目的としている。修士の学位や専門職学位を授与された者などが入学者選考試験を経て、合格した者が入学できる。標準修業年限は3年。ただし、在学中に特に優れた成果を挙げたものは標準修業年限を短縮できる学校もある。修了するためには、規定の単位を取得し、研究指導を受け、各大学院による博士論文審査と試験に合格することが必要である。修了すると博士の学位が授与される。
標準修業年限は3年であるが諸外国と同様、業績を得るためにそれ以上の年限在学する者も珍しくはない。そのため、経済的・将来性の面から断念(中途退学)する者が比較的多いのが博士課程の特徴である。また、修業年限以上在学したものの論文審査に合格できずに中退した者は単位取得退学、満期退学と呼ばれる。従来は、退学の場合でも研究業績によっては大学、国の研究機関等で正規の研究員として職を得ている者も少なくなかった。しかし、現在では、研究機関に職を得る時の応募条件として、博士の取得が条件となっていることが多い。
一貫制博士課程は、前期2年および後期3年の課程の区分を設けない課程であり、「専攻分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うこと」を目的として一貫して教育を行う。この課程は、学部を卒業した者などが入学者選考を経て、合格した者が入学できる。修了するためには、規定の単位を取得し、研究指導を受け、各大学院による博士論文審査と試験に合格することが必要である。修業年限は5年。ただし、在学中に特に優れた成果を挙げたものは修業年限を短縮できる学校もある。修了すると博士の学位が授与される。
一貫制博士課程に入学し、前述の博士前期課程、修士課程の修了要件を満たした場合、大学院によっては、修士の学位が授与される。
4年制博士課程は、標準修業年限を4年としている、医学を履修する博士課程、歯学を履修する博士課程、6年制薬学系の大学の学部に接続している薬学を履修する博士課程、獣医学を履修する博士課程である。修了すると博士の学位が授与される。目的、修了要件、授与される学位は、一貫制博士課程と同様である。
4年制博士課程に接続する学部の修業年限は6年であるため、4年制博士課程に入学できる者は、修業年限を6年とする大学の学部を卒業した者、修士の学位を授与された者、専門職学位を授与された者などである。
専門職学位課程は、専門職大学院の課程であり、「高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うこと」を目的としている。大学(短期大学を除く)を卒業した者などが入学できるが、通例として入学者選考が課され、合格したもののみが入学できる。修了するためには、規定の単位の取得その他の教育課程の履修により課程を修了することが必要である。標準修業年限は、通例2年であるが、専攻分野によっては、1年以上2年未満である。修了すると修士(専門職)の専門職学位が付与される。
法科大学院は、法曹養成のための特別な専門職学位課程である。修了するためには、規定の単位の取得が必要である。修業年限は3年。修了すると「法務博士(専門職)」の学位が授与される。
主に夕刻から授業を始める大学院の課程であり、通常の研究科が夜間にも授業を行っている形態と「夜間において授業を行う研究科」(夜間研究科、夜間大学院)の形態の2種類がある。学部の夜間部(第2部)や「夜間において授業を行う学部」(夜間学部)の大学院版ともいえる。日中、仕事を持つ社会人などが、終業後に通学するなど利便性の点で、大学院の通信教育とともに注目されている。なお、修了して授与される学位は、大学院の(昼間において授業を行う)通常の課程を修了して授与されるものと同一のものである。なお、日本初の夜間大学院は1958年に開設された東京電機大学大学院工学研究科電気工学専攻である。また文科系における日本初の夜間大学院は、1990年開設の青山学院大学大学院国際マネジメント研究科である。さらに社会人を対象とする日本初の夜間大学院は1989年開設の筑波大学大学院修士課程教育研究科、経営・政策科学研究科(経営システム科学専攻)である。
通信による教育を行う大学院の課程であり、大学通信教育を大学院で行うものである。「印刷教材等による授業」(印刷授業)・「面接授業」などの授業や、研究指導を経て学位が授与される。
修士課程・博士前期課程では、放送大学大学院、明星大学大学院、東北福祉大学大学院、名古屋学院大学大学院、帝京平成大学大学院、中京大学大学院、吉備国際大学大学院、倉敷芸術科学大学大学院、人間総合科学大学大学院、桜美林大学大学院、東京福祉大学大学院、高野山大学大学院、東亜大学大学院、京都造形芸術大学大学院、京都産業大学大学院などがある。
また、博士後期課程には、放送大学大学院、日本大学大学院、佛教大学大学院、聖徳大学大学院、日本福祉大学大学院、九州保健福祉大学大学院などがある。
これまでの大学院教育では、学位の修得が即ち修了資格と不可分の関係にあり、修了するということは学位の修得を意味していた。 また、その学位の修得状況については修士の学位についてはともかく、一般に日本国内における人文科学、社会科学分野の博士号については、課程期間内で取得するのが困難で、単位取得満期退学で教職に就き、その後研究を積み重ね、定年近くになって名誉称号的に授与されるのが慣例になっていた。しかしながら近年、日本の慣例を嫌う留学生が日本への留学を回避したり、あるいは日本の大学の学生が海外の大学院へ流出したりするという状況が問題とされた。文部科学省が博士課程の本来の趣旨にしたがうよう指導を行うなど、現在では、諸外国や理系分野並に人文・社会系であっても博士課程在学中の博士号の取得が可能となる状況となっている。
また、今日ではその大学院の修士課程及び専門職学位課程、または博士課程の定める学位の他に、他の大学との提携による他大学の学位修得の道が開かれている分野もあり、これをダブルディグリー・プログラムという。一方で、技術と知識の習得のみを前提とし学位の授与を行わないノンディグリー・プログラムも存在し、大学院教育の幅や選択肢は多岐に拡がりつつある。
現在では大学進学者が従来と比べて大幅に増加したため、学部を卒業しただけでは高学歴とみなされなくなってきており、東京大学や京都大学では学部卒業者の5割から6割ほどが大学院に進学する[19][20]。この背景には、日本の学歴社会化があり、政府の統計によると、文系理系の合算データでは大学院修了者の50%以上が年収700万円以上を稼ぐのに対し、大学の学部卒業者で700万円を超えるのは3割程度にとどまっている。[21]
修士課程においては、自然科学系などでは学部卒業者よりも就職の選択肢が広がり、条件が良くなる場合がある。一方、人文・社会系では従来は学部卒業者よりも就職試験において不利とされていたが、近年では、修士課程修了者を対象とした採用の募集も増えてきている。
博士課程においては修了後に、民間企業と公的機関のともに博士号取得者を処遇する正規雇用の職業を確保することが難しい場合もあり、長期にわたり定職に就けない者が出てしまうなどしている。[22]。大学や研究機関においては、経営上の問題から研究者退職後に不補充とするなど、新規採用のポスト不足の問題が指摘されている。
(年々状況は変化するが)一例として、平成17年の状況に関する統計について説明する[23]。この年、博士課程修了者数は1万5千人(内、国立が1万1千人、公立1千人、私立4千人)。その修了者数の内、「就職者」は9千人(修了者の57.1%)。「その他」(=就職できなかった者、しなかった者)が4千人(修了者の23.8%)。「死亡者や不詳の者」1千名(修了者の9.4%)。
「就職者」と分類された者を、さらに産業別に分類すると、「教育、学習支援業」が34.9%で最も高く、次いで「医療、福祉業」27.1%、「サービス業」と分類されるもの(要は、他に分類しづらいもの)14.2%となっている。「就職者」と分類された者を、さらに職種別に分類すると、「教員」が28%、「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」25.9%、「科学研究者」22.4%、「技術者」13.6%となっている。
学位は日本と同じように、修士と、研究者を目指す人が取得を目指す博士とがある。実学系の専攻の場合は一般に博士課程がないことが多く、逆にその他の学術系専攻の場合は博士まで進むことが多い。修士と博士が一貫した課程もあり、その場合は修士課程と博士課程が並列して存在するか、修士課程がなくて博士課程のみが存在し、研究者を目指す人は学部卒後すぐに博士課程に入る(自然科学系や工学系に多い。この場合でも、まず修士課程を履修することを奨められる場合もある)。修士の後に博士課程に入るか、学部卒後に博士課程に入るかのいずれが一般的かは分野による。一貫性博士課程で、途中退学する学生に修士号を授与する制度を設けているところもある。この場合、大学や分野によるがその修士号取得方法には、必要な単位数などを確保した上で主として2通りの方法がある。一つは、後述する適正試験に合格して取得する方法。もう一つは、適正試験を受験しないか不合格だった場合に修士論文を提出して審査を経て取得する方法、である。特に、博士課程の必要単位数も取得して適性試験に合格してから退学する場合は、日本でいう「博士課程単位取得退学」に相当するAll But DissertationあるいはAll But Thesisと呼ばれることが多く、多くの大学で公式に認められている呼称である。また、この呼称は、在学中でも「あとは学位論文だけ」という立場の意味で用いられることがある。
博士課程では、必須クラスを履修したあと研究論文を執筆する前に適正試験(Qualifying Examination。専攻分野の知識や技能を十分に有しているかを試す試験で、ほとんどの場合筆記試験である。この試験は日本では「大学院入学試験」にほぼ相当する)を受ける。合格した者だけが、博士号候補生(Ph.D candidate)として博士課程に残ることを許される。適正試験に落ちると博士課程に籍をおけなくなるが、再受験を許されることも多い。なお、この試験はいつまでに合格しなければならないという規定があることが多く、その場合は期限までに合格できなくても退学になってしまう。また、例えば学部卒から博士課程に入学した学生は入学後2年以内に、修士卒から入学した学生は1年以内に合格しなければならない、というように細かい規定を定めている場合もある。適正試験の試験内容は、専門科目の試験(一般に複数の科目に別れており、2つ以上を要求される場合もある)と、大学や分野によってはさらに外国語やプログラミング言語の試験が課されるところもある。以前は日本語も外国語として多くの大学で採用されていたが、今ではほとんどの大学で廃止され、フランス語、ドイツ語、ロシア語などが主流である。外国語の試験方法は、その言語で書かれた自分の専門分野の専門書の文章を英訳する、などの方法で行われることが多いが、中には口頭による会話試験を課す大学もある。現在では、これらの外国語試験は廃止する大学が増えてきている。英語がすでに学術界においての共用語としての地位を確立しており(これには冷戦の終結なども関係している)、さらに、一般的には専門科目についての学術的な成功にこれら外国語の能力はあまり影響が無い上に、専門分野において類まれな才能や業績のある人でも、外国語の試験をパスできずに博士号を取得できなかったという例もあったからである。
適正試験に合格すれば学位取得のための研究を開始することを認められ、研究成果がうまく実ればそれを学会で発表し、査読付き学術雑誌に論文を投稿・掲載し、十分に研究の経験を積んだと判断されれば、学位論文としてそれらをまとめ、いよいよ博士号取得のための最後の口頭試験である「最終防衛試験(Final Defence Examination、Final Oral、Thesis Defence、など。専門の教授陣からの鋭い質問や指摘から“防御”することからこのように呼ばれる。日本での「学位論文口頭発表会」にほぼ相当する)」を受けることができる。再受験が許されることも多いものの、この試験に落ちても退学になってしまう(重ねて強調しておくが、いかなることでも例外が認められることがあり、最終防衛試験を受けずに博士号の授与が認められる場合もある。ただし、その場合はふつう、受験すれば確実に合格であると見込まれている実力・業績のある場合に限られる)。しかし、この口頭試験は大学や分野によっては、大学院での研究業績や苦労を称える儀式の場という位置付けのところもある(この場合、査読に耐え得る一定のレベル以上の研究成果を出せるかどうかが鍵となる)。また、家族や友人を招待して自分の研究成果を説明するセクションが設けられている場合もあり、その場合はそのセクションの後に、大学の教授陣を含む専門家向けの発表・口答試験を行うことになる。試験が終われば受験者は部屋からの退室を命じられ、試験官達がすぐその場で合格か不合格かを合議する。結果が決まれば受験者は再び入室するように言われ、そこで試験の結果を伝えられる。合格すれば晴れて博士を名乗ることを許され卒業となり、合格した場合に備えて祝賀パーティーが準備されていることもある。なお、この口頭試験は大学や分野によって独特の雰囲気や伝統があることもある。冗長ながら一例をSteven G. Krantz著『A Mathematician's Survival Guide(数学者サバイバルガイド)』から引用しておく。「(プリンストン大学の最終防衛試験での)彼の発表の最中、彼が聴衆の側に振り向いたとき、彼は窓の外に(上の階からひもでぶら下げられた)プラカードを見つけた。そこにはこう書かれてあった。『君の学位論文の72ページには間違いがある。君は落第だ』。彼は笑い出し、試験官達はそれがジョークであることがすぐにわかった。彼らがそのプラカードを見たとき、ちょうど学位論文のコピーをすばやく配布していたのである。その学位論文は69ページまでしかなかったのだ。この出来事はスウェーデン(式の口頭試験)の伝統に基づくものであると私は思うのだが、それに心から賞賛の拍手を送りたい」。
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