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この項目では、理工学分野で電離気体を意味する用語について説明しています。
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プラズマ(英語:plasma、英語発音: /ˈplæzmə/)は固体・液体・気体につづく物質の第四の状態の名称であって、通常は「電離した気体」をイメージに持つ。ここではまず、プラズマの一般的解説を与え、ついでそれを巡るいろいろな話題について記す。プラズマの正確な定義と物性については別項目「プラズマ物理」を参照のこと。
目次
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プラズマ は、気体を構成する分子が部分的に、または完全に電離し、陽イオンと電子に別れて自由に運動している状態である。プラズマ中の電荷は、異符号の電荷を引き付けるため、全体として電気的に中性な状態に保たれる。また、構成粒子が電荷をもつため、粒子は電磁場を通して遠隔的な相互作用をすることができ、離れた領域にある粒子の運動に依存したふるまいをする。このように、分子からなる気体とは大きく異なった性質をもつため、プラズマは物質の三態、すなわち固体、液体、気体とは異なった、物質の第四態といわれる。
物質の四態は、古代ギリシアで考えられていた、世界を形成する4つの根源であり、「地」は固体、「水」は液体、「空気」は気体、「火」はプラズマ (炎はプラズマの一種) に対応するとして、ウィリアム・クルックスが、放電現象に対して「第4の物質の状態」という言葉を最初に用いた。
プラズマは身近にも存在し、実験室内で古くから真空放電の研究に伴って観察されていた。電離した気体を対象とした研究は、1920年代のアーヴィング・ラングミュアに始まり、そこでデバイ遮蔽やプラズマ振動の存在など、プラズマの基本的性質が次々と明らかにされた。そしてラングミュアは、1928年にこの物質状態に「プラズマ」という名前を与えた。さらに1950年代以降、エネルギー源としての原子核融合や、宇宙物理学、さまざまな工学的応用など、その研究が進展した。
プラズマは、中に多数の自由電子があるため電流が極めて流れやすいという特徴を持つ。電流が流れればその近辺に電磁場を生じ、それがまたプラズマ自身の運動に大きく影響する。そのため、プラズマ中では粒子は集団行動をとりやすく、外部から電磁場を掛ければそれに強く反応し、全体として有機的な(有機化学的という意味ではなく、有機体のように多くの部分が緊密に関連しながら全体が機能しているさまのこと)挙動が観測される。有機的挙動の1つの現れとして、プラズマ中には通常の気体中には存在しない、電場を復元力とする縦波であるプラズマ振動が存在する。
プラズマの厳密な定義や、プラズマ中の物理現象はプラズマ物理を参照のこと。
一般に気体中で放電することによって生成される。例えば、点灯している蛍光灯の内部は水銀ガスがプラズマになっている。これはグロー放電を起こし、クルックス管である蛍光灯内のアルゴンやキセノン等に経路状に電流が流れ発光するからである。なお、グロー放電は放電プラズマの一種である。
我々の生活に必要不可欠な炎もプラズマの一種である。他に強力な磁界をもつ高圧鉄塔の電線の周りには同心円状にプラズマが発生する。地下水脈で水が勢いよく岩盤にぶつかることでその空洞内に発生すると言われている。
2006年9月に打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」によって、恒星を取り巻くプラズマ化した大気の中で起こっている活発な現象を、より詳細に観測・研究できるようになった。
人工的なプラズマ | 地球上のプラズマ | 宇宙のプラズマ |
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電子温度のみが高いプラズマを低温プラズマといい、金属の内部や蛍光灯の内部は低温プラズマと見なされる。また、プラズマを構成する粒子すべての温度が高い状態を高温プラズマ(熱プラズマ)という。高温な熱プラズマは数万ケルビンにも及び、地球上のあらゆる物質を溶かしてしまうため、高融点の材料の開発が求められている。
種々な特性のプラズマは、原子核融合、プラズマディスプレイ、溶接、イオンエンジン、カーボンナノチューブをはじめとする立体構造を持つ様々な機能・特性を備えたハイテク新素材の生成技術に応用される。
プラズマは原子レベルで制御ができるため、人間の目では見えない非常に細かい穴を掘る (エッチング) 作業を行うことができる。レーザーアブレーションは、固体材料に強力なレーザーを照射することで、固体材料を気化し高密度プラズマを得る技術である。薄膜作成、クラスター生成、材料加工、医療、エネルギーなどの広範な分野で応用されている、最も発展的な分野のひとつである。シリコンなどの半導体にイオンを注入する手法は以前からあったが、近年制御性に優れたプラズマイオンを照射する技術が確立されたことにより、さまざまな原子や分子を直接ターゲットに注入し、アルカリ金属内包ナノチューブをはじめとする新機能超分子構造物質の創製が可能になった。磁化プラズマを用いる分野では、スパッタリングによってさまざまな機能性薄膜の形成が試みられている。高精度でプラズマを生成して制御する技術が確立した結果、従来よりもはるかに高品質のダイヤモンドを生成することにも成功している。
液中プラズマは、液体中でプラズマを発生させる技術である。液体に超音波で気泡を発生させて、その気泡に電磁波を照射することでプラズマを発生させる。周りが液体であるため、非常にたくさんの原料を溶液から供給することができ、さらに材料が高温に晒されて燃えることがないなどの利点を持つ。そのためプラスチックや紙などの母材にも、さまざまな物質をめっきすることが可能になる。
レーザープラズマ加速器は非常にコンパクトで高出力が得られる特徴を持つ。キャピラリー放電型プラズマチャンネルによって109eVのビーム加速に成功している。
核融合のプラズマから電力を得るには、猛烈な勢いを持つ荷電粒子を減速させるための逆電界を印加するだけでよい。粒子の運動エネルギーを直接電気エネルギーに変えることが出来るため、80%を超える極めて高い変換効率が実現可能である。従来の原子力のタービンを用いた熱 - 電気変換効率が30%程度であることを考えると、プラズマの直接発電は画期的と言える。
プラズマボールが放電によって電界と磁界を生み出す性質や、発生している電磁波を視覚的に捉えやすいことなどもあって、次世代型の健康的な電化生活環境を構築するための基礎研究用の実験装置として用いられている例もある。
産業分野で用いられている、半導体のような固体や、イオン化された液体なども、電荷の状態によっては一般的な従来からのプラズマの範疇に含まれることがある。半導体内での電子と正孔や、金属内の電子の振る舞いはプラズマと酷似しているため、固体プラズマと呼ばれる。
一般には電気的中性を保つとされるプラズマだが、超伝導状態のソレノイドで作り出した磁場内に、リング状の電極を配置したトラップ装置を使えば、磁界と電界の力を重ね合わせて、非中性状態のプラズマを何もない空中で捕獲することが出来る。このようなトラップ内に電子ビームを照射すると、電子のみで構成された電子プラズマを一定空間内に閉じ込めて高密度に蓄積することも可能になる。
このようにして集めた電子プラズマを減速材として用いて、陽電子を捕獲して蓄積することで、反物質プラズマを大量に生成して実験に用いる道が開けてくる。
プラズマがもつ熱エネルギーに比べて、粒子間のクーロン力が強い場合、プラズマは自由に動くことができない特殊な状態になり強結合プラズマと呼ばれる。木星や白色矮星の内部、中性子星の外郭などでは、プラズマ密度が固体密度を大きく越えるため、プラズマはその複雑なクーロン多体相互作用のために、液体や固体のような物性をもつと予想されている。実験室内で、液状や固体 (クーロン結晶を含む) の振る舞いをする電荷を持つ粒子群が、比較的簡単な方法で作り出されて研究されている。産業分野への応用も進められているため、電離した気体 = プラズマという、20世紀半ばにプラズマ物理が誕生する過程でに生まれた古い概念は、しだいに通用しなくなってきつつあるのが現状である。
ダストプラズマが自己組織化することによって、クーロン結晶などが生成されることが1994年に複数の研究チームによって確認されている。プラズマ構造を積極的に制御することにより、微粒子の糸状結晶なども容易に得ることができる。
プラズマは何らかのエネルギーが外部から供給されてゆらぎが生じると、不安定な様相を見せる。プラズマがゆらいで発生するフィラメント状の構造の代表的な例は、オーロラとして観察できる。パルス発信機を用いてX線放射の実験を行うことで確認できるが、フィラメントや渦といった構造は、条件が整うとお互いが生み出した磁場によって、同じ方向に動いているほかの渦を引き寄せて、自己組織化しながら成長していく。プラズマは螺旋状の渦を作ったり、一定条件下では渦糸が結晶構造を作ることもある。渦の成長はやがて止まって何らかの理由で自然消滅した後に、再び新たなフィラメントを生成ていくこともある。このような生成と消滅を伴うエネルギーのサイクルは、グレートウォールとポイドによって構成された、銀河の集団が作る気泡状の宇宙構造が生成されていくメカニズムの中にも認められる。
レーザープラズマ加速では、数十フェムト秒程のパルス長の高強度レーザーをヘリウムなどのガスジェットのプラズマに集光させて、振幅の大きなプラズマ波、すなわち、ウェーク場を励起する。このプラズマウェークは、数十ミクロンの球状の泡構造をしていることがわかっている。レーザーパルスがプラズマ電子を排除することにより、電子の真空状態が作られて、後に残されたイオンチャネルが周りからプラズマ電子を引き戻して収束しようとするために発生する。このとき1TeV/mといった強い電場が局所的に形成される。プラズマの泡が高エネルギーの電子を自ら入射するため、一種の自己組織化現象を伴うのが特徴である。発生するプラズマウェークは超伝導加速空洞そのものと言える。レーザーパルスとともに光速で運動するミクロンサイズの自己組織化型の加速器がプラズマのガスジェット中に瞬時に生成されては消えていることになる。レーザープラズマ加速器の加速距離を得る工夫が進められた結果、キャピラリー放電型プラズマチャンネルによって109eVのビーム加速に成功している。現在3×1015Wのレーザーを用いて1010eV級の加速に挑戦する計画が進められている。
地球の電離層を巨大なプラズマ実験室として活用する試みでは、電離層プラズマに対して、100MW級3-10MHzの強力な電波を照射して、反射層付近で生じるさまざまなプラズマ非線形現象が調査されている。キャビトン乱流が発生しては消えていく、生成と消滅の時間的サイクルを伴った構造などもその一つである。将来は電離層プラズマ内により高度な構造を形成していき、電離層プラズマから直接発電で電力を得ようとする構想も描かれている。電離層プラズマを構造化し、そこを流れる電流を用いて演算処理するシステムを作る構想も登場している。
英語のplasmaは母体、基盤、そして鋳型 (mold) といった意味のギリシア語をもとにしている。放電現象が放電管の中で隅々まで広がる様子を見てラングミュアが命名したといわれている。
元のギリシア語は宗教用語としても使われ、神に創造されたものといった意味で使われていたことから、神秘的なもの、霊的なものとも結び付けられ、エクトプラズム (ect plasm) といった用語もある。
オカルトへの解釈として、高温プラズマが目撃されると火の玉と見られることや、プラズマから発せられる高磁場が脳波へ影響を及ぼす事により幻覚症状が引き起こされることがローレンシアン大学脳神経学部マイケル・パーシンガー博士による経頭蓋磁気刺激法実験で実証されていることから、UFOや霊、ミステリーサークルなど、あらゆる超常現象の真相であるとする説が、早稲田大学の大槻義彦教授をはじめとする著名人により唱えられている。
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