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主食(しゅしょく)とは、食事の中心として主要なエネルギー供給源になる食物のこと。食糧(しょくりょう)。栄養素として炭水化物が豊富な作物が選ばれる。
主食のほとんどは、穀物(米・小麦・大麦・モロコシ・トウモロコシ等)または芋類(ジャガイモ・タロイモ・ヤムイモ・サツマイモ・キャッサバ等)のいずれかに分類される。その他に、各種豆類(大豆等)、果実類(プランテン、パンノキ)、サゴ等も利用される。
「主食」を字義通り「主な食物」と捉える場合、該当する食物は多岐にわたる。この定義では、イヌイットの主食は肉と魚であり、食物エネルギー源が畜産物33%・穀類26%・芋類4%で構成される西ヨーロッパの主食は畜産物や穀物だと言える。一方「主食」には、栄養価が高く(=エネルギー効率の良い炭水化物、特にデンプン質を多く含む)、他の食用作物に優先して耕作される作物(およびその加工食品)という含意がある。該当する代表的な作物には、米や小麦等のイネ科の穀類、ジャガイモやキャッサバ等の芋類がある。
それぞれの国や地域においてどの作物が主食に選ばれるかは、気候・土壌・地形・生態系等の自然条件、農業政策や農業技術等の社会条件、好まれる味覚や食文化によって左右される。世界には食用となる植物が50,000種以上あるが、人類の栄養源として特に重要度の高い作物は数百程度である。そのうち15種の作物が全世界で摂取される食物エネルギーの90%を支え、うち米・トウモロコシ・小麦だけで世界人口の3分の2に当たる40億人の主食を占める[1]。
イネ科の穀類には10,000種以上があるが、広く耕作されている種はその一部である。世界的に重要な作物としては米、小麦、大麦、トウモロコシがある。途上地域においては、モロコシ(別名:ソルガム・コーリャン)や雑穀類(アワ・キビ・ヒエ・シコクビエ・トウジンビエ等)も重要な栄養源である。ヨーロッパのうち小麦の生育に適さない寒冷で土壌の痩せた地域では、伝統的にライムギやエンバク(オートミール)が利用されてきた。テフはエチオピアの伝統的な主食作物である。イネ科以外の作物についても穀類に含めることがあり(「擬似穀類」)、日本のソバ、アンデス地域のキヌア・アマランサス等が該当する。穀類は生食に適さず、そのまま加熱して粒食(米飯等)するほか、製粉して麺(パスタ等)や発酵パン等に加工して食される。
芋類(ジャガイモ・タロイモ・ヤムイモ・サツマイモ・キャッサバ等)は途上地域の10億人以上の人々にとって重要な主食であり、サハラ以南のアフリカの人口の半数にとっては食料源の約40%を占める。特にキャッサバは熱帯の途上地域において重要であり、約5億人の主食となっている。芋類の一般的な特徴としては、炭水化物・カルシウム・ビタミンCに富むが、タンパク質に乏しいことが挙げられる。
この他に豆類(大豆・インゲン・ササゲ・エンドウ・ソラマメ・レンズマメ・ヒヨコマメ・ラッカセイ等)が限定的に主食とされる。豆類は、タンパク質に富むが炭水化物に乏しい。熱帯地域ではプランテン(調理用バナナ)が古くから利用されている。一部の地域では、パンノキの果実や、サゴ(サゴヤシの髄)を主食とする。
世界生産高 2008 |
作付面積当たり平均生産高 2010 |
作付面積当たり最大生産国 2010[3] |
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順位 | 作物 | (トン) | (トン/ヘクタール) | (トン/ヘクタール)[4] | 国 |
1 | トウモロコシ | 823百万 | 5.1 | 28.4 | イスラエル |
2 | 小麦 | 690百万 | 3.1 | 8.9 | オランダ、ベルギー |
3 | 米 | 685百万 | 4.3 | 10.8 | オーストラリア |
4 | ジャガイモ | 314百万 | 17.2 | 44.3 | 米国 |
5 | キャッサバ | 233百万 | 12.5 | 34.8 | インド |
6 | 大豆 | 231百万 | 2.4 | 3.7 | トルコ |
7 | サツマイモ | 110百万 | 13.5 | 33.3 | セネガル |
8 | モロコシ | 66百万 | 1.5 | 12.7 | ヨルダン |
9 | ヤムイモ | 52百万 | 10.5 | 28.3 | コロンビア |
10 | プランテン | 34百万 | 6.3 | 31.1 | エルサルバドル |
以下は主要な主食作物10種の栄養比較である。但し、この値は生のものであり、直接摂取する量ではない。加工・調理によって消費可能になるが、数値は異なるものとなる。
主食 | トウモロコシ[A] | 米[B] | 小麦[C] | ジャガイモ[D] | キャッサバ[E] | 大豆[F] | サツマイモ[G] | モロコシ[H] | ヤム[I] | プランテン[J] |
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成分 | 100gあたりの含有量 | |||||||||
水分(g) | 76 | 12 | 11 | 79 | 60 | 68 | 77 | 9 | 70 | 65 |
熱量(kJ) | 360 | 1528 | 1419 | 322 | 670 | 615 | 360 | 1419 | 494 | 511 |
タンパク質(g) | 3.2 | 7.1 | 13.7 | 2.0 | 1.4 | 13.0 | 1.6 | 11.3 | 1.5 | 1.3 |
脂肪(g) | 1.18 | 0.66 | 2.47 | 0.09 | 0.28 | 6.8 | 0.05 | 3.3 | 0.17 | 0.37 |
炭水化物(g) | 19 | 80 | 71 | 17 | 38 | 11 | 20 | 75 | 28 | 32 |
食物繊維(g) | 2.7 | 1.3 | 10.7 | 2.2 | 1.8 | 4.2 | 3 | 6.3 | 4.1 | 2.3 |
糖(g) | 3.22 | 0.12 | 0 | 0.78 | 1.7 | 0 | 4.18 | 0 | 0.5 | 15 |
カルシウム(mg) | 2 | 28 | 34 | 12 | 16 | 197 | 30 | 28 | 17 | 3 |
鉄(mg) | 0.52 | 4.31 | 3.52 | 0.78 | 0.27 | 3.55 | 0.61 | 4.4 | 0.54 | 0.6 |
マグネシウム(mg) | 37 | 25 | 144 | 23 | 21 | 65 | 25 | 0 | 21 | 37 |
リン(mg) | 89 | 115 | 508 | 57 | 27 | 194 | 47 | 287 | 55 | 34 |
カリウム(mg) | 270 | 115 | 431 | 421 | 271 | 620 | 337 | 350 | 816 | 499 |
ナトリウム(mg) | 15 | 5 | 2 | 6 | 14 | 15 | 55 | 6 | 9 | 4 |
亜鉛(mg) | 0.45 | 1.09 | 4.16 | 0.29 | 0.34 | 0.99 | 0.3 | 0 | 0.24 | 0.14 |
銅(mg) | 0.05 | 0.22 | 0.55 | 0.11 | 0.10 | 0.13 | 0.15 | - | 0.18 | 0.08 |
マンガン(mg) | 0.16 | 1.09 | 3.01 | 0.15 | 0.38 | 0.55 | 0.26 | - | 0.40 | - |
セレン(mcg) | 0.6 | 15.1 | 89.4 | 0.3 | 0.7 | 1.5 | 0.6 | 0 | 0.7 | 1.5 |
ビタミンC(mg) | 6.8 | 0 | 0 | 19.7 | 20.6 | 29 | 2.4 | 0 | 17.1 | 18.4 |
チアミン(mg) | 0.20 | 0.58 | 0.42 | 0.08 | 0.09 | 0.44 | 0.08 | 0.24 | 0.11 | 0.05 |
リボフラビン(mg) | 0.06 | 0.05 | 0.12 | 0.03 | 0.05 | 0.18 | 0.06 | 0.14 | 0.03 | 0.05 |
ナイアシン(mg) | 1.70 | 4.19 | 6.74 | 1.05 | 0.85 | 1.65 | 0.56 | 2.93 | 0.55 | 0.69 |
パントテン酸(mg) | 0.76 | 1.01 | 0.94 | 0.30 | 0.11 | 0.15 | 0.80 | - | 0.31 | 0.26 |
ビタミンB6(mg) | 0.06 | 0.16 | 0.42 | 0.30 | 0.09 | 0.07 | 0.21 | - | 0.29 | 0.30 |
葉酸 計(mcg) | 46 | 231 | 43 | 16 | 27 | 165 | 11 | 0 | 23 | 22 |
ビタミンA(IU) | 208 | 0 | 0 | 2 | 13 | 180 | 14187 | 0 | 138 | 1127 |
ビタミンE(α-トコフェロール:mg) | 0.07 | 0.11 | 0 | 0.01 | 0.19 | 0 | 0.26 | 0 | 0.39 | 0.14 |
ビタミンK(mcg) | 0.3 | 0.1 | 0 | 1.9 | 1.9 | 0 | 1.8 | 0 | 2.6 | 0.7 |
ベータカロチン(mcg) | 52 | 0 | 0 | 1 | 8 | 0 | 8509 | 0 | 83 | 457 |
ルテイン+ゼアキサンチン(mcg) | 764 | 0 | 0 | 8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 30 |
飽和脂肪酸(g) | 0.18 | 0.18 | 0.45 | 0.03 | 0.07 | 0.79 | 0.02 | 0.46 | 0.04 | 0.14 |
一価不飽和脂肪酸(g) | 0.35 | 0.21 | 0.34 | 0.00 | 0.08 | 1.28 | 0.00 | 0.99 | 0.01 | 0.03 |
多価不飽和脂肪酸(g) | 0.56 | 0.18 | 0.98 | 0.04 | 0.05 | 3.20 | 0.01 | 1.37 | 0.08 | 0.07 |
A スイートコーン、黄色、生 | B 長粒種、生 | ||||||||
C デュラムコムギ | D 皮付き、生 | ||||||||
E 生 | F 緑色、生 | ||||||||
G 生、未加工 | H 生 | ||||||||
I 生 | J 生 |
主食は栄養価の高い食物ではあるが、主食を摂るだけで全ての栄養素が摂取できるわけではないため、栄養失調を防ぐには他の食物も摂る必要がある。たとえば、トウモロコシ主体の食事ではナイアシン欠乏によりペラグラの発症リスクが高まり、白米主体の食事ではビタミンB1欠乏により脚気を患う恐れが高くなる。[6]
主食は、活動エネルギーを得る上で主要な役割を果たしている。このため農業の分野ではこういった作物は集中的に栽培され、またこれら主食は年間を通して同じ物が求められることから、雨季/乾季や春夏秋冬など季節の別なく栽培できるものか、または乾燥させることで長期間保存できるものが求められる傾向が見られる。
ただ単一の農作物に対する依存度が増大すると、その作物に固有の病気が発生し易くなる連作障害といった問題もあり、歴史に見るところではジャガイモ飢饉のように大勢の犠牲者を出した例もあれば、天候不順で主食作物の栽培に支障が出た際に社会的混乱が発生する傾向もある(→飢饉)。近年に於いても日本で1993年に発生した「米騒動」のように、他の米生産国市場を巻き込んだ問題に発展したケースもある。こういった主食作物は穀倉地帯といった農業生産地域に集中する傾向もあり、こと単一作物でもあることから、ある特定の原因により一律に問題を被り易い。
また日本人が米飯に強い愛着心を持つことにも絡むが、主食作物の栽培を手厚く保護した政策を行っていた場合には、これに絡む国際問題に発展した例も見られる(→食糧管理制度)。
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主食は、その地域に生活する人々が活動に必要なエネルギーを取るために食べているものだが、どのような作物が主食として選ばれるかは、それぞれの国や地方の食文化によるところが大きい。基本的には、日々一定量の供給が必要な好気呼吸の材料となるものが、食事成分としては量的に重要である。これは炭水化物、特にデンプン質として取り入れる例が多く、デンプンを主体とした種子(穀物)や根菜など、あるいはその加工品である例が多い。また、全般的に主食には淡白でかすかに甘みのある味の食物が用いられることが多い。その一方では、マメ類を主食としている地域は殊のほか少なく、「主に食べられている作物」ではあっても、主食として呼び得るかが微妙な傾向も見られる。ただ、栄養学的な見地から見て、そのいずれもが語義どおりに「主食」たりえるかについては、議論の余地がある。たとえば、エスキモーなど狩猟民族では肉や魚が主食と見なされているが、日本や欧米諸国で通常行われる調理方法で食べているわけではない。彼等は古来から肉や魚をもっぱら生食する習慣があるため、人間の生命維持のために必要不可欠な栄養素の不足が生じないよう、その経験から巧みに回避してきた。
ただし、実際の食生活においては、栄養学的観念よりも、むしろ食事スタイルによって主食が決定される場合が多い。すなわち、味付けをしない米飯を、味付けを濃くした副食と組み合わせて食するという、日本をはじめ米を主食とする地域で広く行われている食事スタイルである。麺類は一般に主食と考えられるが、時には米飯のおかずとされ副食扱いされるのは、このためである。また日本では、貧しい層は米が食べられなかった時代、あるいは飢饉や戦争時に、雑穀の飯やサツマイモ、すいとんを主食とした時代があるが、副食と組み合わせて食べる雑穀の飯は主食扱いされたのに対して、単独で食する事ができるサツマイモやすいとんは「代用食」と呼ばれ正規の主食扱いされなかった。
従って欧米においては、主食という概念があまり存在しない。例えばイギリスの食文化では、日本人の視点からすればイギリス人が大量に食するチップス(フライドポテト)やベイクドポテト、もしくは、料理と区別して出されるパンを主食にしているように見えるが、イギリス人自身の認識からすればチップスなどのジャガイモ料理はあくまで主菜の付け合わせという位置づけである。パンにしても、ジャムやバターを塗って食し、日本のように味のついた副食と一緒に食べるということをしない。しかし例えば、味付けしないパンや、茹でただけのジャガイモを、味付けしたスープその他の料理と一緒に食するというスタイル(かつての一般庶民は、長年にわたってこのような食事スタイルであった)など、日本の米飯と副食の組み合わせと類似する場合もある。
日本では酒席などでは、終盤に米飯など主食となる料理を「締め」として別に食べることが一般的である。ほぼ満腹になっていても、主食が出ないと「食事」とならないと考える人が多い事を示している。これは韓国などの近隣諸国にも見られる。しかしこの場合の米飯などは、種々の料理を副食として主食を食べている訳ではない事になる。こういった食べ方は、ある意味、主食の概念が薄い欧米におけるパンの食べ方と類似すると言える。例えば日本では、鍋料理を食べた場合、最後に鍋の残りに米飯を入れておじやとして食する例が多いが、欧米でも料理を食べた後に残ったソースを、最後にパンでぬぐって食べて「締め」とする例が多い。
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