出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/05/16 17:06:22」(JST)
「雪」のその他の用法については「雪 (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
雪(ゆき、英: snow)とは、大気中の水蒸気から生成される氷の結晶が空から落下してくる天気のこと。また、その氷晶単体である雪片(せっぺん)、および降り積もった状態である積雪(せきせつ)のことを指す場合もある。後者と区別するために、はじめの用法に限って降雪(こうせつ)と呼び分ける場合がある[1]。
数種類ある降水現象の1つである。固体(氷)の形態としての降水は雪だけではなく、霰(あられ)、ほかに雹(ひょう)、凍雨(とうう)、細氷(さいひょう=ダイヤモンドダスト)がある。なお、霙(みぞれ)は雨と雪が混在して降る天気をいう[2]。
雪および細氷は「氷の結晶」、霰・雹・凍雨は「氷の粒」という違いがある。また霰・雹・凍雨は、いずれも雪片が落下するまでの間に融解や凝固(凍結)を経ることで生成されるため、雪片では微細な規則性のある結晶構造が発達し密度が比較的低い(空気を多く含む)のに比べ、霰・雹・凍雨の粒は規則性のない結晶から構成され密度が高い(空気をあまり含まない)という違いがある。そして、雪は「(浮遊する濃密な雪片の塊である)雲から落下してくる」のに対して、細氷は「晴れた空から(地表付近で水蒸気が昇華して生成され)落下してくる、氷の微小な結晶」という違いがある。細氷の大きさはふつう直径30 - 200 μm程度であり、雪に比べて非常に小さい[2]。
「天気」としての雪は使用する場面によって、他の現象を含んだり、さらに細かく分類されたりする。気象庁が観測・記録する際の15種天気では、「雪」に細氷が含まれる[3]。また、国内気象通報の日本式天気図における21種天気では[4]、細氷を含めた上で、雪は強さと降り方により区分され、降ったり止んだりで強度変化の激しいものを「にわか雪(驟雪)」、1時間降水量3mm以上を「雪強し」、1時間降水量3mm未満を「雪」とする。さらに、雪片の大きさにより区分する場合があり、雪片の直径が1mm未満のものを「霧雪」、1mm以上のものを「雪 」とする[5]。切片の大きさによる区分は国際的に統一されており、国際気象通報式(96種天気)で用いられる。
天気予報の予報文では、凍雨や雪あられ(雪が凝集した白い霰)は雪、氷あられ(半透明・透明な霰)は雨として扱う。ただし予報と観測では分類が異なり、実際に凍雨や雪あられが降った場合でも、観測上は雪が降ったとはされない。また、暴風雪、豪雪、大雪、小雪、にわか雪などは、気象庁により予報用語として定義されている[6]。
また、各地の気候を見る資料の1つとして、その冬初めての雪(初雪)やその冬最後の雪(終雪)を記録しているところがある。日本では現在気象庁が有人気象観測点や雨雪判別機能付き自動気象観測装置設置点で記録をとっている。この場合には、霙も雪に含めて考える。さらに気象庁は、各地の気象台から主要な山の積雪を目視で観測しており初冠雪として記録している[6]。
ふつう、ある時点における積雪の深さを積雪量や積雪深(積雪の深さ)といい、雪尺(ものさし)や積雪計により観測する。また、一定時間に積もった雪の量を降雪量や降雪の深さという。降雪の量を液体に換算することも行われており、雪を溶かして降水量として観測する[6]。
空から降る雪片の形や大きさはさまざまであり、直径1cmに満たないような小さなものを「粉雪」、綿状に集まったものを花のボタンになぞらえて「牡丹雪、ぼたん雪」(略して「ぼた雪」とも)などと呼ぶ[1](後述参照)。こうした違いは雪が成長してくる過程で生じるもので、気温や湿度などに大きく左右される。なお、雪は天然に産出する無機質の結晶構造を持つ物質であるため、鉱物の一種と分類されることがある。
雪の状態を細かに表した、淡雪、薄雪、粉雪、細雪、どか雪、べた雪、ぼたん雪、綿雪などの表現がある。降雪に関しては、慣習的に以下の7つの分類が存在する。
こな雪(粉雪) | さらさらとした粉末状で、乾燥した雪。寒冷な地域に多い。パウダースノー。 |
---|---|
たま雪(玉雪) | 球形をした雪。雪のシーズンの初めや終わりの時期、また雪雲のでき始めている先端部分などで見られる。 |
はい雪(灰雪) | 空中をすらっと降りてくるのではなく、灰のようにひらひらと舞いながら降りてくる雪。やや厚みがあり、日光に当たると陰影ができて灰色の影ができる。 一般的な降雪としてはこれが最も多い。 |
わた雪(綿雪) | 手でちぎった綿の様に大きな雪片からなる雪。水分を含み、重みのある雪。降雪地帯の中でも温暖・多湿な地域に多い。 |
もち雪(餅雪) | 融解が始まっており、水分を多く含む雪。雪の塊は餅のように柔らかく自由に形状を変えられる。 |
べた雪 | もち雪よりも水分が多く、べちゃっとした雪。団子状に固まっていることもある。ぼた雪、ぼたん雪。 |
みず雪(水雪) | べた雪よりもさらに融解が進み、水気の多い雪。みぞれと同じ。 |
また、日本雪氷学会では、雪質によって積雪を9つに分類している(→詳細は積雪を参照)。
農林省の積雪地方農村経済調査所(通称、雪害調査所)では以下のように分類していた[7]。
乾雪(かわきゆき) | 灰雪 | 最も細かく風にとぶもの |
---|---|---|
粉雪 | 灰雪よりもやや大きいもの | |
玉雪 | 最も大きく円い塊となり飛ぶもの | |
綿雪 | 綿のようにふかふかしたもの | |
潤雪(ぬれゆき) | 餅雪 | つかむと軽い手触りのもの |
濡雪 | ややべたつくもの | |
水雪 | もっと水分が多いもの | |
締雪(しまりゆき) | 小締雪(こじまりゆき) | しまり加減による |
硬締雪(かたしまりゆき) | 同上 | |
潤締雪(ぬれしまりゆき) | 潤締雪 (べたしまりゆき) | |
水締雪 (みずしまりゆき) | ||
粒雪(ざらめゆき) | 小粒雪(こざらめゆき) | |
大粒雪(おおざらめゆき) | ||
凍雪(こおりゆき) | 小凍雪(こごおりゆき) | |
硬凍雪(かたごおりゆき) | ||
氷板(ひょうばん) | 全く氷化したもの |
こういった分類や名称は、地域によっても独特なものがある。また太宰治の小説「津軽」の冒頭では、津軽の雪として7種類の雪の名称が紹介されている。ただしこれらは、明確な定義がないため天気予報などの正確性が要求される場面では用いないこととされている[6]。
ここまでは日本語での雪の分類について述べたが、日本語以外の言語、特に北米や北欧などの雪の多い地域では、雪に関してさらに多様な表現をするところがあるほか、雪を表す言葉の体系が根本的に異なる言語もある。例えば、エスキモーの中のある言語では雪の形態ごとに呼称が存在し、「雪」を表す総称が存在しないという[注釈 1](言語的相対論、サピア=ウォーフの仮説なども参照)。
発達中の雲の中では、空気が上昇に伴い冷却され、空気に含まれる水蒸気が大気中の微粒子(エアロゾル粒子。一般的には10nm - 10μm程度の大きさ。)を核にして凝結し、水滴を生成している。雪ができるまでのプロセスは、気象学で一般に「冷たい雨」のプロセスと呼ばれる氷を経て融解して生成されるタイプの雨と途中まで共通している。
物理学の理論的には、気温が0 ℃以下となり、空気に含まれる水蒸気の量が氷に対して過飽和となれば、雲の中に氷の結晶(氷晶)が生成されると考えるが、実際には分子レベルで水分子が集まって氷になろうとしても、ある程度の大きさにまとまらなければ不安定のため分裂してしまう。
実験により、微粒子を含まない清浄な空気では、空気を過飽和にして0 ℃以下に冷やしても凍結せず過冷却の水滴のままであり、-33℃程度で凍結し始め、-41℃程度で完全に凍結することが知られている。実際の大気中では、巻雲ができるような高高度ではこれに近いようなことが起こっていると考えられるが、地上に降水をもたらす高度の大気には多くの微粒子が含まれるため、これほど低温まで過冷却が保たれることはない。観測によれば、雲の最頂部(雲頂)の気温が0 ℃から-4 ℃程度の雲の中はほとんどが過冷却の水滴で構成されていることが知られていて(こういった雲の中を通過する航空機は衝突した水滴が凍結して張り付く着氷の危険にさらされるという問題がある。)、これより低温になるほど氷晶が多くなる。
氷晶の核となる微粒子(氷晶核という)は働く温度が異なる。土壌由来の鉱物粒子であるカオリナイトは-9 ℃、人工降雨によく用いられるヨウ化銀は-4 ℃で氷晶核として働き始めるとの報告がある。この性質の違いのため、一般的には1 m3中の氷晶核の数は、-10 ℃で10個程度、-20 ℃で1,000個程度である。しかし、氷晶には凍結の際に割れたりする増殖作用があるためそれよりもずっと数が多く、雲の中の氷晶の数は-5 ℃から-10 ℃で氷晶核の1,000-10,000倍、-20 ℃から-30 ℃で10-100倍である。
なお、氷晶は気体の水蒸気が昇華して直接固体になるものもあれば、一度凝結して水滴となったあと凍結して固体となるものもある。これは氷晶核の吸湿性の有無といった物理的性質に左右される(氷晶核を参照)。
こうしてできた氷晶は、主に昇華凝結過程、凝集(併合過程)、ライミングの3つにより成長する。
雲の中で水滴が凝結して成長する速度に比べ、水滴が昇華して成長する速度は数倍から数十倍速い。これは、過冷却水の表面よりも氷の表面のほうが飽和水蒸気圧が低いことが原因である。例えば-10 ℃での飽和水蒸気圧は、過冷却水の表面ので2.86 hPa、氷の表面で2.60 hPaである[8]。よって、-10 ℃で水蒸気圧が2.60 hPaを僅かに超えると、氷晶の周りの水蒸気が氷晶表面へと昇華し始め、氷晶が大きくなる。氷晶が大きくなるに従い、その近くにある過冷却水滴は不安定となって蒸発し、さらに氷晶表面へと昇華していく。このようにして氷晶への昇華が進む(昇華凝結過程という)。昇華凝結過程による成長速度は、氷晶が小さい時に速く、大きくなるにつれて遅くなる。
ある程度成長して昇華が遅くなった氷晶は、重さも増してくる。上昇気流の速度に対して落下の速度が打ち勝つと落下を始める。氷晶はその大きさと形状により落下速度が違う。例えば、針状の長さ1mmの氷晶は0.5 m/s2、粒状の直径1mmの氷晶は1 m/s2の加速度である。速度が違うと落下途中で衝突し、跳ね返し合ったり、こわれたり、くっついたりする(凝集または併合過程という)。氷晶同士がくっついて大きくなったものは雪片という。凝集による成長速度は、雪片が小さい時に遅く、大きくなるにつれて速くなる。-12 から-15 ℃で水蒸気圧の高いときにできる「樹枝状」の氷晶はくっつきやすく、この気温のところでは大きな雪片がよくみられる。また、気温が高くなるとくっつきやすく、-5 ℃以上のところでは多くの氷晶同士がくっつきあい「牡丹雪」のような大きな雪片がよくみられる。
雲の中でできはじめた頃の氷晶は非常に小さく、直径0.01mm以下である。成長した雪は直径0.5mm - 10mm(1cm)くらいだが、大きな雪片では3cm前後にもなる。
こうしたプロセスを経て雲の底を抜け、地上に達して雪となる。成長した雪が落下する間に、周囲の高温により融解することなく地上に到達すると、雪として観測される。
一方、上昇気流の強い雲の中では、大きな氷晶や雪片が長く浮遊を続ける場合がある。すると、氷晶や雪片は過冷却水滴と衝突し、氷の表面に張り付くように凍結して成長する(ライミング)。付着形態は凍結速度により異なり、大きく凍結の遅いようなものは薄く球形に広がるように付着するが、小さく凍結の速いようなものは粒の形状を残したままいびつな形に付着する。このようにして氷の粒ができると、霰(氷あられ)や雹として降ることになる。また関連して、氷の粒同士の衝突が雲の中で繰り返されると、氷や水滴が帯電して電位差が蓄積され、しばしば雷が発生する。
雪片が、気温が0 ℃より高い層と気温が0 ℃より低い層を交互に通過すると、雪片のまわりの水分が再凍結して雪の結晶が混じった白色不透明の霰(氷あられ)が降ることがある。また、雪片が完全に融解して水滴になったあと気温が0 ℃より低い層を通過すると、透明な氷の粒である凍雨が降ったり、過冷却の水滴である着氷性の雨が降って地面や屋外の物体表面に雨氷と呼ばれる硬い付着氷の層ができることがある。こうした降水は逆転層の発生が関与しており、発生のしやすさは地形の影響がある。
気温が0 ℃より高いと雪は解け始め、完全に解けると雨になる。地上付近の高度で雪が解け始めているならば、天気としては雨と雪が交じった霙となる。
ただし、気温が0 ℃以上であっても、空気が乾燥している場合には、昇華や蒸発によって熱が奪われるため、すぐには雨にはならず雪のまま地上に到達する。一方、空気が湿っている場合には、昇華や蒸発が鈍いためすぐ雨になる。一般的な経験式(後述)によれば、湿度50%では地上気温5℃でも雪になる一方、湿度90%では地上気温3℃でも雨になる[9]。
雪が解け始める湿度は、地上気温にほぼ比例している。気温T℃のとき、湿度が(%)以上で雪が解け始めるといった線形の経験式が成り立つ。つまり、これ以下の湿度であれば完全に雪である。また、気温約4℃以下では、この湿度以上でもある程度の幅で融解層(霙)が存在し、もっと湿度が高くなければ完全な雨にはならない。この範囲では、湿度が(%)以上で完全に雪が溶けるといった二次式での経験式が成立する。これ以上の気温では、融解層が存在しないため、線形の経験式における湿度が高い側で完全に雨となる。融解層の幅や約4℃という境界点温度は、雪片の大きさや密度に依存し、切片が大きいほど解けにくいので幅が大きく、境界点温度は高くなる[10]。
標高の低い平地、特に冬の太平洋側の平野部で雪が降る目安として、上空1500 m(高層天気図の850 hPa相当)で-6 ℃未満、または上空5500 m(同500 hPa相当)で-30 ℃未満とされている。また、上空1500mで-12℃未満、または上空5500 mで-36 ℃未満だと大雪の可能性がある。これを高地の場合で考えるには、気温減率に沿い標高が100 m高くなるごとに約0.6 ℃ずつ上げればよい。例えば、標高2,000 mで雪が降る目安は1500 mで 6℃未満、5500 mで-18 ℃未満と考えられる。なお、南岸低気圧による本州南岸の雪は東京圏の交通への影響などのリスクが高いにもかかわらず、わずかな風向や気温の差異が雨雪判別に影響し、予報が外れる場合が多いため比較的難しいとされている[11]。
降雪と同時に強風が吹いている状態を吹雪という。また、積雪のあるところでは、降雪がなくても雪が強風により舞い上がりこれを地吹雪という。地吹雪を伴うような寒冷な強風をブリザード(Blizzard)という。吹雪やブリザードは視界を悪化させ、交通や生活に支障をもたらす。
雪の結晶は、成長過程の大気中の環境条件によりその形を大きく変える。そのパターン(晶癖)は研究によりいくつかの類型が知られている。
基本的な形状として、平らな六角形の「角板」、柱状の六角形の「角柱」、細長い「針」がある。研究によれば気温と、湿度(過冷却水の飽和水蒸気圧に対する氷の飽和水蒸気圧の差)に相関性がある。0から-3 ℃付近では「角板」、-3 から-10 ℃付近では湿度が低いと「角柱」、中程度では角柱が中空になった「骸晶角柱」、高いと「針」や針が中空になった「鞘」、-10 から-22 ℃付近では湿度が低い方から順に「厚角板」「骸晶厚角板」「角板」「扇形」、-22 ℃以下では湿度が低い方から順に「角柱」「骸晶角柱」「鞘」になる。また、-12 から-15 ℃付近の高湿度では「樹枝状」が発達する[12]。
1936年3月12日、北海道帝国大学で中谷宇吉郎が雪の結晶を世界で初めて人工的に作成した。中谷が作った人工雪発生器は、ウサギの毛を結晶の核として用い、器具の中で水蒸気を対流させるものであった。発生器を用いた研究で、中谷は、雪の結晶の形が気温と湿度によって変わることを明らかにした。中谷は「雪は天から送られた手紙」という言葉を残している。
気象レベルでの人工降雪は、人工降雨と原理的に変わらない。雲の中にヨウ化銀を撒布する方式が主に用いられる。
雪が少ないスキー場では、人工降雪機を用いて人工雪を作るが、この人工雪は氷点下において大型の送風機の先端から加圧した水を噴霧し、噴霧した水が減圧による断熱冷却と周囲の大気による冷却により凍結することによって、雪のような微細な氷の粒を生み出すものである。よって、ある程度気温が低い環境、概ね-2 ℃以下でなければ人工雪を生成できない。人工降雪機によって作られた人工雪は霧状の水が凍ってできた単なる球状の氷の粒であり、自然現象による雪や中谷らの研究が生んだ人工雪のように、大気中で成長する核を持った結晶とは質的に異なるものである。
雪は、入ってきた光(太陽光)をほとんど吸収することなく散乱光として送り出す。太陽光には幅広い波長の光が含まれるが、波長が違っても散乱強度に大きな差がなくまんべんなく散乱するという性質のために、真っ白い色に見える。大量の積雪は日光の下で青みを呈することがある。晴れた空の下で雪洞などの雪を下から見ると青く見えやすい。これは氷のもつ光の吸収特性によるもので、青色にあたる波長0.45 μm付近の光が最も吸収が少なく透過しやすいためである。ただし氷に気泡や土砂などが混じると青みは失せて見える[13]。
雪が大気中の浮遊物を取り込み、変色した例も数多く報告されている。例えば、朝鮮半島では古くから、黄砂が混じった黄色あるいは赤みがかかった雪が降ることがあった。これは日本でも報告されており、江戸時代の書物に「紅雪」「黄雪」などなどの記述が残っている[14]。また、2007年2月2日には、ロシアのオムスク州で、およそ1,500km²にわたる広い範囲でオレンジ色の雪が降った。この雪は悪臭を伴っており、通常の雪の4倍の鉄分を含んでいたという。その原因は詳しく分かっていない[15]。
現在の平均的気候では雪は一般的に、北極および南極の両極を中心とした高緯度の地域、また中低緯度の高地で見られる。赤道をはさんだ低緯度地域を中心として、雪が降らない地域も存在する。例えば日本では、沖縄県で気象庁の公式観測により雪を記録したのは3例のみであり、1977年2月17日と2016年1月24日の久米島、および2016年1月24日の名護市で、いずれも霙であった[16]。
降雪や積雪の様子を暖かいところから寒いところへ順に見ていくと、降雪がない地域、降雪のみがあり積雪がない地域、積雪がある地域へと遷移するのがふつうである。積雪のある地域はさらに暖かいところから順に、根雪の無い地域、根雪のある地域、雪線、万年雪のある地域、氷河のある地域へと遷移する。山岳や高緯度地域では、こうした遷移の分布が雪線や森林限界に関係している。雪線と森林限界の間には、積雪期以外でも凍上などが生じて周氷河地形がみられることが知られている。
ケッペンの気候区分においては、最暖月平均気温が0 ℃未満の地域を氷雪気候といい、この地域では概ね年間を通して地表は積雪、氷河、氷床に覆われ、ほぼ年間を通して雪が降る。氷河や万年雪はふつう、冬季の積雪が新雪として堆積する一方、夏季に降った雪や氷河本体が部分的に融解して流出し、その収支がバランスしている。これが崩れ、積雪が上回ると氷河が前進し、融解が上回ると氷河が後退する。
雪をもたらす気象現象を規模別に見ていく。総観スケールでは温帯低気圧やそれに付随する前線、寒冷低気圧(寒冷渦)、北極前線・南極前線・寒帯前線に伴う擾乱などが雪を伴った天気をもたらすことがある。メソスケールのうちメソαスケールでは、極低気圧のほか、北陸地方などに局地的大雪をもたらす日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)などが知られている[17]。
雪の時期にやってくる冬の嵐(winter storm)は発達した低気圧によりもたらされ、大雪、暴風、吹雪、低温などが冬特有の災害をもたらす。
また、アメリカ・カナダでは五大湖の風下にあたる地域で、大陸の寒気が暖かい湖水の上に南下してきて雪雲が発達する湖水効果雪 (lake-effect snow) が知られている。発達した積乱雲により大雪となり、ときに雷を伴う。雪による豪雪地帯はスノーベルト (snowbelt) と呼ばれている。同じような現象は冬季に日本海の風下になる日本海側や、ヨーロッパの沿岸部でも見られる[18][19]。
日本では、前述の通り本州日本海側の各地では夏季よりも冬季の方が降水量が多く冬季の降水の多くが分布し、気候区分の種類によって区域に差はあるが日本海側気候とする。北海道は雪の期間が長く根雪が広く分布する。これらの地域で、積雪による生活や産業への支障が大きな地方自治体に対して、除雪支援や財政措置等を行う豪雪地帯が指定されている。北海道・北東北の全域、南東北から中国地方の日本海側および中央高地の一部が指定地域となっている。一方、本州・四国・九州の太平洋側は日本海側に比べると雪が少ないことで知られる。関東から九州にかけての南岸平野部では、南岸低気圧の通過に伴って雪が降ることが多い。これに類似するものとして、アメリカ合衆国北東部やカナダ大西洋岸のノーイースターがある。
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雪が融けてゆく際に窪地になった所などでは、吹き溜まりの雪がいつまでも消えずに残る場合があり、このような場所を雪田(せつでん、英: snowbed、snow patch, etc.)と言う。雪田に形成される植物群集(植物の生物群集)は、群集生態学を始めとする生物学・生態学等の分野その他では雪田群落と言う(cf. 植生#植物群落)。また、山岳用語としては、高山の稜線付近に夏まで融けずに残る雪を意味し、稜線上の山小屋には貴重な水源となっている。
雪を利用して生活や産業に生かすことを利雪という。豪雪地帯や日本海側気候にあたる地域を中心に、雪を逆手にとって下記のように様々な活用をするケースが増えている。これが「雪=邪魔者」と思われていた地域の人にとって「雪が実は貴重な資源だった」と印象を変えるきっかけにもなっている[22]。
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雪による災害を総称して雪害という。一口に雪によるものといっても、積雪によるもの、積雪が圧縮され形成される氷の層によるもの、風を伴った降雪(吹雪)や巻き上げられる積雪(地吹雪)によるもの、気温0℃前後で湿った雪が厚い雪の層を作る着雪によるもの、積雪の塊が崩落する雪崩によるもの、積雪が融解する融雪によるものなどに分けられる。また雪と直接関連はしていないがしばしば同時に発生する低温も複合的に災害の要因の1つとなる。
積雪、特に短期間に大量の雪が降る大雪・豪雪の場合、積雪が道路や線路を覆うことにより交通障害が発生し、滑りやすくなった路面で転倒などの怪我をしやすくなる。気温0℃前後では着雪も起きやすくなり電車の架線に付着して交通障害を悪化させるほか、電線に付着して電力や通信に障害を引き起こす。さらに気温0℃以下の低温では圧雪や路面凍結(アイスバーン・ミラーバーン)よって路面の滑りやすさが極端に増す。
積雪が継続すると、家屋の屋根に積もる積雪が重くなり家屋を押しつぶすことがある。積雪による倒壊は家屋に限らず、屋根を持つ建造物に広く起こりうる。また、屋根の雪おろしの際の転落や道路の除雪の際の事故など雪の時期特有の事故も発生する。季節外れの雪はビニールハウスの倒壊や農作物への障害などをもたらすことがある。また、森林では積雪や着雪に加えて霧氷が重りとなって枝が折れたり幹ごと倒れたりすることがある。
吹雪や地吹雪は視程(見通し)を悪化させて交通障害を引き起こすほか、吹き溜まりを発生させることがある。
積雪の多い地域では、積雪が水力発電の障害になっている場合がある。これは、雪であるがゆえに水の流れが滞り、ダム湖に流れ込む水量が必然的に少なくなるからであり、一例として北海道では、夏より冬のほうが電力需要が高いにもかかわらず、冬季の水量が不足する[注釈 3]。
寒さを防ぐために家屋を密閉したり、厚い積雪により空気より重い排気が滞留する環境にあると、暖房や炊事などの火気使用に伴う排気ガスが充満し健康被害をもたらすことがある。また、雪崩に襲われると厚い雪に人や建物、農地、森林などが埋没し被害をもたらす。この他、主に冬から春にかけての時期には、融雪に伴う落雪や洪水が発生することがある。
孤立の懸念
雪のため視程障害が発生した市街地の道路
雪崩はときに大きな被害を起こす
雪のため閉鎖された滑走路
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六花 / 六辺香 / 六出(りっか、ろっか) | 六角形の雪の結晶の形から。「むつのはな」ともいう[24]。六弁の花の意[25]。 |
---|---|
天花(てんか) | 雪の形容。「天華」とも書き、「てんげ、てんけ」で、天上界に咲く花を指す仏教用語。 |
風花(かざはな、かざばな) | 晴天時に風に乗って舞う雪の形容。 |
青女(せいじょ) | 古代中国における、霜や雪を降らすとされている女神のこと。そこから転じて、雪の形容。 |
白魔(はくま) | 主に、災害に相当する大雪を悪魔に見立てるときなどに用いられる言葉。 |
読み方は変わるが、日本語の「雪」は名詞だけでなく動詞がある。「雪ぐ(すすぐ)」は祓い清めるという意味で使われ、「雪辱」(せつじょく)という熟語がある(「雪辱をすすぐ」との用法は、同じ意味の動詞を2度繰り返しているので誤用。「雪辱を果たす」「汚辱をすすぐ」が正しい)。なお、朝鮮語でも同じく「雪辱(설욕)」であるが、中国語では「雪耻」がこれに当たる。
ユキヤナギ
雪虫
『雪華図説』1832(天保3)年刊
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ロイシン・イソロイシン・バリン除去ミルク配合散「雪印」
本剤の計量は、秤を用いて量ることが望ましいが、簡易的に計量する場合は、添付の計量用スプーンを用いる。計量用スプーンの内容量はスリキリ1杯で約3gである。濃度別調製は下表を参照し溶解する。
年齢 | 摂取分枝アミノ酸量(mg/kg体重/日) ロイシン |
摂取分枝アミノ酸量(mg/kg体重/日) イソロイシン |
摂取分枝アミノ酸量(mg/kg体重/日) バリン |
0〜3箇月 | 160〜80 | 70〜40 | 90〜40 |
3〜6箇月 | 100〜70 | 70〜50 | 70〜50 |
6〜12箇月 | 70〜50 | 50〜30 | 50〜30 |
調乳濃度(w/v%) | 秤とり量 | 出来上がり(mL) | 溶液100mL中の組成 分枝アミノ酸(mg) |
溶液100mL中の組成 たん白質(g) |
溶液100mL中の組成 脂肪(g) |
溶液100mL中の組成 炭水化物(g) |
溶液100mL中の組成 灰分(g) |
溶液100mL中の組成 エネルギー(kcal) |
15 | 15g(スプーン5杯) | 100 | 0 | 1.89 | 2.57 | 9.55 | 0.55 | 68.9 |
16 | 16g | 100 | 0 | 2.01 | 2.74 | 10.19 | 0.59 | 73.4 |
17 | 17g | 100 | 0 | 2.14 | 2.91 | 10.82 | 0.62 | 78.0 |
18 | 18g(スプーン6杯) | 100 | 0 | 2.26 | 3.08 | 11.46 | 0.66 | 82.6 |
19 | 19g | 100 | 0 | 2.39 | 3.25 | 12.10 | 0.70 | 87.2 |
20 | 20g | 100 | 0 | 2.52 | 3.42 | 12.73 | 0.73 | 91.8 |
拡張検索 | 「雪だるま像」「握雪音」「雪玉様硝子体混濁」 |
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