出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/08/28 02:53:46」(JST)
この項目では、殺菌の一般的概念について説明しています。抗生物質の殺菌作用については「抗生物質」をご覧ください。 |
殺菌(さっきん、sterilization)とは、病原性や有害性を有する糸状菌、細菌、ウイルスなどの微生物を死滅させる操作のことである。滅菌と違い、具体的な程度は定義されていない。電磁波、温度、圧力、薬理作用などを用いて細菌などの組織を破壊するか、生存が不可能な環境を生成することで行われる。病原体の除去(感染症の予防)、食品の鮮度保持、などが主な目的である。対象とする細菌などによっては効果が期待できない方法もある。人体や有益な生物への障害、高熱や腐食による装置の破損、食品の風味の変質などを引き起こすことがあるので、適切な方法を選択することが重要である。低温殺菌法のパスチャライゼーション(英語名、pasteurization)はルイ・パスツールからきている。
一般に「殺菌」は、滅菌あるいは消毒のことを言い、効能などを表記する際、殺菌と消毒をまとめて殺菌消毒などと言われたりするなど、ほぼ同じ概念として扱われてしまっていることが多いが、専門的には異なる概念である。その他、類似する概念として、除菌、抗菌などもあるが、これらも微生物学や医学、食品科学の分野において、意味が異なる概念である。この項目ではこの概念の違いにつき解説する。また、抗生物質の作用機序を表す言葉として殺菌や静菌という用語を用いることがある。
具体量が定義されているのは「滅菌」のみである。
殺菌(microbiocidal effect, bacteriocidal-)は、文字通り菌を殺すことである。対象や程度を含まない概念である。殺す対象や程度を含まないため、極端な話をすれば1%の菌を殺して99%が残っている状態でも「殺菌した」ということは可能である。このため、その有効性に対する保証は厳密にはない。ある食品を滅菌(あるいは消毒)したという場合は、その後の微生物の混入や増殖がない限り、すべての微生物が存在しない(あるいは食べても発病しない)ことを示すが、「殺菌した」という場合には必ずしもその保証はない。
滅菌 (sterilization 英語の語源は不妊手術のように不妊化すること)は、有害・無害を問わず、対象物に存在しているすべての微生物およびウイルスを死滅させるか除去することである。確率的な概念からは菌数をゼロにすることはできないので、無菌性保証レベル(sterility assurance level:SAL)が採用される。滅菌としての定義にはSAL≦10-6が国際的に採用されている。同じ概念が日本薬局方においても「最終滅菌法」として採用されている。これは、滅菌操作後、被滅菌物に微生物の生存する確率が100万分の1以下であることを意味している。滅菌がこれらの中でもっとも厳重な方法であるが、その用途は限定される。手洗いなどの際「ヒトの手指を消毒する」ことはできるが、滅菌することはできない。「ヒトの手指を滅菌する」ことはすなわち手指の細胞ごと全部殺すことだからである。また、かびの除去などで、俗に言う「かびの根が残っている」から再発するだけではなく、対象物をたとえ滅菌できても一般的な外気に触れることで、空気中に漂う胞子が着落し発芽するために菌が再び増殖する。
消毒 (disinfection) は、対象物に存在している病原性のある微生物を、その対象物を使用しても害のない程度まで減らすことである。この手段として殺菌が行われることもあるが、殺菌せずに病原性を消失させることにより消毒が達成されることもあるので、殺菌や滅菌とは少し意味合いが異なる。
以下は学術的な専門用語としてはあまり使われず、より噛み砕いた、あるいは曖昧な意味で用いられることがある。
除菌は、対象物から菌を除いて減らすことである。手を水で洗うことから、ろ過などにより菌を取り除くなど、様々な程度の範囲がある。対象や程度を含まない概念である。
抗菌(Antimicrobial effect, Antiseptic, Antibacterial-)は、(細)菌の増殖を阻止することである。繁殖を阻止する対象や程度を含まない概念。経済産業省の定義では、対象を細菌のみとしている。そのためJIS規格の抗菌仕様製品では、かび、黒ずみ、ヌメリは効果の対象外とされている。JIS Z 2801
防カビ(antimicrobial effect, anti-mould)は、真菌の増殖を阻止することである。繁殖を阻止する対象や程度を含まない概念であり、対象を真菌のみとしている点が異なる。数菌にのみ効果があるものから、数百種類に効果のあるものもあり、持続期間もメカニズムもまちまちである。ぎりぎりJIS規格(JIS Z2911)レベルの数菌にのみ効果がある防カビ剤を一般住宅で用いても、発生するかびの種類が多いため、防止効果は期待できない。防カビ表示があってもカビが発生するのはこのためである。少なくとも建築物に発生する恐れのあるカビ全てに対応できるタイプでなければ、カビを防止することは出来ない。
殺菌や除菌に用いる次亜塩素酸ナトリウムや消毒用エタノールは、直ちに殺菌効果がなくなるため、塗布しても継続的な防カビ効果は無い。
静菌(microbiostatic effect, bacteriostatic-)は、菌を殺さないがその増殖を止めること(低温保存など)である。対象や程度を含まない概念である。
この項目では、殺菌の方法について解説する。ただし、消毒法・滅菌法などが混在して書かれているので注意が必要。上述したように殺菌と消毒は意味合いが異なるため、消毒法に限定した方法は消毒剤に別記している。該当項目を参照のこと。
殺菌する方法には、大きく分けて、物理的な方法によるものと、化学的な方法によるものがある。
高温処理することによって殺菌が可能である。微生物は有機物から構成されるため、特に水分存在下で加熱(湿熱)すると死滅しやすい。ただし、一部の細菌が作る芽胞は極めて耐熱性が高く100℃で煮沸しても死なないため、滅菌する際にはより高い温度を用いる必要がある。なお室温よりも低い低温は静菌的には働くが、0℃以下の低温でも菌そのものが死滅する殺菌効果は期待できない。
対象物に強い電磁波を照射し、細菌やウイルスなどの遺伝子を破壊して死滅させる。 電子レンジも電磁波の応用で、実際に殺菌に利用されるが、その作用機序は電磁波そのものの作用というよりも、それによって生じた熱による低温湿熱殺菌である。
なお、電磁波には殺菌以外の有用な効果があるため、その効果を期待して用いられることがある。例えば、菌が増殖する際に発生する有機脂肪酸などによる悪臭に対しても、原因物質を分解し消臭する効果がある。また、食品に放射線を照射する場合(食品照射)もあるが、殺菌目的での食品照射は2005年現在日本では認められておらず、ジャガイモの発芽阻止目的の照射に限られている。
液体や気体を、特殊なフィルターで濾過する。フィルターにある孔の径よりも大きな微生物はフィルターを通過できないために除去される。細菌用メンブランフィルターや中空糸膜などが使用される。ただしマイコプラズマなどの小型の不定形細菌やウイルスなどには無効である。
対象に直接電界や電流を印加し、クーロン力による物理作用、電気化学反応による抗菌物質の毒性、により殺菌を行なう。
オゾンの殺菌効果によって殺菌する。オゾンを溶解させた水溶液であるオゾン水は食品の殺菌用とに用いられる程度の安全性がある。
ただし、家庭用オゾン発生器については国民生活センターが2009年8月27日に、「家庭用オゾン発生器はオゾンが人体にとって危険なレベルの高濃度になる恐れがあるとして、消費者は購入等を控えた方がよい」という商品テスト結果を発表している[2]。
水を電気分解し陽極側にできた酸性の電解水の次亜塩素酸によって殺菌する。この電解水は、通常使われる次亜塩素酸ナトリウムの水溶液に比較して次亜塩素酸の濃度が低いが酸性であることによって近似した殺菌力があり安全性はより高い。酸性の強いも強酸性水と、中性に近い微酸性電解水がある。微酸性電解水は、目に入ったり飲用しても問題がなく、公共の場において噴霧することによってインフルエンザウイルスの殺菌に用いるの提案もされている。
(滅菌)エチレンオキシドやホルムアルデヒドなどのアルキル化剤の気体(ガス)や、酸化剤であるオゾンの中に、対象物を静置して滅菌する。熱に弱い器具の滅菌にエチレンオキシドが用いられる。また汚染した建物の滅菌にホルムアルデヒドガス(ホルマリン燻蒸)が用いられる。ただし使用するガスは人体に有害なものが多いので、対象物へのガスの残留や、処理終了後の排気には注意を要する。
これらは通常、液体あるいは水溶液として消毒の目的で用いられることが多い。ただし、重金属化合物や一部の殺菌剤は樹脂やセラミックなどに混ぜて使うことで抗菌樹脂、抗菌セラミックなどとして用いられることがある。
この他、カテキンなどのポリフェノールや、ペパーミントやユーカリなどの植物精油、わさびやしょうがなどの香辛料にも殺菌効果が認められるものがある。
次亜塩素酸ナトリウムなどを添加することにより殺菌を行う。
殺菌よりも消臭、乾燥を目的とする意味合いが強い。
熱湯による殺菌や、漂白剤、殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウムが主成分)を用いることが多い。業務用では紫外線殺菌灯やオゾンも用いられる。
主に次亜塩素酸ナトリウムやエタノールによるカビの除去を行う。
殺菌剤_(農薬その他)を参照。
水洗便器の洗浄管に薬剤供給装置を水洗便器の洗浄管に連結して、界面活性剤を主成分とする小便スラッジからなる尿石防止の洗浄殺菌消毒薬を水洗便器に供給する。 サニタイザーを参照
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沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド「タケダ」
/V %以下(ホルムアルデヒド換算)
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本剤を2回接種後4週間すると、一時的にジフテリア、破傷風、いずれも前述の防御レベル以上の抗体価が得られるが、含まれる抗原成分が不活化されたトキソイドであるため、漸次各々の抗体価は低下する。したがって、それ以後少なくとも数年にわたり、感染防御効果を持続(抗体価レベルの維持)するためには、追加免疫が必要である。
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