- 英
- stochastic、stochastically
- 関
- 確率的、推計学的
WordNet
- being or having a random variable; "a stochastic variable"; "stochastic processes"
- by stochastic means; "we estimated the answer stochastically"
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2016/01/12 18:48:19」(JST)
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確率論(かくりつろん、英: probability theory)とは、偶然現象に対して数学的なモデルを与え、解析する数学の一分野である。
もともとサイコロ賭博といったギャンブルの研究として始まったが、現在でも保険や投資などの分野で基礎論として使われる。
なお、確率の計算を問題とする分野を指して「確率論」と呼ぶ用例も見られるが、本稿では取り扱わない。
目次
- 1 歴史
- 2 基礎概念の概略
- 3 基礎概念の数学的定義
- 3.1 確率空間
- 3.2 確率変数
- 3.3 確率空間の例
- 4 期待値、分散
- 5 独立性
- 6 条件付き確率
- 7 特性関数
- 8 確率測度、確率変数の収束
- 9 重要な定理
- 10 脚注
- 11 参考文献
- 12 関連項目
- 13 外部リンク
歴史
詳細は「確率の歴史」を参照
古典的確率論
確率論は16世紀から17世紀にかけてカルダーノ、パスカル、フェルマー、ホイヘンス等によって数学の一分野としての端緒が開かれた。イタリアのカルダーノは賭博師でもあり、1560年代に『さいころあそびについて』(羅: Liber de ludo aleae)を執筆して初めて系統的に確率論を論じた。その書は彼の死後の1663年に出版された[1]。 18世紀から19世紀にかけて、ラプラスはそれまでの確率論を統合する研究をおこない、1814年2月に『確率の哲学的試論』を著し、古典的確率論と呼ばれる理論にまとめた[2]。
公理的確率論
現代数学の確率論は、アンドレイ・コルモゴロフの『確率論の基礎概念』(1933年)に始まる公理的確率論である[3]。他の現代数学と同様に、この確率論では「確率」が何を意味しているのかという問題は取り扱わず、「確率」が満たすべき性質をいくつか規定し、その性質から導くことのできる定理を突き詰めていく学問である。この確率論の基礎には集合論・測度論・ルベーグ積分があり、確率論を学ぶためにはこれらの知識が要求される。公理的確率論の必要性に関しては確率空間の項を参照。
現在、確率論は解析学の一分野として分類されている。特にルベーグ積分論や関数解析学とは密接なつながりがある。もちろん離散数学との関係も依然として深いが、離散的な場合であってもその内容は解析的なものであることが多い。また、確率論は統計学を記述する際の言語や道具としても重要である。
基礎概念の概略
確率論で使われるいくつかの重要な概念を簡単に解説する。詳しい内容は各項目のページにある。
- 標本空間
- 確率論においてはただの集合であり Ω と書く。空集合でない集合ならなんでも標本空間としてよい。意味的には、確率を問題としている領域において、ランダムに起こりうる現象の原因をすべて集めてきた集合である。このため、通常は非常に巨大な集合となる。この領域における確率論的な現象は「Ω からひとつの元 ω が選ばれるが、どの元が選ばれたのか分からない」ということがすべてのランダムさの原因になるように記述される。
- 事象
- 標本空間の部分集合のうち特別に選ばれたものを事象と呼ぶ。事象とする部分集合は勝手に決めてよいが、すべての事象を集めた集合 F は可算加法族になっている必要がある。確率論において、事象だけが確率を測ることのできる対象である。それ以外に、F は情報としての意味を持つ。事象 A に対して、Ω からランダムに選ばれた ω が A に含まれるか含まれないかは判断できる。F に含まれるすべての事象を使えば ω をひとつに特定できるかもしれないし、できないかもしれない。F の代わりに F より小さな可算加法族を使えば、特定できない ω が増加する。このように、可算加法族の大きさは標本空間を観察する目の細かさを表している。
- 確率測度
- 各事象に対して 0 以上 1 以下の数を対応させる関数を確率測度といい P と書き、事象 A の起こる確率は P(A) となる。Ω 自体は常に全事象と呼ばれる事象であり、全事象の起こる確率は 1 でなければならない。P も勝手に決めていい関数であるが、確率測度の公理を満たすように定める必要がある。「確率」が何を意味しているかは議論の対象ではない[4]。
- 確率空間
- 標本空間 Ω と事象の全体 F と確率測度 P の組を確率空間と呼ぶ。確率の問題を確率論的に定式化するということは、この確率空間を定めることである。しかし、通常はその問題にはどのような確率変数が存在するかということを調査し、必要となる確率変数をすべて含むことができるぐらい巨大な Ω を定める。
- 確率変数
- Ω 上で定義された実数値関数で、F 可測であるものを確率変数と呼ぶ。確率変数は、例えば「サイコロの目」のように、ランダムに値が決まる対象を定式化するものである。この定式化では、確率変数の値は「Ω からランダムに選ばれた ω」を元に自動的にひとつに定まる。すなわち、確率変数のランダムさの要因は「Ω からランダムに ω が選ばれる」ということのみになる。F 可測であるというのは、確率変数が ω に関してもたらす情報が F による情報を超えないということである。例えば、F によって区別できない複数の ω があるとすると、確率変数の値によっても、それらを区別することはできない。
基礎概念の数学的定義
現代確率論における基礎概念たちは測度論をベースとして次のように厳密に定義される。
確率空間
- を可測空間とする。すなわちは標本空間と呼ばれる空でない集合であり、 は 上の完全加法族である。
- 完全加法族とは、 を の部分集合の全体(冪集合)としたとき、 であって以下の性質を持つものである:
- 任意の に対して
- 任意の に対して
- を可測空間 上の確率測度とする。すなわち、写像 であって、以下の性質を持つものとする:
- (完全加法性) : で を満たすものに対し、
- (正規性):
- このときの三つ組 を確率空間(probability space)と呼び、可測集合を事象(event)と呼ぶ。
確率変数
- 確率空間上の可測関数を確率変数(random variable)と呼ぶ。すなわち、ある可測空間に対して、写像であって任意のに対してをみたすものをいう。多くの場合、は位相空間であって、そのときの完全加法族としてはボレル集合族を採用する。のとき、を次元確率変数といい、特にのときは単に確率変数と呼ぶことが多い。
- 確率変数の確率分布(probability distribution)、または分布(distribution)、法則(law)とは、、 によって定まる、可測空間上の確率測度のことをいう。すなわち、は確率変数による確率測度の像測度(image measure)、押し出し測度(英語版)(push-forward measure)のことである。しばしばと略記される。一般的な上の確率測度も分布と呼ばれる。
確率空間の例
コイントス
コインを投げて裏と表が出る確率がそれぞれ であることを、確率空間として表すと例えば次のようになる。
とする。 を裏、 を表と考えると確率空間 はコイントスのモデルとなっている。
ここでもう一つ違う表現を考える。
とする。さらに確率変数 を
と定義する。すると で あり、 は確率空間 上に定義されたコイントスを表す確率変数であると言える。
ここで、さらに確率変数 を
と定義してみる。 再び であるので、これもコイントスを表す確率変数である。 実は、確率空間 上に同時に定義されたこの確率変数 と は二つの独立なコイントスを表している。 例えば、二枚とも裏が出る確率は という具合になる。 もう少し厳密に書くと、確率変数 を
と定義すると、 が二枚の独立なコイントスを表しているということである。
期待値、分散
詳細は「期待値」および「分散」を参照
独立性
詳細は「確率論的独立性」を参照
条件付き確率
詳細は「条件付き確率」を参照
特性関数
詳細は「特性関数 (確率論)」を参照
確率測度、確率変数の収束
詳細は「確率変数の収束」を参照
重要な定理
脚注
- ^ Cardano(1961)
- ^ ラプラス(1997)
- ^ コルモゴロフ(2010)
- ^ 確率測度は、客観確率の持ついくつかの性質を選んだものであるが、ベイズ統計学のような主観確率も確率測度の条件を満たす。
参考文献
- Girolamo Cardano (1961) [1663]. The book on games of chance (Liber de ludo aleae). New York, NY: Holt, Rinehart and Winston. ASIN B007T35V64.
- A・N・コルモゴロフ 『確率論の基礎概念』 坂本實翻訳、筑摩書房〈ちくま学芸文庫 [Math & science]〉、2010年7月7日。ISBN 978-4-480-09303-5。
- ラプラス 『確率の哲学的試論』 岩波書店〈岩波文庫 青925-1〉、1997年11月17日。ISBN 4-00-339251-5。
関連項目
- 量子論
- R言語
- 伊藤清、伊藤の公式(伊藤の補題、伊藤のレンマ)
- ウィーナー過程(ブラウン運動)
- 確率過程
- 確率空間(確率の公理)
- 確率微分方程式
- 確率分布
- 確率変数
- 項目応答理論
- 推計統計学・推測統計学・推計学
- 数理ファイナンス、金融工学、ブラック-ショールズ方程式、デリバティブ
- 測度(確率測度)
- 大数
- 中心極限定理
- 独立性
- ベイズの定理、ベイズ確率、 モンティ・ホール問題
外部リンク
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- 日本原子力学会誌 = Journal of the Atomic Energy Society of Japan 54(10), 659-663, 2012-10-01
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- 確率論的世界 「『確率的な現象』など存在しないというのは、もはや古典的な世界観であり、 実際の世界は、まさに確率的な世界なのである」 確率と言えば、「サイコロ」とか「くじ引き」とかを連想する。 たとえば、こんな感じだ。
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