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炭素固定(たんそこてい、英: carbon fixation)とは、植物や一部の微生物が空気中から取り込んだ二酸化炭素を炭素化合物として留めておく機能のこと。この機能を利用して、大気中の二酸化炭素を削減することが考えられている。同化反応のひとつ。別名、炭酸固定、CO2固定、炭素同化、炭酸同化など。
炭素固定を伴う代謝系は、大まかに分けて以下のように分けられる。
光合成は植物やシアノバクテリアの持つ代謝系であり、光エネルギーを利用して水の光分解を行い酸素を発生し、その過程で発生するATPとNADPHを利用して、二酸化炭素をグルコースなど有機化合物に固定する。
光化学反応とカルビン - ベンソン回路に分けられる光合成過程のうち、炭素固定反応を持つのはカルビン-ベンソン回路である。二酸化炭素はカルボニックアンヒドラーゼ (EC 4.2.1.1) によって水と反応して炭酸塩となり、カルビン-ベンソン回路に組込まれてゆく。
なお、光合成の炭素固定の律速の原因となっているのは、リブロースビスリン酸カルボキシラーゼ(RuBPカルボキシラーゼ、RubisCO)である。この酵素反応の効率の悪さおよびこの酵素による逆反応(光呼吸:二酸化炭素の放出)が炭素固定の効率を悪化させており、これはかつて地球が還元的環境にあった名残だと考えられている。
光合成の収支式は以下の通りである
この式は、好気呼吸と全く逆の式である。
光合成細菌の行なう光合成反応であり、バクテリオクロロフィルなどの光吸収によって反応が進行するが、水の光分解を行なう反応を持たず酸素非発生型で、電子供与体としては水素、硫化水素、チオ硫酸などを用いる。また二酸化炭素のほかに低分子の有機化合物を用いることもある。
細菌型光合成の一般的な収支式は以下の通りである。
古細菌の一種である、メタン生成菌(メタン菌)の持つ独自の代謝系である。嫌気呼吸の一つであるが、炭素の同化を行なう特異な反応系である。メタン生成にはメタノール、酢酸からの系もあるが、炭酸固定としては水素および二酸化炭素を資化する代謝系を指す。特異的な酵素群および補酵素群を用いたメタン発酵は非常に酸素に弱く、酸素に触れるだけで失活するものが多い。
炭素固定を行なう反応系は、メタノフランに二酸化炭素を結合し、フォルミルメタノフランに変化させる反応である。この反応の標準自由エネルギー変化は+16kJ/molであり、メタン発酵過程で生成するナトリウムイオン濃度勾配のエネルギーを用いて行なわれる。
メタン発酵の標準自由エネルギー変化は一般的な代謝系に比べて少なく、ナトリウムやプロトンの濃度勾配を用いた化学浸透圧により、ATPを生産しているといわれている。
メタン発酵の収支式は以下の通りである
炭酸暗固定は、独立栄養生物、従属栄養生物問わず存在する反応系で、代表的なものに還元的クエン酸回路がある。これは酸化的方向で二酸化炭素を放出する反応の逆反応により、二酸化炭素を固定しそのまま糖新生系や脂肪酸生成などにもって行く系である。
この反応を起こすには電子供与体が必要であるが、クエン酸回路に絡んだ電子供与体(NADH、FADH2など)であればこの反応を助けることとなる。水素細菌など化学合成独立栄養生物が主にこの反応を行なうが、カイコのような多細胞の従属栄養生物もわずかながらこの反応を持つことが知られている。
また、植物でもC4型光合成植物(サトウキビ、トウモロコシなど)やCAM型光合成植物(サボテン、ベンケイソウ、パイナップルなど)は、反応上光エネルギーに依存しない形で一部炭素固定を行なっていることから、炭酸暗固定に分類されている。
現在、地球温暖化の一因と言われている二酸化炭素の増加は、自然に起きる反応の何十倍ものスピードで進行しているといわれている。これは、化石燃料の大量消費に伴い二酸化炭素が大量に排出される一方、森林の伐採により地球上の炭素固定能力が衰えてきたからとも言われている。
二酸化炭素分圧の増加により、植物などによる炭素固定能力の上昇(但し、一定濃度で飽和する)をもって楽観視する研究結果もあるが、その前に温暖化による気象の変化、それに伴う植生の変化(砂漠化など)などによって大量の植物が枯死する悲観的事実の方が、現実問題として生じつつある。そうなると、炭素固定能力はこの100年間ほどで極めて減少し、地球温暖化に拍車がかかるとも言われている。
地球温暖化のこれからの動向などについては、地球シミュレータなどといったスーパーコンピュータを用いた予測が行なわれているが、温暖化の動向が今後どうなっていくのかはまだよくわからない部分が多い。炭素固定能力を向上させた植物などがバイオテクノロジーなどを用いて作成されているが、こうした植物が長期的にどのような影響を及ぼすかについてはよくわからず、GM作物を環境中に持って行く危険性も示唆されている。
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