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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2020/11/29 00:57:26」(JST)
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松脂(まつやに、しょうし、英: Pine resin)は、マツ科マツ属の木から分泌される天然樹脂のこと。主成分はテレビン油とロジン。
物性
特有の芳香があり、主成分はテレビン油、ロジンで、蒸留によって分離される。成分の比率は、採取するマツの品種によって違いがある。中国のバビショウの松脂にはロジン分が比較的高く、アメリカのスラッシュマツや東南アジアのメルクシマツではテレビン油分が比較的高い傾向にある。
クロロホルム、酢酸、エーテル、アルコールなどに溶ける。水溶性の成分は少ないので、蒸留工場では、貯蔵槽に入れた松脂の表面に水を張り、揮発成分(テレビン油)の気化を防ぐことも行われている。
製造
アメリカ・フロリダ州での採集作業を写した1912年の絵葉書
チェロ用の松脂。木枠に充填され、皮の包装がされている
産業的には、主に夏場の成長期に、幹の表面に刃物でV字型または溝型の傷をつけ、しみ出したものを碗、缶、ポリ袋などに集めて採る。木から採ったすぐ後は透明で粘稠な液体だが、だんだん揮発成分がなくなり、粘性を増す。そして、白色固状物質を析出する。
松脂(ロジン)は中国、アメリカ、ブラジルが主な生産国である。中国やブラジルでは主に上記の様に松の幹に傷を付けてしみ出した樹脂を蒸留し、ガムテレピン油とガムロジンに分離して生産している。
一方、アメリカ、北欧では製紙工場でクラフトパルプを作るときに副生する粗トール油を精留することでトールロジンと硫酸テレピン油または亜硫酸テレピン油を生産している。日本ではハリマ化成(株)が粗トール油からトールロジン等を生産している。
日本でもかつては松の幹から松脂を採取したが、現在は産業としての採取は行われておらず、主に中国からガムロジン、テレビン油およびその誘導体の形で輸入するほか、アメリカなどから粗トール油の形で輸入している。
用途
松脂から精製、加工される各種製品は、主にインキ用樹脂、合成ゴム用乳化剤、製紙用ロジンサイズ剤(にじみ止め)、接着・粘着剤、香料、食品添加物、医薬原料に使用されている。詳細はロジン、テレビン油を参照。
応用例
- 擦弦楽器の弓の塗布剤
- ヴァイオリンなどの弓には馬の尻尾の毛が使用されているが、それだけでは弦との間の摩擦係数が極めて小さいため、小さな音しか出せない。固形化した松脂またはロジンを塗布することで摩擦係数が大きくなり音が出やすくなる。サイレントバイオリンでも松脂は同梱される[1]。
- 和弓の製造や手入れの材料
- 適度な硬さと粘りが接着剤や構造材として適している。 天鼠(くすね、薬煉)の主原料として使用する。
- 滑り止め
- 手などの滑り止めに用いる。例えば、固形の状態では野球のロジンバッグ、粘度を保った状態では屋内外のハンドボールにおいてボールを握りやすくする滑り止めなどの例がある。バレエにおいてはフロアに対する足先の滑り止めとして、固形松脂を粉状に砕いてトウシューズに付着させる。ボクシングでもキャンバスでのスリップ防止のためリング下(赤・青コーナーの付近)に粉状の松脂が入った箱が設置されており、リングイン前にリングシューズへ付着させる。
- 香料
- テレビン油の形で香水の成分の一つとしても用いる。また、ギリシャのレッチーナ(Retsina)は松脂を香料として加えたフレーバード・ワインの一種である。フランスには松脂の香りのキャンディーもある。松脂や松葉エキスを含む禁煙キャンディーもある。
- 食品
- ロジンを変成したチューインガムベースが使用されている。
- 薬品
- ロジンは膏薬、プラスターの粘着成分にする。ガムテレビン油の主成分ピネンは医薬品原料となる。また、かつて松脂は咳止めの薬として用いられていた。戦国時代、火薬などと混ぜ焼薬や手榴弾などの原料として使われた。
- 鋳型
- 浄瑠璃人形の頭を木型から粘土で複数生産するための型を取るのに使う。松脂を湯で柔らかくして、木の原型と型枠の間に詰め、冷えると鋳型になる。
- 朱肉
- 伝統的な練り朱肉は、ヒマシ油に銀朱顔料、松脂、木蝋、綿花を加えて練る。
- シャボン玉原液の添加剤
- 粘りがあるため、割れにくいシャボン玉が出来る。
脚注
- ^ “ヤマハのサイレントバイオリン、最新モデル「YSV104」が4月下旬発売”. 財経新聞 (2017年2月20日). 2018年2月24日閲覧。
関連項目
UpToDate Contents
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- 1. 炭化水素の急性曝露:臨床毒性、評価、診断acute hydrocarbon exposure clinical toxicity evaluation and diagnosis [show details]
…are cyclic hydrocarbons that include turpentine (often used as a paint thinner) and pine oil (contained in many pine-scented cleaning products). Aromatic hydrocarbons – Aromatic hydrocarbons are cyclic …
- 2. Amanita smithianaによるキノコ中毒amanita smithiana mushroom poisoning [show details]
…mushroom that grows in the pine forests of the West Coast of North American and in Southeast Asia. It is typically ingested unintentionally by individuals seeking the edible pine (or matsutake) mushroom (Tricholoma …
- 3. Lepidopterism:毛虫や蛾との接触後に生じる皮膚症状lepidopterism skin disorders secondary to caterpillars and moths [show details]
…present, cutaneous reactions can be frequent . In a survey of 1224 adults in an endemic area for the pine processionary moth (Thaumetopoea pityocampa) in Spain, the estimated point prevalences of cutaneous …
- 4. アレルギー性接触皮膚炎の一般的なアレルゲンcommon allergens in allergic contact dermatitis [show details]
…formaldehyde resin, and cashew nut oil-formaldehyde resin. Colophony (rosin) is derived from the sap of pine trees. It is a solid residue of distillation of turpentine and its major chemical constituent is abietic …
- 5. 食物アレルゲンの分子機能molecular features of food allergens [show details]
…intact . Pin p 1, the 2S albumin from pine nuts, was heat stable for 120 minutes at 100°C and still possessed a robust capacity to inhibit IgE binding to whole pine nut extract . Mass spectrometric analysis…
Japanese Journal
- 安全性の高い紙製食品包装材用添加剤:ハリマ化成株式会社 研究開発カンパニー 研究開発センター 製紙用薬品開発室
- 福田 研一,稲岡 和茂
- 紙パ技協誌 74(10), 988-994, 2020
- … 中でも石油化学製品であるポリアクリルアミド(PAM)系乾燥紙力増強剤や,松脂を原料とする天然樹脂"ロジン"を用いたロジン系サイズ剤は,抄紙工程における主要な製紙用薬品となっている。 …
- NAID 130007964878
- ヴァイオリン奏者におけるロジン,ニッケル,紫檀によるアレルギー性接触皮膚炎の1例
- 福田 理紗,細川 僚子,河野 通良,高橋 愼一
- 日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 3(2), 349-354, 2020
- … 1年半前よりヴァイオリンの練習を開始し,松脂を空気中に舞うほど多めに使用していた。 … パッチテストにて,ロジン,ニッケルが+,本人使用の天然樹脂の松脂が++,紫檀は72時間後まで+?であった。 … 松脂をカーボン製の人工樹脂に変更し,新しい弓にてヴァイオリンを再開したが,左下顎部の皮疹が残存。 …
- NAID 130007942277
- 鈴木 史朗
- 生存圏研究 (15), 13-18, 2019
- … これらの抽出成分は、ヒノキやスギの心材の色の原因となる物質や、いわゆる森林の爽やかな香りのフィトンチッドと呼ばれる香気成分、松脂など工業原料となる成分などを含んでおり、産業的や生態的にも重要である。 …
- NAID 120006773089
Related Links
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- 天然樹脂の一種。生(なま)松脂とロジンの二通りの意味がある。マツ科の植物の幹に傷をつけるとバルサム(生松脂)が分泌される。特有の強い芳香がある。生松脂を水蒸気蒸留して含有されているテレビン油を除去したのち、加熱して水分
- 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』. 松脂 (まつやに、しょうし、 英: Pine resin )は、 マツ科 マツ属 の木から分泌される 天然樹脂 のこと。. 主成分は テレビン油 と ロジン 。.
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
パッチテストパネル(S)
効能または効果
- アレルギー性皮膚疾患のアレルゲンの確認
- 本剤を皮膚面に貼付する。貼付2日後に本剤を剥がし、剥がしてから30分から1時間後及び1日又は2日後に反応を以下の基準により判定する。なお、必要に応じて剥がしてから3〜5日後にも同様に判定する。
− :反応なし
+? :紅斑のみ
+ :紅斑+浸潤、丘疹
++ :紅斑+浸潤+丘疹+小水疱
+++ :大水疱
IR :刺激反応
- 誤った判定をすることがあるので、にきび、損傷、皮膚炎のある部位にはパッチテストを行わないこと。
- 副腎皮質ホルモン剤は陽性反応を抑制することがあるので、パッチテストを行う1週間前より検査部位への局所適用、内服又は注射を原則として避けること。
- 抗ヒスタミン剤又は免疫抑制剤を全身適用した場合のパッチテスト結果に及ぼす影響は不明であるが、検査部位への局所適用は原則として避けること。
- 多部位に陽性反応が見られた患者は刺激反応又は偽陽性の可能性があるため、判定には十分注意し、後日の再検査実施を考慮すること。
慎重投与
(次の患者には慎重に使用すること)
- 本剤に含まれているアレルゲン又は添加物のいずれかに対し、重度の全身性又は局所性のアレルギー反応を示したことがある患者
★リンクテーブル★
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