出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/04/30 22:23:26」(JST)
サンスクリーン剤(英: Sunscreen)は、皮膚に当たる紫外線をブロックすることによって、日焼けや皮膚の老化を予防するための製品であり、日やけ止め、また日焼け止めとも呼ばれる。剤形としてはクリーム状、乳液状、ジェル状などが存在し、日本国内法においては日焼け止め化粧品に該当する。
日やけ止めに配合されている成分である紫外線防御剤は、大きくわけて「紫外線散乱剤」と「紫外線吸収剤」の2種類に分類できる。それぞれ名前の通り、拡散剤は紫外線を反射させ、吸収剤は紫外線を吸収し、肌に紫外線が届くのを防ぐ。SPF30や50といった効果の高い日焼け止めには吸収剤が多く使用されている。紫外線散乱剤は酸化チタンや酸化亜鉛といった鉱物由来の成分が多く、紫外線吸収剤は合成化合物が多い。紫外線吸収剤はその性質上、紫外線のエネルギーを吸収する際に分子構造が破壊されることがあり、破壊後の生成物がアレルギー反応や炎症を起こすなどの可能性がある。そのため、日本国内では厚生労働省のポジティブリストに収載された物質以外は配合できない。
最近では、オーガニック化粧品の中で酸化チタン、酸化亜鉛などを使わず、ハーブや草花の能力のみで紫外線を防ぐ化粧品の研究が進んでいる。現在市販されているものはSPFが3~6程度と、これまでのサンスクリーン剤と比べて、遙かに効果が弱い。
日本国内においては、UVB波(波長290-320nm)の防御指標としてSPF値、および、UVA波(波長320-380nm)の防御指標としてPA分類が、日本化粧品工業連合会によって定められている。国際的には、他の指標も用いられている他(後述)、同一の防御指標でもその測定法には地域ごとに微妙な差が存在する。
国内における測定法については、SPF、PA分類ともに、1cm2あたり2mgずつ製品を皮膚に塗布した上での測定をもとにしているが、実際にはそこまで多量には塗布できないことも多く、また塗布された製品は発汗や接触、紫外線そのものによる劣化などによって徐々に失われていく。そのため、指標を過信せず、こまめに塗りなおすなどの工夫を怠らないことが大切であるとされる。
SPFはSun Protection Factorの頭文字であり、紫外線のうち、UVB波を遮断する効果の程度を表す指標。測定法に微妙な差異はあるものの、ほぼ世界標準と言えるくらい多くの国で採用されている。紅斑、またはサンバーンと呼ばれる、肌がヒリヒリと赤くなるような炎症をひき起こすかどうかをもとに算出される。被験者が紅斑を引き起こす最小の紫外線量に比べ、塗布時に何倍の紫外線にまで耐えられるかがSPFの数値の根拠である。たとえば、紅斑が現れるまでに20分程度かかる人がSPF10の日やけ止めを塗った場合、10倍の紫外線量を20分浴びて、ようやく紅斑が認められるということを意味する。重要なのは10倍の時間(この場合200分)紫外線にまで耐えられるという意味ではない。それは前述のとおり、塗布された日やけ止めは時間と共に失われるからである。
ヒトの皮膚の色の変化を目視によって確認するという手法の性質上、値とともに誤差が増大するものであり、特に高SPF値の製品同士の実際の能力差(例えばSPF55とSPF60の差)が数字通りあるかどうかは疑わしいという考え方がある。そのため、日本ではSPF50を超える能力が有意に認められる場合はSPF50+と表記することになっている。
米国では、表示上の上限を30+とする勧告が出てはいるが必須ではないため、SPF100といった製品も現実に販売されているが、その上限を50+に引き上げようとする動きが存在する[1]。EU諸国においてはSPF表示は段階的にしか許されておらず、すべての製品が6,10,15,20,25,30,50,50+の8段階のどれかに属さねばならない(50+は実測SPF60以上)[2]。オーストラリアでは、30+が上限である[3]。
Protection grade of UVAの略語であり、日本で採用されているUVAの防御力を示す指標。即時黒化と呼ばれる、日焼け後すぐに黒くなる現象をもとに算出される。本来はPPD(Persistent Pigment Darkening)と呼ばれる数値(後述)をもとにしており、PPD値が2以上4未満でPA+(効果がある)、4以上8未満でPA++(かなり効果がある)、8以上12未満でPA+++(非常に効果がある)、12以上でPA++++の4段階(無標も含めれば5段階)に分類する。日本発祥の分類方式である。
持続的即時黒化と呼ばれる、主としてUVAによって引き起こされる皮膚の黒化を利用して測定するUVA防御力の指標であり、前述PA分類分類の根拠となる数値。このPPD計測手法自体は日本で開発されたが、日本ではこれを利用したPA分類の表示にとどまっている一方、欧州では積極的に採用されている。
発想としてはSPFと同様で、皮膚が黒化する最小量の紫外線量に比べ、塗布時に何倍の紫外線にまで耐えられるかがPPDの数値の根拠である。PPD10の日やけ止めを定められた量塗布すれば、その10倍量の紫外線を浴びてようやく黒化することを意味する。
欧州では非常に重要な指標であると考えられており、PPD値はSPF値の1/3なければ良い日やけ止めではないとされている。元来ヨーロッパの業界団体主導で定められたこの日やけ止めに対する考え方は、今では欧州政府が推奨するものとなっており[4]、この条件に合致する製品には右のロゴが付けられている。
SPFやPAの強いものの場合、かぶれを起こすことがある。
日焼け止めに含まれるブチルパラベン、桂皮酸エステル、ベンゾフェノン、カンファー誘導体などの成分が引き金となりサンゴの白化を誘発することが確かめられており、これは褐虫藻に有害なウイルスの増殖の誘発により起こるものだという[5]。しかし、サンゴの専門家であるRobert van Woesikによれば、この研究は実際の環境を反映しておらず、実際の環境下では急速に希釈されるためサンゴは白化を起こすほどの濃度にさらされないだろうとしている[6]。
サンオイル(サンタンオイル、サンタン製品ともいう)は、紫外線のうちUVB波を防ぐという点では日焼け止めと同じである。ただし、サンオイルは日焼け止めと異なり、UVA波は防がない。UVB波のみを防ぐことにより、肌に炎症(サンバーン)を起こさずにきれいに日焼け(サンタン)することを目的とするのがサンオイルである[7]。
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日焼け止め化粧品の使い方(日本化粧品工業連合会のホームページより)
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