出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/09/07 22:15:33」(JST)
誘電体(ゆうでんたい、英: dielectric)とは、導電性よりも誘電性が優位な物質である。広いバンドギャップを有し、直流電圧に対しては電気を通さない絶縁体としてふるまう。身近に見られる誘電体の例として、多くのプラスティック、セラミック、雲母(マイカ)、油などがある。
誘電体は電子機器の絶縁材料、コンデンサの電極間挿入材料、半導体素子のゲート絶縁膜などに用いられている。また、高い誘電率を有することは光学材料として極めて重要であり、光ファイバー、レンズの光学コーティング、非線形光学素子などに用いられている。
誘電分極 を参照
誘電率は電界の周波数に依存する。これを誘電分散と呼ぶ。 空間電荷分極と配向分極は緩和型、イオン分極と電子分極は共鳴型の誘電分散を示す。
誘電体には最も基本的な常誘電体および圧電体・焦電体・強誘電体の全4種類に分類され、以下のような性質を示す。なお、強誘電体はこれら全ての特徴を兼ね備え、焦電体は圧電体・常誘電体の性質も示すなど、右の図のような関係にある。
圧電体、焦電体、強誘電体以外の全ての誘電体のこと。
応力を加えることにより分極(および電圧)が生じる誘電体を圧電体と呼ぶ。 また、逆に電圧を印加することで応力および変形が生じる。これらの性質は圧電性と呼ばれ、ソナーなどに利用されている。
圧電体のうち、外から電界を与えなくても自発的な分極を有しているものを特に焦電体と呼ぶ。微小な温度変化に応じて誘電分極(およびそれによる起電力)が生じる性質が名称の由来である。この性質は赤外線センサなどに応用されている。
焦電体のうち、これを外部からの電界によって方向を反転させることのできるものを特に強誘電体と呼ぶ。 強誘電体の特徴として、分極が外部電場に対するヒステリシス特性を有することが挙げられる。この特性は不揮発性メモリの1種であるFeRAMに応用されている。
半導体素子の微細化、低消費電力化のために、トランジスタのゲート絶縁膜を薄膜化し、静電容量を大きくすることで高性能化を計ってきたが、量子力学的なトンネル効果等によるリーク電流の増大を招き、デバイスの信頼性を著しく低下させている。薄膜化に代わる静電容量を増大させる方法として、ゲート絶縁膜を従来の誘電率が低いSiO2系材料から高誘電率絶縁膜(High-κ絶縁膜)にする必要性が高まってきている。有望な高誘電率絶縁膜としてHfO2系材料などが挙げられる。
同時に半導体素子の微細化は、多層配線間でコンデンサ容量(寄生容量)を形成してしまい、これによる配線遅延が問題になってきている。寄生容量を低減させるために層間絶縁膜を低誘電率絶縁膜(Low-κ絶縁膜)にする必要性が高まってきている。有望な低誘電率絶縁膜としてSiOF(酸化シリコンにフッ素を添加したもの)、SiOC(酸化シリコンに炭素を添加したもの)、有機ポリマー系の材料などがある。
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