出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/09/29 07:13:24」(JST)
この項目では、血流について説明しています。シャント抵抗については「分流器」をご覧ください。 |
シャント (shunt) とは、血液が本来通るべき血管と別のルートを流れる状態のことである。ふつう、動脈と静脈が肺循環系や内臓を含む毛細血管を介さず直接吻合している箇所を指す。
病的シャントは先天性心奇形において見られ、ファロー四徴症、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、単心室症(無脾症)、動脈管開存症等がこれをきたす代表的疾患として挙げられる。特に、静脈系から動脈系への流出を右→左シャント、動脈系から静脈系への流出を左→右シャントと言い[1]、どちらのシャントになるかは吻合部位の圧較差によって規定される。無論、圧力の高い側から低い側へと流れて行く。
いっぽう、シャントは健常人にも存在する。シャントとは狭義には上述の定義であるが、広義には肺におけるガス交換に与れない肺血流、すなわち換気血流比(1分間あたりの肺換気量を肺血流量で除したもの)が正常値に満たない部分のことも含む(この場合静脈血がそのまま動脈系に流入していると考えることができるので、右→左シャントである)。この肺胞におけるシャントと、健常人にも存在する解剖学的シャント(心テベシウス血管、気管支静脈など)をあわせて、生理学的シャントという。
場合によっては、意図的にシャントを起こして循環機能の改善を図る場合もある。
先天性心奇形により重度の右→左シャントを持つ新生児は、動脈血中の酸素濃度の低下、静脈血中の二酸化炭素濃度の上昇により低酸素血症(低酸素症)およびチアノーゼをきたすことになる。これを軽減するための姑息的手術がBTシャント(Blalock-Taussig短絡)と呼ばれるシャント術である。これは肺動脈と鎖骨下動脈を吻合するというもので、鎖骨下動脈からの流入による肺血流の増加を図ることができる。現在ではこの吻合に人工血管を用いたmodified BTシャント術が一般的に用いられている。ただしこれはあくまで姑息手術であり、後の機能的根治術(フォンタン型吻合術)を目標とした一時的なものに過ぎない。
人工透析を行う際に、短時間で大量の血液を浄化するための血流量の豊富な血管を確保し、16G程度の留置針を毎回穿刺しなくてはならない。そのために主に腕(利き腕ではない方)の血管に短絡路を増設することがある。人工透析患者については単にこれを「シャント」という場合が多い。
前腕の動脈と静脈をバイパスするように吻合する。これにより動脈血が静脈血管へ直接流入する(左→右シャント)ため静脈血管は次第に怒張し200ml/min程度の体外循環血流量を十分確保する事ができる。もともと存在する血管を作為的に吻合するため、血管の炎症や閉塞など副作用を併発することもある。また心疾患を合併する患者には心臓への負担がかかることもあり、そのような場合はシャント(バイパス)しない非シャントタイプのものも使われる。 そのためシャントという言葉は適切ではないので、血液の取り出し口という意味でブラッドアクセスという言葉が一般的になってきているが、海外ではバスキュラーアクセスと言うほうが正式である(水頭症治療用シャントもある)。
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