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この項目では、太陽系の中心である恒星について説明しています。その他の用法については「太陽 (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
太陽 Sun |
|
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視等級 (V) | -26.789m |
視直径 | (視半径)15'59"64[1] |
分類 | 主系列星 |
発見 | |
発見方法 | 目視 |
位置 | |
距離 | 147.10×109 m ~ 152.10×109 m (0.9833 au~1.0167 au) |
軌道要素と性質 | |
惑星の数 | 8 |
銀河系を一周する時間 | 2.2×108 年 |
物理的性質 | |
直径 | 1 392 000 km(NASA)[2] 1 392 038±20 km(NAOJ)[注 1] |
地球との直径比 (dS/dE) | 109 |
半径 | R☉: 6.96×108 M[3] |
表面積 | 6.0877×1012 km2[4] |
体積 | 1.411×1018 km3[4] |
質量 | M☉[3][5]: 1.9891×1030 kg[2] |
地球との相対質量 | 333 404.2 |
平均密度 | 1.411 g/cm3[2][4][6] |
地球との相対密度 | 0.26 |
水との相対密度 | 1.409 |
表面重力 | 274 m/s2[2] |
相対表面重力 | 27.9 G |
脱出速度 | 617.7 km/s[4] |
自転周期 | 27日6時間36分(赤道) 28日4時間48分(緯度30度) |
スペクトル分類 | G2V |
絶対等級 (H) | 4.82m[7] |
光度 | L☉: 3.85×1026 W[3] |
赤道傾斜角 | 7.25 °[2] |
表面温度 | 5 778 K[2] |
中心温度 | 15.7×106 K[2] |
コロナの温度 | 5×106 K |
輝度 (LS) | 3.846×1026 J/s[2] |
年齢 | 約46億年 |
光球の組成 | |
水素 | 73.46 %[8] |
ヘリウム | 24.85 % |
酸素 | 0.77 % |
炭素 | 0.29 % |
鉄 | 0.15 % |
ネオン | 0.12 % |
その他 | 0.11 % |
窒素 | 0.09 % |
ケイ素 | 0.07 % |
マグネシウム | 0.05 % |
硫黄 | 0.04 % |
別名称 | |
別名称 |
英語: Sun (サン)
ラテン語: Sol (ソル) |
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太陽(たいよう、英: Sun、羅: Sol)は、銀河系(天の川銀河)の恒星の一つである。人類が住む地球を含む太陽系の物理的中心[9]であり、太陽系の全質量の99.86%を占め、太陽系の全天体に重力の影響を与える[10]。
太陽は属している銀河系の中ではありふれた[9]主系列星のひとつで、スペクトル型はG2V(金色)である[11]。推測年齢は約46億年で、中心部に存在する水素の50%程度を熱核融合で使用した、主系列星として存在できる期間の半分を経過しているものと考えられている[12]。
また太陽が太陽系の中心の恒星であることから、任意の惑星系の中心の恒星を比喩的に太陽と呼ぶことがある[13]。
太陽の半径は約70万kmであり地球の約109倍に相当し[2]、質量は地球の約33万倍にほぼ等しい約2×1030 kgである[12]。平均密度[2]は水の1.4倍であり、地球の5.5倍と比べ約1/4となる[12]。
太陽が属している銀河系では、その中心から太陽までの距離は約2万5千光年であり、オリオン腕に位置する[14]。地球から太陽までの平均距離は約1億4960万km(約8光分19光秒)である。この平均距離は地球太陽間距離の時間平均と考えても、地球の軌道長半径と考えてもどちらでも差し支えない。なお、この平均距離のより正確な値は149 597 870 700 m(誤差は3m)で、これを1天文単位 (au) と定義する[15][5][16]。なお、2012年8月の国際天文学連合(IAU)の決議で 1 auの値は誤差±3mを除いて正確に149 597 870 700 mであると再定義された[17]。この距離を光が届くのに要する時間は8.3分であるので、8.3光分とも表せる。
太陽の数値を単位に用いるような場合、それらは太陽を表す記号☉をつけて表す[5]。例えば質量ならばM☉、太陽光度ならばL☉で表示する[3]。時間の基準も、現在は原子時計で決まる1秒を基底にしているが、かつては地球の自転と公転、人間の視点からすると日の出や日の入りや季節の一巡を基準に「日」や「年」を決める太陽暦・太陰太陽暦が使われた[5]。
太陽はほぼ完全な球体であり、その扁平率は0.01%以下である。太陽には、地球型惑星や衛星などと異なり、はっきりした表面が存在しない[18]。
太陽は、中心核(太陽核)・放射層・対流層・光球・彩層・(還移暦)・コロナからなる[19][20]。可視光にて地球周辺から太陽を観察した場合の視野角と概ね一致するため、このうち光球を便宜上太陽の表面としている[10]。また、それより内側を光学的に観測する手段がない[21]。太陽半径を太陽中心から光球までの距離として定義する。光球には周囲よりも温度の低い太陽黒点や、まわりの明るい部分であるプラージュと呼ばれる領域が存在することが多い[10]。光球より上層の、光の透過性の高い部分を太陽大気と呼ぶ。プラズマ化した太陽大気の上層部は太陽重力による束縛が弱いため、惑星間空間に漏れ出している。海王星軌道まで及ぶこれを太陽風と呼び、オーロラの原因ともなる[22]。
太陽は光球より内側が電磁波に対して不透明であるため、内部を電磁波によって直接垣間見ることができない。太陽内部についての知識は、太陽の大きさ、質量、総輻射量、表面組成・表面振動(5分振動)等の観測データを基にした理論解析(日震学)によって得られる。理論解析においては、太陽内部の不透明度と熱核融合反応を量子力学により推定し、観測データによる制限を境界条件とした数値解析を行う。太陽中心部の温度、密度等はこのような解析によって得られたものである。
太陽の中心には半径10万kmの核(中心核)があり[19]、これは太陽半径の0.2倍に相当する。密度が1.56 ×105 kg/m3(およそ水の150倍)であり、このため太陽全体の2%ほどの体積の中に約50%の質量が詰まった状態になっている[23]。その環境は2500億気圧、温度が1500万Kに達するため物質は固体や液体ではなく理想気体的な性質を持つ[12]、結合が比較的低い量子論的な縮退したプラズマ(電離気体)状態にある[24]。
太陽が発する光のエネルギーは、この中心核においてつくられる[25]。ここでは熱核融合によって物質からエネルギーを取り出す熱核融合反応が起こり[12]、水素がヘリウムに変換されている。1秒当たりでは約3.6 ×1038 個の陽子(水素原子核)がヘリウム原子核に変化しており、これによって1秒間に430万トンの質量が3.8 ×1026 Jのエネルギー [12](TNT火薬換算で9.1 ×1016 トンに相当する)に変換されている。このエネルギーの大部分はガンマ線に変わり、一部がニュートリノに変わる。ガンマ線は周囲のプラズマと衝突・吸収・屈折・再放射などの相互作用を起こしながら次第に「穏やかな」電磁波に変換され、数十万年かけて太陽表面にまで達し、宇宙空間に放出される[25]。一方、ニュートリノは物質との反応率が非常に低いため、太陽内部で物質と相互作用することなく宇宙空間に放出される[25][注 2][26]。それ故、太陽ニュートリノの観測は、現在の太陽中心部での熱核融合反応を知る有効な手段となっている。
太陽半径の0.2倍から0.7倍まで、中心核を厚さ40万kmで覆う[19]層では、放射(輻射)による熱輸送を妨げる程には物質の不透明度が大きくない。したがって、この領域では対流は起こらず、輻射による熱輸送によって中心核で生じたエネルギーが外側へ運ばれている[19]。放射層をエネルギーが通過するには長い時間がかかり、近年の研究では約17万年が必要とも言われる[23]。
0.7太陽半径から1太陽半径まで、厚さにして20万kmの層[19]では、ベナール対流現象でエネルギーが外層へ伝わる[27]。ここでは微量イオンが原因となって不透明度が増し、輻射によるエネルギー輸送よりも効率が高い対流による熱伝導を行う[28]。
光球とは、可視光を放出する、太陽の見かけの縁を形成する層である[10]。光球より下の層では密度が急上昇するため電磁波に対して不透明になり[21]、上の層では太陽光は散乱されることなく宇宙空間を直進するためこのように見える。厚さ約300km[21] - 600km[18]と薄い。
光球表面から放射される太陽光のスペクトルは約5,800Kの黒体放射に近く[21]、これに太陽大気の物質による約600本もの吸収線(フラウンホーファー線)が多数乗っている[29]。比較的温度が低いため水素は原子状態となり、これに電子が付着した負水素イオンになる。これが対流層からのエネルギーを吸収し、可視光を含む光の放射を行う[18]。光球の粒子密度は約1023 個/m3である。これは地球大気の海面上での密度の約1%に相当する。光球よりも上の部分を総称して太陽大気と呼ぶ。太陽大気は電波から可視光線、ガンマ線に至る様々な波長の電磁波で観測可能である。
光球の表面には、太陽大気ガスの対流運動がもたらす湧き上がる渦がつくる粒状斑[21]・超粒状斑[30]や、しばしば黒点と呼ばれる暗い斑点状や白斑という明るい模様が観察できる。黒点部分の温度は約4,000K、中心部分は約3,200Kと相対的に低いために黒く見える。また、スペクトル解析からこの黒点部分には水分子が観測された[31]。
光球表面の上には厚さ約2,000kmの密度が薄く温度が約7000 - 10000Kのプラズマ大気層があり[21]、この層から来る光には様々な輝線や吸収線が見られる。この領域を彩層と呼ぶ。皆既日食の始まりと終わりには紅色の彩層を見ることができる[21]。この彩層ではさまざまな活発な太陽活動が観察できる[10]。
彩層のさらに外側にはコロナと呼ばれる約200万Kのプラズマ大気層があり[21]、太陽半径の10倍以上の距離まで広がっている。彩層とコロナの間には還移層と呼ばれる薄い層があり、これを境界に温度や密度が急激に変化する[32]。
コロナからは太陽引力から逃れたプラズマの流れである[21]太陽風が出ており、太陽系と太陽圏 (heliosphere) を満たしている。コロナの太陽表面に近い低層部分では、粒子の密度は 1011 個/m3程度である。自由電子が光球の光を乱反射するが、輝度は光球の1/100万と低いため普段は見えないが、皆既日食の際に白いリング状(またはアーチ状とも表現できる[22])に輝くコロナが観察できる[21]。
かつてコロナのスペクトル線を分析した際に、既知の元素に見られないスペクトルが発見されたため、地上に存在しない元素「コロニウム」が提唱されたことがある[33]。しかしこれはコロナの温度がもっと低温と考えられていたためであり、このスペクトルは一般的な元素が高階電離状態で発するものであった。例えば最も強い波長530.3nmの緑線は13階電離(軌道電子を13個失った)鉄元素と判明した[21]。
コロナの領域では、X線が観測されない領域が発生することがある。これは「コロナホール」と呼ばれ、磁力線が宇宙空間に向けて開いている箇所であり、ここはコロナガスが希薄で太陽風を発生させる原因のひとつである[34]。
光輝く太陽はどのようなエネルギーを源にしているかという問題は、19世紀頃までに続々と発見された化学反応ではとうてい解明できず、大きな疑問となっていた。当初は重力ポテンシャルエネルギーという想像もあったが、19世紀末に放射能が発見されると原子核反応が候補となった。そして1938年に核融合反応が発見されると、これが太陽活動のエネルギー源と考えられるようになった[35]。
太陽の内部構造は直接観測できない。そのため、1950年代 - 1960年代にかけてこれを理論的に構築する試みが行われた。これにより、熱核融合反応にて水素をヘリウムへ変換することでエネルギーを生み出す太陽46億年の歴史過程を求め、熱伝導や重力バランスを説明する[19]現在の構造を試算した結果が「標準太陽モデル」と呼ばれる。このモデルによって、太陽中心温度や密度が計算された[36]。
太陽内部の物質は極端な高温のために全てプラズマの状態にあるとされる。このように剛体でないため、太陽は赤道付近の方が高緯度の領域よりも速く自転し、周期は赤道部分で約25日(地球上の観測では地球公転運動の影響から27日となる)、極近くでは約30日である[21]。この太陽の赤道加速型[21]「差動回転」(または「微分回転」)のために、太陽の磁力線は時間とともにねじれていくことになる。ねじれて変形した磁力線はやがて磁場のループを作って太陽表面から外へ飛び出して、太陽黒点や紅炎(プロミネンス)を作ったり、太陽フレアと呼ばれる爆発現象を引き起こしたりする。
太陽は固有磁場を持っているが、その様相は地球磁場と大きく異なる。磁力線は太陽風によって放射状に広がり、しかも自転の影響を受けてらせん状に展開する。宇宙空間の一般磁場は1ガウスに満たないが、黒点部分では数千ガウスと強さもまちまちである[38]。太陽付近の強い磁場がプラズマを拘束する際にX線が生じる[39]。
このような磁場は地球同様にダイナモ効果によると考えられるが、差動回転の影響で単純な双極磁場とならず緯度によって差が生まれて、やがて水平方向のトロイダル磁場を作る。しかし磁力線は反発し合うために浮き上がりやループなどが生じ、黒点を生む原因となる。ここにコリオリの力が影響すると、磁力線の繋ぎ変えやねじれができ水平方向の電流(トロイダル電流)が誘起され、磁場はNS極が逆転した緯度方向のポロイダル磁場となり、上下逆の双極磁場に戻る。この変動は11年を周期に起こり、これは太陽周期と呼ばれる[38]。
太陽黒点は太陽周期で増減する。これは黒点の数で観測され、多くなれば活発な極大期へ向かう[40]。このサイクルは古い磁場が一方の極から引き剥がされてもう一方の極まで達する周期に対応しており、1周期ごとに太陽磁場は反転する。太陽活動の周期には1755年から始まった周期を第1周期とする通し番号が付けられており、2008年1月から第24周期に入っている。この他、マウンダー極小期のようなさらに長い周期での変化もある。なお、11年周期は磁場極性変動が片方(例えば北から南)へ動く期間であり、一周する期間で考えれば22年周期とも言える[40]。
この周期は、太陽磁場・差動回転・対流の3つが対流層で相互作用を起こした結果という説明が1950年代にアメリカのユージン・パーカーが提唱した「ダイナモ機構」で行われた。ただし太陽周期を正確に説明するダイナモモデルは完成されておらず、これには対流層での差動回転の様子を解明しなければならない[40]。
太陽表面には、数時間から数ヶ月にかけて現れては消えるしみのような太陽黒点などさまざまな現象が生じる。また爆発現象である太陽フレアや紅炎(プロミネンス)、CME(コロナ質量放出)なども観察できる[39]。これらを発生させる原因は太陽磁場の磁力線管である。黒点は磁力線管が浮き上がり[32]光球面と交わる部分に2つが対になって生じ[41]、太陽エネルギー放出を阻害するためにその領域の温度は相対的に低くなる。
太陽フレアは黒点上のコロナ部分周辺で数分から数十分発生する強力な爆発現象で、高さ1 – 10万kmのフレアリボンという明るい帯状の光と強いX線[34]を放ちながら、10 ×1022 - 10 ×1025ジュールの高エネルギー粒子が開放され宇宙空間に放たれる[32][39]。紅炎は黒点形成に関わる磁力線管に蓄積された2000 - 3000Kの高温プラズマに耐えられず、付け根部分が破壊する現象で、これも高エネルギー粒子の放出が伴う[39]。
また、コロナ内でもコロナ質量放出(コロナガス放出、Coronal mass ejection, CME)という現象がある。これはコロナ下層から湧き上がる電離高温ガスの塊であり、質量10 ×1015g程度、速度10 - 1000km/秒、エネルギーは10 ×1026ジュール程度[41]にもなる。かつては太陽フレア発生による副次作用と思われていたが、観測の結果CMEがフレアよりも先に起こることもあると判明しており[42]、CME発生の根本原因は解明されていない[41][34]。
コロナ内部でプラズマのガス圧力が高まり、太陽の引力を超える状態になると宇宙空間へ吹き出す現象が起こる。これは太陽風と呼ばれ、1951年にドイツのルートヴィヒ・ビーアマンが彗星の尾が太陽光の圧力以外に何かしらの力を受けていることから予測し、1962年にマリナー2号の観測で実証された[37]。
太陽風の密度は粒子が1cm2当たり5個程度、通常速度は秒速300 - 500km[43]。成分は主にプロトン (H+)次いでアルファ粒子 (He++)などイオン[37]と電子などの荷電粒子である[43]。これが太陽から磁力線に沿ったスパイラル状に吹き出している[43]。温度は地球付近でも10万度を維持している[44]。この太陽風は110-160 AUまで届き、銀河系の恒星間ガスと衝突するところまで到達する。この衝突面はヘリオポーズと呼ばれ、これより内側が太陽圏(ヘリオスフェア)と定義される[45]。この太陽風が地球磁場の南北極域に達し、オーロラが発生する[43]。
太陽風は発生元によって特徴があり、太陽フレアから生じる場合は1000km/秒の高速[34]・高密度となる。CMEからは高密度だが速度は中程度となり、コロナホールからは高速だが密度が低い太陽風が発生する[37]。
これは太陽だけでなく他の恒星にも言えるが、太陽には固体からなる地球型惑星や衛星、液体が大半を占める木星型惑星や天王星型惑星などと異なり、はっきりした表面が存在しない。かつては、太陽を始めとする主系列星や未来の太陽の姿とされる赤色巨星は、気体で構成される、という説が有力であった。しかしながら、内部の重力の影響で、表面は気体だが、内部は液体ならびに固体で構成されている、とする説もある(前述の通り、核ではかなりの高温高圧になっているため、密度も非常に高くなっている)。21世紀初頭では、太陽の内部はプラズマや超臨界流体といった、固体でも液体でも気体でもない第四の状態となっている、とする説が最も有力となっている(中でも、既述したプラズマ説が最も有力)。このため、太陽の内部構造が三態のいずれかに該当するかについては結論は出ておらず、いまだにわかっていない。
太陽の表面温度は約6,000度であるのに対し、太陽を取り囲むコロナは約200万度という超高温であることが分かっているが、それをもたらす要因は太陽最大の謎とされた。1960年代までは太陽の対流運動で生じた音波が衝撃波へ成長し、これが熱エネルギーへ変換されてコロナを加熱するという「音波加熱説」が主流の考えだった[21]。
1970年代からスカイラブ計画を通じてコロナのX線観測が行われたところ、コロナの形状は太陽の磁場がつくるループに影響を受けていることが判明し、ここから太陽磁場の影響による加熱が提唱された。しかし他にも磁場に伴うアルベーン波説や、フレアによる加熱説などもあり、結論には至っていない[21]。
太陽内部の核融合反応に伴って、太陽からはニュートリノが常時放出されている。これは可視光で調査不能な太陽内部を直接知る手段として注目された。標準太陽モデルで求められた陽子-陽子連鎖反応による太陽ニュートリノは、以下の4種類が想定された[36]。
これらの名称およびエネルギー値は上から、p-pニュートリノ (0.42MeV)、pepニュートリノ (1.44MeV)、ベリリウム・ニュートリノ(0.38MeVおよび0.86MeV)、ボロン・ニュートリノ (6.7MeV) である[36]。
太陽ニュートリノ観測は1960年代にアメリカ、1985年から日本でそれぞれ行われたが、その結果は、恒星内部の核反応の理論から予測される値の半分程度しかないことが分かった。その後行われた高精度が期待される手法による観測でも理論値よりも測定値が低い結果が再現された。複数の観測法で同じ傾向の結果が出たために、方法的欠陥とは考えられなくなった[36]。
1990年代に複数の仮説が提案された。ひとつは素粒子物理学におけるニュートリノ振動が影響するというものであった。ニュートリノが質量を持つと仮定すると、そのフレーバー(電子型、ミュー型、タウ型)が宇宙空間を飛来する間に変化する可能性があり、過去の電子型ニュートリノのみを測定する手法では太陽ニュートリノが減衰したように見えるというものだった。他にも標準太陽モデルにおけるニュートリノ発生比率への疑問も呈され、過去の実験では高エネルギーのボロン・ニュートリノを捉えやすい性質があったため、仮に太陽中心の温度が想定よりも低いとするとp-pIII反応の比率は低くなり、結果として太陽ニュートリノの観測値が低くなるという考えが提案された。他にも「太陽では核反応が起こっていない」という極端な説が飛び出る中、新たな観測方法が求められた[36]。
21世紀に入り稼動したスーパーカミオカンデは、同時期に開始されたカナダの観測法よりも比較的電子型以外のニュートリノも捉えることが可能だった。太陽ニュートリノを観測した結果は、理論値よりも低いながらもスーパーカミオカンデの実測値はカナダのそれを上回り、太陽ニュートリノ問題はフレーバーの変化という説で決着した。スーパーカミオカンデは別な観測でニュートリノ振動を実証し、これを受けて「太陽ニュートリノ問題」提唱者レイモンド・デイビスとカミオカンデ実験を主導した小柴昌俊は2002年度のノーベル賞を授与された[36]。
1966年の日食の際、アメリカの科学者が赤外線観測によって、太陽から約300万km離れた地点で数µm程度の微細な塵がリング状に広がっていることを発見した。だが1993年にインドネシアにおいて観測された日食の際に京都大学の研究チームが環を確認して以来、環は見えなくなっており、今後の研究が待たれている[46]。
太陽は過去の超新星の残骸である星間物質から作られた種族Iの星であり[47]、太陽は超新星爆発で散らばった星間物質がふたたび集まって形成されたと考えられている。この根拠は主に質量の大きな高温の星の内部で元素合成によって作られる鉄や金、ウランといった重元素が太陽系に多く存在していることにある[48]。
中心核では熱核融合により水素原子4個がヘリウム原子1個に変換されるために圧力がわずかに下がり、それを補うために中心部は収縮し、温度が上がる。その結果核融合反応の効率が上昇し、明るさを増していく。45億年前(太陽誕生から1億年後)に主系列星の段階に入った太陽は、現在までに30%ほど明るさを増してきたとされている[49]。今後も太陽は光度を増し続け、主系列段階の末期には現在の2倍ほどの明るさになると予想されている。
太陽は超新星爆発を起こすのに十分なほど質量が大きくない。20世紀末 - 21世紀初頭の研究では太陽の主系列段階は約109億年続くとされており、63億年後[50]には中心核で燃料となる水素が使い果たされ、中心核ではなくその周囲で水素の核融合が始まるとされる。その結果、重力により収縮しようとする力と核融合反応により膨張しようとする力のバランスが崩れ、太陽は膨張を開始して赤色巨星の段階に入る[51]。外層は現在の11倍から170倍程度にまで[50]膨張する一方、核融合反応の起きていない中心核は収縮を続ける。この時点で水星と金星は太陽に飲み込まれ[51]、高温のために融解し蒸発するだろうと予想されている。
76億年後には[50]中心核の温度は約3億Kにまで上昇し、ヘリウムの燃焼が始まる[50]。すると太陽は主系列時代のような力のバランスを取り戻し、現在の11 - 19倍程度にまで一旦小さくなる[50]。中心核では水素とヘリウムが2層構造で核融合反応を始める結果、主系列段階よりも多くの水素とヘリウムが消費されるようになる。そのため、その安定した時期は1億年程度しか続かない[50]。やがて中心核がヘリウムの燃えかすである炭素や酸素で満たされると、水素とヘリウムの2層燃焼が外層部へと移動し、太陽は再び膨張を開始する[50]。最終的に太陽は現在の200倍から800倍にまで巨大化し[50]、膨張した外層は現在の地球軌道近くにまで達すると考えられる[52]。このため、かつては地球も太陽に飲み込まれるか蒸発してしまうと予測されていたが、20世紀末 - 21世紀初頭の研究では赤色巨星段階の初期に起こる質量放出によって重力が弱まり[53]、惑星の公転軌道が外側に移動するため地球が太陽に飲み込まれることはないだろうとされている[51][52]。
赤色巨星の段階に続いて太陽は脈動変光星へと進化し、これによって外層の物質が放出されて惑星状星雲を作り、10 - 50万年にわたってガスを放出する[54]。その後、太陽は白色矮星となり、何十億年にもわたってゆっくりと冷えていき[51]、123億年後には収縮も止まる[55]。このシナリオは質量の小さな恒星の典型的な一生であり、恒星としての太陽は非常にありふれた星であると言える。
太古の時代から、太陽を人格として捉えた太陽神は世界の多くの神話・伝承などで最高神などとして描かれることが多く、太陽崇拝の対象であることも多い。その性質も、昼夜を分け世界を統治する男性神でもあれば、植物を育て恵みを与える女性神として考えられることもあった[56]。月とともに普遍的な太陽神についての誕生や成立に関する説話は世界各地にある[57]。
太陽を天文学的に観測した初期の例は、古代ギリシアのアナクサゴラス(紀元前500年頃 – 紀元前428年頃)が800km離れたシエネ(アスワン)とアレキサンドリアで同時刻の太陽視差を測定し、三角法で距離と大きさを求めた。これは、地球は平面という前提でなされたもので、距離を6400km、直径を56kmと算出し「太陽はペロポネソス半島ほどの大きさ」と述べた。実際とはかけ離れた数字だが、当時のギリシア人はあまりの大きさに誰も信じなかったという[58]。
地球が球体という前提で距離を計算したアリスタルコス(紀元前310年 - 紀元前230年)が日食時に月と太陽の視差がほぼ同じという観察を根拠に三角関数を用いて月と太陽までの距離を計算した[3]。さらにヒッパルコス(紀元前160年 - 紀元前125年)が精度を高めた計算を行った[58]。
歴史に残る最初の地動説は、紀元前500年頃のフィロラオスだが、彼の唱える宇宙の中心は太陽ではなく仮想的な「火」だった。太陽中心の地動説はサモス島のアリスタルコス(紀元前310年 - 紀元前)が観測を元に唱えた[59]。
しかし、クラウディオス・プトレマイオス(83年頃 - 168年頃)が確立した天動説型太陽系モデルの体系化を成し遂げた[60]。これを含む古代ギリシア学問はアラビア世界を経て12世紀にヨーロッパが取り入れ、キリスト教的世界観に組み込まれた[61]。
中世ヨーロッパで地動説は、ニコラウス・コペルニクス(1473年 - 1543年)によって唱えられ、ガリレオ・ガリレイ(1564年 - 1642年)が望遠鏡を用いた天体観測を重ね、木星の衛星(ガリレオ衛星)軌道から地動説を提唱したが、二度の宗教裁判の末に敗れた[62]。しかし地動説はヨハネス・ケプラー(1571年 - 1630年)が堅持し、アイザック・ニュートン(1642年 - 1727年)が万有引力の法則で理論的に説明したことで広く受け入れられるようになった[63]。
太陽の観察は古代から行われ、皆既日食から彩層やコロナは観察されていた。ガリレオは黒点の観察を記録し[62]、1859年にはリチャード・キャリントンが太陽フレアのスケッチを描いた[32][64]。太陽光をプリズムで分析する観察はニュートンも行ったが、ヨゼフ・フォン・フラウンホーファー(1787年 - 1826年)が分光の中に黒い線を発見した[29]。1850年代に、グスタフ・キルヒホフ(1824年 – 1887年)とローベルト・ブンゼン(1811年 - 1899年)がこの黒線が特定の元素によって吸収された光の波長であることを突き止め、これによって太陽大気の元素成分が判明した[65]。分光による輝線と元素の関連が判明した後の1868年に、ピエール・ジャンサン(1824年 - 1907年)が日食時の太陽光スペクトルを観察していた際に未知の元素を示す輝線が発見され、後にこれは太陽のギリシア語にちなみ「ヘリウム」と名づけられた[65]。ゼーマン効果による黒点磁場は1908年に発見された[66]。
日光には可視光線の青色光、紫外線、赤外線が含まれるため、肉眼で直接太陽を観測すると日食網膜症を引き起こし、網膜のやけどや後遺症、失明のリスクがある[67][68]。観察には日食グラスや太陽観測専用の遮光フィルターなどの専用の器具を使用する(すすのついたガラスや黒い下敷き、カラーネガフィルムによる減光では不十分とされている。)。 太陽の位置を瞬間的に肉眼で確認してから、グラスやフィルターを目に当てる方法では、網膜にダメージが蓄積される(そのため、先にフィルターに目を当ててから、観測をはじめるように勧告されている。)[69]。
望遠鏡や双眼鏡を使用する場合には、太陽投射板に太陽像を投射する方法、対物レンズの前にフィルターを装着する方法の他[70]、(不適切な導入によって事故のリスクがあるが)接眼レンズに専用のサングラスを装着する方法や、サンプリズムで減光した後に接眼レンズに専用のサングラスを装着する方法もある[71]。
上記のように適切な専用機器を使って正しい観測方法を行ったとしても、長時間の観測によって日食網膜症を引き起こすこともあり、1分観測するごとに2~3分程度の休憩を取ることがベストだとされており、市販されている日食グラスにもその旨の警告がなされている[70]。
溶接用の遮光面で日食を観測する人。
木漏れ日も太陽像を呈する[70]
光量が多く、しかも観測目標が光球表面の見かけ微細かつ変化が激しい現象である太陽観察には、特別な望遠鏡が開発された。一般的には、焦点距離が長く拡大率を高められ、収差を小さくするためにF値が30以上のものに、分散性能が高い分光器が求められる。これらを満たす装置は大型になるため、太陽を追尾する部分・集光部分・分光部分が独立していることが必須となる[72]。
これらを満たすものとして、追尾部分は「シーロスタット式」や「ヘリオスタット式」、反真空望遠鏡では「タロット式」が採用される。太陽観測は日中であるため夜間より大気の揺らぎが大きく、シーイング向上を目指した設置場所や方法も工夫が必要となる。高地や、海や森林などで囲まれた場所がよく選ばれるが、初期には太陽塔望遠鏡のような構造物の上に設置された。太陽観測用では1998年にサクラメントピーク天文台で始めて設置された補償光学もシーイングに成果をもたらしている[72]。
太陽内部では乱流的対流とともに音波的波動(太陽の固有振動)が存在し、この2つが表面の運動速度場を決定している。太陽光、特に吸収線のドップラー効果から、光球表面の各部分についてこれを知ることができる[20]。これは1960年にアメリカのロバート・レイトンらが粒状斑を観察する中で発見したもので、「5分振動」と呼ばれる。これは当初、太陽大気の局在が原因と思われたが、1970年代にpモードと呼ばれる太陽が持つ固有の振動が原因と判明した。太陽光球上で非常に目立つ[19]5分振動は、量子力学で扱われる球面調和関数で記述できる、量子数が異なる様々な音波の固有振動が重なり合った結果だった。この理論は可視光で観察不能な太陽内部を調査できるために注目され、また地球内部を地震波で調査する手段と基本的に同じであるため、「日震学」(helioseismology) と呼ばれる[73]。
日震学は、対流層の深さを明らかにした。外部から対流を観察するだけでは不明瞭だった対流の深さが固有振動の分析で判明し、それまで考えられていたよりも対流層は厚かった。また、音波が伝わる速度が温度に依存する点から、太陽内部の温度分布が計算可能となった。これは、後述する「太陽ニュートリノ問題」が解決される前に提示された中心温度への疑問に対し、計算値は標準太陽モデルに近いことを示した。さらに太陽内部の自転速度分析にも回答を与え、表面のような差動回転は内部には大きく見られないことが解明された[73]。
X線による太陽観測は1970年代から活発に行われ、アメリカの「スカイラブ」や「ソーラーマックス」、ESA と NASA が共同で「SOHO」、日本の「ひのとり」や「ようこう」および「ひので」などが打ち上げられた。「スカイラブ」はコロナの詳細な像をもたらし、さらに「ようこう」は空間分解能の高いコロナ像を提供した[21]。
光球の基本的な組成は分光観測によってよく知られているが、太陽内部の組成についてはあまりよく分かっていない。太陽風に含まれる粒子のサンプルリターンミッションである「ジェネシス」は、研究者が太陽の物質を直接測定することを目的に計画された。このミッションでは2004年に機体が地球に帰還し、サンプルの解析が現在も進行中だが、試料カプセルが大気圏へ再突入する際にパラシュートが正常に作動せず、カプセルが地表に激突したために、サンプルの一部が損傷を受けた。
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