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太陽フレア。見やすくするために、太陽の球状の箇所は黒く加工し、周縁部分だけが写されている。
太陽フレアの動画。2011年7月7日。SDOによる撮影。
太陽フレア(たいようフレア、Solar flare)は、太陽で発生している爆発現象のことである。別称は太陽面爆発[1]。
太陽系で最大の爆発現象で、しばしば観測されている。多数の波長域の電磁波の増加によって観測される。特に大きな太陽フレアは白色光でも観測されることがあり、白色光フレアと呼ぶ。太陽の活動が活発なときに太陽黒点の付近で発生する事が多く、こうした領域を太陽活動領域と呼ぶ。太陽フレアの初めての観測は、1859年にイギリスの天文学者、リチャード・キャリントンによって行われた(1859年の太陽嵐)。
「フレア」とは火炎(燃え上がり)のことであるが、天文学領域では恒星に発生する巨大な爆発現象を指している。現在では太陽以外の様々な天体でも観測されているが、以下もっぱら人類の近傍にある唯一の恒星である太陽のフレアについて説明する。
目次
- 1 概要
- 2 太陽フレアによる被害
- 3 過去に観測された大規模フレアと日本の主なフレア
- 4 参考資料
- 5 関連項目
- 6 外部リンク
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概要
フレアの大きさは通常数万km程度であり、威力は水素爆弾10万~1億個と同等である。100万度のコロナプラズマは数千万度にまで加熱され、多量の非熱的粒子(10keV-1MeVの電子や10MeV-1GeVの陽子)が加速される。同時に衝撃波やプラズマ噴出が発生し、時おりそれらは地球に接近して、突然の磁気嵐を起こす[2][3]。
フレアの規模はX線の強度によって、X、M、C、B、Aの5つの等級に分類され、Xが一番強い。太陽フレアの規模は、アメリカの気象衛星GOESで観測される大気圏外の軟X線強度(W/m2)で分類され、低い方から10倍 (1桁) 強度が上がるごとに A, B, C, M, X と表される。 Cクラスは小規模、Mクラスは中規模、Xクラスは大規模のフレアに相当する[4]。 各クラス内でさらに1-9まで直線状のスケールで強度を示す(ただしXクラスの上はないため、この場合は10を超えて示される)。このためX2フレア(2 x 10−4 W/m2)は、X1フレア(10−4 W/m2)よりも2倍の強度となり、M5フレア(5 x 10−5 W/m2)よりも4倍の強度であることを示す。
フレアの発生機構については、太陽活動領域中に蓄えられた磁気エネルギーが、磁気再結合によって熱エネルギーや運動エネルギーに変換されるという説が有力である。全てのフレアを説明するモデルとして、京都大学教授柴田一成の「統一フレアモデル」がある。
フレアが発生すると、多くのX線、ガンマ線、高エネルギー荷電粒子が発生する。またフレアに伴い、太陽コロナ中の物質が惑星間空間に放出される(コロナル・マス・エジェクション(CME))ことが多い。高エネルギー荷電粒子が地球に到達すると、デリンジャー現象、磁気嵐、オーロラ発生の要因となる。2003年は、大規模なフレアが頻発し、デリンジャー現象により、地球上の衛星、無線通信に多くの悪影響を与えた。また地球磁気圏外では、フレア時のX線、ガンマ線による被曝により、人の致死量を超えることもある。
フレアの活動は、太陽活動周期や黒点の蝶形図(コロナの蝶形図)によって、関係付けを説明されることもしばしばある。
フレア時の高エネルギー荷電粒子の地球への到達、あるいは、フレアの発生そのものを観測・予報することは宇宙天気予報と呼ばれ、太陽研究者にとって重要課題となっている。
太陽フレアによる被害
太陽嵐が起こると、8分程度で電磁波が到達して電波障害が生じ、数時間で放射線が到達。数日後にはコロナからの質量放出が地球に届き、誘導電流が送電線に混入し、電力系統がおかしくなる。ただ単に停電するのではなく、電機・電子系統に瞬断やEMP(電磁パルス)被害が出る。特に宇宙空間にある衛星(通信衛星、GPS,気象衛星、偵察衛星など)や、巨大なアンテナとして働く送電線の被害が起こる。
2008年に全米科学アカデミーによる「激しい宇宙気象――その社会的・経済的影響の把握」報告書[5]が出されている。それによると、強力な太陽フレアが地球の磁場を混乱させ、強力な電流によって高圧変圧器が故障(規模によっては溶融)し、電力網が停止する可能性について検討されている。通信ケーブル、放送、携帯電話は脆弱である。もしそうなれば、米国だけで最初の1年間で1兆〜2兆ドルの被害が出て、完全復旧には4年〜10年かかる。もし1859年規模のフレアが起これば、社会に大混乱が生じ文明は19世紀初頭に戻ると予想された[6][7][8]。大型の変圧器は調達に年単位の時間がかかり、電力網が世界規模で破壊された場合に生産はほとんど出来ないとされる。また超高圧送電線の敷設にも時間がかかる[9]。
過去に観測された大規模フレアと日本の主なフレア
- 2012年10月23日:X1.8
- 2012年3月7日:X5.4
- 2012年1月23日:M8.7(サンスポット1402)。フレア自体は中規模だったが、地球の方角に向けて発生したため2003年以来の強い太陽放射線を観測。アイルランドやイングランドでオーロラが目撃された[10][11]。
- 2011年10月25日:アメリカ北部から南部(ニューヨーク、テキサス(深紅)、ミズーリ、ニューメキシコ、ルイジアナ各州を含む)でオーロラが見られた。大きな太陽フレアはなかったが、サンスポット1330が観測された[12][13]。
- 2011年8月9日:X7.0
- 2011年2月15日:X2.3[14]。4年2ヶ月ぶりの大規模フレアである[15]。
- 2006年12月5日:X9.1
- 2005年3月
- 2003年11月4日(平成15年):X28(観測史上最大だが、地球をそれたため大きな被害はなかった)
- 2003年10月28日:X17.2、陸別、名寄でオーロラ
- 2003年10月23日:X5.4
- 2001年4月3日:X17
- 2001年3月31日、ニュージーランドでISO200でオーロラが撮影できた
- 2000年4月7日(平成12年)、陸別町で4.2kR(レイリー)のオーロラ[16]
- 1992年5月
- 1989年10月21日、北海道幌加内町の名古屋大学ジオスペース研究センター母子里観測所で10kR以上のオーロラを観測
- 1989年10月19日(平成元年):X13、カナダのケベック州全域の電力網を破壊。9時間にわたり600万世帯が停電、復旧に数ヶ月かかった。
- 1972年8月4日(昭和47年)、シカゴからサンフランシスコの電話線が切れた
- 1960年11月13日(昭和35年)、1859年のフレアの半分の規模
- 1958年2月11日(昭和33年)、オーロラが東北、北陸、中部、関東にまで広った
- 1921年、1989年10月のフレアの10倍の規模
- 1909年9月25日(明治42年)、オーロラが広島、松山でも観測
- 1872年2月4、6日(明治4年12月26、28日、当時は旧暦)、島根県でオーロラ
- 1859年9月1、2日(安政6年8月4、5日):1859年の太陽嵐と呼ばれる白色フレア、キューバやフロリダでオーロラ(現在までの500年間の最大規模)[17]が観測され、アメリカ中の電信局で火災が発生した。太陽を観測していた天文学者リチャード・キャリントンによるスケッチが現存している[18]。
- 1805年(文化2年)
- 1771年5月24日(天明8年4月11日)の本居宣長の日記
- 1770年9月17日(明和7年7月28日)、長崎、佐賀、越後、長野でオーロラ。江戸時代最大。本居宣長の日記には松坂で、想山著聞奇集(三浦想山著)には長崎で、神田茂『日本天文気象史料』には京都で見えたとの記述あり
- 1730年2月15日(享保15年1月28日)、越中・氷見での記録
- 1730年1月18日(享保14年12月28日)
- 1607年11月17日(慶長12年10月29日)、ヨーロッパ中でオーロラを観測
- 1204年2月21日(鎌倉時代、元久元年1月19日)、藤原定家「明月記」
- 1138年10月6日(南宋時代、紹興8年9月甲申、日本では平安時代末期の保延年間)、杭州とボヘミアで観測記録
- 683年(天武天皇11年8月11日)
- 620年12月30日 (推古天皇28年12月朔日)
参考資料
- ^ 『最新 宇宙学-研究者たちの夢と戦い』P4
- ^ 科学技術政策研究所シンポジウム 近未来への招待状 第二部 柴田一成「太陽活動と宇宙天気予報」講演資料。
- ^ 小特集 高強度レーザーを用いた実験室宇宙物理 7.MHDプラズマ
- ^ http://hinode.nao.ac.jp/news/110311Flare/
- ^ Severe Space Weather Events--Understanding Societal and Economic Impacts:A Workshop Report
- ^ 原子力発電所や核爆弾の制御不能が起こす放射線被害、細菌・ウイルス研究所の閉じこめシステムの崩壊による感染症の流行、混乱が引き起こす戦争、気象衛星と通信システムの崩壊による気象災害の増加などは想定外である。
- ^ 強力な太陽嵐で2012年に大停電? 対抗策は:WIRED.jp
- ^ 強力な太陽嵐で2012年に大停電? 対抗策は:WIRED.jp
- ^ ナショナルジオグラフィックチャンネル> 地球を襲う宇宙の嵐 危険な太陽風
- ^ Solar storm sends charged particles toward Earth:Los Angels Times :January 24, 2012
- ^ 太陽で大規模フレアが発生、強い太陽放射線を観測 AstroArts 2012年1月25日
- ^ 米南部でオーロラ観測 珍事と米メディア:共同:2011年10月26日14時9分
- ^ Aurora Borealis Visible In US: Wild Solar Flares Shine Red on Deep South:The Christian Post > U.S.|Thu, Oct. 27 2011 11:36 AM EDT
- ^ 臨時 NICT 宇宙天気に関する臨時情報(2011年02月15日 11時20分JST
- ^ 共同通信:太陽表面で巨大爆発を観測 通信障害の恐れ:2011/02/16 20:46
- ^ 北海道で8年ぶりの本格的な低緯度オーロラが観測された
- ^ 巨大磁気嵐と人間の文明:1859年の太陽嵐が示すもの
- ^ 柴田一成「太陽の科学」(NHKブックス) 47項
関連項目
外部リンク
- 情報通信研究機構 SWC宇宙天気情報センター
- 科学技術政策研究所シンポジウム 近未来への招待状(第二部、柴田一成による講演資料)
- 太陽型星におけるスーパーフレア
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- 25aQA-6 太陽フレアにおける乱流とエネルギー解放(25aQA 領域2シンポジウム:プラズマ中の磁場の乱れの発生と消滅,領域2(プラズマ基礎・プラズマ科学・核融合プラズマ・プラズマ宇宙物理))
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