- 英
- pluripotency、pluripotent、pluripotential
- 関
- 多分化能
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/10/02 11:17:01」(JST)
[Wiki ja表示]
幹細胞 > 分化能
多能性細胞および胚性幹細胞は、胚盤胞内の内細胞塊として発生する。幹細胞は、胎盤を除いて、生体のどんな組織にもなることができる。桑実胚の細胞のみが全能性の細胞であり、これはあらゆる組織および胎盤になることができる。
分化能(ぶんかのう)とは、細胞が異なる細胞種へ分化する能力のこと[1]。
目次
- 1 分化全能性
- 2 分化多能性 (pluripotency)
- 3 分化多能性 (multipotency)
- 4 少能性
- 5 単能性
- 6 脚注
分化全能性
全能性(英: totipotency)は、単一の細胞が分裂し、器官内の、胚体外の組織も含むすべての細胞に分化し一個体を形成することができる能力である[2][3]。全能性細胞には、胞子および受精卵がある[4]。受精卵に繋がる生殖系細胞も分化全能性をもつとみなされる[5]。ある生物、特に植物細胞では、古くから脱分化し全能性を再獲得することが知られている[6]。例えば、挿し木やカルスはその植物全体に成長させるために用いることができる。
ヒトの発生は、精子が卵子と受精して、一つの全能性細胞(受精卵)を作ることで始まる。受精から最初の一時間で、この細胞は一卵性の全能性細胞に分割する。これは後にヒトの三つの胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)すべてへ、さらに胎盤の細胞栄養芽層(英語版)または合胞体性栄養膜層の細胞へと発達する。16細胞の段階に到達した後、桑実胚の全能性細胞は、最終的に胚盤胞の内部細胞塊または外部栄養膜(英語版)のいずれかになる細胞へと分化する。受精から約四日後、そして細胞分裂周期の何サイクルか経た後、これらの全能性細胞は特殊化していく。胚性幹細胞の原材料となる内部細胞塊は多能性(英: pluripotent)細胞であり、全能性ではない。
C. elegansの研究から、RNA調節を含む複数の機構が、ある生物種の発生の異なる段階での全能性の維持に役割を果たしているであろうことがわかってきている[7]。
分化多能性 (pluripotency)
多能性(英: pluripotency、羅: plurimus、"非常に多い"+"能力")は、幹細胞が持つ、どの三つの胚葉:内胚葉(胃の内膜、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)、または外胚葉(表皮組織および神経系)にもなれる分化能力である[8]。多能性幹細胞はあらゆる細胞運命や成熟細胞型を生じることができる。一つの個体とはならないという点で全能性と区別する。
人工多能性幹細胞
詳細は「人工多能性幹細胞」を参照
人工多能性幹細胞(英: induced pluripotent stem cells、一般的にiPS細胞と略される)は、多能性幹細胞の一種で、典型的には成体体細胞などの非多能性細胞から、"強制的に"ある遺伝子を発現させることなどによって人工的に作成される。
分化多能性 (multipotency)
詳細は「前駆細胞」を参照
多能性(または複能性、multipotency)は、複数のしかし限定的な数の系統の細胞へと分化できる能力である。このような細胞を多能性前駆細胞 (multipotent progenitor cell) という。多能性幹細胞の例は造血細胞である。この血液幹細胞は、いくつかの型の血液細胞へと成長することができるが脳細胞や他の型の細胞へは成長できない。一連の細胞分裂の最後に、胚を形成するのは最終分化した細胞、または恒久的に特定の機能を担うようになった細胞である。
分化した細胞はその特化された細胞機能以外を担うことはできないと考えられてきた。しかしながら、近年の研究ではその考えに疑問が投げかけられている[9]。近年の幹細胞の実験では、血液幹細胞を神経や脳細胞のように振る舞わせることができる。これは分化転換として知られている。このような幹細胞の性質の研究は、生体に関する重要な情報をもたらす。また、多能性 (multipotent) 細胞を多能性 (pluripotent) 細胞へ変質させる研究も続けられている。
人工多能性を持つように誘導された体細胞である未分化のiPS細胞は、生殖細胞を用いるES細胞の倫理的な議論を解決するものとして当初は賞賛されていた。しかしながら、iPS細胞は、非常に発癌性が高く[9]、アメリカでは未だ臨床応用が承認されていない。最近の研究で、体細胞におけるある組み合わせの転写因子の発現は他の確定した体細胞運命を直接誘導することが示された。研究者たちはマウスの線維芽細胞(皮膚細胞)を完全に機能的な神経へと直接変換することができる三つの神経系統特異的な発現因子を同定した[9]。この結果は細胞分化に終点があり細胞系統は変えることができないという性質を覆すものである。そして、適切な方法を用いることで、すべての細胞は全能性を持ち、すべての組織を形成できうることを示唆している。
間葉幹細胞の非常に豊富な原材料は発達途上の下顎の親知らずの歯芽である。幹細胞は最終的にエナメル質(外胚葉)、象牙質、歯髄、血管、および神経組織など少なくとも29の異なる末端器官を形成することができる[要出典]。石灰化し稼働性が失われる前の8–10歳児の収集の極端な容易さのため、個人バンク、研究および複数の治療法の主要な素材となるであろう。これらの幹細胞は肝細胞を生成する能力を示している[要出典]。
少能性
少能性[訳語疑問点](英: oligopotency)は、前駆細胞が数種類の細胞型(英語版)にのみ分化できる能力である。このような細胞を少能性前駆細胞 (oligopotent progenitor cell) という。少能性幹細胞の例としては、リンパ芽球や骨髄系前駆細胞が挙げられる[1]。前駆細胞の例としては、血管内皮と平滑筋細胞のどちらにもなることのできる血管幹細胞が挙げられる。
単能性
詳細は「前駆細胞 (単能)(英語版)」を参照
単能性(英: unipotency)は、ただ一つの細胞/組織の型へと分化・発達できる能力である。ヒトにおいて最も一般的なものは皮膚細胞である。この細胞は自己再生という固有の性質を持つ。この性質は他の最終分化したほとんどの非幹細胞とは異なっている。ヒト肝臓の細胞質塊のほとんどを構成している肝細胞は単能性である。肝臓の、少ない場合、元の質量の4分の1からの再生能力はこの単能性に起因している[10]。「単能性細胞 (unipotent cell)」のほぼ同義語は「前駆細胞 (単能)(英語版) (precursor cell)」である。
脚注
- ^ a b Hans R. Schöler (2007), “The Potential of Stem Cells: An Inventory”, in Nikolaus Knoepffler, Dagmar Schipanski, and Stefan Lorenz Sorgner, Human biotechnology as Social Challenge, Ashgate Publishing, Ltd, p. 28, ISBN 0754657558
- ^ “Regenerative Medicine Glossary”, Regenerative Medicine 4 (4s): S30, (July 2009), doi:10.2217/rme.09.s1, PMID 19604041
- ^ “長谷部分化全能性進化プロジェクト”. 科学技術振興機構. 2014年2月23日閲覧。
- ^ Mitalipov S, Wolf D (2009), “Totipotency, pluripotency and nuclear reprogramming.”, Adv. Biochem. Eng. Biotechnol. 114: 185–99, doi:10.1007/10_2008_45, PMC 2752493, PMID 19343304, http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2752493
- ^ “分化全能性”. 東京大学大学院理学系研究科・理学部. 2014年2月23日閲覧。
- ^ “植物細胞が分化全能性を発揮する仕組みを探る研究者”. 理化学研究所 (2012年9月5日). 2014年2月23日閲覧。
- ^ Ciosk R, DePalma M, Priess JR (2006). “Translational regulators maintain totipotency in the Caenorhabditis elegans germline”. Science 311 (5762): 851-853. doi:10.1126/science.1122491. PMID 16469927.
- ^ Byrne, James (2011-06-29), “The definition and etymology of the word pluripotency”, eJournal of Cellular Biotechnology, 1;eP2, http://biotechnologyfoundation.org/discussion-forum?mingleforumaction=viewtopic&t=7
- ^ a b c Vierbuchen T, Ostermeier A, Pang ZP, Kokubu Y, Südhof TC, Wernig M. (February 2010), “Direct conversion of fibroblasts to functional neurons by defined factors”, Nature 463 (7284): 1035–41, doi:10.1038/nature08797, PMC 2829121, PMID 20107439, http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2829121
- ^ Michael, Dr. Sandra Rose (2007), “Bio-Scalar Technology: Regeneration and Optimization of the Body-Mind Homeostasis” (PDF), 15th Annual AAAAM Conference: 2, http://eesystem.com/docs/AAAAM%202007%20long%20biography%20abstr_.pdf 2008年10月24日閲覧。
細胞分化:幹細胞/前駆細胞 |
|
種類 |
成体幹細胞 · がん幹細胞 · 胚性幹細胞(ES細胞) · 体細胞由来ES細胞(ntES細胞) · 人工多能性幹細胞(iPS細胞) · ミューズ細胞
|
|
分化能 |
全能性 totipotent(受精卵<および、ごく初期の卵割まで>、胞子) · 多能性 pluripotent(内部細胞塊、胚性幹細胞、カルス) · 多分化能・複能性 multipotent(前駆細胞:内皮幹細胞(英語版)、造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞) · 単能性 unipotent(前駆細胞 (単能)(英語版) (precursor cell))
|
|
関連記事 |
en:Stem cell treatments · en:Stem cell controversy · en:Stem cell line · en:Stem cell laws · en:Stem cell laws and policy in the United States
|
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 神経幹細胞による再生医療 : 歴史と現状(<特集>明日の脳神経外科を拓く神経科学)
- 高木 康志,宮本 享
- 脳神経外科ジャーナル 20(8), 589-596, 2011-08-20
- … 1990年代に入り,成体脳内に神経幹細胞の存在が確認され,それを取り出して培養できるようになった.また,一方,胚性幹細胞から神経細胞を特異的に分化させる方法が報告され,神経再生医療の可能性が高まった.また2000年代には,多能性幹細胞の誘導が報告され,一部では神経再生医療の治験が始まりつつある.ここに神経幹細胞研究の歴史と臨床応用の現状について述べる. …
- NAID 110008713066
- iPS細胞を用いた脳再生療法の実現に向けて : 腫瘍化をいかに防ぐか(<特集>明日の脳神経外科を拓く神経科学)
- 山下 徹,河相 裕美,阿部 康二
- 脳神経外科ジャーナル 20(8), 585-588, 2011-08-20
- … pluripotent stem cells(iPS細胞)は,皮膚線維芽細胞などの体細胞に複数の転写因子を導入することで作製される多能性幹細胞である.さまざまな種類の細胞や組織を分化誘導できる可能性がある反面,細胞移植治療に用いるためには腫瘍形成等の安全性の問題を解決する必要がある.最近,われわれはマウス一過性虚血モデルに複数のiPS細胞株を移植し腫瘍形成などを評価したところ,レトロウイルスを用いずに作製したiPS細胞 …
- NAID 110008713065
Related Links
- ヒト多能性幹細胞の再生医療への応用に向けて安全情報を発信する ... このサイトは、文部科学省・科学技術振興調整費「健康研究成果の実用化加速のための研究・開発システム関連の隘路解消を支援するプログラム」の採択課題、「多能性 ...
- 知恵蔵2013 人工多能性幹細胞の用語解説 - 分化を終えいったん成熟した細胞へ、人工的にいくつかの遺伝子を導入するなどして、別の様々な細胞に分化・増殖する能力をもたせた細胞のこと。特定の細胞や臓器を分化させることによって再生 ...
Related Pictures
★リンクテーブル★
[★]
- 関
- multipotency、multipotent、multipotential、pluripotent、pluripotential
[★]
- 英
- multipotency、pluripotency、multipotential、multipotent
- 関
- 多能性
[★]
- 英
- pluripotent stem cell
- 関
- 骨髄系幹細胞、リンパ系幹細胞
[★]
- 英
- induced pluripotent stem cell、iPS cell
- 関
- iPS細胞
[★]
- 英
- pluripotent progenitor cell