- 英
- light-induced germination、photoblastic
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レタスの発芽。左の褐色の種皮がついているものがバターヘッドレタス、右の白っぽい種皮のものがクリスプヘッドレタス
光発芽種子(ひかりはつがしゅし/こうはつがしゅし、photoblastic seed)とは、光の照射を発芽の条件とする植物の種子のこと[1]。明発芽種子(めいはつがしゅし)または好光性種子(こうこうせいしゅし)とも呼ばれる。光発芽の実験によく用いられるレタスの他、シロイヌナズナ、イワタバコ、ヤドリギ、マツヨイグサ、イチジク、イチゴなど、多くの野外植物の種子がこの特徴を持っている[1][2]。対立する語に暗発芽種子がある。
目次
- 1 概要・原理
- 2 レタスを用いた研究
- 3 生態的意義
- 4 出典
- 5 参考文献
- 6 関連項目
概要・原理
光発芽種子は、一般に発芽に必要な水、酸素、温度等の条件が揃っても、暗黒下では発芽しない。しかし、波長およそ 650nm-680nm の赤色光によって誘導されるが、赤外光(710-740 nm)では逆に発芽が抑制される。これらの二つの波長域の光がいずれもシグナルとして機能し、最後に照射された光によって、発芽するかしないかが決まる。この応答は可逆的であり、このような発芽を光発芽と呼ぶ。レタスの栽培品種 Grand Rapids の光発芽についての研究から、この可逆的光形態形成反応やフィトクロムが発見された[3][4]。
詳細は「フィトクロム」を参照
光可逆反応の中心となるフィトクロムは、赤色光吸収型(Pr)および遠赤色光吸収型(Pfr)の2つの型がある。これらはそれぞれの吸収波長の光を受容することで、他方へと変換される(光可逆性)。Pr と Pfr のうち活性型は後者であり、赤色光を受光して Pfr が蓄積することで、発芽へ向けた種々の生理現象が活性化される[5]。
なおレタス等における光依存的な発芽は、植物ホルモンの一つであるジベレリンの生理活性型の増加を引き起こす。またジベレリン処理は赤色光照射を代替して発芽を誘導する。従って、フィトクロムはジベレリンの生合成を制御している可能性が示唆されている[3][6]。
レタスを用いた研究
光発芽をめぐってはレタス種子を用いた実験がしばしば行われている。レタスの場合、赤色光に感受性のある部分は胚軸であり、ここに前述のフィトクロムが含まれている[2]。レタス種子の光発芽は温度にも依存し[7]、その一方でレタスには暗発芽性の品種もある[8]。また同様に光発芽種子とされるトゲチシャ(英語版)[9]の種子を用いた実験においても、その光発芽には温度依存が認められる[10]。
生態的意義
屋外における直射日光に含まれる赤色光と近赤外光との比(R/FR)は、通常 1.15 前後である。これに対し、植物によって遮られた光の R/FR は 0.1-0.4 程度にまで低下する。光発芽種子はこのような光条件の相違を検知することで、他の植物との競争を回避し、自身の生育に向いた環境下で選択的に発芽していると考えられている[2][5]。
出典
- ^ a b 岩波 生物学辞典 第4版 p1142
- ^ a b c 東京化学同人 生物学辞典 p1065
- ^ a b テイツ/ザイガー植物生理学 p393
- ^ 植物生理学 p403
- ^ a b テイツ/ザイガー植物生理学 p382
- ^ 植物生理学 p403-4
- ^ 渡部信義・津田周彌・細川定治「レタス(Lactuca sativa L.cv.Grand Rapids)種子の発芽における光効果と温度効果 (Studies of the effects of light and temperature on the seed germination in lettuce, Lactuca sativa L.cv.Grand Rapids)」、『北海道大学農学部邦文紀要』第10巻第1号、北海道大学、1976年8月、 pp. 13, 15-16、 NAID 120000956863、2011年6月6日閲覧。
- ^ 崔 寛三・高橋 成人「レタス種子の光発芽特性に関する研究 (Studies on the lettuce seed germination with special reference to ligbt responses)」、『育種學雜誌』第29巻第3号、日本育種学会、1979年9月、 p. 197、 NAID 110001815502、2011年6月6日閲覧。
- ^ J. G. C. Small, Y. Gutterman (1992-08). "A comparison of thermo- and skotodormancy in seeds of Lactuca serriola in terms of induction, alleviation, respiration, ethylene and protein synthesis : Seed dormancy and germination". Plant Growth Regulation (Springer) 11 (3): pp. 301–310. doi:10.1007/BF00024569. Retrieved 2011-06-06. (英語)
- ^ Yitzchak Gutterman (2002年). “4.5.1. Lactuca serriola ([http://books.google.co.jp/books?id=z0FQFdjnpaQC Google Books)”] (英語). Survival strategies of annual desert plants. Adaptations of Desert Organisms. Springer. pp. p. 156. ISBN 978-3-540-43172-5. http://www.springer.com/life+sciences/ecology/book/978-3-540-43172-5?cm_mmc=Google-_-Book%20Search-_-Springer-_-0 2011年6月6日閲覧。.
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参考文献
- 『生物学辞典』 八杉竜一ほか、岩波書店、1996年、第4版。ISBN 978-4000800877。
- 『生物学辞典』 石川統ほか、東京化学同人、2010年、第1版。ISBN 978-4-8079-0735-9。
- L.テイツ,・E.ザイガー・西谷和彦(翻訳)・島崎研一郎(翻訳) 『テイツ/ザイガー植物生理学』 培風館、2004年、第3版。ISBN 978-4563077846。
- Hans Mohr・Peter Schopfer・ 網野真一(翻訳)・駒嶺穆(翻訳) 『植物生理学』 シュプリンガー・フェアラーク東京、1998年、初版。ISBN 978-4431707899。
関連項目
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Japanese Journal
- 宮崎県固有種キバナノホトトギス(Tricyrtis flava)種子の暗黒処理による二次休眠誘導とその解除における冷湿処理の効果
- 松田(黒木) 亜紀,八ツ橋 寛子,Matsuda-Kuroki Aki,Yatsuhashi Hiroko,マツダ-クロキ アキ,ヤツハシ ヒロコ
- 宮崎大学教育文化学部紀要. 自然科学 27/28, 1-5, 2013-03-29
- … 宮崎県固有種キバナノホトトギス(Tricyrtis flava Maxim.)種子は,登熟直後は光発芽性であり,15~25℃赤色光下で発芽するが,吸水状態で長期間15~35℃の暗黒中におくと二次休眠が誘導され,発芽に適当な環境下(25℃,赤色光下)に移しても発芽しにくくなった。 …
- NAID 110009574547
- タニウツギ属・アジサイ属・ウツギ属低木類の種子発芽に対する光および温度の影響に関する実験
- 福永 健司,甲田 遥,橘 隆一
- 日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology 38(1), 204-207, 2012-08-31
- … 小型の種子は光発芽性を持つものが多いといわれているが,木本類で明らかにされているものは少ない。 … そこで,ニシキウツギ,タニウツギ,ノリウツギ,ウツギの微粒種子について,白色光量条件を変えることで光発芽性を調べた。 …
- NAID 10030690260
- 住吉 正,小荒井 晃,大段 秀記
- 雑草研究 57(1), 7-8, 2012-03
- … さらに,ウキアゼナの種子は光発芽性を有することが示唆された。 …
- NAID 120005331881
Related Links
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- 発芽と環境 植物の生活史は種子の発芽から始まる。種子は幼植物が胚の状態で休眠状態にあり,多くの場合,細胞が水を失った状態で活動が低下した状態にある。したがって,その種子に水を与えるなど好適な条件においてやると,胚 ...
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