- 英
- artificial hibernation、induced hibernation
- 関
- 低体温療法、カクテル麻酔
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/12/02 23:36:11」(JST)
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コールドスリープ (Cold sleep) とは、宇宙船での惑星間移動などにおいて、人体を低温状態に保ち、目的地に着くまでの時間経過による搭乗員の老化を防ぐ装置、もしくは同装置による睡眠状態。移動以外にも、肉体の状態を保ったまま未来へ行く一方通行のタイムトラベルの手段としても用いられる。
SF作品にはよく出てくる手法である。
目次
- 1 概要
- 2 実現されている技術
- 3 類似する技術
- 4 冷凍遺体からのクローン作製
- 5 コールドスリープを扱った作品
- 6 関連項目
- 7 脚注
概要
一般にコールドスリープには、低温状態にして睡眠後に時々覚醒するタイプ、冬眠タイプ、冷凍タイプがあると考えられる。
将来、惑星間の有人移動が可能になったとしても地球と火星の間ですら片道に数ヶ月を要するなど、長期に及んでしまう。その間の搭乗員の食料、酸素といった生命維持系、健康・体力の維持や退屈しのぎなどに使う施設、生活空間など、生活に要するものを少なく抑えることができれば宇宙船の質量を減らすことができ、その分だけ燃料を減らすことができる。また、備蓄スペースを別のことに利用できる。また、移動時間が数十年やそれ以上にも及ぶと、人間の寿命との兼ね合いが出てくる。このような点から、コールドスリープが選択される。
一方で、問題点や課題もある。
長期間、無重力状態に肉体がさらされると、筋肉の衰えや骨が脆くなるなどの弊害が考えられる。また、重力がある状態で長期間同じ姿勢のまま睡眠を行うと、床ずれを起こして皮膚が壊死することも考えられる。
冷凍した場合、水分が凍結した時に起こる体積膨張により細胞を破壊してしまうため、生命を保ったまま人間を冷凍できるかどうかなどの問題がある。なお、冷凍保存では精子の冷凍保存は実用化されている。
実現されている技術
2014年現在、実現されているコールドスリープ技術としては、スペースワークス・エンタープライジズ社の「ボディクーリングシステム」が最も実用性の高いものとして考えられる。これは鼻腔内より冷気を注入し、脳から全身に至るまでを低温状態にし、人体を冬眠に近い状態にするというものだ。NASAが出資し、スペースワークス社が研究を行っているこの技術は、救命医療の分野において既に人体を1週間程度のコールドスリープ状態に至らしめることに成功しており、現在も研究が継続されている。[1]
類似する技術
日本では行われてはいないが、クライオニクス(cryonics、人体冷凍保存)と呼ばれるサービスがある。これは、死んだ直後の人体を冷凍保存し、医療技術の発展した未来に復活の望みを求めるものである。しかし、先述したように冷凍時や解凍時の細胞破壊を克服する技術的ブレイクスルーが必要とされることや、既に破壊されてしまった細胞の復元は非常に困難であることから、実際に彼らが復活するかどうかについては悲観的や否定的な意見が多い。
あえて比較するならコールドスリープは架空の技術だが、クライオニクスは(様々な問題があるものの)既存の技術である。また、コールドスリープは生きている人体が対象であり、クライオニクスは亡くなった後の人体が対象である。
冷凍遺体からのクローン作製
2008年、理化学研究所の若山照彦らのチームが、死後16年間冷凍保存されていたマウスからクローンマウスを産み出すことに成功した。これにより、理論的には冷凍保存された人の遺体からクローン人間を生み出すことが可能となった。この技術を応用すれば、マンモスなどの絶滅動物の凍結死体からクローンを作れる可能性もあると期待されている。
コールドスリープを扱った作品
- 小説
-
- 『2001年宇宙の旅』
- 『2061年宇宙の旅』
- 『機動戦士ガンダムUC』
- 『彷徨える艦隊』(ジャック・キャンベル著作のSF小説。100年間の人口冬眠から目覚めた宇宙戦艦の艦長が主人公)
- 『天冥の標』
- 『夏への扉』
- 『モルフェウスの領域』
- 『スリープ』
- 『スカーレット・ウィザード』
- 『要塞シリーズ』(「PM組」と呼ばれる兵士は製造後、いったん冷凍保存され、必要に応じて解凍の上各戦線に配属される)
- 映画
-
- 『エイリアン』シリーズ(惑星間の移動時に使用)
- 『フォーエヴァー・ヤング 時を越えた告白』
- 『デモリションマン』(1996年に冷凍刑務所へ収監された主人公と凶悪犯が2032年に解凍される)
- 『アバター』
- 『猿の惑星』
- 『さよならジュピター』
- 『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』
- 『13日の金曜日 ジェイソンX』(約400年間冷凍された末、復活)
- 『オースティン・パワーズ』
- 『スタートレック イントゥー・ダークネス』
- 漫画
-
- 『リュウの道』
- 『トライガン』
- 『いばらの王』
- 『2001夜物語』
- 『7SEEDS』
- 『美しい男』
- 『カンビュセスの籤』
- 『機動戦士Vガンダム外伝』
- 『火の鳥』
- 『ブラック・ジャック』
- 『エリア88』
- 『BROTHERS』(小池一夫×叶精作)(サイボーグ化されたアドルフ・ヒトラーとエバ・ブラウンがUボート内でコールドスリープしていた)
- 『ゴルゴ13』(第295話『未来への遺産』は冷凍保存ビジネスをテーマにしている)
- 『ゼロセン』(主人公が戦争中の砲撃による雪崩で60年以上冷凍保存された状態から蘇生する)
- 『ふたば君チェンジ♡』(あろひろし)(10歳で博士号を取った物理教師が10年のコールドスリープを経て登場する)
- 『三獲関係 歳上のひと』(あろひろし)(雪山で遭難したヒロインがコールドスリープ状態になっていた)
- 『YAIBA』(月の女帝が老化を抑制するためにコールドスリープを使う)
- 『ダークウィスパー』(主人公は海底に沈んでいたアメリカ海軍艦艇でコールドスリープさせられていたところを発見される)
- 『H・A・L』(第13話『冷凍睡眠技術』はコールドスリープをテーマにしている)
- 『岸和田博士の科学的愛情』(主人公の助手は11年間コールドスリープの実験台にされていた)
- 『鉄コミュニケイション』(5体のロボットが文明崩壊後の地球でコールドスリープさせられていた主人公を発見する)
- 『エクゾスカル 零』(役目を終えた戦士達がコールドスリープさせられる)
- 『ふぐマン』(末期癌で余命いくばくのない女性のために、主人公がコールドスリープを提案し、本人の希望により実行される)
- 『タフなんだもん!』(登場人物達があることがきっかけで原始時代へ迷い込んでしまい、現代に戻る手段として使われた。また、コールドスリープさせることができる銃も登場した)
- 海外ドラマ
-
- 特撮
-
- 『SFドラマ 猿の軍団』(地震によってコールドスリープ装置へ閉じ込められた主人公達が、猿によって支配される未来で目覚める)
- 『時空戦士スピルバン』(ただし成長はする)
- 『怪奇大作戦』(第13話「氷の死刑台」。コールドスリープの実験台に誘われた平凡な会社員が、実験の失敗によりあらゆる物を凍らせる冷凍人間になってしまう)
- アニメ
-
- 『かってにシロクマ』(OVA版)
- 『クラッシャージョウ』
- 『機甲界ガリアン』(主人公の母が宿敵にコールドスリープさせられて壁に飾られる)
- 『機動戦士ガンダムΖΖ』
- 『∀ガンダム』
- 『機動武闘伝Gガンダム』(刑罰として永久冷凍刑という刑罰が登場する)
- 『機動戦士ガンダム00』
- 『機動戦士ガンダムAGE』
- 『MEGAZONE23 III』(地球首脳陣の最後の1人であり都市宇宙船のトップアイドルのモデルとなった少女が、コールドスリープから目覚める)
- 『カウボーイビバップ』
- 『F-ZEROファルコン伝説』
- 『装甲騎兵ボトムズ 赫奕たる異端』
- 『銀河探査2100年 ボーダープラネット』
- 『電脳都市OEDO808』Vol.3 紅の媒体
- 『BLUE GENDER』
- 『無人惑星サヴァイヴ』(遺跡でコールドスリープしていた異星人の少年が主人公に発見される)
- 『ヴァンドレッド』(主人公や登場人物の1人は太陽系から銀河の辺境へコールドスリープで送り出された)
- 『光と水のダフネ -DAPHNE IN THE BRILLIANT BLUE-』(主人公は100年前に海底都市から兄共々脱出させられてコールドスリープで生き残ったが、目覚めた時には記憶喪失に)
- 『LILY-C.A.T.』(OVA)
- ゲーム
-
- 『HALO (ビデオゲームシリーズ)』
- 『ポリスノーツ』
- 『スナッチャー』
- 『Ever17 -the out of infinity-』
- 『パワードール』(解凍する施設を強襲するミッションがある)
- 『鉄拳』
- 『エネミー・ゼロ』
- 『ライブ・ア・ライブ』(SF編)
- 『レーシングラグーン』(D-projectに一部)
- 『パワプロクンポケット6』 (主人公がコールドスリープをするENDがある)
- 『ロックマンゼロ4』(フェンリー・ルナエッジ)
- 『ワイルドアームズ ザ フィフスヴァンガード』(アヴリル)
- 『ソニックアドベンチャー2』(登場キャラクターの「シャドウ・ザ・ヘッジホッグ」が50年間コールドスリープ状態になっていた)
- 『グローランサーⅣ』(ルイン・チャイルド)
- 『グローランサーⅥ』
- 『テイルズ オブ リバース』(PSP版の特典DVD内で主人公がコールドスリープ)
- 『さよらなエトランジュ』(医療の進歩を待つ目的でコールドスリープが登場する)
- 『Princess Holiday 〜転がるりんご亭千夜一夜〜』(地球への航行時にハイバネーション)
- 『OverBlood』
- 『時の継承者 ファンタシースターIII』(1000年間コールドスリープしていた少女が登場する)
- 『バイオハザード CODE:Veronica』 (アレクシア・アシュフォードが自身の肉体とT-Veronicaウイルスを適合させる手段としてコールドスリープを使用した)
- 『NOVA -ノ・ヴァ- 魅入られた肢体』(主人公が宇宙船内でコールドスリープ状態から目覚めた時には記憶喪失に)
- 『Portal 2』(前作『Portal』でコールドスリープ状態となった主人公が、今作の舞台である3千万年後に覚醒する)
- 『パワプロクンポケット13』 (尾木靖子)
- 『密室のサクリファイス』(あるイベントで主人公達がコールドスリープを強いられる)
- 『ファイナルファンタジーVIII』(主人公たちが宇宙に行く際、マスドライバーでコールドスリープ状態で射出される)
- 『レミニセンス』(登場キャラクターの一部は150年近くコールドスリープ状態になっていた)
- 『ROBOTICS;NOTES』
- PV
-
- 『WILD/Dr.』(安室奈美恵自身がコールドスリープ状態)
関連項目
脚注
- ^ “人間を人工冬眠させて火星に送る?NASAが火星有人探査計画の一環として、コールドスリープを検討中”. 2014年10月14日閲覧。
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 近藤 宣昭
- 蘇生 29(2), 72-77, 2010
- … そのため,冬眠を人工的に誘導する "人工冬眠"は,人工的に低体温を起こす "人工低体温" としばしば混同される。 … 冬眠を制御するホルモン性調節を明らかにすることができれば,人工冬眠への扉が開かれるだろう。 …
- NAID 130004561610
Related Links
- 2007年5月27日 ... “The Sunday Times”が伝えるところよると、米国では昨年晩秋以来、人工冬眠の実用 化競争に再び火が点いた。いったんは、実用化があきらめられた人工冬眠だったが、 ある男性の奇跡の生還が再びその可能性に光を当て、研究資金が ...
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★リンクテーブル★
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- 英
- therapeutic hypothermia TH, induced hypothermia
- 関
- 人工冬眠、低体温法、心肺蘇生
- 成人二次救命において、心原性で初期リズムがVFの成人院外心停止で心拍再開後の循環動態が安定している昏睡患者には、32-34℃の低体温療法を12-24時間行うことが望ましい。(救急蘇生法の指針 2005年 p.91)
参考
- Therapeutic hypothermia after cardiac arrest: an advisory statement by the advanced life support task force of the International Liaison Committee on Resuscitation.
- Nolan JP, Morley PT, Vanden Hoek TL, Hickey RW, Kloeck WG, Billi J, Böttiger BW, Morley PT, Nolan JP, Okada K, Reyes C, Shuster M, Steen PA, Weil MH, Wenzel V, Hickey RW, Carli P, Vanden Hoek TL, Atkins D; International Liaison Committee on Resuscitation.SourceResuscitation Council of Southern Africa.
- Circulation.Circulation.2003 Jul 8;108(1):118-21.
- PMID 12847056
- アメリカ心臓協会(AHA)やヨーロッパ蘇生協議会(ERC)は、病院外心停止後の初期心電図波形がVFもしくは脈なしVT例の蘇生後に昏睡状態のままであった場合に低体温療法を推奨している。
- Effectiveness of each target body temperature during therapeutic hypothermia after cardiac arrest.
- Kim JJ, Yang HJ, Lim YS, Kim JK, Hyun SY, Hwang SY, Shin JH, Park JB, Lee G.SourceDepartment of Emergency Medicine, Gachon University Gil Hospital, Incheon, Korea. empearl@gilhospital.com
- The American journal of emergency medicine.Am J Emerg Med.2011 Feb;29(2):148-54. doi: 10.1016/j.ajem.2009.08.021. Epub 2010 Mar 26.
- PURPOSE: According to the 2005 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation, unconscious adult patients with a return of spontaneous circulation (ROSC) after out-of-hospital cardiac arrest should be cooled to 32°C to 34°C for 12 to 24 hours. However, it is unclear which
- PMID 20825779
- 病院外心臓停止から自発循環再開に至った後、32,33,34℃の低体温療法を行った場合の転帰と有害作用について報告
[★]
- 英
- cocktail anesthesia
- 同
- 人工冬眠 artificial hibernation induced hibernation
- 関
- 遮断カクテル
[★]
- 関
- induced hibernation、induced hypothermia
[★]
- 関
- artificial hibernation
[★]
- 英
- artificial hibernotherapy
- 同
- 全身低体温法 hypothermia, whole body hypothermia、薬物冬眠、冬眠療法
[★]
- 英
- hibernation、winter sleep、hibernate、hibernating
[★]
- 英
- artificial
- 関
- 人為的、人工的