Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2017/08/19 06:20:26」(JST)
[Wiki ja表示]
メルブロミン |
|
|
IUPAC名
2,7-ジブロモ-4-ヒドロキシ水銀フルオレセイン二ナトリウム塩
|
|
識別情報 |
CAS登録番号 |
129-16-8 (二ナトリウム塩), 55728-51-3 (メルブロミン) |
日化辞番号 |
J8.593F |
EINECS |
204-933-6 |
KEGG |
D00861 |
特性 |
化学式 |
C20H8Br2HgNa2O6 |
モル質量 |
750.65 g mol−1 |
外観 |
暗緑色固体 |
融点 |
> 300 ℃[1]
|
水への溶解度 |
1500 g L−1(20 °C) (二ナトリウム塩)[2] |
危険性 |
主な危険性 |
毒性、環境への危険性 |
Rフレーズ |
R26 R27 R28 R33 R50 R53 |
Sフレーズ |
S13 S28 S36 S45 S60 S61 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
メルブロミン(merbromin)は、皮膚・キズの殺菌・消毒に用いられる局所殺菌剤である。メルブロミンは有機水銀二ナトリウム塩化合物であり、フルオレセイン骨格を有する。
メルブロミンの水溶液(メルブロミン液)は暗赤褐色の液体であり、商品名のマーキュロクロム液あるいは通称の赤チン(あかチン)として知られている。通称の赤チンは「赤いヨードチンキ」の意味で、同じ殺菌・消毒の目的で使われる希ヨードチンキが茶色なのにたいして本品の色が赤いことからつけられた。マーキュロクロム液は水溶液である。
アメリカ合衆国での商品名は、Mercurochrome、Merbromine、Sodium mercurescein、Asceptichrome、Supercrome、Brocasept、Cinfacrominなど。
目次
- 1 用途
- 2 性質
- 3 歴史
- 4 流通
- 5 脚注
- 6 関連項目
用途
メルブロミンは局所殺菌剤としての用途が最も良く知られている。傷に処置した場合、皮膚は鮮やかな赤色に染まる。アメリカ合衆国では、メルブロミンの使用は他の殺菌剤(ポビドンヨード、塩化ベンザルコニウム、クロロキシレノールなど)によって置き換わっている。メルブロミンはその「異常な価格の安さ」のため、特に発展途上国では未だに重要な殺菌薬である[3]。
また、メルブロミンは組織の境界を記すための生物学的染料としてや、金属破断を検出するための工業的浸透探傷検査での金属染料としても使用されている。
性質
メルブロミン ( 2,7-ジブロモ-4-ヒドロキシ水銀フルオレセイン二ナトリウム塩、 C20H8Br2HgNa2O6) は青緑色から帯緑赤褐色の小葉片または粒状の物質。水には溶けやすいが、不溶分が残る事もある。エタノール、アセトン、エーテル、クロロホルムなどの有機溶媒にはほとんど溶けない。メルブロミン自体は劇薬であるが、その溶液は劇薬ではない。
2%メルブロミン液は100 mL中に2 gのメルブロミンを含むため、水銀を0.42–0.56 w/v%含む。メルブロミン液に含まれる水銀は有機水銀化合物であるが、皮膚浸透性が低く、濃度が薄い希釈液のために毒性は小さいので、外用剤として使う限りにおいては安全とされている。
遮光した気密容器に保存する。pHは約8。
歴史
メルブロミンの殺菌作用は1918年にジョンズ・ホプキンス病院のヒュー・ヤング医師によって発見された[4]。ヨードチンキなどより傷にしみないとされ、全世界の家庭の常備薬の一つとして長く使われていた。しかし、1998年10月19日にアメリカの食品医薬品局 (FDA) によって、マーキュロクロム液の分類が「一般に安全と認められる」から「未検証」に変更されたことによってアメリカ国内での流通が事実上停止した[5]。その後、ドイツでは2003年、フランスでは2006年に販売が停止された。
日本では、製造工程で水銀が発生するという理由から1973年頃に製造が中止されたが、常備薬として求める声は多く、海外で製造した原料を輸入することで現在も販売されている。
製薬会社等がメルブロミンの希釈液を製造することは禁止されていないが、原薬であるメルブロミンの国内合成は、その原料となる水銀の輸入、貯蔵、使用等が規制[6]の対象となっていることから、中国等の外国から輸入したメルブロミンの原薬を国内で精製水と調合することで製造されている。
金魚などの皮膚病防止の為に極少量を使用する事も出来る[7]。Hyson社が出していた説明書には糖分や他の塩、有機酸に対して相溶性が非常に悪いとの記述があり[8]、これが体内にしみこみにくいうえに皮膚表層のみで抗菌性を示し、さらに水銀が体内に取り込まれにくい理由とされていた。
流通
現在国内で流通しているマーキュロクロム液の製造販売元と商品名は、以下のとおりである。
- 三栄製薬株式会社(東京都世田谷区)[9] - マーキュロクロム液「サンエイ-S」(一般用第2類医薬品)
- 小堺製薬(東京都墨田区)- マーキュロクロム液「コザカイ・P」(一般用第2類医薬品)、マーキュロクロム液「コザカイ・S」、マーキュロクロム液「コザカイ・M」(医療用医薬品)
- フヂミ製薬所(大阪府大阪市東成区。廃業)- マーキュロクロム液FM[10]
脚注
- ^ Sigma-Aldrich. “水銀ジブロモフルオレセイン 二ナトリウム塩”. 2013年10月22日閲覧。
- ^ ドイツ法的損害保険・労働安全研究機関 (IFA). “Merbromin”. 2013年10月22日閲覧。
- ^ Mohite, P. N.; Bhatnagar, A. M. (2009). “Mercurochrome 1% as an Antiseptic for Burns: Economical - but is it Efficacious and Safe?”. The Internet Journal of Surgery 21 (2). ISSN 1528-8242. http://www.ispub.com/journal/the-internet-journal-of-surgery/volume-21-number-2/mercurochrome-1-as-an-antiseptic-for-burns-economical-but-is-it-efficacious-and-safe.html. "Apart from these qualities, still the most important factor for which mercurochrome has remained the favorite of the physicians in the developing countries is its attractive price. The compound is being sold at unbelievably low cost ... the reasons being the low manufacturing cost, longer shelf life, use in diluted form and importantly less propaganda about its medical use."
- ^ Wilner, I. (2006). The Man Time Forgot: A Tale of Genius, Betrayal, and the Creation of Time Magazine. Harper Collins. p. 230. ISBN 0-06-050549-4.
- ^ “Quantitative and Qualitative Analysis of Mercury Compounds in the List”. Federal Food, Drug, and Cosmetic Act (FD&C Act). アメリカ食品医薬品局 (2009年4月30日). 2013年10月21日閲覧。
- ^ 水銀による環境の汚染の防止に関する法律(平成27年法律第42号)、水銀環境汚染防止法施行令(平成27年政令第378号)
- ^ 所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!スペシャル 2015年1月9日放送
- ^ http://www.catotti.us/MC/images/Mercurochrome1932.pdf
- ^ 生産量は月2000〜3000本程 http://www.ntv.co.jp/burari/040417/info04.html
- ^ フヂミ製薬所が2016年に倒産(大阪地方裁判所平成27年1月6日破産手続開始決定)したため、在庫限りの流通。フヂミ製薬所が製造販売元・発売元の商品のほかに、同社が製造し発売元が株式会社阪神局方(大阪地方裁判所平成25年(フ)4106号破産開始決定)及びマイラン製薬株式会社の商品がある。
関連項目
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 鉛(II)-エチルキサントゲン酸錯体とのイオン交換による水銀(II)の抽出滴定
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
マーキュロクロム液「東海」
組成
組成・性状
1.組成
- 本剤100mL中にマーキュロクロム2g(2w/v%)を含む。
本剤は水銀(Hg)0.42〜0.56w/v%を含む。
禁忌
(次の患者及び部位には使用しないこと)
- 1.本剤又は他の水銀製剤に対し過敏症の既往歴のある患者
- 2.臍帯ヘルニアの小児
- 3.粘膜面
- 4.口に触れる可能性のある部位(乳頭等)の消毒
効能または効果
効能・効果
用法・用量
- 皮膚表面の一般消毒には2%液を、創傷・潰瘍の殺菌・消毒には0.2〜2%液を用いる。
いずれも症状に応じ1日1〜数回患部に適用する。
重大な副作用
ショック(頻度不明)
- ショックを起こすことがある。呼吸困難、血管浮腫(喉頭浮腫等)、蕁麻疹等のアナフィラキシー様症状を伴うことがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、使用を中止するなど、適切な処置を行うこと。
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- mercurochrome
- ラ
- mercurochromum
- 同
- メルブロミン merbromin
- 商
- マーキュロクロム
- 関
- メルブロミン
[show details]
[★]
- 英
- chromium、chrome、Cr
- 関
- クロム中毒