恒常性
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出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2014/06/21 15:03:05」(JST)
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恒常性(こうじょうせい)ないしはホメオスタシス(英:Homeostasis ホメオステイシス、ギリシア:ΟΜΟΙΟΣΤΑΣΙΣ ホモイオスタシス)とは生物および鉱物において、その内部環境を一定の状態に保ちつづけようとする傾向のことである。
目次
- 1 概説
- 2 経緯
- 3 調整メカニズム
- 4 例
- 4.1 体温の恒常性
- 4.2 血糖の恒常性
- 4.3 免疫の恒常性
- 4.4 血中カルシウム平衡
- 5 脚注
- 6 参考文献
- 7 関連項目
- 8 外部リンク
概説
恒常性は生物のもつ重要な性質のひとつで生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質、あるいはその状態を指す。生物が生物である要件のひとつであるほか、健康を定義する重要な要素でもある。生体恒常性とも言われる。
恒常性の保たれる範囲は体温や血圧、体液の浸透圧やpHなどをはじめ病原微生物やウイルスといった異物(非自己)の排除、創傷の修復など生体機能全般に及ぶ。
恒常性が保たれるためにはこれらが変化したとき、それを元に戻そうとする作用、すなわち生じた変化を打ち消す向きの変化を生む働きが存在しなければならない。これは、負のフィードバック作用と呼ばれる。この作用を主に司っているのが間脳視床下部であり、その指令の伝達網の役割を自律神経系や内分泌系(ホルモン分泌)が担っている。
経緯
1859年頃、フランスの生理学者クロード・ベルナールは、生体の内部環境は組織液の循環等の要因によって外部から独立している(内部環境の固定性)と提唱した。
これを1920年代後半から30年代前半頃にアメリカ合衆国の生理学者ウォルター・B・キャノンがギリシア語に由来する「ホメオスタシス」(ギリシア語で同一の(ΟΜΟΙΟ、ホモイオ)状態(ΣΤΑΣΙΣ、スタシス)を意味する)と命名した。
調整メカニズム
生体全体の恒常性は、何重もの調整メカニズムによって保たれている。
フィードバック機構
視床下部-下垂体を中心とした内分泌器系は、体内のさまざまな恒常性を保つためにフィードバック機構により調整されている。[1]
内分泌器系のフィードバック機構
(単純化したイメージ)
緩衝系
化学緩衝系を構成することにより体液のpHなどを安定化させる機構がある。[2] 血液における緩衝系については、血液#緩衝・平衡を参照。
例
体温の恒常性
たとえば、鳥類や哺乳類の体温調節機能は、生体恒常性のひとつである。鳥類や哺乳動物は活動時の最適温は40℃付近(種や生理状態でこの温度は異なる)である。これより体温が高い場合は自律神経系や内分泌器系などにより発汗、皮膚血管の拡張で体温を下げようとし体温が低い場合はふるえ(悪寒戦慄)や非ふるえ熱産生(代謝の亢進による発熱)によって体温を上げようとする。反射ではない。
感染症の際に体温が上がるのは、炎症物質によって調節の目標温度が高まるからである。これは、病原体が熱に弱いという性質を利用した抵抗活動である(進化医学を参照)。解熱鎮痛薬はこの目標温度を下げることで解熱させる。 これらの他、血圧反射機能も恒常性の概念の説明に汎用されている[要出典]。
血糖の恒常性
また、人体における血糖値の調整作用のしくみ(血糖調節メカニズム)血糖も恒常性をもつ。だが、その血糖調整メカニズム自体、体温調節機能に関係している[4] 。
免疫の恒常性
免疫機構は、外部病原体から自己を守るために免疫を亢進させる系と、過剰な免疫亢進を防ぐ免疫抑制系とがある一定のバランスをとって機能しており、これを免疫恒常性という。 生体は外部からの病原体から自己を守る防御機構としての免疫機構を備えているが、その免疫系は自己と非自己とを完全に区別することはできない。免疫機能が亢進しすぎた場合、過剰な炎症反応は本来は病原体あるいは異物としてみなす必要のない物質や有用な共生微生物・真菌までをも過剰に攻撃してしまう。最悪の場合は生体自身が産生する物質や生体自身そのものを抗原とみなして攻撃してしまい、これらは結果としてアレルギー性疾患や自己免疫疾患を発症してしまう。一方で、免疫が弱すぎれば外部病原体により生体自身が侵されてしまうことになる。免疫恒常性はこの様なことがないようにある一定のレベルの免疫レベルを維持するものである。
血中カルシウム平衡
血中カルシウム濃度は、甲状腺の働きによりビタミンDやカルシトニンが関与することで平衡を保っている。 [7] ビタミンDは血中カルシウム濃度が低い状態で関与しカルシウム濃度の低下を阻止する方向に働く。すなわち、
- 腸からのカルシウム吸収促進
- 骨からのカルシウム溶出促進
- 腎臓でのカルシウム排出抑制
カルシトニンは血中カルシウム濃度が高い状態で関与しカルシウム濃度のこれ以上の上昇に歯止めをかける方向に働く。すなわち、
- 腸からのカルシウム吸収抑制
- 骨からのカルシウム溶出抑制
- 腎臓でのカルシウム排出促進
脚注
- ^ Handbook of Neuroendocrinology, p. 11, Fig 1.5.
- ^ 福田満 (2003/04). 生化学. 化学同人. pp. 164. ISBN 978-4759804782. http://books.google.co.jp/books?id=LhUtZ83xih4C&pg=PA164&hl=en&sa=X&ei=4EvHT_iUHYaNmQW4w9X_Cg&ved=0CDcQ6AEwAA#v=onepage&q&f=false.
- ^ 低血糖症は発達障害(自閉症)の危険因子 http://www.s-kubota.net/kanri/index_4.htm
- ^ Sharon Rady Rolfes, Kathryn Pinna, Ellie Whitney (Jul 11, 2008), Understanding Normal and Clinical Nutrition, Cengage Learning, pp. 417-418, Figure 12-12, ISBN 13-978-0-495-55656-6, http://books.google.co.jp/books?id=ie73yQoqqaYC&pg=PA417&lpg=PA417&source=bl&ots=LrgvEIFYJ7&sig=ERkV5NDB3WDtFPRXv8PRk2T0gr0&hl=en&sa=X&ei=kLYwULaiOZCZmQWFqIGYAQ&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false
参考文献
- George Fink, Donald W. Pfaff, Jon Levine (Dec 13, 2011). Handbook of Neuroendocrinology (first edition 2012 ed.). Elsevier Inc.. pp. 894. ISBN 978-0-12-375097-6. http://books.google.co.jp/books?id=Disx7IryLxUC&printsec=frontcover&source=gbs_ge_summary_r&cad=0#v=onepage&q&f=false.
- 高野康夫 編 (2004). 解剖生理学 (第1版 ed.). 化学同人. pp. 245. http://books.google.co.jp/books?id=G-EmHBZCvvkC&pg=PT211&hl=en&sa=X&ei=_E_IT-GRDsPQmAWg8PDhDg&redir_esc=y#v=onepage&q&f=false.
- Hong Jiang, M.D., Ph.D., and Leonard Chess, M.D. (march 16, 2006). “Regulation of Immune Responses by T Cells”. The new england journal of medicine 354 (11): 1166-1176. http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmra055446 2012年6月5日閲覧。.
- Luigina Romani (April 2011). “Immunity to fungal infections”. Nature Reviews Immunology: 275-288. doi:10.1038/nri2939. http://www.nature.com/nri/journal/v11/n4/fig_tab/nri2939_F3.html 2012年6月5日閲覧。.
関連項目
- エコ
- エコロジー
- ストレス (生体)
- 生態学
- 自律神経系
- 内分泌系
- 免疫系 - 免疫寛容
外部リンク
- 「恒常性」、「ホメオスタシス」 - コトバンク
- 「恒常性」、「ホメオスタシス」 - Weblio
- ホメオスタシス - Yahoo!百科事典
Japanese Journal
- 人環フォーラム 28, 2011-03-20
- … 上であること - ルシン語とルシン人の場合 / 三谷惠子<特集 : 境界を科学する>地球の中の境界 / 小木曽哲<特集 : 境界を科学する>境界について / 戸田剛文<リレー連載:環境を考える>学際的ホメオスタシス研究のすすめ / 北畠能房<サイエンティストの眼>岩石の生成温度を測るための温度計 / 大井修吾<フロンティア>スポーツ健康科学の面白さ / 橋本健志<フロンティア>文学は言語を用いて何を …
- NAID 120002906683
- アカパンカビ・カルシウムホメオスタシス異常突然変異株を用いた細胞外カルシウム濃度変化による細胞タンパク質パターン変化の解析
- 定金 豊
- 九州保健福祉大学研究紀要 12, 171-176, 2011-03
- … 濃度がアカパンカビの細胞タンパク質の組成にどのような変化を与えるか調べた.その結果,野生株で細胞外カルシウム濃度に依存して量が変化する4種類のタンパク質の存在が明らかになった.カルシウムホメオスタシスに欠陥があり,高濃度カルシウム存在下では成長が抑制される突然変異株ca-1(19)を用い同様に調べた結果,低濃度カルシウムで培養したときにも2種類のタンパク質の量が増加していることが明らかになっ …
- NAID 110008456910
Related Links
- 恒常性、ホメオスタシス(ホメオステイシスとも)は生物のもつ重要な性質のひとつで生体 の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという 性質、あるいはその状態を指す。生物が生物である要件のひとつであるほか、健康を 定義 ...
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- 英
- homeostasis
- 同
- ホメオスタシス、ホメオスターシス、生体恒常状態
- 関
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- homeostasis
- 関
- 恒常性、ホメオスタシス、ホメオスターシス
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- 英
- homeo
- 関
- 恒常性、同質、類似