トリアゾラム
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IUPAC命名法による物質名 |
8-chloro-6-(2-chlorophenyl)-1-methyl-4H-
[1,2,4]triazolo[4,3-a][1,4]benzodiazepine |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
カテゴリーX(米国) |
法的規制 |
第3種向精神薬 |
投与方法 |
経口投与 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
44% (経口) 53% (舌下) |
代謝 |
肝臓 |
半減期 |
1.5-5.5時間 |
排泄 |
尿中82% 糞便中8% |
識別 |
CAS登録番号 |
28911-01-5 |
ATCコード |
N05CD05 |
PubChem |
CID 5556 |
DrugBank |
APRD00313 |
KEGG |
D00387 |
化学的データ |
化学式 |
C17H12Cl2N4 |
分子量 |
343.2 |
トリアゾラム (Triazolam) は、超短期作用型のベンゾジアゼピン系睡眠導入剤である。米国アップジョン社が開発し、商品名ハルシオン® (Halcion®) として販売した。その後、合併・買収を経て2003年よりファイザーから発売されている。後発(ジェネリック)医薬品が発売されており、同一有効成分のものがより安価に入手可能である。
商品名の「ハルシオン®」は、ギリシャ神話に登場する風波を静めるという伝説の鳥、Halcyonに由来する[1]。
日本では薬事法に基づく要指示薬・指定医薬品・習慣性医薬品である。入手には医師の処方箋が必要である。第3種向精神薬に指定されている。
目次
- 1 作用機序
- 2 歴史
- 3 副作用
- 4 依存性と離脱
- 5 用量・用法
- 6 乱用
- 7 種類
- 8 脚注
- 9 外部リンク
作用機序
最高血中濃度到達時間は約1時間、半減期は約2.9時間、作用時間は約2時間である、超短期作用型の睡眠薬である(超短時間型としては、他に、ゾルピデム酒石酸塩がある)。ベンゾジアゼピン系薬物の一般的機序は、GABA受容体のサブタイプのω1受容体に作用することで、Clチャネルを開口させることでClの透過性を亢進させ、過分極を発生させることで、活動電位の発生を抑制することにより、催眠作用を発現する。
肝臓のCYP3A4という酵素で代謝されるため、この酵素を阻害する薬物やアルコールとの併用は、薬物の作用が高まる可能性があるので注意する必要がある。
歴史
製薬会社アップジョンは、1982年にトリアゾラムのFDA承認を受けた。
トリアゾラムは重大な副作用(主に精神的な)を懸念して市場から回収された国もあるが、アメリカ食品医薬品局(FDA)などは低用量での使用を許容していて、他にも認める国が存在する。
研究では、トリアゾラムは0.125 mgの低用量使用の場合でも精神障害(ときおり重度)と高い関連性を持つことが発見され、さらに患者がトリアゾラムをたった3週間だけ使用しただけでも、著しく不安を起こす人が多いことが分かった。重度の精神障害が頻発する事が判明し、 イギリスとブラジルはトリアゾラムを禁止することを決めた[2][3]。オランダは1979年に禁止し、ノルウェー・バミューダ・ジャマイカ・フィンランドでも禁止された。
医学文献では、トリアゾラムははるかに他のベンゾジアゼピンより、精神的・暴力反応などの奇妙な現象が発生していることを示している。トリアゾラムによる副作用の発生率の増加は、トリアゾラムの超短半減期と受容体への高親和性結合性(高力価)といった薬理学的特性によるものである。トリアゾラム短半減期と非常に高い力価が、昼間の不安リバウンド・記憶喪失・混乱・精神症について、他のベンゾジアゼピンより多く発生し、また重篤な理由である。 睡眠薬で多くの論文を発表しているあるアメリカの精神科医によると、低用量でもトリアゾラムのリスク/ベネフィット比によって、トリアゾラムは米国で市場に残るかどうか、彼は疑問を呈している[4][5]。 トリアゾラムが暴力を扇動することは、いくつかの試験では受け入れられている。(特に暴力犯罪の被告人に傾向が高い)[6]
副作用
最も多いものに、一過性前向性健忘・抗コリン作用・翌朝への持ち越しがあるとされている。また、大量服用により、呼吸抑制を起こすことがある。
めまい・ふらつきが起きる事が有るので、原則として就寝直前に服用するよう処方される。また、極稀であるが、夢遊病(意識のないまま、車を運転する・食事を取る・活動するなど)のような症状を起こすこともあるとされている。
依存性と離脱
「ベンゾジアゼピン離脱症候群」も参照
トリアゾラムを含むベンゾジアゼピンの長期的使用は、薬剤耐性・薬物依存・リバウンド不眠症・中枢神経副作用に関わるとの文献が存在する。よってベンゾジアゼピン睡眠薬は、可能な限り低用量・短期間での使用が推奨される。非薬理学的治療法についても睡眠の質の向上となることが分かっている[7]。トリアゾラムの離脱・薬物依存のリスクは、他のベンゾジアゼピンよりはるかに高い[8]。トリアゾラムは、日常的に多量を服用するユーザに対して非常に高い依存性のリスクがある[9]。トリアゾラムの日常使用は催眠の薬物依存を発生させる。離脱症状は通常、トリアゾラム投与量を減量した際、または完全に停止した場合に現れる。短期的に夜間のみの服用であっても、トリアゾラムを中止した後には不眠症の悪化などの離脱症状(リバウンド不眠症)が発生する[10][11]。
日中の離脱症状は一般的にトリアゾラムが関連している。これは非常に半減期が短いためである。10日間の服用のみで、患者は不安・悩み・視野の欠落・パニック経験・うつ経験・非現実感・妄想を経験している。これらの反応は中間半減期を持つロルメタゼパムよりトリアゾラムのほうが一般的に発生している。このことより、より短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬の服用は、深刻な昼間の禁断症状を発生させている[12]。この夜間の催眠作用のため、昼間に離脱不安を起こす現象は、トリアゾラムだけのものではないが、他の睡眠薬ではトリアゾラムで見られるほど重篤ではない[13]。
トリアゾラム長期使用後の急激な断薬は、重度のベンゾジアゼピン離脱症候群を起こす。トリアゾラムおよびニトラゼパムの突然の断薬後、患者には幻聴・視覚認知障害などの精神病を起こすことが報告されている。投与量の段階的かつ慎重な削減が、重度の離脱症候の発生を防ぐために推奨されている[14]。
用量・用法
通常成人1日 0.125mg から 0.25mg を就寝前に経口投与する。また高度な不眠症の場合 0.5mg を投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。不眠症の他、麻酔前や手術前にも使用される。
緑内障の者や気管支喘息などで呼吸機能が低下している者は投与してはならない。また、他の中枢神経抑制作用のある薬やアルコール、バルビツール酸誘導体などの強い影響下にある者への投与は禁止されている。
臨床では、高度の不眠症の高齢者では1回服用量 0.25 mg までという制限があり、高度な健常人の不眠症では1回服用量 0.5 mg までという制限がある。
トリアゾラムの発売当初、米国では 1 mg 錠も存在した。
乱用
「ベンゾジアゼピン薬物乱用」も参照
娯楽目的で服用する者もいるが、麻薬や他の一部の向精神薬のような多幸感はなく、サイケデリックな夢を見るわけでもない。生じるのは酒に酔ったような酩酊感である。それに加え、健忘により思わぬ事故を引き起こす可能性があるため、睡眠目的以外の使用は禁忌である。
治療目的以外で、使用する目的もなく所持すると、麻薬及び向精神薬取締法にて、逮捕・処罰される。
トリアゾラムは乱用される可能性を持つ薬物である。娯楽用途・高い幸福感を得るために、医学的助言無しに長期間摂取されている[15]。 ヒヒの研究では、嗜好薬剤自己注入テストによると、トリアゾラムが最も好まれるベンゾジアゼピンであることを示した[16]。 連続殺人犯のジェフリー・ダーマーはトリアゾラム(ハルシオン)を被害者の沈静目的に用いており、彼の伝記によればモトリー・クルーのメンバーニッキー・シックスがコカインとヘロインをハルシオンと共に用いていたことを参考にしていたという[17]。
種類
日本で処方されるハルシオン0.25mgの錠剤 10錠包装
錠剤はSP包装に入っており、0.125 mg の規格と 0.25 mg の規格がある。
0.125 mg の錠剤は薄紫(0.25mgより薄い青色のため薄紫)であり、0.25 mg の錠剤は青色である。
脚注
- ^ “Frequently Asked Questions” (プレスリリース), ファイザー, http://pro-info.pfizer.co.jp/56_halcion/faq.html#q6_1 2010年6月16日閲覧。
- ^ Adam K, Oswald I (May 1993). “Triazolam. Unpublished manufacturers research unfavourable”. BMJ 306 (6890): 1475?6. doi:10.1136/bmj.306.6890.1475-b. PMC 1677863. PMID 8292128. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=1677863.
- ^ Bramness JG, Olsen H (May 1998). “[Adverse effects of zopiclone]” (Norwegian). Tidsskr. Nor. Laegeforen. 118 (13): 2029?32. PMID 9656789.
- ^ Kales A (September 1990). “Benzodiazepine hypnotics and insomnia”. Hosp. Pract. (Off. Ed.) 25 Suppl 3: 7?21; discussion 22?3. PMID 1976124.
- ^ Manfredi RL, Kales A (September 1987). “Clinical neuropharmacology of sleep disorders”. Semin Neurol 7 (3): 286?95. doi:10.1055/s-2008-1041429. PMID 3332464.
- ^ Abraham, John, "Transnational....: Adverse Drug Reactions and the Crisis Over the Safety of Halcion [triazolam] in the Netherlands and the UK. Social Science and Medicine: 55 (2002)1671?1690. http://www.sussex.ac.uk/sociology/documents/ssm02.pdf
- ^ Kirkwood CK (1999). “Management of insomnia”. J Am Pharm Assoc (Wash) 39 (5): 688?96; quiz 713?4. PMID 10533351.
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- ^ Veje JO; Andersen K, Gjesing S, Kielgast H. (1989-08-21). “Prescription of tranquilizers and hypnotics in the municipality of Holbaek”. Ugeskr Laeger. 151 (34): 2134?6. PMID 2773144.
- ^ Kales A; Scharf MB, Kales JD, Soldatos CR. (1979-04-20). “Rebound insomnia. A potential hazard following withdrawal of certain benzodiazepines”. JAMA : the Journal of the American Medical Association. 241 (16): 1692?5. doi:10.1001/jama.241.16.1692. PMID 430730.
- ^ Mamelak M, Csima A, Price V (1984). “A comparative 25-night sleep laboratory study on the effects of quazepam and triazolam on chronic insomniacs”. J Clin Pharmacol 24 (2-3): 65?75. PMID 6143767. http://jcp.sagepub.com/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=6143767.
- ^ Adam K; Oswald I (May 1989). “Can a rapidly-eliminated hypnotic cause daytime anxiety?”. Pharmacopsychiatry 22 (3): 115?9. doi:10.1055/s-2007-1014592. PMID 2748714.
- ^ Fontaine, R; Beaudry, P; Le, Morvan, P; Beauclair, L; Chouinard, G (July 1990). “Zopiclone and triazolam in insomnia associated with generalized anxiety disorder: a placebo-controlled evaluation of efficacy and daytime anxiety.” (PDF). International clinical psychopharmacology 5 (3): 173?83. doi:10.1097/00004850-199007000-00002. ISSN 0268-1315. PMID 2230061.
- ^ Terao T; Tani Y. (1988-09-01). “Two cases of psychotic state following normal-dose benzodiazepine withdrawal”. J Uoeh. 10 (3): 337?40. PMID 2902678.
- ^ Griffiths RR, Johnson MW (2005). “Relative abuse liability of hypnotic drugs: a conceptual framework and algorithm for differentiating among compounds”. J Clin Psychiatry 66 Suppl 9: 31?41. PMID 16336040.
- ^ Griffiths RR, Lamb RJ, Sannerud CA, Ator NA, Brady JV (1991). “Self-injection of barbiturates, benzodiazepines and other sedative-anxiolytics in baboons”. Psychopharmacology (Berl.) 103 (2): 154?61. doi:10.1007/BF02244196. PMID 1674158.
- ^ Tom Mathews (1992年2月3日). “Secrets of a Serial Killer - Jeffrey Dahmer Is A Case Study Of A Criminal Soul In Torment, Languid One Moment, Frantic The Next -- And Always Deadly”. NEWSWEEK. 2009年2月5日閲覧。
外部リンク
- “ファイザーくすり情報”. ファイザー. 2012年10月28日閲覧。
睡眠導入剤と鎮静剤 (N05C) |
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GABAA
アゴニスト/PAM |
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GABAB
アゴニスト |
- 1,4-ブタンジオール
- アセブル酸
- GABOB
- GHB (ナトリウムオキシベート)
- GBL
- GVL
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H1 インバース
アゴニスト |
抗ヒスタミン系: |
- カプトジアミン
- シプロヘプタジン
- ジフェンヒドラミン
- ドキシルアミン
- ヒドロキシジン
- メタピリレン
- フェニルアミン
- プロメタジン
- プロピオマジン
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抗うつ薬 |
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抗精神病薬 |
- 定型抗精神病薬
- 非定型抗精神病薬
- オランザピン
- クエチアピンフマル
- リスペリドンなど
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α1-アドレナリン
アンタゴニスト |
抗うつ薬 |
- セロトニンアンタゴニストと再取り込み阻害薬
- 三環系抗うつ薬
- 四環系抗うつ薬
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抗精神病薬 |
- 定型抗精神病薬
- 非定型抗精神病薬
- オランザピン
- クエチアピンフマル
- リスペリドンなど
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その他: |
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α2-アドレナリン受容体
アゴニスト |
- 4-NEMD
- クロニジン
- デトミジン
- デクスメドエトミジン
- ロフェキシジン
- メデトミジン
- ロミフィジン
- チザニジン
- キシラジン
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5-HT2A
アンタゴニスト |
抗うつ薬 |
- セロトニンアンタゴニストと再取り込み阻害薬
- 三環系抗うつ薬
- 四環系抗うつ薬
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抗精神病薬 |
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その他: |
- エプリバンセリン
- ニアプラジン
- プルバンセリン
- ボリナンセリン
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メラトニン
アゴニスト |
- アゴメラチン
- LY-156,735
- メラトニン
- ラメルテオン
- タシメルテオン
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オレキシン
アンタゴニスト |
- アルモレキサント
- SB-334,867
- SB-408,124
- SB-649,868
- スボレキサント
- TCS-OX2-29
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その他 |
- アセカルブロマール
- アプロナール
- ブロミソバル
- カンナビジオール
- カルブロマール
- エンブトラミド
- エボキシン
- フェナジアゾール
- ガバペンチン
- カバラクロン
- メフェノキサロン
- オピオイド
- トケイソウ
- スコポラミン
- UMB68
- バルノクタミド
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