出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/11/15 08:46:40」(JST)
キログラム 仏 kilogramme |
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国際キログラム原器 (CG画) |
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記号 | kg |
度量衡 | メートル法 |
系 | 国際単位系 (SI) |
種類 | 基本単位 |
量 | 質量 |
定義 | 国際キログラム原器(IPK)の質量 |
由来 | 最大密度温度での1 Lの水の質量 |
語源 | ラテン語 gramma(書かれた物、わずかな重量) |
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キログラム(瓩、記号:kg)は、国際単位系 (SI) における質量の基本単位である。国際キログラムともいう。
グラムはキログラムの1000分の1と定義される。またメートル系トンはキログラムの1000倍(1メガグラム)に等しいと定義される。
単位の「k」は小文字で書く。大文字で「Kg」と表記してはならない。
1キログラムの定義は、「国際キログラム原器(IPK)の質量」である。SIにおいて、今なお普遍的な物理量ではなく人工物に基づいて値が定義されているのはキログラムだけである[1]。また、基本単位に接頭辞がついているのもキログラムだけである。
1キログラムの当初の定義は「水1リットルの質量」であった。1795年の定義では、「大気圧下で氷の溶けつつある温度(すなわち0度)における水」となっていたが[2]、その後、水の体積は温度に依存することが分かり、そのため、「最大密度(=液温摂氏4度)における蒸留水1立方デシメートル(1リットル)の質量」と定義された。しかし、水の密度は気圧と温度に影響され、気圧にはその因子に質量が含まれている。すなわちこのキログラムの定義には循環依存が含まれていることになる。この問題を避けるため、1799年に、当時の技術で上記のキログラムの定義に合わせた白金製の原器が作製された。これをアルシーヴ原器(kilogramme des Archives)と呼ぶ。
1875年のメートル条約に基き、1889年にキログラムは新しい国際キログラム原器(IPK:International Prototype Kilogram)の質量と定義された。国際キログラム原器は1879年に作成された3つの原器のうちの1つであり、測定の結果以前のアルシーヴ原器と当時の技術では質量差が認められなかったものであるが、これが1889年の第1回国際度量衡総会の決定によりキログラムの定義に使用されることとなった[5]。
国際キログラム原器は直径・高さともに約39mmの円柱形の、プラチナ(白金)90%、イリジウム10%からなる合金製の金属塊である[6][7][8]。フランス・パリ郊外セーヴルの国際度量衡局(BIPM)に、2重の気密容器で真空中に保護された状態で保管されている[9]。
上記1889年の第1回国際度量衡総会において、世界各国で用いる標準原器として各国に国際キログラム原器の複製を配布することが決定され[10]、当初40個の複製が作られて各国に配布・保管されている。これらの原器は約40年ごとに特殊な天秤を用いて国際キログラム原器と比較されることになっている[11]。日本には1889年に複製のうち6番が原器として配布され、1890年に到着した[12]。日本国内ではこの6番を「日本国キログラム原器」としてキログラムの基準に使用している。なお、30番と39番も副原器として日本に配布され、39番は1947年に韓国に譲渡しており、1963年にE59番を新造している[13]。2009年9月には、BIPMから原器94番を新規に購入した[14]。副原器を含めた4器は茨城県つくば市の独立行政法人産業技術総合研究所に保管されている。日本国キログラム原器は国際キログラム原器に比べて0.176mg重いことが分かっている[15]。
国際キログラム原器の質量は、表面吸着などの影響により年々増加しており、その量は洗浄直後の急速な汚染の他、年に1µg程度と見られている[15]。1988年-1992年の第3回各国キログラム原器の定期校正に際して、42年ぶりに国際キログラム原器の洗浄が行われたが、これにより国際キログラム原器の質量は約60µg減少した。これは1キログラムの6×10−8倍に当たるので、国際キログラム原器による定義の精度は8桁程度ということになる。質量の定義をより明確にするため、質量単位「キログラム」は洗浄直後の国際キログラム原器の質量値として解釈されることになった[15]。
2007年9月、国際キログラム原器が50µg軽くなっているという報道が一部でなされた[9]。しかし、これは同原器が突然50µg軽くなったことを意味するわけではない。上記のように原器は経年で徐々に質量を増すことが知られているが、BIPMの解説によると、1889年からの間に他の複数の複製と比較して、質量変動が約50µg少なかったということだという[16]。
他のSI基本単位は普遍的な物理量に基づく定義に改められてきたのに対し、キログラムだけが人工物に依存する単位として残っている。人工物による定義では、経年変化により値が変化し、また、焼損や紛失のおそれもある。このため1970年代から、普遍的な物理量によるキログラムの定義が検討されてきた。2011年10月21日に国際度量衡総会において、キログラム原器による基準を廃止し、新しい定義を設けることが決議された[17] [18]。 この決議を実現するために、キログラムをプランク定数 h によって定義することが2013年12月に提案された。これはプランク定数がもはや実験値ではなく、定義定数となることを意味する。この提案は、SI文書の第9版(現在は2006年の第8版[19])の1章~3章の改訂(案)の一部として提案されている[20]。
(正確に)
これまではIPKの不確かさはゼロで、プランク定数に 4.4 ×10−8 の不確かさがあったのに対して、この新しいキログラムの定義では、プランク定数の不確かさはゼロになり、逆にIPKに4.4 ×10−8の不確かさがあることになる[21]。
プランク定数に基づく定義では、静止エネルギーと質量の関係式 E=mc² を用いて、ある振動数 の光子のエネルギー () と等しい静止エネルギーを持つ物体の質量を1キログラムと定義する。すなわち、
キログラムは周波数が{(299 792 458)2/6.626 069 57}×1034 ヘルツの光子のエネルギーに等価な質量である[22]。 |
この2013年12月の提案は、アンペア(A)、ケルビン(K)、モル(mol)の再定義と併せて、2014年の第25回国際度量衡総会(CGPM)で決議することが予定されていた[23]。しかし、2014年11月18日~20日に開催されたCGPMでは、プランク定数の精度が十分でないことなどにより、上記の定義への変更はなされず、次の2018年開催予定の第26回CGPMに向けて、定義変更のための諸課題を解決すべし、との決議が採択された[24]。
現在の定義に変わる新しい定義の候補として、アボガドロ定数などを用いた各種の提案があった。 アボガドロ定数に基づく定義は、一定個数のケイ素(Si)原子の質量をキログラムとするという原子質量標準である。アボガドロ定数の値をより正確に求めることができれば、そこからケイ素1キログラムに含まれるケイ素原子の数を決定することができる。ケイ素が採用されたのは、ケイ素が不純物を含まない単結晶を作りやすいからである。国際度量衡委員会(CIPM)が中心となって、各国の研究機関でケイ素を用いてアボガドロ定数の不確かさを少しでも小さくするための研究が行われた。2010年時点でのアボガドロ定数の値 NA = 6.022 141 29(27)×1023 mol-1(CODATA2010年推奨値。括弧内は標準不確かさ)には、8桁目に不確かさがある。国際キログラム原器による精度は8桁なので、あと1桁精度を上げることができれば、キログラムの定義を原子質量標準に置き換えることに意味が出てくる[25]。なお、2014年の提案では、キログラムの定義には上述のようにプランク定数が使用され、アボガドロ定数はモルの定義に使われることとなった。
他には以下のような提案があった。
グラム(gram, gramme, 記号:g)は質量の単位であり、SIにおいてはキログラムの1000分の1 (10-3 kg) と定義されている。「キログラム」は、明らかにグラムに接頭辞キロを付けたものである。しかし、SIにおいては、グラムではなくキログラムが基本単位となっており、グラムはその分量単位の一つとされている。
グラムではなくキログラムがSI基本単位とされたのは、以下のような経緯があるからである。
フランスにおいて1789年の革命が勃発した後、国王ルイ16世は新しい時代の度量衡単位の策定を、アントワーヌ・ラヴォアジエ、ニコラ・ド・コンドルセ、ピエール=シモン・ラプラス、ジャン=シャルル・ド・ボルダ、アドリアン=マリ・ルジャンドルなど主に科学者達で構成された委員会に委嘱した[26] 。その委員会において、質量単位のモデルとして1メートルの10分の1で構成された立方体の升に入った水の質量、すなわち1リットルの大気圧下で氷の溶けつつある温度(0度)における水について、grave(グラーブ、記号G)と名称が与えられた質量単位を標準とする事が提案された[27]。その語源はgravity(重力)から由来したものである。
当初はこのgrave(グラーブ)が質量の基本単位として原器が作られる予定であった。またこれを元として、1graveの1,000分の1を別の質量単位名でgramme(グラム)ないしgravet(グラベト)、また1graveの1,000倍を別の質量単位名を用いてtonne(トン)ないしbar(バー)と称するように名称が考案されたりもした。そしてやがて来るフランス革命の波に襲われ、科学者達の研究は途中で中断するのだが、その後、新しい革命政府が樹立されると再びメートル法が注目されるようになった。しかしそのフランス革命の後、質量の単位は大きな転機を迎えることとなる。
1795年の(暫定)メートル法制定当初、革命後の共和政府が当初の質量の基本単位をgrave(グラーブ)から、その1000分の1を表すgramme(グラム)へと変更したのである。理由は諸説あるが、有力な説の一つとして、1graveという大きさの質量が当時、メートル法以前の昔から使われてきたいくつかの質量の旧単位と比較しても、大きな単位であるということがある。そのためフランスの科学者達は、グラーブは日常的に使う質量単位としては大き過ぎるであろうと危惧し、フランス共和政府と共に、質量の基本単位は1グラーブの1000分の1である1グラムを質量標準として使用すべきであると決定したという説があるが、真相は定かではない。
しかしながら質量標準を1グラムとすると非常に使い勝手が悪く、とりわけ1グラムを定義した原器を作るにはあまりにも小さすぎた。そこで共和政府は基本単位とした1グラムの1000倍、即ち当初の予定通り1graveの質量原器を作ることを決めたわけであるが、その名称が使われることはなくグラムの1000倍を表すために接頭辞のキロ (k) を付けた名称、"キログラム (kg)"の名前を冠した原器を作ることと決めた。これはあくまでも質量の基本単位をグラムにしたことに起因する。こうして当初の質量単位grave(グラーブ)の名称は姿を消すのである。
これが後の1799年に作成された「確定キログラム原器」となった。こうしてメートル法制定当初、長さの単位をm(メートル)、質量の単位をg(グラム)とした基本単位が出来上がった。しかし、メートルとグラムとではその規模が異なる。すなわち、グラムで量られる質量を持つものはセンチメートル台の大きさであることが多く、逆にメートルで測られる大きさを持つものはキログラム台の質量を持つことが多い。そのため、メートルの代わりにセンチメートルを採用し、センチメートル・グラム・秒を基本単位とする単位系が構築されるようになった。これがCGS単位系である。
しかし、電磁気学の発展に伴い、CGS単位系では不都合が生じるようになった。CGS単位系を元に電磁気学の単位を作ると、値が大きくなってしまう。これは、電磁気学の現象を記述するには、センチメートル・グラムでは小さすぎるということである。そのため、科学で使われる単位系の主流はメートル・キログラム・秒を基本単位とするMKS単位系へと移行した。また上記に記された1889年のキログラムの新定義により、それ以降のメートル法において質量の基本単位としての礎を築いた。MKS単位系を更に発展させた国際単位系(SI)においても、キログラムが基本単位として引き継がれている。
キログラムの分量・倍量単位の接頭辞は、キログラムではなくグラムを基準にして付けられる。これは、SIでは二重に接頭辞を付けることを禁じているためである。そこで、キログラムを基準として接頭辞が付けられるように、キログラムに代わる新たな単位名称を付けようという提案が何度かなされている。quilo(記号:q)やkilon(記号:k)といったものが提案されている[要出典]が、正式に議論にかけられたものは、現時点ではない。
いわゆる「1キログラムの重量(重さ)」は、1kgの質量をもつ物体に重力が働くことによって生じる力であり、これを表すには重量キログラム(kgf, kgw, キログラム重)という、質量のキログラムとは異なる単位がある。定義された重量キログラムは地球表面(の特定の場所)において1キログラムの質量を持つ物体に働く約9.806 65ニュートン(力のSI単位)の重力である。980.665 cm/s²(この値が定義されたときはCGS単位系が主として使われていた)という重力加速度の値は、グラム重を定義するために第3回国際度量衡総会(CGPM)で定められた協定値であるということに注意する必要がある。重力加速度は緯度や高度、場所によって異なるので、この値が定められるまではグラム重という単位は値が不明確な単位であった。
接頭辞は歴史的な理由(上記#グラムとキログラム参照)により、キログラムではなくグラムに対して付けられる。例えば1キログラムの100万分の1の質量は、1「マイクロキログラム」ではなく1ミリグラム(1000分の1グラム)となる。マイクログラムもよく用いられ、「µg」と表記するが、webコンテンツなどでは「µ」に代え「u」と代用表記される、すなわち「ug」となる場合もある[28]。実用されている分量・倍量単位は次の通り。
次のようにグラムにメガ以上のSI接頭辞を付けることも考えられるが、キログラムの1000倍の質量に対して、1メガグラムという名前が用いられることは一般にはなく、トンが使われる。さらにはトンの倍量単位に対し、トンにSI接頭辞が付されることも多い(とくにキロトン(kt)やメガトン(Mt))。
接頭辞はグラムに対して付けられるため、100倍・10倍・1/10および1/100を表す接頭辞を付けた次のような単位も一応考えられ、後述のようにこれらを表す漢字も作られているが、現実には用いられず、理論上の単位の域を出ない。またかつては1万倍を表す「ミリア」という接頭辞も存在したが、これもあまり用いられることなく、現在では廃止されている。
漢字ではグラムが「瓦蘭姆」と音訳され、ここから「瓦」一字だけでグラムの意味を表すようになった。日本では明治時代、中央気象台(現気象庁)が「瓦」をその中に含む以下のような倍量・分量単位の漢字を作り、1891年から各気象台で気象観測の月報などに使用して、一般にも広まった。一部は中国でも取り入れられている。
キログラム (SI単位) |
グレーン | 常用オンス | 常用ポンド | 匁 | 斤 | 貫 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 kg | = 1 | ≈ 15432 | ≈ 35.274 | ≈ 2.2046 | ≈ 266.67 | ≈ 1.6667 | ≈ 0.26667 |
1 gr | = 0.00006479891 | = 1 | ≈ 0.0022857 | ≈ 0.00014285 | ≈ 0.0172797 | ≈ 0.000107998 | ≈ 0.0000172797 |
1 oz | = 0.028349523125 | = 437.5 | = 1 | = 0.0625 | ≈ 7.5599 | ≈ 0.047249 | ≈ 0.0075599 |
1 lb | = 0.45359237 | = 7000 | = 16 | = 1 | ≈ 120.96 | ≈ 0.75599 | ≈ 0.12096 |
1 匁 | = 0.00375 | ≈ 57.871 | ≈ 0.13228 | ≈ 0.082673 | = 1 | = 0.00625 | = 0.001 |
1 斤 | = 0.6 | ≈ 9259.4 | ≈ 21.164 | ≈ 1.3228 | = 160 | = 1 | = 0.16 |
1 貫 | = 3.75 | ≈ 57871 | ≈ 132.28 | ≈ 8.2673 | = 1000 | = 6.25 | = 1 |
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