DOPS
ドロキシドパ
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ドロキシドパ
|
IUPAC命名法による物質名 |
(2R,3S)-2-Amino-3-(3,4-dihydroxyphenyl)-3-hydroxypropanoic acid |
臨床データ |
商品名 |
Northera, ドプス |
法的規制 |
|
投与方法 |
経口 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
90% |
代謝 |
肝代謝 |
半減期 |
1.5 時間 |
排泄 |
腎排泄 |
識別 |
CAS番号 |
23651-95-8 |
ATCコード |
None |
PubChem |
CID 6989215 |
ChemSpider |
83927 |
UNII |
J7A92W69L7 |
ChEMBL |
CHEMBL2103827 |
別名 |
β,3-Dihydroxytyrosine |
化学的データ |
化学式 |
C9H11NO5 |
分子量 |
213.18734 g/mol |
InChI
-
InChI=1S/C9H11NO5/c10-7(9(14)15)8(13)4-1-2-5(11)6(12)3-4/h1-3,7-8,11-13H,10H2,(H,14,15)/t7-,8+/m0/s1
Key:QXWYKJLNLSIPIN-JGVFFNPUSA-Na
|
ドロキシドパ(一般名: Droxidopa、L-threo-dihydroxyphenylserine、 商品名: ドプス, Northera)は、アドレナリン受容体刺激薬であるノルアドレナリンおよびアドレナリンのプロドラッグとして作用する、合成アミノ酸前駆体である[1]。ノルアドレナリンや アドレナリンとは異なり血液脳関門を通過可能である[1]。
目次
- 1 効能・効果
- 2 処方
- 3 歴史
- 4 薬理作用
- 5 副作用
- 6 出典
効能・効果
日本での適応症は下記の通り。
- パーキンソン病
- シャイ・ドレーガー症候群、家族性アミロイドポリニューロパチー
- 血液透析患者における起立性低血圧
処方
低血圧に広く用いられ、例えば神経性起立性低血圧[2]、とりわけパーキンソン病によるすくみ足や立ちくらみに有効である[3]。また、ダイアライザーによる人工透析により惹起される一過性の低血圧にも用いる。線維筋痛症や慢性疲労症候群に関連する低血圧にも使用する[4]。
歴史
ドロキシドパは住友製薬によって神経性起立性低血圧を含む低血圧の治療のために生み出された[2]。この薬は日本やその周辺国において低血圧治療用に1989年から使われていた。 2006年の大日本製薬との合併に伴い、大日本住友製薬とチェルシー社はドロキシドパのライセンスに関する契約を結んだ。これにより、日本、韓国、中国、台湾以外にも幅広く世界へマーケティングし、医薬品開発を行う運びとなる。そしてアメリカ合衆国における神経性起立性低血圧治療薬としての認可に先立ち効能追加を補助するために行われた透析患者の低血圧に関する治験の第二相が完了[5]。2014年2月、アメリカ食品医薬品局(FDA)はドロキシドパを神経性起立性低血圧の症状を治療する薬として認可した[6]。チェルシー社はアメリカにおいてドロキシドパの神経性起立性低血圧に関する希少疾病用医薬品の指定を取得して、現地アメリカでの開発を担う製薬会社となった。
薬理作用
ドロキシドパは神経伝達物質であるノルアドレナリンやアドレナリンのプロドラッグであり、身体や脳に存在するこれら神経伝達物質の濃度を上昇させるために用いられる[1]。ドロキシドパは芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼよって代謝される。神経性起立性低血圧の患者は、ノルアドレナリンやアドレナリンの不足を抱えており、それが患者が起立を試みたときにおこる低血圧の原因になる[7]。ドロキシドパは末梢神経系のシナプスにおけるノルアドレナリンやアドレナリンの濃度を上昇させることによって働き、心拍数の上昇と、高い血圧を引き起こし、起立するとき及びしているときの血流を維持を可能にする。
ドロキシドパはノルアドレナリンやアドレナリンが通り抜けることのできない血液脳関門を通過可能である[1]。中枢神経系におけるノルアドレナリンやアドレナリンの濃度上昇は幅広い症状の患者に有用なのだ。ドロキシドパはカルビドパのようなドーパデカルボキシラーゼ阻害剤や芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害剤と反応してノルアドレナリンやアドレナリンの濃度を増加させ維持し、神経の作動レベルを維持する。
副作用
おおよそ20年にわたる販売実績の中で、ドロキシドパの副作用の少なさと、副作用の多くが軽微なものであることが実証されている。頻脈、高血圧、吐き気、嘔吐、頭痛、片頭痛を訴える患者がいる[2]。
出典
- ^ a b c d Goldstein, DS (2006). "L-Dihydroxyphenylserine (L-DOPS): a norepinephrine prodrug". Cardiovasc Drug Rev 24 (3-4): 189–203. doi:10.1111/j.1527-3466.2006.00189.x. PMID 17214596.
- ^ a b c Mathias, Christopher J (2008). "L-dihydroxyphenylserine (Droxidopa) in the treatment of orthostatic hypotension". Clin Auton Res 18 (Supplement 1): 25–29. doi:10.1007/s10286-007-1005-z.
- ^ 竹内孝治、岡淳一郎 『最新基礎薬理学[第3版]』 廣川書店、2011年、50頁。ISBN 978-4-567-49452-6。
- ^ Crofford, LJ (2008). "Pain management in fibromyalgia". Curr Opin Rheumatol 20 (3): 246–250. doi:10.1097/BOR.0b013e3282fb0268. PMID 18388513.
- ^ “DSP Fact Book 2010”. 大日本住友製薬 (2010年6月). 2014年5月18日閲覧。
- ^ “FDA grants accelerated approval to NORTHERA (droxidopa) for patients with symptomatic NOH”. news-medical.net. (2014年2月18日). http://www.news-medical.net/news/20140218/FDA-grants-accelerated-approval-to-NORTHERA-(droxidopa)-for-patients-with-symptomatic-NOH.aspx
- ^ Robertson, David (2008). "The pathophysiology and diagnosis of orthostatic hypotension". Clin Auton Res 18 (Supplement 1): 2–7. doi:10.1007/s10286-007-1004-0.
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- Industrial Info. ドプスOD錠の開発 : 新規口腔内崩壊錠技術SUITAB-MAXの適用
- 仰臥位高血圧・立位低血圧を伴う糖尿病性腎症血液透析患者の血圧コントロール
- 田中 勝喜,西口 健介,高折 光司 [他],村上 徹,岸本 聡子,玉置 佐奈美,井ノ口 眞澄美,左海 佳奈子,門脇 勧,織田 浩彰,御厨 亮子,桑原 隆
- 日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy 44(5), 449-453, 2011-05-28
- … 10 mg)内服は有効ではなく,ドロキシドパ(ドプス<SUP>®</SUP> …
- NAID 10029406867
- 世界旅情 サンクト・ペテルブルクを離れて(2)ノヴゴロド、プスコフ、ペチョールィ、プーシキンの丘
Related Links
- ドプスとは。効果、副作用、使用上の注意。神経のはたらきを活発にするノルアドレナリンという物質の量を増やす作用がある薬で、パーキンソン病におけるすくみ足や立ちくらみ、シャイドレーガー症候群や家族性アミロイドポリ ...
- 大日本住友製薬の「医療情報サイト」です。大日本住友製薬の「ドプス」の各種情報を掲載しています。 ... 販売名 ドプスOD錠200mg 規制区分 処方箋医薬品 注) 注) 注意-医師等の処方箋により使用すること 貯法(*2) 気密容器・室温 ...
Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ドプスOD錠100mg
組成
添加物
- D-マンニトール、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、アスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)、ステアリン酸マグネシウム
禁忌
- 本剤に対し過敏症の患者
- 閉塞隅角緑内障の患者〔眼圧を上昇させる。〕
- 本剤を投与中の患者には、ハロタン等のハロゲン含有吸入麻酔剤を投与しないこと〔「相互作用」の項参照〕
- イソプレナリン等のカテコールアミン製剤を投与中の患者〔「相互作用」の項参照〕
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人〔「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照〕
- 重篤な末梢血管病変(糖尿病性壊疸等)のある血液透析患者〔症状が悪化するおそれがある。〕
効能または効果
- ○パーキンソン病(Yahr重症度ステージIII)におけるすくみ足、たちくらみの改善
- 通常成人に対し、ドロキシドパとして1日量100mg、1日1回の経口投与より始め、隔日に100mgずつ増量、最適投与量を定め維持量とする(標準維持量は1日600mg、1日3回分割投与)。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日900mgを超えないこととする。
- ○下記疾患における起立性低血圧、失神、たちくらみの改善
シャイドレーガー症候群、家族性アミロイドポリニューロパチー
- 通常成人に対し、ドロキシドパとして1日量200〜300mgを2〜3回に分けて経口投与より始め、数日から1週間毎に1日量100mgずつ増量、最適投与量を定め維持量とする(標準維持量は1日300〜600mg、1日3回分割投与)。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日900mgを超えないこととする。
- ○起立性低血圧を伴う血液透析患者における下記症状の改善
めまい・ふらつき・たちくらみ、倦怠感、脱力感
- 通常成人に対し、ドロキシドパとして1回量200〜400mgを透析開始30分から1時間前に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜減量する。1回量は400mgを超えないこととする。
- パーキンソン病への適用にあたっては、次の点に十分留意すること。
- Yahr重症度分類でステージIIIと判定された患者であること。
- 他剤の治療効果が不十分で、すくみ足又はたちくらみが認められる患者にのみ本剤の投与を考慮すること。
- 血液透析患者への適用にあたっては、次の点に十分留意すること。
- 透析終了後の起立時に収縮期血圧が15mmHg以上低下する患者であること。なお、本薬の作用機序は不明であり、治療後の血圧低下の減少度は個体内変動を超えるものではない。
- パーキンソン病への適用にあたっては、効果が認められない場合には、漫然と投与しないよう注意すること。
- 血液透析患者への適用にあたっては、1ヵ月間投与しても効果が認められない場合には、投与を中止すること。
- OD錠(口腔内崩壊錠)は口腔内で崩壊するが、口腔粘膜から吸収されることはないため、唾液又は水で飲み込むこと。〔「適用上の注意」の項参照〕
慎重投与
- 高血圧の患者〔高血圧を悪化させることがある。〕
- 動脈硬化症の患者〔過度の昇圧反応が起こるおそれがある。〕
- 甲状腺機能亢進症の患者〔頻脈等の症状が悪化するおそれがある。〕
- 重篤な肝又は腎障害のある患者
- 心疾患のある患者〔症状が悪化するおそれがある。〕
- 重篤な肺疾患、気管支喘息又は内分泌系疾患のある患者〔これらの症状が悪化するおそれがある。〕
- 慢性開放隅角緑内障の患者〔眼圧が上昇するおそれがある。〕
- 重度の糖尿病を合併した血液透析患者〔末梢循環障害を生じるおそれがある。〕
重大な副作用
悪性症候群(Syndrome malin)(頻度不明)
- 高熱、意識障害、高度の筋硬直、不随意運動、血清CK(CPK)の上昇等があらわれることがあるので、このような場合には、投与開始初期の場合は中止し、また、継続投与中の用量変更・中止時の場合は一旦もとの投与量に戻した後慎重に漸減し、体冷却、水分補給等の適切な処置を行うこと。
白血球減少(0.1%未満)、無顆粒球症、好中球減少、血小板減少(頻度不明)
- 観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
薬効薬理
ノルアドレナリン前駆体作用
- 本剤は生体内に広く存在する芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素により直接l-ノルアドレナリンに変換される。15)
パーキンソン病におけるすくみ足、たちくらみの改善に関連して:
- 本剤は血液脳関門を通過して脳内に移行することが認められている。15, 16)
脳内ノルアドレナリン枯渇動物において、低下した脳内ノルアドレナリン量を回復させ、またノルアドレナリン作動性神経の機能低下に伴う諸症状を回復させる(マウス、ラット、ネコ)。17-21)
- モルモット前脳部ホモジネート又はヒト大脳皮質シナプトゾームを用いた実験(in vitro)で、本剤は神経終末部へ取り込まれることが認められている。22)
また、脳切片(in vitro)及び生体標本を用いた実験で、神経終末部からのノルアドレナリンの遊離を促進させる(モルモット)。23)
シャイドレーガー症候群及び家族性アミロイドポリニューロパチーにおける起立性低血圧等の改善に関連して:
- 6-ハイドロキシドパミンにより交感神経終末を破壊した動物において血圧を上昇させる(ラット)。24)
- DSP-4によりノルアドレナリン作動性神経終末を選択的に破壊した動物及びヘキサメトニウムにより自律神経節を遮断した動物において、体位変換に伴う起立性低血圧を抑制する(ラット)。25)
- シャイドレーガー症候群患者を対象とし微小神経電図法により検討した試験で、体位変換時の筋支配交感神経活動(発射頻度)増加作用が認められている。26)
起立性低血圧を伴う血液透析患者におけるめまい・ふらつき・たちくらみ、倦怠感、脱力感の改善に関連して:
- 脱血(全血液量の約1/5量)により血圧を下降させた動物において、血圧を上昇させる(ラット)。27)
- 脱血による脳血流量低下を示す動物及び麻酔動物で脳血流量を増加させる(ラット)。27)
- 脱血による自発運動量の低下を示した動物において、運動抑制を改善させる(ラット)。27)
- レセルピンによりノルアドレナリン作動性神経を障害した動物において、体位変換による血圧下降を抑制し、悪化した血圧の回復過程を改善させる(ウサギ)。28)
また、DSP-4によりノルアドレナリン作動性神経終末を選択的に破壊した動物及びヘキサメトニウムにより自律神経節を遮断した動物において、体位変換に伴う起立性低血圧を抑制する(ラット)。25)
有効成分に関する理化学的知見
一般名
化学名
- (2S,3R)-2-Amino-3-(3,4-dihydroxyphenyl)-3-hydroxypropanoic acid
分子式
性状
- 白色〜淡褐色の結晶又は結晶性の粉末である。
水に溶けにくく、エタノール(99.5)にほとんど溶けない。
0.1mol/L塩酸試液に溶ける。
融点
- 220℃付近から茶褐色に変化し始め、225℃付近で融解が始まり、230℃付近で黒色となって液化し、融点又は分解点の測定は困難である。
分配係数
- 1.22×10-3(1-オクタノール:水系、pH5)
1.05×10-3(1-オクタノール:水系、pH7)
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- droxidopa
- 同
- L-threo-dops L-スレオドプス L-threo-dihydroxyphenylserine
- 商
- ドプス
- 関
- 抗パーキンソン剤。パーキンソン病
概念
- ノルアドレナリンの前駆体であって、体内でL-aromatic amino acid decarboxylase(AADC)で脱炭酸され、norepinephrineに変換される。
- パーキンソン病患者ではノルアドレナリンが減少し、すくみ足やsudden transient freezing-upを改善すると言われている。
適応
副作用
[★]
- ラ
- Phodopus
- 関
- ヒトキヌゲネズミ属、Phodopus属