出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2012/12/09 06:12:29」(JST)
トビムシ目(粘管目) Collembola | |||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
横から見たトビムシの体構造
|
|||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||
|
トビムシ目(粘管目、Collembola)は、節足動物門六脚上綱内顎綱 (Entognatha) を構成する3目のうち1目である。内顎綱は昆虫に近縁でより原始的なグループで、ほかにコムシ目とカマアシムシ目が含まれ、昆虫とあわせて六脚類をなす。
特徴的な跳躍器でよく飛び跳ねるものが多いので、この名がある。森林土壌中では1m2あたり数万個体と極めて高い密度に達する。
基本的な構造には昆虫と共通する点が多いが、跳躍器や粘管などの独特の器官をもち、触角に筋肉があるなど特異な特徴をもつ。
目次
|
様々な形のものがあり、例外は多いが、一般には一対の長い触角を持ち、体は細長く、胸部3節には各1対、計3対の足がある。これらの点は、昆虫の標準的な構造である。特殊な点としては、通常の昆虫では腹部に11の体節があるのに対して、トビムシでは6節しかない。また腹部下面にはこの目の旧名の元になった腹管(粘管)という管状の器官がある。これは体内の浸透圧を調整する機能を持つといわれている。また、腹部第4節には2又になった棒状の器官がある。この器官は叉状器(または跳躍器)と呼ばれ、普段は腹部下面に寄せられ、腹面にある保持器によって引っかけられている。捕食者などに遭遇した際にはこの叉状器が筋肉の収縮により後方へと勢いよく振り出され、大きくジャンプして逃げることができる。
世界で3,000種以上記載されており、日本国内では14科103属約360種が報告されている。分類は形態的特長によって行われている。
さまざまな姿のものがあるが、代表的なものは、次のような形のものである。
変態せず、脱皮を繰り返して成長する。成熟後も脱皮を繰り返す。多くの場合、年多化であり温帯では年間3-6世代が経過する。一部に夏季の乾燥を避けるために夏眠をする種もおり、これは年一化性の種である。
基本的には交接は行わず、雄は土の表面に精包を置き、雌がそれを拾い上げることで受精が行われる。ただしマルトビムシの一部ではオスが触角をつかってメスの触角をつかみ、後脚を使って直接精包を受け渡すものもある。また、交尾を経ないで繁殖する単為生殖を行う種が知られており、深層性の生活を行うものに多くみられる。
乾燥に弱く、水湿地、土壌などに生息する。特に土壌中に生息するものが多く、土壌中の個体数はササラダニと並んで節足動物では最も数が多いものである。まれに畑地などで大発生をして、辺り一面を埋め尽くして人を驚かす種がある。ほかに、海岸、洞穴、アリの巣に住むものもある。
北アメリカにはある種のシロアリの兵アリの頭の上に住み、兵アリが働きアリから餌をもらう時、わきから食べるトビムシが知られている。
食性は多くの種が雑食で、落ち葉や腐植を中心に食べるものが多く、真菌の菌糸や胞子、バクテリア、藻類、花粉、線虫なども摂食することが報告されている。
ある種のトビムシは、雪解けの時期に大発生をするものがあり、ユキノミと呼ばれる。場合によっては数メートルにわたって雪の表面が真っ黒になり、窪みにたまったトビムシはスプーンですくえるほどになる。
トビムシ目は森林林床などの堆積腐植層において、有機物の分解過程の重要な構成要素となっている。土壌分解系において有機物を摂食するが、実際には、一緒に摂食している微生物(主に真菌)を経由して主要なエネルギーを得ている二次分解者にあたる。排泄された糞粒を培地にして再び微生物が繁殖するため、微生物はトビムシ(やササラダニ)により摂食されても容易に現存量は減少せず、むしろトビムシにより土壌分解系の回転が促進される。このプロセスを通じて植物遺体の砕片化と無機化が進行する。トビムシを摂食する動物は多く食物連鎖のボトムとして重要である。
ウィキメディア・コモンズには、トビムシ目に関連するカテゴリがあります。 |
リンク元 | 「粘管目」「トビムシ類」「Collembola」 |
関連記事 | 「目」「トビムシ」 |
.