出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/12/09 09:57:41」(JST)
ダチョウ | ||||||||||||||||||||||||
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ダチョウ Struthio camelus
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保全状況評価 | ||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Struthio camelus Linnaeus, 1758 |
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和名 | ||||||||||||||||||||||||
ダチョウ | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Ostrich |
ダチョウ(駝鳥、Struthio camelus)は、動物界脊索動物門鳥綱ダチョウ目ダチョウ科ダチョウ属に分類される鳥。鳥でありながら飛ぶことは出来ない。本種のみでダチョウ科ダチョウ属を形成する。亜種として北アフリカダチョウ、マサイダチョウのレッドネック系、ソマリアダチョウ、南アフリカダチョウのブルーネック系、南アフリカで育種されたアフリカンブラックがある。
属名 Struthio はギリシア語でダチョウの意。 往時、ダチョウはサハラ以北にも棲息し、地中海世界にもある程度馴染みのある鳥であった。 この語はまた、英語: ostrich など、ヨーロッパ各国でダチョウを意味する語の語源でもある。 種小名 camelus は「ラクダ」の意。
エチオピア区(生物地理区)の固有種。
かつてアフリカ全域およびアラビア半島に生息していたが、乱獲などにより生息範囲は減少し、現在ではアフリカ中部と南部に生息するのみである。以前は西アジアにも分布していたが、既に絶滅したと考えられている。またオーストラリアに移入されている。
オスの成鳥となると全長230cm、体重135kgにも達し、現生する鳥類では最大種である。 頭部は小型で、頸部は長く小さな羽毛に覆われている。飛行することは出来ない。ダチョウは翼を持っているが、竜骨突起がなく胸筋は貧弱である。また羽毛は羽軸を中心に左右対称でふわふわとしており、揚力を得て飛行する構造になっていない。肢(あし)は頑丈で発達している。趾(あしゆび)は大きなかぎ爪がついている中指と外指の2本で、3本指のエミューやレアと異なる。翼と尾の羽根が白く、オスの胴体の羽根は黒色。メスの胴体の羽毛は灰褐色である。
サバンナや砂漠、低木林等に生息する。繁殖期以外のダチョウは群居性の鳥であり、いろいろな年齢のオスやメスが混合してグループを形成する。繁殖期には1羽のオスと複数羽のメスからなる小規模な群れを形成し、またオス同士でテリトリーを巡って争うことがある。
繁殖形態は卵生で、オスが地面を掘ってできた窪みにメスが卵を産む。最初に卵を産むメスが群れの中でも優位であり、最初のメスが産む卵の周りに他のメスが産卵して外敵に備える。
食性は雑食性とする説もあるが、ダチョウの腸は他の鳥類に比較して非常に長く、馬やウサギと同様に草の繊維質を腸で醗酵させてエネルギー源とすることがわかっており、草食動物と定義することができる。また石を飲み込み筋胃において食べた餌をすりつぶすことに利用する。
キック力が強力で、一説には100平方センチ当たり4.8tの圧力があるといわれる[2]。
ダチョウの飼育は古代エジプトの壁画にも見られる。特に羽根は古代エジプトにおいて真実と公正の象徴として、神話の神々やファラオの装飾品に用いられた。中世ヨーロッパでは騎士の兜の装飾品に使用された。イングランドのエドワード黒太子がダチョウの羽根3本を紋章とし(スリーフェザーマーク)たことから、現在もプリンス・オブ・ウェールズの徽章(ヘラルディック・バッジ; Heraldic badge)に用いられている。オランダ人が南アフリカのケープタウンに上陸した1652年以来、他の野生動物と同じくダチョウの捕獲・屠殺が盛んに行われた。17世紀ごろからダチョウの飼育が活発化し、20世紀に至るまで金・ダイアモンド・羊毛とならんでダチョウの羽根が南アフリカの主要貿易品となるに至った。ながらく南アフリカの独占的畜産業であったが1993年に南アフリカからの種卵・種鳥の輸出が解禁され、後発の家禽として世界中に飼育が広まった。日本においても90年代後半から飼育数が増加し生産者団体が発足するなど活発化し2008年に家畜伝染病予防法の対象動物となった。
ダチョウの生息地では古来食用に利用され、古代ローマの料理家アピシウスがダチョウ肉料理の記録を残している。なお、旧約聖書においては禁忌とされる動物に名を連ねている。 ダチョウ肉は高タンパク質・低脂肪であるため、欧米、とくにEUではBSE問題が追い風となり、健康面に配慮した一部消費者により牛肉の代替赤肉として消費されている。消費量は世界的には年間数万t、日本国内においては100t程度の消費量が推計されている。
ダチョウの肉は鉄分が豊富で赤みが強く、歯応えのある食感をしている。また低脂肪でL-カルニチンも豊富であることからヘルシー食肉として認知が広まりつつある。他の畜肉と比べアラニン、グリシンといった甘み成分のアミノ酸が豊富であり、ステーキ・焼肉・ハンバーグ・カツレツのほか刺身、タタキといった生食でも嗜好される。脂肪が少ない分、クセは少なく和洋とわず味付けの幅は広い。牛肉に比べると加熱しすぎると固くジューシーさが失われることがあり、ダチョウ肉に見合った調理加減が必要である。
ダチョウには竜骨突起がないためムネ肉がほとんど存在しない。食用とする肉の大部分はモモ肉である。各国、各生産者の分類によるがモモ肉のうち特に柔らかい肉がフィレ肉と分類されていることが多い。また首の肉や砂肝・肝臓・心臓等の内臓肉も食用に用いられる。
卵は非常に大きいが、味は決して良くない。水っぽく、白身は火を入れても半透明でジェル状にしかならない。アフリカの狩猟民族にとっては貴重な蛋白源であるが、もっぱら子供や老人の食べ物とされ、成人が食べるのは恥とされている。卵は鶏の卵の20個分の量となる。卵殻はアートなどに利用される。
「オストリッチ」と呼ばれる皮革製品はダチョウの背中の部分の皮膚を利用したもので、軽くて丈夫なことを特色とし、バッグ、財布、靴などに幅広く利用されている。 外見にも特徴があり、「クィル(英語: quill)」「シボ」などと呼ばれる羽毛痕が多数ちらばり、全体として水玉のような模様を見せる。
羽は特に欧米で装飾品として利用されている。帽子の飾りに良く使われるほか、大量の羽を使用した装飾は舞台衣装に使われることも多い。なお、宝塚歌劇団のトップスターが着用する羽飾りもダチョウの羽である。
馬などと比べると乗用に適しているとは言い難いが、人間を乗せて走ることができる。アメリカでは騎手を乗せたダチョウレースが開催されており、1907年にオハイオ州のグリーンヴィルで開催されたダチョウレースで騎手を乗せたダチョウが半マイル(約800m)を1分3秒で走ったという記録がある。
日本の観光農場(岡山県 オーストリッチファーム湯原)等においてもダチョウに乗ることができる。一般車道をダチョウが走る場合、法律上は馬、牛、ロバなどと同様に軽車両の扱いになるはずであるが、実例が確認できないためはっきりしていない。
京都府立大学教授塚本康浩がダチョウを利用して抗体を低コストでつくることを発案した[3]。この抗体を使用したマスクが販売されている[4]。通常、抗体の生産には鶏卵を用いるのが一般的であるが、巨大なダチョウ卵は1個の卵で抗体4gを造ることができ、マスクにすると卵1個で4-8万枚を生産することができるとしている[5]。同研究グループではインフルエンザウイルスなどの抗体のほかニキビ原因菌の抗体などの生成にも成功しており商品化が進んでいる[6]。
ダチョウは、危険が迫ると砂のなかに頭を突っ込む習性があるといわれる。実際にはダチョウにこのような習性はないが、この姿から「He is hiding his head like an ostrich」「follow an ostrich policy」といったような言い回しが派生している。これは現実逃避する、都合の悪いことを見なかったことにするといった意味だが、日本語では「頭隠して尻隠さず」の諺をこれらの言い回しの訳に当てることが多い。
ダチョウは古来より「火を食う」「石を食う」「鉄を食う」「銅を食う」などと言われている。唐の『本草拾遺』、『北史』にもこのようなダチョウの食性についての記述がみられる。アルベルトゥス・マグヌスはダチョウが火を食べることは否定しているが、石を食べることは肯定している。
ダチョウの羽はほとんど静電気を帯びないため、OA機器のダスターや自動車のダスターにも使用される。
メス
分布
頭部
卵
ツーソンとフェニックスの間にあるダチョウ牧場。
シベリア、クラスノヤルスクの動物園にいるダチョウ。
サーモグラフィでの冬季のダチョウ。
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