出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2013/05/07 21:25:56」(JST)
この項目では、言語学の用語について記述しています。その他の用法については「アクセント (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
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言語学でアクセントとは、単語または単語結合ごとに決まった音の相対的強弱や相対的高低を言う。音の強弱による強勢アクセント (stress accent) と音の高低による高低アクセント (pitch accent) に分けられる。なお、文レベルの感情表現に関わる高低はイントネーションという。アクセントは音素の一つであり、単語ごとに決まっていて意味との結びつきが必然性を持たないのに対し、イントネーションは文単位であり、アクセントの上にかぶさって疑問や肯定などの意味を付け加える。
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英語では、音節を強く(この場合の強いとは音量が大きいだけでなく、母音が長い(長母音かどうかではない)、ピッチが高いなどもかかわってくる)読むか弱く読むかという強弱アクセントである(ただし英語ではstressという用語を使う方が一般的。)。例えば、subject という単語では、「題名」などの意味をもつ名詞の場合は最初の sub- を強く発音する。また、「服従させる」という動詞の場合には -ject の方を強く発音する。そして、英語では強勢を持つ音節の頭にくる破裂音は帯気する。
高低アクセントによって語の意味を区別する言語の代表例は日本語である。日本語では語内の音の高低(ピッチ)の位置的な違いによって語の意味が区別されている。古典サンスクリットや古典ギリシャ語などがこれに属し、古代には高低アクセントであったが強勢アクセントに変化した言語もある。
中国語では、四声と呼ばれ、一つの音節内に4種類の音の高低の違いがある。これを声調(トーン)という(詳しくは、声調を参照)。声調も広義では高低アクセントの中に含まれるが、単語内での音の際だつ場所ではなく、高低の違いのパターンに視点が置かれるため、高低アクセントとは区別される。中国語(北京語)は声調を基本にしつつ強勢も用いている言語であり、逆にスウェーデン語は強勢を基本にしつつ声調(単語全体でのパターンを識別する「単語声調」)も用いた言語である。
長短アクセントを単独で使う言語は少ないが、少なからぬ言語で副次的に併用される。ドイツ語は強勢アクセントが主だが、アクセントのある音節は長くなり、長短アクセントが併用されている。
アクセントが単語の弁別に用いられる例は多くの言語にあり、日本語も「橋・箸・端」でわかるようにこの部類に入る。ただし日本語でのアクセントに位置による区別は主に名詞にかぎられ、形容詞や動詞では、アクセントのあるなしのみの対立である。また、基本的にピッチが落ちる場所は単語内で一つに限られ、中国語のような単音節語根をもつ声調言語(声調なしではコミュニケーション不可能)に比べると対立の数は少ない。
さらにアクセント変化が文法的な意義をもつ例も見られる。例えば英語では、present のように同じ単語で名詞・形容詞は前半に、動詞は後半にアクセントのある例が多数ある。またインド・ヨーロッパ語で文法的な語形変化に伴ってアクセントが移動する例も多い。日本語でも平板化(無アクセント化)によって、その単語に対する慣れを表現することもある(専門家アクセント)。
フランス語は強勢アクセントを持つが、アクセントによる単語の弁別は全くない(アクセント符号を使うが、これはアクセントを表現するものではない)。
詳細は「日本語の方言のアクセント」を参照
日本語のアクセントは方言差が激しいが、多くの方言は高低アクセントであり、音の下がり目の位置によってアクセントが区別される。近畿地方・四国地方のアクセントでは、これに加えて語頭の高低を区別する。早田輝洋などは、近畿・四国などのアクセントは、高低アクセントと単語声調の組み合わせであるとしている。また、東北地方南部・関東地方北東部のように、アクセントの区別を持たない方言もある。
共通語とは、以前標準語と呼ばれていたものにほぼ等しい。 共通語のアクセントは理念的には東京方言そのものとは考えられていないが、実際にはごく少数の例外を除いてほぼ東京山の手言葉のアクセントそのものと言ってよい。
共通語のアクセントでは、頭高型、中高型、尾高型、平板型の4種類のパターンが存在する。この内、平板型以外のアクセントを起伏型とも呼ぶ。
頭高型(あたまだかがた) | 最初の音節が高く、それ以降の音節が低い場合 | 例:「カラス」(\_) |
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中高型(なかだかがた) | 最初の音節は低く、次以降の音節が高くなり、単語の終わりまでにまた低くなる場合 | 例:「タマゴ」(/\) |
尾高型(おだかがた) | 最初の音節は低く、それ以降の音節は高いが、後に続く助詞が低くなる場合 | 例:「オトコ(が)」(/ ̄(\)) |
平板型(へいばんがた) | 最初の音節が低く、助詞も含めそれ以降の音節が高くなる場合 | 例:「オトナ(が)」(/ ̄( ̄)) |
日本語の音節が2種類のピッチしか持たないわけではない。しかし、実際には語の途中でピッチが有意的に下がるか下がらないかという二項対立的要素のみが弁別的特徴を担う。音韻論的には二段階以上を考える必要は無い。
共通語のアクセントでは語頭の音節と次の音節は必ずピッチが異なる。このことにより語の始まりが聴覚上明らかになる。この法則はすべての日本語方言で成り立つわけではない。近畿・四国では成り立たないし、東京式アクセントに分類される広島弁、因州弁、名古屋弁、北奥羽方言でも成り立たない。
また、一度下がったピッチが語中で再び上がることはない。こちらの法則はほぼすべての日本語方言で成り立つ。(一部の例外として、言語の孤島として注目される山梨県の奈良田方言にみられる特殊アクセントが挙げられる。例;「鶯」う\ぐ/い\す。)
複合名詞のアクセントは中高型になり、アクセントの核(音が下がる前の音節)は後ろの語の頭に置かれることが多い。例えば「アクセント辞典」を例にすると、
ただし、接頭辞や接尾辞は単語でないのでこの限りではない。
「あかとんぼ」については、古くは「あ\かとんぼ」が普通だったが、現代では複合名詞として「あ/かと\んぼ」と発音するのが普通になっている。これについては童謡『赤とんぼ』も参照。
単語のアクセントは2段階で考えられるが、文になるとアクセント以外の要素が介入し、二段階ではとらえられない。
文として発音した場合は、文頭、意味のまとまりの先頭、および話者が強調した語の先頭以外ではピッチの上がり目が失われる[1]。例えば、「単語のアクセントは2段階で考えられるが、文となるとそうは行かない」という文を文節ごとに区切ってそれぞれのピッチの動きを示してみる。「/」「\」の表示は際立った変化だけを取り出したものであり、表示のないところで一切ピッチが動かないわけではない。
しかし、文として自然に発音した場合は、
のように意味のまとまりの途中ではピッチの上がり目が失われる。失われるというと悪いことのようだが、このことにより意味のまとまりを示す機能を果たしている。全ての上がり目をきちんと発音すると、不自然であるだけでなく文がブツ切りになってしまい意味が取りにくくなる。共通語のアクセントで同音異義語の弁別に役立っているのはピッチの下がり目だけなので、ピッチの上がり目が無くなっても同音異義語の弁別が失われることはない。
まとまりの中にピッチの下がり目が複数あるのは誤記ではない。2つめのまとまりを例にとると「ぶ」は高く、「んとな」はそれより低く、「るとそ」さらに低く、「うはいかない」はさらに低くと順番に低くなっていく。人間の発声能力上ピッチを下げるにも限度があるので、あまりにまとまりが長いと途中比較的意味の切れる場所で区切ることになる。 強調される語の頭ではピッチがひときわ高くなる。このことをプロミネンスという。例えば「2段階」という語を強調すれば、
のように、ひとつだったまとまりが2つに別れて「2段階」の音の上がり目が復活し、一際高く発音される。「文となると」や「そうはいかない」のような表現は意味上の結びつきが強いので2つに別れることは通常は無い。
アクセントの区切れ目によって意味のまとまりを伝える機能は、文の構造を伝える機能を果たしている。日常会話では無意識に適切に区切っているが、文章を朗読する際には朗読者が読む文をきちんと理解していないと適切に区切ることができず、聞き手としては意味が取りにくくなる。
直前の文を縮めた「朗読者が読む文をきちんと理解していないと意味が取りにくくなる」を例にとる。この文の構造を図示すると下記のようになる。なお、細部は省いてある。
朗読者が 読む 文を きちんと 理解していないと 意味が 取りにくくなる │ │ ↑ │ ↑ │ ↑ │ └─┬┘ │ │ │ │ └─────┴────┴─────┬┘ │ │ └───────┴────┘
この文を朗読する際に問題になるのは「朗読者が」が直後の「読む」でなく少し離れた「理解していない」に掛かっていることである。文の意味を理解して読んでいれば無意識にここでアクセントの上がり目を入れて直前の文節と直接繋がらないことを示す。しかし、「朗読者」と「読む」は一見馴染みの良い言葉なので、ただ字面だけを追って読んでいると上がり目を入れることができず、聞き手としては「朗読者の読む文を理解していないのは誰だろう」と戸惑わされることになる。
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リンク元 | 「力点」「accent」「強勢」 |
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