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においとは
まず『広辞苑』でどう解説しているか紹介する。次の順番で掲載されている。
近年では後者のような、嗅覚を刺激され、人が感じる物質や感覚という意味で用いることの方が増えている。
ウィクショナリーににおい、匂、臭、香、薫の項目があります。 |
「におい」は大和言葉で、漢字を当てる場合、基本的には「匂」「匂い」と表記する。ただし「匂」は当用漢字ではなく、また国字である。 良いにおいを「匂い」、悪いにおいは「臭(にお)い」と書くことが多い[注 1]。
良いにおい(匂い)は大和言葉で「かおり」や、漢語で「香気(こうき)」とも言う[6]。「かおり」に漢字を当てる場合は「香り」「薫り」「芳り」などであり、「芳香」といった熟語もあるる。いずれも当用漢字で、「芳」は表外訓などを当てる。
なお日本では、「かおり」「かほり」という読み方では女性の名前によく使われ、漢字では「香」「香里」「香織」などがあてられる。「薫」「馨」と書いて「かおる」と読む人名は男性にも多い[7]。
においとは、赤などのあざやかな色彩が美しく映えることである[8]。視覚で捉えられる美しい色彩のこと。「匂い」。
例えば『万葉集』には次のような歌がある。
また「いろは歌」の冒頭でも「いろはにほへと(色は匂えど)」とある。
襲の色目のひとつ、上を濃く、下を薄くする配色も「匂い」という。
伝統的に花の雄蕊雌蕊をまとめて「におい」と言う。日本画や友禅などの和柄、焼物、漆器の蒔絵、絞り細工など細工の花の中心部分のこと。奥により強い存在を感じさせる表に一部が表出したものを「匂い」と呼ぶ。
においの中でも、特に好ましいものを「かおり」「香り」「香気(こうき)」「芳香(ほうこう)」と呼び分けることがある。
良い香りを身体・衣服・住居などに漂わせる文化は洋の東西を問わず古来あり、人々は花やハーブを採集したり、香水や香を発達させてきた歴史がある。たとえば、西洋では古代ローマで西暦1世紀ころに書かれたペダニウス・ディオスコリデスの書De Materia Medica(『薬物学』)には、「ラベンダーを蒸留して作るラベンダー油は他のいかなる香料もしのぐ香りだ」と記述され、着衣や髪につけて用いたり入浴剤などにも使われていたようで、それは現代でもフランスなど地中海沿岸の国々の家庭でさかんに用いられているし、東洋では香を探究してゆくうちに香道も行われるようになった。現在でも様々な芳香剤が開発・販売されている。
飲食においても匂い・香りは重要な要素である。人は口に入れたもの(食品・料理)を咀嚼しつつ その香りも感じ取っている。 人間は、香りの良い食材選びや、香辛料の使用、香りが良くなる調理法の選択などにより、匂いや香りの面でも食生活を充実させようと努力してきた。たとえば菓子などでも、同一の基本材料でつくるもので栄養価的にも、テクスチャー(かみごこち)面でも、何ら変わらないと分かっていても、(そして品種を増やすと、生産コストや輸送コストが増えてしまうことが分かっていても)菓子メーカーは、あえて様々な香り(フレイバー)のものをラインナップとして用意することで、人々の多様なフレイバーに対する需要に応えようとすることが(そして結果として総売上を伸ばすことが)広く行われている。人々は、口に入れるものの栄養価(あるいは空腹感を抑える作用)や かみごこち ばかりだけでなく、香り(フレイバー)も大いに楽しんでいるのである。[10]
不快なにおい、くさい(臭い)においは、現代では「臭気」と言う。「臭」という漢字をあて「臭い(におい)」とも書く。
臭いの中でも特に強い不快感をもたらすものを悪臭と言い、日本では悪臭防止法により規制対象となっている。また刺激性の化学物質が撒かれたり、物が腐敗したり、焼け焦げたりした時には「異臭」騒ぎと報道されることも多い[11]。
法律や条例による規制対象ではなくても、口臭や加齢臭、腋臭症を含めた過度の体臭、洗濯していない衣服、喫煙などによる不快な臭いについて、抑えることがエチケットとされたり、トラブルの原因になったりすることがある。また、ある人が好ましいと感じて使っている芳香剤などが、別の人には不快感や身体症状を催させる香害問題も起きている[12]。
悪臭や刺激臭は、腐敗や有害物質などの危険性を人間に知らせることも多い。近現代に開発された化学兵器には、無色無臭でありながら致死性が高いものもある。
一方で人間は、文化圏や嗜好が異なる人々が悪臭と感じるにおいを放つ発酵食品などを好んで食べたり[13]、好奇心から悪臭を嗅いでみたりすることもある。後者の例としては、東京の池袋PARCOが2018年1~2月、シュールストレミングのにおいなどを嗅げる「におい展」を開催した[14]。なお食品などで、においの強さを示す指標としては「アラバスター単位」(AU)が使われる。
近年の医学領域における様々な研究成果により、匂いというのは他の感覚とは異なり、大脳辺縁系に直接届いていることが明らかになった。その大脳辺縁系は「情動系」とも呼ばれており、匂いは人間の本能や、特に感情と結びついた記憶と密接な関係があると指摘されている。つまり匂いは、最も感情を刺激する感覚なのだとされているのである[15]。
女性は、男性よりも脳の嗅覚野が発達しているので、匂いに敏感に反応する。[16]
女性は男性以上に においに関心を寄せるが、その理由のひとつに、感覚の男女差がある[17]。女性は男性よりも嗅覚が敏感だと言われている[17]。ひとつの要因は、女性というのは月経周期内の時期などによって、嗅覚が敏感になる時期があることである[17]。なお排卵期には「成人男性に関係するようなにおい」や「不快なにおい」に対する嗅覚感受性が低下するという[17]。月経期には、反対に、「不快なにおい」に敏感になる女性が多いと言われている[17]。
脳の発達には男女差があり、嗅覚をつかさどるのは「嗅覚野」なのだが、そこは大脳辺縁系と関係が強いとされていて、その大脳辺縁系というのは、記憶をつかさどる海馬や感情を司る扁桃体があり、嗅覚的感知に大きな影響を与えている[17]。脳がそういう構造になっているので、匂いと記憶、また、匂いと感情 は結びつきやすいのである。そして、女性はにおいを嗅いだ時に、同時にそれに関連する記憶まで呼び覚ましやすいのである[17]。
においは人に生理的な影響を与えることがある。例えば、ジャスミンの匂い(香り)は心拍のパワースペクトルのLF成分を有意に増大させる、との研究もある。これはジャスミンの香りが副交感神経の活動を増大させ(=交感神経を抑制し)、精神性の負荷を減少させることを示唆している[18]。
食品や飲料では、素材や調味料、香辛料およびそれらを使った調理・醸造などにより生じる良い匂いや香りを楽しむ。近現代の加工食品・飲料では香料を加えることも多い。
エタンチオールなどの一部の有機硫黄化合物は低濃度で十分に強い刺激臭を持つ。これを利用して微量のガスが漏れてもすぐわかるようLPG(液化石油ガス)などに付臭剤として添加されることがある。
犯罪捜査においては、人間よりはるかに鋭敏な嗅覚を持つ警察犬を使って、犯人や被害者の追跡を行う。
アロマテラピーは中世にその原型が生まれ、20世紀により具体的に提唱された。主として花や木に由来する芳香成分の香りを活用し、ストレス軽減など心身の健康維持に役立つ、ともされる技術である。
視覚的イメージ(視覚内容)、音(聴覚内容)、味(味覚内容)などに比べると、匂い(嗅覚内容)というのは、論じられたり教育されたりする機会は比較的少ない。また、近年の日本では匂いが無いまたはや少ないことがよしとされる傾向があり、家庭用の消臭剤や消臭グッズ、微香性の化粧品・整髪料などを買う消費者も多い。このような「匂いを避ける」という現象の背後には、《匂いの抑圧》があり、さらにその背後には《本能の抑圧》や《性の抑圧》が潜んでいる、と鈴木隆は述べた[19][20]
現代では、様々な業種の企業が、においをイメージアップや販売促進に活用しようとしている。こうしたことは10時間以上も香りを長続きさせる最新のにおい噴霧器が開発されたり、「禁煙を手助けする効果がある」「記憶力を高める効果がある」とされる《機能性アロマ》が開発されりしたことによる。ただし、人工的な香りが氾濫することによって、「日本人がもつ繊細な《香り文化》が失われつつあるのではないか」「自然の、かすかなにおいを教える必要があるのではないか」という専門家の指摘もあるという[21]。
日本においては、香りをテーマとした展示を行う「磐田市香りの博物館」(静岡県)[22]や「大分香りの博物館」(別府市)[23]がある。
洗濯物を室内に干す「部屋干し」をした時、その臭いが問題となる。これは洗濯物が乾燥するまでの長時間、衣類が湿っていることによって雑菌が繁殖し、それによって臭いが発生しているからである[24]。
これを防ぐ方法はいくつかある。一つは、できる限り短時間で乾かすという方法である[24]。他にも、雑菌を極力少ない状態にしておくことも大切である[24]。また、「部屋干し専用」の洗剤(抗菌作用のある薬剤が入っているもの)を使う方法、また通常の洗濯洗剤に加えて衣類用漂白剤(漂白剤は滅菌剤や除菌剤としても作用する)を入れる[24]などの方法で、菌の繁殖を最低限にすることが可能である[24]。ヨーロッパでは日本のように「部屋干し」の匂いでなやんでいる人々は少ない。というのは、フランスやドイツなどで販売されている洗濯機の多くが(日本の家電メーカー製の洗濯機とは大いに異なって)洗濯時のお湯の温度を設定する機能がついているものが多く、(電気やガスなどで)きれいな水道水をお湯に温めて設定された温度にしつつ洗濯し、温度としては60℃以上で洗うと洗濯物に潜む雑菌をほぼ全部殺してしまえることがヨーロッパの家庭では常識のように知られており、(洗濯物の状況を判断したり、必要に応じて)そうした温度に設定して洗う習慣があり、そのようにして洗った後はたとえ部屋干ししても(そもそも、干した洗濯物の中に雑菌が無いので)一切 変な臭いがせず、とてもさわやかに仕上るようになっている。
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