肥大型心筋症

hypertrophic cardiomyopathy HCM, HCMJ
心筋症

定義

  • 肥大型心筋症とは以下2つを特徴とする疾患群である(2005年の特発性心筋症調査研究班の手引き)。
  • 1. 左室ないしは右室心筋の肥大
  • 2. 心肥大に基づく左室拡張能低下
  • ただし、基礎疾患ないし全身性の異常に続発し類似した病態を示す二次性心筋症(特定心筋症)は除外すること。

臨床検査による定義

  • 心エコー検査もしくは心臓MRIで、15mm以上の最大左室壁厚(肥大型心筋症の家族歴がある場合は13mm以上)があること。

ESCのガイドライン 2014年による診断基準

  • 1. 1つ以上のsegmentにおいて、15mm以上の左室壁肥厚が認められる。これは心エコー検査、CMRなどの画像診断を用い、安静時での評価による。
  • 2. 13~14mmの壁肥厚の場合、肥大型心筋症の診断は家族歴、心臓以外の症状や兆候、心電図所見、遺伝子検査、各種画像検査での評価を含めた総合的な判断となる。
  • 3. 左室壁肥厚が15mm以上の肥大型心筋症患者の第1度近親者以内の親族については、心エコー検査、CMR、心臓 CTなどの画像診断で 1 つ以上の segmentにおいて13mm以上の左室壁肥厚を認めた場合、肥大型心筋症の可能性を考慮する。

病因

  • 半数が常染色体優性遺伝による。sarcomere complexを構成する蛋白をコードする遺伝子の異常による。この遺伝子にはβミオシン重鎖、トロポニンT、ミオシン結合蛋白Cをコードするものがある。(PHD.259) → 蛋白の構造異常によるからAD

病型

心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版) - 日本循環器学会
  • HOCM(basal obstruction):安静時に30mmHg以上の左室流出路圧較差を認める
  • HOCM(labile/provocable obstruction):安静時に圧較差は30mmHg未満であるが、運動などの生理的な誘発で30mmHg以上の圧較差を認める

病理

  • pattern of extensive disarray. Short, wide, hypertrophied fibers are oriented in chaotic directions and surrounded by numerous cardiac fibroblasts and extracellular matrix.(PHD.259) → これが拡張障害や不整脈の原因となる

症状

胸部症状

左室拡張障害に伴う左室拡張末期圧の上昇による肺毛細管圧の上昇、また左室内腔の狭小化による低心拍出量などが関連
  • 労作時息切れ
  • 呼吸困難


相対的心筋虚血が原因となりうる
  • 胸痛
  • 胸部絞扼感


  • 動悸(不整脈(PAC,VPC,af)、頻脈、収縮力の増大に伴う過収縮)

脳症状

不整脈(心室頻拍、心室細動)ないし流出路狭窄による動作時・起立時の血圧低下が原因となる。血管拡張薬などの禁忌薬の使用時、起立動作時、飲酒時などに好発する。
  • 立ちくらみ
  • 眼前暗黒感
  • 失神

症候

  • dyspnea, palpirations, bifid apical impulse, coarse systolic murmur at the left sternal border, and ventricular hypertrophy with asymmertric septal thickening on echo cardiogram.(Q book p.304)
  • bifid apical impulse: the forceful atrial contraction may also result in a palpable presystolic impulse over the cardiac apex (=double apical impulse)
  • coarse systolic murmur: LA contraction into the stiffened LV

身体所見

PHD.262

心音

  • S4:肥大した左心室壁に対して左心房が無理に血液を送り込むため
  • double apical impulse:心尖部で触れる。左心房の懸命な収縮+左心室の収縮
  • (左室流出路が狭窄している場合)systolic murmur at the left lower sternal border → AS like でダイアモンド型の駆出期雑音を生じる
  • (左室流出路が狭窄している場合)holosystolic blowing murmur at apex by MR → 僧帽弁前尖を左室流出路に引き寄せるからMRが生じる。汎収縮期雑音を生じる。(also see PHD.44)
  • 各種手技による雑音の変化。ASと反対の挙動を示す
  • 静脈還流量減少によりmurmurが増強
  • 静脈還流量増加によりmurmurが減弱
  • elevating one's leg
  • increasing sympathetic tone
  • squatting → HOCMにおいて、姿勢性めまいは一般的。The LV thus decreases in size and outflow tract obstruction intensifies.(PHD.262)

検査

頚動脈圧

  • 二峰性頚動脈波
  • 左室流出路が狭窄している場合は、頚動脈圧波の収縮期早期における急峻な立ち上がりと急激な低下がみられる(PHD.262)。HOCMでは収縮中期に駆出される血液量が低下し収縮期の脈波が二つの峰を形成する(参考2)。
その他、二峰性の頚動脈が認められる病態:大動脈閉鎖不全症閉塞性肥大型心筋症、開存の大きい動脈管開存症Valsalva洞破裂

心エコー

Mモードで観察
  • 左心室壁の肥厚
  • 非対称性中隔肥大(ASH)
  • 僧帽弁前尖の収縮期前方運動(SAM):循環血液量の減少と左室の過収縮による(YN.C-135)
  • 大動脈弁の収縮中期半閉鎖:HOCMでは収縮中期に駆出される血液量低下のために大動脈弁が閉鎖しそうになる(参考2)
  • 僧帽弁後退速度 DDRの低下:左心室のコンプライアンスが低下することにより、左室への血液流入速度が低下するため(YN.C-135)

心電図

  • ST下降、T波の陰転化、左室高電位、QRS時間の院長、Q波異常 (ECGP.118)
  • V3-V5における巨大陰性T波 → 心尖部肥大型心筋症
[show details]
V3-V6のST低下と陰性T波

治療

PHD.264
  • 生活療法:激しい運動や競争をするような運動は避ける → 突然死のリスクが高まる。
  • 薬物療法:
  • βブロッカー:(1)心筋酸素需要減少→狭心痛・呼吸困難↓、(2)左室流出路の圧勾配減少←心収縮力の低下により左室流出路の狭窄が解除される、(3)心室充満量増加←HR低下による、(4)心室期外収縮抑制。ただし、βブロッカーは不整脈による死亡は抑制できないらしい。
  • カルシウムチャネル拮抗薬:(1)心室のコンプライアンス上昇(reduce ventricular stiffness)、(2)βブロッカーが不応の患者での運動耐性を上げる。
  • 抗不整脈薬:心室細動や心室性頻拍から死に至ることがあるため。
  • 抗菌薬:閉塞性肥大型心筋症では感染性心内膜炎が起こりやすいため。
  • 埋め込み型除細動器 ICD:高リスクの患者に適応
  • カテーテルインターベンション:percutaneous septal albation
  • 手術療法:myomectomy


注意

  • 利尿薬

禁忌

  • 硝酸薬 (禁忌と言い切って良いのか知らないが、お手軽教科書には大抵禁忌と書いてある)

参考

  • 1. 分かりやすい
<click2in>http://www.nurs.or.jp/~academy/igaku/s1/s14222.htm</click2in>
  • 2.
<click2in>http://kokushinado.ame-zaiku.com/circu/4_hm.html</click2in>
  • 3. 肥大型心筋症の診療に関するガイドライン
2007年改訂版
<click2in>http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_doi_h.pdf</click2in>
2012年改訂版
<click2in>http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_doi_h.pdf</click2in>


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