伝染性単核球症
- 英
- infectious mononucleosis
- 同
- キス病 kissing disease、伝染性単核症、EBウイルス感染症 Epstein-Barr virus infection、腺熱 glandular fever
- 関
- 単核球症、EBウイルス
概念
- EBウイルスの初感染によって起こる急性熱性疾患。
- サイトメガロウイルスの感染によっても伝染性単核球症様の症状を示すことがある (→サイトメガロウイルス感染症)
疫学
- 多く(90%以上)は幼児期に初感染し、無症状(不顕性感染)か軽症である。
- 学童期から青年期(14-18歳)に多い。成人になってからの初感染では症状が出る。 → 肝炎様症状
- 日本では成人の80%が既感染者。健常者咽頭粘液:10-20%陽性
潜伏期間
- 4-6週(YN.H-75, ウイルス感染症 - 日本内科学会雑誌106巻11号)
病原体
感染経路
- 唾液感染、経口飛沫感染
病態
- 飛沫感染 → 咽頭粘膜上皮細胞やリンパ組織で増殖 → Bリンパ球を介して全身に散布 → 増殖能を獲得したBリンパ球によるIgの産生(ポール・バンネル反応、ペニシリンアレルギーと関連)・腫瘍化したBリンパ球対して活性化した細胞障害性T細胞(異型リンパ球)の増加
- EBウイルスがB細胞に感染して癌化させる。ガン化にはEBウイルスが産生する核内抗原(EBNA)と表面抗原(LMA)が重要な役割りを果たす。ガン化したB細胞に対する傷害性T細胞が異型リンパ球として観察される。
経過
- 1-3週間で自然治癒
- その後、EBウイルスは持続感染する
症候
- 発熱、全身性リンパ節腫脹、絶対的リンパ球増加(10%以上の異型リンパ球)
- 発熱(1-2週間持続,90%)、扁桃炎・咽頭炎(咽頭痛・嚥下困難、発赤・腫脹)、全身性リンパ節腫脹(圧痛)、肝脾腫(10-50%)、結膜の充血、麻疹様・風疹様の発疹(10-40%)
- 扁桃炎・咽頭炎は溶連菌による扁桃炎に似て発赤が強く膿苔を伴うことが多い (SPE.340) → 扁桃白苔とも表現される(滲出性扁桃炎の所見)
- リンパ節腫脹:
- 年齢と共に咽頭、頸部リンパ節腫脹の所見は低下する。40歳以下で頸部リンパ節腫脹94%, 扁桃腺腫大84%, 40歳以上では頸部リンパ節腫脹47%, 扁桃腫大43%
- 後頸部リンパ節腫脹(陽性尤度比 3.1 95%CI 1.6~5.9)
検査
血算
- 末梢血白血球↑、
単核球↑?:白血球分画のリンパ球・単核球?が60%以上となる。 ← Bリンパ球で増殖するため減少、Tリンパ球は反応性に増殖 - 末梢血異型リンパ球(~50%)
- IMにおける異型リンパ球の陽性尤度比
| 異型リンパ球 | 陽性尤度比 | 95% CI |
| ≧10% | 11.4 | 2.7~35 |
| ≧20% | 26 | 9.6~68 |
| ≧40% | 50 | 38~64 |
- まれ:溶血性貧血、血小板減少症、再生不良性貧血、TTP、HUS、DIC (QB.H-196 参考1) ← 時に見られる造血系の異常は、EBウイルスにたいする抗体との交差反応によるもの、らしい(参考1)
免疫血清検査
- 1. ペア血清:VCA-IgM↑、VCA-IgG↑ ← VCA-IgMは一過性上昇 ← 急性期に上昇
- VCAとはウイルスキャプシド抗原(virus capsid antigen)
- 2. EBNA抗体:陰性 ← 慢性期に上昇
- 陽性→潜伏感染
- EBNA抗原はゆっくりと上昇し3ヶ月後に陽転する。3-6週後に陽転(ウイルス感染症 - 日本内科学会雑誌106巻11号)
- 3. Paul-Bunnell反応:陽性(1週間後40%、4週間後80-90%)
肝臓酵素
- 肝逸脱酵素↑:AST、ALT、ALP、γ-GTP。ビリルビンも上昇する。
- 肝障害は80-90%の例にみられる。
診断
- 若年者の場合はCMVとEBVの両方を考慮して血清学的検査(VCA-IgG, VCA-IgM, EBNA, CMV-IgG, CMV-IgM)を提出する。
- トランスアミナーゼ上昇が認められているので、肝胆膵をスクリーニングするために腹部エコーを行うと良いのかもしれない。
鑑別診断
- 化膿連鎖球菌:咽頭炎・扁桃炎のみでは鑑別が難しい。前頸部リンパ節腫脹、CRP上昇、好酸球増多、肝障害なし、肝脾腫なし。
- サイトメガロウイルス(サイトメガロウイルス感染症)、ヒトヘルペスウイルス6型でも同様の症状を呈しうる→伝染性単核球症様症候群
- ヒト免疫不全ウイルス感染症、リステリア症、トキソプラズマ症、腺熱リケッチアなど → 発熱とリンパ節腫脹(まあ、ウイルス感染の非特異的症状なんだろうけど)
- 悪性リンパ腫
- A型肝炎、風疹、敗血症、白血病 (SPE.340)
治療
- 特異的治療法無し
- 対症療法:解熱薬や肝庇護薬の投与、輸液など
合併症
- 脾破裂:1%以下の確率であるが、発症1ヶ月程度は脾破裂のリスクがあるため、激しい接触をするようなスポーツは控えた方がよい。
- 髄膜脳炎
- ギラン・バレー症候群
- ウイルス関連血球貪食症候群、自己免疫性溶血性貧血
注意
- ペニシリン系・セフェム系薬物の投与は禁忌:発疹などのアレルギー反応が起こる
- ペニシリン系抗菌薬では30-100%の割合で皮疹が生じるが、その際にはセフェム系抗菌薬を使う方がよいとされている(ウイルス感染症 - 日本内科学会雑誌106巻11号)
予防
- 困難
予後
- 一般的に良好
- AIDS患者の場合、日和見リンパ腫を起こす
- 脾破裂と血球貪食性リンパ組織球症は予後不良 (SPE.340)
参考
- 1. [charged] Infectious mononucleosis in adults and adolescents - uptodate [1]