100Cases 88

出典: meddic

☆case88 疲労
63歳 女性
主訴:疲労
現病歴:8年前に甲状腺機能低下症と診断され、サイロキシンを投薬されているが、ここ2,3年は血中の甲状腺ホルモンレベルを検査していない。2年前より全身倦怠感が増強している。2ヶ月前より皮疹を伴わない皮膚掻痒感が出現。口腔乾燥感は継続しており、現在、眼の乾燥感は軽度自覚している。なお、排尿障害(her urine has been rather 'strong' lately.)があるが、腹部・泌尿器には問題は認めない。
閉経:49歳(14年前)
既往歴:無し
家族歴:甲状腺疾患(thyroid disease)、糖尿病
嗜好歴:喫煙なし。飲酒は週末にシェリー酒をグラスに2杯。
服用薬:パラセタモール(時々。頭痛に対して)。ビタミン剤(定期的)、サイロキシン(定期的。T4のこと)
身体所見 examination
 強膜:軽度黄染
 眼瞼:黄色腫
 皮膚:上肢・背中に掻爬による表皮剥離
 脈 :74/分、整
 血圧:128/76 mmHg
 呼吸器、心血管系:異常なし
 腹部:圧痛無し。肝臓触知せず、脾臓は左肋骨縁2cm下で触知。
検査所見 investigations
 T-bil 上昇
 AlP 上昇
 ALT 上昇
 γ-GTP 上昇
 Cho 上昇
 ANA +
 AMA +++
 thyroid ab ++
問題
 これらの所見の解釈は? 診断は?  確定診断のために必要な検査は?
■解答
 原発性胆汁性肝硬変 
→see year note  B<41> F69 {原発性胆汁性肝硬変} : A134 B41 D168 F69 {PBC}
■原発性胆汁性肝硬変 primary biliary cirrhosis PBC
A) 概念
特定疾患治療研究対象疾患
肝内の中等大小葉間胆管ないし隔壁胆管が障害される原因不明の慢性肝内胆汁うっ滞症。
慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)による慢性の肝内胆汁うっ滞を来す疾患(YN.)。
初発症状は皮膚掻痒感。
末期になると肝硬変像を示す。 → 門脈圧亢進症
血清学的には抗ミトコンドリア抗体が特徴的だが、胆管障害機序は不明。 → 自己免疫機序?
胆汁うっ滞に基づく症状を呈さないPBCを無症候性PBC、症状を呈すものを症候性PBCという。
B) 疫学
発症年齢は40から60歳代に集中。約90%は女性。 → 中年以降の女性に好発
有病率:3-4人/10万人。欧米より低いと推定されている(YN.)
C) 病理
胆管上皮の増殖性変化,胆管上皮細胞の壊死, 胞体の腫大や好酸性変化
基底膜の破壊、核の非偏在化、核の重層化、門脈域にリンパ球、形質細胞が浸潤
D) 病態
自己免疫機序によると思われる胆管の傷害 → 胆汁うっ滞 → 肝細胞傷害および線維化 → 門脈圧亢進症 → 肝硬変
E) 症状(YN., HIM.chapter 302)
初発症状:皮膚掻痒感(診断された症例の50%に見られる)、皮膚黄色腫
疲労感:肝臓の状態や年齢にそぐわないようなひどい疲労感
黄疸
F) 身体所見
門脈圧亢進症に基づく症状:肝腫大、脾腫大、腹水、浮腫
原発性胆汁性肝硬変に特有:色素沈着(皮膚を掻爬するため)、黄色腫・眼瞼周囲の黄色腫(高脂血症による)
G) 検査(YN.)
・血液一般
赤血球、白血球、血小板:減少 → 門脈圧亢進症による脾腫が原因
・生化学 - 脂質
高コレステロール血症 ← 閉塞性の黄疸であり、胆汁がうっ滞するから
・生化学 - 銅
体内Cu:増加
血清Cu:上昇、尿中Cu:上昇、肝組織内銅含有量:上昇
血清セルロプラスミン:上昇
・ 肝障害
ALT、AST:中等度上昇
・胆汁
T-bil:上昇。直接ビリルビン優位
胆汁うっ滞の所見が特徴的。ただし総ビリルピンの上昇は末期
胆道系酵素:上昇。γ-GTP,ALP, LAP)。
・血清免疫
抗ミトコンドリア抗体(AMA):陽性。臓器特異性はない ← 90%の患者で陽性。PBCに特異的。
M2抗体:PBCに特異的。 AMA陰性患者でもほとんどの場合M2抗体が陽性。
M2の主要対応抗原はミトコンドリア内膜のpyruvate dehydrogenase (PDH) E2 component。
抗PDH抗体:陽性。抗PDH-E2抗体と反応する分子がPBCの胆管上皮に高濃度に存在。
IgM:上昇:70%の症例
ANA、抗平滑筋抗体は50%の症例で陽性
AMA陽性 + ANA陽性 = オーバーパップ症候群
・超音波検査・CT・MRI
胆道の閉塞がないか確認 → 続発性胆汁性肝硬変
H) 診断
組織像 + 抗ミトコンドリア抗体陽性
臨床症状、血清学的検査、エコー、CTで疑い、肝生検による組織診で確定診断する。
ALP、γ-GTP → エコーで胆道閉塞性疾患を否定 → AMA、IgM検査 → 肝生検
AMA陰性の場合は肝生検が決め手
I) 鑑別診断
閉塞性黄疸、原発性硬化性胆管炎、慢性薬物性肝内胆汁鬱帯
PSCは核磁気共鳴膵胆管造影(MRCP)、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)
J) 病期分類(Scheuer分類、ショイエル分類)
1期: florid duct lesion - 無症候性
慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)といわれる所見、すなわち、胆管上皮細胞の変性、壊死、脱落と、胆管周囲へのリンパ球、形質細胞の浸潤。
2期: ductular prliferation - 無症候性 : 細胆管の増生と門脈域より肝実質へのリンパ球浸潤。
3期: scarring - 症候性-s1 :架橋壊死と線維性隔壁を伴った瘢痕。
4期: cirrhosis - 症侯性-s2 :肝硬変
K) 予後
黄疸が出現したら肝臓の予後は不良 → つまり進行性
無症候性PBCの予後はおおむね良好、15-20年間経過観察された無症候性PBCの約10%が症候性(黄疸PBCへ移行
症候性PBCの5年生存率は約40%、総ビリルビン>2.0mg/mlで数年以内に腹水貯留などの肝不全の徴候があらわれてくることが多い
L) 治療
UDCA(ウルソデオキシコール酸)、ベサフィブラート、肝移植(scheuer stage IV)
肝移植: 1年生存率 75-90%、 5年生存率 75-85%
再発は20-30%(確診), 28-90%(compartible)
ウルソデオキシコール酸:胆汁排泄を促進して胆道系酵素を低下させる。 → 病態の進行を遅らせるだけに過ぎない
皮膚掻痒感に対してコレスチラミン。抗ヒスタミン薬、ナルトレキソン、リファンピン
骨粗鬆症に対してVitamin D
ステロイドは骨粗鬆症の増悪を招く
進行例には肝移植。
M) 禁忌
ステロイド
N) 鑑別診断
原発性硬化性胆管炎:胆管周囲の線維化、男性に多い
O) 合併症(YN.)
自己免疫疾患:Sjogren症候群、慢性甲状腺炎、不応性貧血(RA)、CREST症候群、自己免疫性肝炎(AIH)
門脈圧亢進症状:脾腫、腹水、浮腫
骨軟化症、骨粗鬆症:胆汁排泄障害によりビタミンD(脂溶性だから)やカルシウム(ビタミンDの欠乏による)の吸収阻害を来す。
高脂血症:胆汁酸排泄の障害による → 黄色腫
P) PBCとPSCの比較
Table 16-7. Main Features of Primary Biliary Cirrhosis and Primary Sclerosing Cholangitis
Parameter primary biliary cirrhosis primary sclerosing cholangitis
Age Median age 50 years (30-70) Median age 30 years
Gender 90% female 70% male
Clinical course Progressive Unpredictable but progressive
Associated conditions Sjogren syndrome (70%) inflammatory bowel disease (70%)
scleroderma (5%) pancreatitis (≦25%)
thyroid disease (20%) idiopathic fibrosing diseases (retroperitoneal fibrosis)
Serology 95% AMA positive 0% to 5% AMA positive (low titer)
20% ANA positive 6% ANA positive
60% ANCA positive 82% ANCA positive
Radiology normal strictures and beading of large bile ducts; pruning of smaller ducts
duct lesion florid duct lesion; loss of small ducts concentric periductal fibrosis; loss of small ducts
Q) 自己免疫性肝炎と原発性胆汁性肝硬変
  自己免疫性肝炎 原発性胆汁性肝硬変
AIH PBC
疫学 年齢 中年女性 中年女性
HLA HLA-DR4 HLA-DR8
自己抗体 抗核抗体 ANA 抗ミトコンドリア抗体 AMA
抗平滑筋抗体 ASMA
検査 ↑血清IgG ↑血清IgM
胆道系酵素上昇
合併症 各種自己免疫疾患 Sjogren症候群
関節リウマチ
慢性甲状腺炎
強皮症
治療 ステロイド ウルソデオキシコール酸
肝移植
禁忌   ステロイド
■参考文献
 ・イヤーノート2011
 ・Robbins Basic Pathology: With STUDENT CONSULT Online Access 8th edition
 ・Harrison's Principles of Internal Medicine 17th

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Can Med Assoc J. 1963 March 9; 88(10): 505–511. PMCID: PMC1921073. Copyright notice. An Epidemiologic Study of 100 Cases of Toxoplasmic Uveitis: Implications for Diagnosis and Prevention. Joel B. Chodos and Hedwige E. Habegger- ...
Observations on 100 Cases of Leukaemia in Childhood. Reginald Lightwood, Herbert Barrie, and Neville Butler. Small right arrow pointing ... 1955 Apr;9(2):81– 88. [PMC free article] [PubMed]; HEWITT D. Some features of leukaemia mortality .

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