サイトメガロウイルス感染症

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cytomegalovirus infection
CMV感染症
サイトメガロウイルス巨細胞封入体症日和見病原体不顕性感染

概念

  • ヘルペスウイルス科ベータヘルペスウイルス亜科に属するサイトメガロウイルスによる感染症である。
  • 宿主の状態により臨床像が異なる。
  • 一般に弱毒で、健康な成人に感染しても発症することはまずない。
  • ほとんどの成人(80~90%)が罹患しているが、不顕性のまま経過し、持続感染/潜伏感染している。
  • 感染によりCMV-IgG抗体を有することになる。
  • 既感染者の尿、唾液、精液、血液、乳汁にサイトメガロウイルスが分離されるため、体液や粘膜を介した接触、尿や唾液を介した接触感染、母乳を介した感染が起こりうる。
  • 初感染の場合、細胞免疫が低下した者で再活性化した場合に症状を呈する(免疫抑制薬投与、AIDS患者)。
  • 乳児幼児の初感染、妊婦の初感染、易感染性宿主の再活性化
  • 胎児が感染した場合は、黄疸、肝脾腫、出血、小頭症、網膜炎、知能障害などが、移植患者などでは肺炎が起こりやすい。
  • 妊婦の初感染により、胎内感染による流産や先天性奇形をきたしうる。

臨床型

先天性サイトメガロウイルス感染症

  • 先天性巨細胞封入体症
  • 妊婦がサイトメガロウイルスの初感染、再感染、あるいは再活性化により経胎盤的に胎児に感染する。妊婦が初感染の場合には重症となる。
  • 症状:低出生体重、黄疸、出血斑、肝脾腫、小頭症、脳内石灰化/脳室周囲石灰化、肝機能異常、血小板減少、難聴、脈絡網膜炎、DIC、知的障害
  • 出生時には無症状~一部の症状のみ呈する場合がある。
  • 後遺症:難聴、神経学的後遺症

新生児・乳児・幼児の初感染

  • 産道での感染、母乳を介した感染、尿や唾液を介した水平感染が主である。
  • 正常な妊娠で出生した場合、母体からの移行抗体によりほとんどが不顕性感染かあるいは軽症で経過する。
  • 早産児や低出生体重児の場合、母体からの移行抗体が不十分であるため重症化することが多い。結果として肝炎、肺炎、単核球症を生じうる。よって、このような児に対しては接触予防策を徹底すべきであり、またCMV既感者からの授乳や輸血は回避する必要がある。

成人の初感染

  • サイトメガロウイルスに未感染の者が、思春期以降に唾液、精液、血液などを介して初感染を受けた場合には、伝染性単核症様の症状を呈することが多い。
  • 発熱、肝機能異常、頚部リンパ節腫脹、肝脾腫などが主な症状であり、EBウイルスの初感染との鑑別が困難である。
  • ただし、EBウイルスの場合と違って、滲出性扁桃炎を起こすことは少ない。
  • 伝染性単核症様の症状が出たとしても1-2週間で軽快する。

臓器移植による感染

  • 臓器移植において、CMV-IgGパターンとしては、ドナー陽性・レシピエント陰性、ドナー陽性・レシピエント陽性の場合が考えられる。
  • 前者の場合、ドナーの臓器内に潜伏しているサイトメガロウイルスにより初感染を受けることになる。
  • 後者の場合、ドナーからの臓器に拒絶反応を起こさないようにレシピエントは免疫抑制薬により細胞免疫が徹底的に抑制されるが、そのためレシピエントに潜伏していたサイトメガロウイルスが再活性化して発症することがある。

骨髄移植による感染

  • 骨髄移植において、CMV-IgGパターンとして、ドナー陰性、レシピエント陽性のパターンで、サイトメガロウイルスが再活性化した場合に重篤化する。
  • 免疫を担当する細胞はもっぱらドナー由来の細胞となるが、サイトメガロウイルスは初感染となるため、その他のパターンより重篤化しやすい。


症状

  • 脳 :脳炎
  • 肺 :間質性肺炎
  • 肝臓:ウイルス性肝炎の病態となる
  • 網膜:網膜炎。サイトメガロウイルス網膜症
  • 消化管:腸炎(潰瘍、びらん)


感染症専門医テキスト 第1部 解説編より
  • 先天性CMV感染症の症状
症候 頻度(%)
出血斑 54
胎児発育不全 47
肝腫 47
脾腫 44
脳石灰化 43
出生時の黄疸 36
小頭症 40
聴覚障害 41
溶血性貧血 13
脈絡網膜炎 11
痙攣 8
肺炎 11
肝機能障害 30
死亡 8
  • 後天性CMV感染症の症状
疾患 新生児 乳児 臓器移植 骨髄移植 AIDS
発熱/肝障害 ++ ++ ++
消化器感染症
網膜炎     ++
間質性肺炎 ++  
骨髄抑制       ++
脳炎・脳障害      
PTLDリスク      

検査

  • 血液検査:
  • 血液像:異型リンパ球増加、単核球の増加
  • CMV-IgM:初感染、既感染者の再活性化で陽性となる
  • CMV-IgG:既感染者で陽性となる

診断

先天性CMV感染症

  • 1. 2-3週間以内の尿からウイルスの分離
  • 確定診断となる。
  • 2. 臍帯血や新生児血のCMV IgMの検出
  • 陰性の場合がある。
  • 3. 抗原血症
  • 4. DNAの検出
  • 5. mRNAの検出

CMV感染症

  • 1. NASBA法(nucleic acid sequence based amplification法):mRNA検出。mRNAの検出はウイルスの活動性を反映
  • 2. antigenemia法:ウイルス抗原(方法:C7HRP 、C10C11)
  • 白血球を単離してCMV抗原に対するモノクローナル抗体で染色し、陽性細胞を計測する。陽性細胞の数で判定する。
  • 3. PCR法:DNA検出
  • 4. 直接的なウイルス分離
  • 5. ウイルス特異的IgM 抗体の検出

治療

予防

  • 未感染妊婦:乳幼児と密接な接触を避ける


  • pre‐emptive therapy
  • 造血幹細胞移植:ホスカルネット(ガンシクロビルの骨髄抑制)
  • 腎移植    :ガンシクロビル(ホスカルネットによる腎障害)

参考文献