薬物性肝障害
- 英
- drug-induced liver injury, drug-induced hepatopathy, drug-induced liver disease
- 同
- 薬剤性肝障害
- 関
- 薬物性肝炎 drug-induced hepatitis
- 090716 III 消化器系
概念
- 薬剤に使用によりもたらされた肝障害
疫学
分類
- 中毒性肝障害:薬物が肝細胞を障害
- アレルギー性肝障害:IV型アレルギーの機序により肝細胞が障害
原因薬物
- 抗菌薬(21.9%)が最も多く、抗炎症薬(11.86%)がこれに次ぐ。(第32回日本肝臓学会西部会より)
薬物と障害部位
| 肝細胞傷害型 | 肝壊死型 | 中心帯壊死(zone 3) | 四塩化炭素,アセトアミノフェン,ハロタン |
| 中間帯壊死(zone 2) | フロセミド | ||
| 周辺帯壊死(zone 1) | リン,硫酸鉄 | ||
| 肝炎型 | イソニアジド,メチルドパ,ケトコナゾール | ||
| 肝線維症型 | メトトレキサート,塩化ビニル,ビタミンA | ||
| 脂肪肝型 | 小滴性 | テトラサイクリン,バルプロ酸,リン | |
| 大滴性 | エタノール,メトトレキサート | ||
| リン脂質症 | アミオダロン,DH剤 | ||
| 胆汁うっ滞型 | hepatocanalicular | クロルプロマジン,エリスロマイシンエストレート | |
| canalicular | C-17アルキル化ステロイド,経口避妊薬,シクロスポリンA | ||
| ductular | ベノキサプロフェン | ||
| 血管障害型 | 肝静脈血栓 | 経口避妊薬,抗腫瘍薬 | |
| 門脈血栓 | 経口避妊薬 | ||
| 静脈閉塞性疾患 | 蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,抗腫瘍薬 | ||
| 肝紫斑病 | 蛋白同化ステロイド,経口避妊薬,トロトラスト,アザチオプリン,ファロイジン,塩化ビニル | ||
| 肉芽腫形成型 | アロプリノール,カルバマゼピン | ||
| 腫瘍形成型 | 限局性結節性過形成 | 経口避妊薬 | |
| 腺腫 | 経口避妊薬,蛋白同化ステロイド | ||
| 癌腫 | 経口避妊薬,蛋白同化ステロイド,トロトラスト,塩化ビニル | ||
| 血管肉腫 | トロトラスト,塩化ビニル,蛋白同化ステロイド | ||
病態
- 投与開始から5-90日の経過で発症し、肝障害に基づく症状・検査値異常をきたす。 ← 長期間服用(例えば2年)している薬物は除外できる。最近服用を始めた薬物の問診が重要
身体所見
- 肝腫大、圧痛、(アレルギー性)発熱、発疹、掻痒感
症状
- 食欲不振、悪心、腹痛、黄疸
検査
- 肝機能異常、
- (アレルギー性)好酸球増加
治療
薬物性肝障害判定基準
- 参考1
| 表 DDW-J 2004薬物性肝障害ワークショップのスコアリング(肝臓 2005; 46: 85-90より引用) | |||||
| 肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | スコア | |||
| 1. 発症までの期間 | 初回投与 | 再投与 | 初回投与 | 再投与 | |
| a.投与中の発症の場合 投与開始からの日数 |
5~90日 | 1~15日 | 5~90日 | 1~90日 | 2 |
| <5日、>90日 | >15日 | <5日、>90日 | >90日 | 1 | |
| b.投与中止後の 発症の場合 投与中止後の日数 |
15日以内 | 15日以内 | 30日以内 | 30日以内 | 1 |
| >15日 | >15日 | >30日 | >30日 | 0 | |
| 2. 経過 | ALTのピーク値と正常上限との差 | ALPのピーク値と正常上限との差 | |||
| 投与中止後のデータ | 8日以内に50%以上の減少 | (該当なし) | 3 | ||
| 30日以内に50%以上の減少 | 180日以内に50%以上の減少 | 2 | |||
| (該当なし) | 180日以内に50%未満の減少 | 1 | |||
| 不明または30日以内に50%未満の減少 | 不変、上昇、不明 | 0 | |||
| 30日後も50%未満の減少か再上昇 | (該当なし) | -2 | |||
| 投与続行および不明 | 0 | ||||
| 3. 危険因子 | 肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | |||
| 飲酒あり | 飲酒または妊娠あり | 1 | |||
| 飲酒なし | 飲酒、妊娠なし | 0 | |||
| 4. 薬物以外の原因の有無2) | カテゴリー1、2がすべて除外 | 2 | |||
| カテゴリー1で6項目すべて除外 | 1 | ||||
| カテゴリー1で4つか5つが除外 | 0 | ||||
| カテゴリー1の除外が3つ以下 | -2 | ||||
| 薬物以外の原因が濃厚 | -3 | ||||
| 5. 過去の肝障害の報告 | 過去の報告あり、もしくは添付文書に記載 | 1 | |||
| なし | 0 | ||||
| 6.好酸球増多(6%以上) | あり | 1 | |||
| なし | 0 | ||||
| 7. DLST | 陽性 | 2 | |||
| 擬陽性 | 1 | ||||
| 陰性および未施行 | 0 | ||||
| 8.偶然の再投与が行われた時の反応 | 肝細胞障害型 | 胆汁うっ滞または混合型 | |||
| 単独再投与 | ALT倍増 | ALP(T.Bil)倍増 | 3 | ||
| 初回肝障害時の併用薬と共に再投与 | ALT倍増 | ALP(T.Bil)倍増 | 1 | ||
| 偶然の再投与なし、または判断不能 | 0 | ||||
| 1) 薬物投与前に発症した場合は「関係なし」、発症までの経過が不明の場合は「記載不十分」 と判断して、スコアリングの対象としない。 投与中の発症か、投与中止後の発症化により、a またはb どちらかのスコアを使用する。 2) カテゴリー1:HAV、 HBV、 HCV、 胆道疾患(US)、アルコール、ショック肝 カテゴリー 2:CMV、 EBV. ウイルスはIgM HA 抗体、HBs 抗原、HCV 抗体、IgM CMV 抗体、IgM EB VCA 抗体で判断する。 判定基準:総スコア 2点以下:可能性が低い 3、4点:可能性あり 5点以上:可能性が高い | |||||
参考
- 1. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性肝障害 平成20年4月 厚生労働省
- 2. 薬物性肝障害スコア計算ソフト 帝京大学医学部内科 滝川一 田辺三菱製薬 提供
- 3. 薬物性肝障害診断基準
-薬剤性肝障害