-排尿訓練
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2020/05/04 02:30:46」(JST)
この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。 出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(2015年6月) |
トイレットトレーニングないし排泄訓練(はいせつくんれん)とは、排泄に絡む便所の使用に関する訓練(練習と実践を通して、やり方を学ぶこと)を指す。幼児に対するものと、ペットなどの動物に対して行われるものとがある。
人間の幼児の場合には、おむつを常時使用する状態から、自分の意思で一般のトイレで排泄できるようにすることがトイレトレーニングである。お尻のしつけとも言う。温水洗浄便座を設置している家庭では、それらを自分で操作して使用できるようにすることも、トレーニングの目的となる。
最初はできないのが当然であるため、最初から全てを1人で行う事を求めたり、排泄に失敗した際にきつく叱ることはすべきでないというのが、育児に関して普遍的に見られる見解である。威圧的な態度で劣等感や恐怖心を与えたり、排泄行為そのものを罪悪感と結びつけてしまうと子どもが萎縮してしまい、便意を上手に伝える事が出来なくなったり、ギリギリまで言い出せずに限界近くで急に尿意・便意を訴えるなどの問題が発生する場合がある。本人がなかなか尿意や便意を自覚できなかったり、一旦成功しても続かなかったり、夜尿症が続くなど、トレーニングを完了するまでの過程や期間は個人差が激しく、後戻りしてしまう場合すらある。開始から最終段階に至るまでは慎重かつ気長に進める必要があり、育児書でも必ず多くのページを割いて説明されている。
これらのトレーニングが当人の人格形成に重要な影響を及ぼすと考える心理学者(→フロイト・肛門期など)もおり、教育の観点から様々な方法論が論じられている。しかし、排泄は誰しもが行う身近な行動であるため、難しく考えず、「トイレが使えることは楽しい」とか「皆に褒められる」といった雰囲気を作るなど、本人とトイレの良好な関係を築く事が望ましいとされる。
また、これらの失敗に関しては保育者の精神的な負担(→育児ストレス)になったり、保育者が冷静さを失って虐待に突入するケースも指摘されている[1]。また子どもが保育者のストレスを感じとって萎縮してしまう場合もある。このため、うまくいかない場合にはトレーニングを中断したり、小学校入学までに1人でトイレにいけるようになれば充分だと開き直るのも、冷静さを保つ1つの方法として示されている。
トイレトレーニングの実行時期については、発達の個人差があるため、以下の3条件を備えていることが年齢よりも重要であると日本夜尿症学会常任理事の帆足英一は指摘している[2]。
トレーニングの方法や手順は必ずしも1つではないが、概ね次のような過程を経る。ただしこれらをいっぺんにさせようとしても失敗の元である。その各々のステップを、確実にこなせるようになったら、次のステップへと進む。
性別によって体の構造が異なるため、トレーニング内容も違う。
立って排尿(立ちション)ができるようになっていた方が望ましい。家庭外では小便器を使う必要に迫られる場合があるためである。一部には、小便であっても大便器のみを使わせたり、洋式便器に座らせての排尿だけをさせている場合があるが、その癖がつくと後々本人が困る場合もある。
男性が小便する場合、ズボンの前開きから陰茎だけ出してするが、小児男子の場合陰茎が小さく、かつコントロールが難しいため、下半身の着衣を一旦全部脱衣させた方が良い。慣れてきたら半分だけ下ろすなどの段階を経て、小学校に上がる前までには、男児ブリーフやトランクスを着用した状態でさせ、立って下着の上からや裾から陰茎を出して排尿できるように訓練する。
便器の正面に立たせ、必要とあらば陰茎を持って介助して排尿させ、終わった後はしずくを落とすように振る。一般に男子は小便器を使う場合は紙で拭くことはしない。徐々に介助を減らし自分できるように仕向ける。
便器に尿を直角に近い確度で当てると飛沫が飛び散り易いため、やや斜めになるようにさせる。失敗して便器外に小便が散ってしまうこともあるため掃除し易いよう周囲を片付けておく必要もある。このような問題を軽減するための道具(後述)も販売されている。
洋式便器なら座らせ、和式便器ならしゃがませて排泄させる。
終わった後は排尿だけであっても紙で拭くが、女子特有の配慮が必要であることが多くの育児書で指摘されている。肛門が尿道口や膣に近接している関係上、大便が他に付かないように考え、大便をした場合は背側から手を回し前から後ろへ拭き、小便だけなら前から手を差し入れて前だけを拭く。これを怠ると膀胱炎など雑菌による感染症などの問題が発生する事がある。
日本人は毎日風呂に入る傾向が強いなど、比較的清潔なためトラブルの頻度は低いが、感染症が皆無なわけではないので注意が必要である。入浴の習慣があまりない国や民族の場合は、ことさらこういった「拭き方による衛生管理」が強調される。
日本では、「おむつはずれの年齢が上昇している」と指摘する声が上がっている。例えば、紙おむつメーカのP&Gの調査によれば、1990年におけるおむつはずれ平均年齢は2歳4ヶ月だったのに対し、2007年は3歳4ヶ月と1歳上昇している[2]。こうした状況から、紙おむつメーカ各社は、従来のものより大きいサイズの紙おむつを販売しており、大きいものでは、最大35キログラムの体重の幼児・児童を対象とした紙おむつが存在する[2]。
おむつはずれの年齢が上昇している傾向についてベネッセ教育総合研究所は、「子どもの発達を見ながら進め、焦らなくてよい」とする育児雑誌の情報の広がったため、古くに使われていた布おむつに比べ手間のかからない紙おむつに移行したことで親がおむつはずしを急がなくなった、などの理由があるのではないかと分析している[2]。
おむつなし育児(おむつなしいくじ)とは、可能な範囲において、赤ちゃんにおむつをはかせずに育てるというものである[3]。日本においては、三砂ちづるらにより研究されている[4]。赤ちゃんは生まれつき大小便の出る感覚が分かっていて、親にサインを送っており、それをキャッチしておまるなどでさせるようにしていれば、おむつはずれが早まるとの考えに基づくものである。東南アジア・アフリカなどの熱帯地方は、オムツなし育児が一般的である。(裕福な家庭では、紙オムツが普及している。)
ペットの場合では、所定の位置で排泄するように、飼い主がしつける行為がトイレトレーニングになる。進め方は動物の種類・生活環境によって異なるので、それぞれの飼い方を説明した書籍等を参照してほしい。ペットの中にはほとんど訓練が不可能な種類の動物もおり、訓練が可能だとされる種類の動物でも個体差がある。動物は、種類によって好む排泄場所があるため、様々なペット用のトイレ用品が見られる。しかし動物全般には言葉が通じず手本も示しようが無いなど、総じて幼児よりも訓練期間は長く掛かる傾向がある。
排泄場所は飼い主が決めることになるが、排泄中の動物は非常に神経質であるため、その多くは静かな場所に設置する事が勧められる。また、複数の排泄場所の設置は、定位置での排泄を好む動物を戸惑わせる結果になるため避けた方がよく、一度決定した排泄場所の移動も避けた方がよい。
臭いを頼りに同じ場所に何度も排泄する傾向が見られる種類の動物もおり、それらでは飼い主の意図と違う場所に排泄してしまったら、その場を掃除することはもちろん、充分に清掃・消臭する必要がある。
鳥類は排泄を我慢するという概念も、そのための器官もないため、定位置で排泄するというトイレトレーニングは、ほぼ不可能であるとみられる。
犬や猫の場合は概ねトレーニング可能である。失敗したら叱ってしつけることが多いが、成功したら褒めるようにとしている解説書もある。あらかじめ、新しいトイレにそれら動物から回収した排泄物の臭いを付けるなどの方法も知られている。ただし、それら各々のトレーニングが必ずしも成功に結びつくとは限らず、様々な方法が試みられている。
犬の場合、散歩前に排泄を済ませるように訓練すれば、散歩中に糞を拾う手間が省け、環境衛生上も良い。一部には、尿意・便意を飼い主に伝えるように訓練したり、ペット用の携帯トイレを使わせるよう訓練したりする例もあるが、品種・個体によっては実現は難しい。盲導犬のような補助犬では、主人が許可したときのみ排泄するようにしつけられる。
猫に洋式便器を使用させるためのトレーニングキットも存在する[5]が、実際に洋式便器を使用させられるかどうかは、品種・個体差が大きいようだ。
[脚注の使い方] |
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
関連記事 | 「訓練」「排泄」 |
.