- 英
- oriented
- 関
- 志向
WordNet
- adjusted or located in relation to surroundings or circumstances; sometimes used in combination; "the house had its large windows oriented toward the ocean view"; "helping freshmen become oriented to college life"; "the book is value-oriented throughout" (同)orientated
Wikipedia preview
出典(authority):フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「2015/11/17 17:28:45」(JST)
[Wiki ja表示]
志向性あるいは指向性(独: Intentionalität)はエトムント・フッサールの現象学用語で、意識は常に何者かについての意識であることを表す。この概念はフッサールが師事したフランツ・ブレンターノから継承したものであり、ブレンターノは志向の対象の存在論的・心理学的状態を扱う際にこの用語を使った。
目次
- 1 ブレンターノの「志向性」
- 2 継承と批判
- 3 参考文献
- 4 外部リンク
ブレンターノの「志向性」
ブレンターノの志向性の概念はスコラ哲学に起源があり、ブレンターノは19世紀哲学に志向性の概念を再紹介したものと言える。ブレンターノはその著書「経験的立場からの心理学(Psychologie vom empirischen Standpunkt)」において、志向性とは意識のあらゆる活動、つまり心的現象の持つ特性であって、心的現象は志向性によって物質的・自然的現象から区別されると述べた。
全ての心的現象は中世のスコラ学者が対象の志向的(もしくは心的)内在性と呼んだものおよび、完全に明確ではないが、対象つまり内在的対象性と我々が呼ぶかもしれないものによって特徴づけられる。あらゆる心的現象は、必ずしも同じようにではないが、自身の内に対象として何者かを含む。表象においては何者かが表象され、判定においては何者かが肯定または否定され、愛においては愛され、嫌悪においては嫌われ、欲望においては欲望され、…というように。志向的内-在性は専ら心的現象が持つ特性である。物質的現象はこのような特性を示さない。したがって、心的現象はそれ自体の内に志向的に対象を有する現象だと定義できる。
ブレンターノは心的現象の存在論的様態を特異的に示すために「志向的内在性(独: Intentionale Inexistenz)」という言葉を造語した。「内-在性」の「内-」は処格として読まれるべきである、つまり、「志向された対象は[...] 内に存在するもしくは内在性を持つ、つまり、外的に存在するのではなく心理的状態として存在する (Jacquette 2004, p. 102)」とする研究者もいるが、他の研究者はより慎重で、「1874年においてこれが [...]何らかの存在論的なかかわりをもたらすかは明確でない (Chrudzimski and Smith 2004, p. 205)」としている。
継承と批判
志向性に関する言明の大きな問題点は、使用者が、作用や欲望といった概念を示すためにこの用語を使用するか否か、つまり、目的論にかかわるか否かを明示し損ねてしまうということにある。ダニエル・デネットはその著書『志向姿勢』において明示的に目的論的諸概念を援用している。しかしながら、大多数の哲学者は志向性という用語を目的論的な意味と関係のないものとして用いている。すなわち、ある椅子の観念はなんら志向性の含意ない、あるいは、その椅子に関するひとつの信念すらない一脚の椅子についてのものでありうる。言語哲学者にとって志向性は、主として、象徴がいかに意味を持つのかという問題である。この明快性の欠如は以下に示された見解の諸相違のうちのいくつかを示すものであるかもしれない。
さらに進んで志向性という概念から引き出された所感の多様性を裏付けるため、フッサールはブレンターノを追究し、大陸哲学と分析哲学の両方において志向性により広範な注意を払った。ブレンターノの意見とは対照的に、サルトルは「存在と無」において志向性と意識は区別できないと述べ両者を同一視した。ハイデガーは「存在と時間」において志向性を「気遣い(独: Sorge)」、つまり、単なる存在者であるところの物とは対照的に、その内で個人の実存、事実性、そして喪失が存在論的意味を確認するような可感的状態であると定義した。
一方ギルバート・ライルやアルフレッド・エイヤーといった分析哲学者たちはフッサールの志向性の概念や彼の主張する意識の重層性に対して批判的で、ライルは認識は過程ではないと主張し、エイヤーは誰かの知識を記述することは心的過程を記述することとは違うと主張した。こういった見解の結果として、意識は完全に志向的であるから精神的活動はその内容をすべて失い、純粋意識は何者でもなくなる(サルトルは意識を無と呼んだ)。
プラトン主義者のロデリック・チザムは、ブレンターノの考えを、言語的分析を行うことによって、つまり、ブレンターノの構想に含まれる存在論的面と心理学的面の二つを区別することによって復興させた。チザムはその著作において志向性の適切な基準と不適切な基準を集約し続けてきて、ブレンターノの構想の二つの面によって確認され心的現象を述べる言語と非心的現象を述べる言語とを区別する論理的特性によって定義される志向性の基準に到達した。
近年の人工知能や心の哲学において、志向性は論争の的となっている主題であり、機械には決して成し遂げられないものだと主張されている。ジョン・サールもこの見解に賛成の立場をとりながら中国語の部屋の思考実験について議論していて、それによると、コンピュータ内で起こる統語的作用は意味的内容を生み出さないという。
参考文献
- Brentano, Franz (1874) Psychologie vom empirischen Standpunkte Leipzig, Duncker & Humblot
- Chisholm, Roderick M. (1967). "Intentionality" in The Encyclopedia of Philosophy. Macmillan. ISBN 978-0028949901
- Chisholm, Roderick M. (1963). "Notes on the Logic of Believing" in Philosophy and Phenomenological Research. Vol. 24: p. 195-201. Reprinted in Marras, Ausonio. Ed. (1972) Intentionality, mind, and language. ISBN 0252002113
- Chisholm, Roderick M. (1957). Perceiving: A Philosophical Study. Cornell University Press. ISBN 978-0801400773
- Chrudzimski, Arkadiusz and Barry Smith (2004) "Brentano’s Ontology: from Conceptualism to Reism" in Jacquette (ed.) The Cambridge Companion to Brentano ISBN 0521-00765-8
- Dennett, Daniel C. (1989). The Intentional Stance. The MIT Press. ISBN 978-0262540537
- Husserl, Edmund (1962). Ideas: General Introduction to Pure Phenomenology. Collier Books. ISBN 978-0415295444
- Husserl, Edmund. Logical Investigations. ISBN 978-1573928663
外部リンク
- 「Intentionality」 - スタンフォード哲学百科事典にある「志向性」についての項目。(英語)
- Consciousness and Intentionality - 意識と志向性
- Ancient Theories of Intentionality - 古代哲学における志向性
- (百科事典)「Intentionality」 - スカラーペディアにある「志向性」についての項目。(英語)
- (文献リスト)「Intentionality」 - 「志向性」について論じた文献のリスト。サイトPhilPapersより。(英語)
心の哲学のトピックス |
|
概念 |
心 - 意識 (志向性 - 現象的意識 - クオリア - アウェアネス - 意識の神経相関) - 心身問題 - 説明のギャップ - 意識のハード・プロブレム - 私はなぜ私なのか - 付随性 - タイプとトークンの区別 - 因果的閉包性 - 自由意志 - カルテジアン劇場 - 我思う、ゆえに我あり - カテゴリー・ミステイク - 心のモジュール性 - 心の理論
|
|
一元論 |
物理主義(唯物論 - 行動主義 - 同一説 - 機能主義 - 計算主義)- 中立一元論 - 観念論(独我論)
|
|
二元論 |
自然主義的二元論(汎心論、原意識) - 新神秘主義(認知的閉鎖) - 存在論(実体二元論 - 性質二元論 - 記述二元論) - 因果関係(相互作用説 - 随伴現象説 - 並行説)
|
|
その他 |
量子脳理論
|
|
思考実験 |
チューリング・テスト - 中国脳 - 中国語の部屋 - ブロックヘッド - コウモリであるとはどのようなことか - 哲学的ゾンビ - マリーの部屋 - 逆転クオリア - 水槽の脳 - スワンプマン
|
|
心の哲学者 |
ネド・ブロック - タイラー・バージ - デイヴィッド・チャーマーズ - ポール・チャーチランド - パトリシア・チャーチランド - ドナルド・デイヴィッドソン - ダニエル・デネット - ジェリー・フォーダー - フランク・ジャクソン - ジェグォン・キム - コリン・マッギン - ルース・ミリカン - トマス・ネーゲル - ヒラリー・パトナム - ギルバート・ライル - ジョン・サール - ウィルフリド・セラーズ - スティーヴン・スティッチ - フレッド・ドレツキ - 大森荘蔵 - 岡潔 - 金杉武司 - 河野哲也 - 柴田正良 - 永井均 - 信原幸弘 - 山口尚 - ユウジン・ナガサワ
|
|
関連項目 |
神経科学 - 神経哲学 - 認知科学 - 心理学 - 進化心理学 - 認識論 - 現象学 - 言語哲学 - 科学哲学 - 時空の哲学 - 形而上学 - 意識研究
|
|
UpToDate Contents
全文を閲覧するには購読必要です。 To read the full text you will need to subscribe.
Japanese Journal
- 運動部活動における目標設定,勝利志向性,意見の反映度の実態並びにそれらが生徒の満足度に及ぼす影響
- 志向性と歴史性─フッサールにおける志向的意識の歴史内在性─
Related Links
- ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 - 志向性の用語解説 - 現象学の用語。意識は常にあるものについての意識であり,その意識の特性を志向性という。ラテン語の intentioに由来し,スコラ哲学では intentio prima (第一志向) と intentio ...
- しこうせい【志向性】とは。意味や解説、類語。《(ドイツ)Intentionalität》現象学で、すべての意識は常にある何ものかについての意識であるという、意識の特性をいう。指向性。 - goo国語辞書は27万語以上を収録。政治・経済・医学・IT ...
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- ecotropic
- 関
- エコトロピック、狭宿主性
[★]
- 英
- tropism
- 同
- 親和性
- 関
- 屈性、指向性、トロピズム
[★]
- 英
- oriented
- 関
- 志向性