フルニトラゼパム。Rohypnol
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フルニトラゼパム
|
|
IUPAC命名法による物質名 |
6-(2-fluorophenyl)-2-methyl-9-nitro-2,5-diazabicyclo[5.4.0]undeca-5,8,10,12-tetraen-3-one |
臨床データ |
胎児危険度分類 |
C(AU) |
法的規制 |
Controlled (S8) (AU) Class B (UK) Schedule IV (US) 第2種向精神薬 |
投与方法 |
経口 |
薬物動態的データ |
生物学的利用能 |
50% (suppository)
64-77% (oral) |
代謝 |
肝臓 |
半減期 |
18-26 時間 |
排泄 |
腎臓 |
識別 |
CAS登録番号 |
1622-62-4 |
ATCコード |
N05CD03 |
PubChem |
CID 3380 |
DrugBank |
none |
KEGG |
D01230 |
化学的データ |
化学式 |
C16H12FN3O3 |
分子量 |
313.3 |
フルニトラゼパム「アメル®」2mg錠
(後発医薬品/共和薬品)
フルニトラゼパム (flunitrazepam) とは、ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤である。
一般的に、睡眠薬としてのフルニトラゼパムの処方は、特に入院患者など、他の催眠薬に反応しない慢性または重度の不眠症の短期間の治療を目的としている。フルニトラゼパムは、投与量ベースで最も強力なベンゾジアゼピン睡眠薬の一つとされている。他の催眠薬と同様、フルニトラゼパムは、慢性の不眠症患者に対して短期的・頓服的に限って使用すべきである[1]。
目次
- 1 歴史
- 2 効能
- 3 医療外使用
- 4 副作用
- 5 各国での状況
- 6 脚注
- 7 外部リンク
歴史
- 1970年代前半に、スイスのロシュ社が開発し、1975年に、ヨーロッパで販売を開始された。
- アメリカ合衆国では、当初は1mgと2mg錠が販売されたが、乱用のリスクがあったため、製造元のロシュ社は、市場から回収を行い、現在は1mg錠剤のみが販売されている。
効能
フルニトラゼパムは他の多くのベンゾジアゼピン系薬剤と同様に、鎮静、抗不安、抗痙攣および筋弛緩作用を有する。鎮静作用(特に入眠・催眠作用)に限ってはベンゾジアゼピン系薬に分類されるものの中では最も強いとされ、治療範囲での投与量で比較するとジアゼパムのおよそ10倍の効力を持つとされる[2]。抗不安作用も強い。また抗痙攣作用や筋弛緩作用はやや少なく、ジアゼパムと同等もしくはそれ以下である。効果は比較的即効性で、経口投与時の効果発現はおよそ15〜20分。およそ1時間後に血中濃度が最高に達し、投与後12時間目までの半減期はおよそ7時間[3]、消失半減期はおよそ20時間である[2]。作用持続時間は6〜8時間であり、ベンゾジアゼピン系の中では中時間作用型に分類される。効果の持続性も他のベンゾジアゼピン系睡眠薬より強く、より深い睡眠が得られる。作用機序は、抑制性GABAニューロンのシナプス後膜にあるベンゾジアゼピン受容体に結合しGABA親和性を増大させることでGABAニューロンの作用を特異的に増強することによると考えられている。
フルニトラゼパムに過敏症の既往歴のある患者、急性狭隅角緑内障、重症筋無力症の患者には禁忌、呼吸機能が高度に低下している患者には原則禁忌である。
アルコール、中枢神経抑制剤、モノアミン酸化酵素阻害薬、シメチジンとは併用に注意が必要である。
医療外使用
アルコールとの併用で比較的高い確率で健忘を引き起こすことがあるため、アメリカ、イギリスなどでデートレイプドラッグとして強姦等に利用された。被害者が健忘によって、薬を飲まされた間やその前後に起こった出来事を覚えていないことが多く、加害者が特定されにくかったためである。また、ヘロインやコカインとの併用で効果を高めたり変調することや、メタンフェタミン・アンフェタミンといった、覚醒剤の使用によって起こる不眠などの副作用に対抗するために乱用された。
レクレーション利用
「ベンゾジアゼピン薬物乱用」も参照
ヘロインやコカイン常用者(医療ではなくいわゆる「ドラッグ」として)はその効力を増強するためにフルニトラゼパムを併用するケースがある。
- ヘロインによるトリップ効果の増強
- アルコールはフルニトラゼパムの効果を増強させる。カート・コバーンはフルニトラゼパムとシャンパンのカクテルを常用し始めたがその数週間後に自殺。
- 離脱症状の緩和
- 覚醒剤の副作用緩和(不眠、妄想、不安障害)
- コカインやメタンフェタミン過剰摂取の場合のバッドトリップ(いわゆる「ハイ」になることができず、悪夢のような不安増大ばかりになってしまうこと)の緩和
- 性欲ならびに食欲向上
自殺
スウェーデンでの調査では、フルニトラゼパムは自殺目的に二番目によく使われる薬であり、15%を占めることが分かった[4]。
過去のスウェーデンでの調査(1987年のデータの1993年の報告)では、解剖の際に血液検査を実施した1587例のうち、159例ににベンゾジアゼピンがみとめられた。このうち自然死は22、自殺は60であった。自然死と自殺との比較では、フルニトラゼパムとニトラゼパム濃度が自殺者においては有意に高かった(それぞれのPは、P<0.001, P<0.05)。4例ではベンゾジアゼピンが唯一の死因であった。いくつかのベンゾジアゼピンは、特にフルニトラゼパムは、かつて考えられていたよりも毒性が高い可能性がある[5]。
副作用
主な副作用はふらつき、眠気、倦怠感等、集中力低下である。健忘や脱抑制も比較的多くみられる。重大な副作用としては、依存性、刺激興奮、錯乱、呼吸抑制、炭酸ガスナルコーシス、意識障害などがある。また稀に肝機能障害、黄疸、横紋筋融解症、悪性症候群、などがある。特に、大量連用によって薬物依存を生じることがあるため用量を超えないように注意する。アルコールと併用(飲酒)すると中枢神経抑制作用が増強され、かつ肝機能障害のリスクが増大するため、併用は禁忌である。また、ビタミンB2やB6の吸収を阻害する作用をもち、常用することで、眼の充血や皮膚炎を起こす。
依存症
フルニトラゼパムは他のベンゾジアゼピンと同様、身体的依存・薬物依存症・ベンゾジアゼピン離脱症候群を引き起こす。
服薬中止によりベンゾジアゼピン離脱症候群を引き起こす。突然の断薬は、発作・精神病・深刻な不眠・深刻な不安など、深刻な離脱症候群をもたらす。短期間の夜間の単剤投与であっても、典型的には服薬中止時にリバウンド不眠により睡眠の質を悪化させる。[6]
睡眠深度
フルニトラゼパムはデルタ波を減少させる。ベンゾジアゼピン系薬物はデルタ波に影響を及ぼすが、その作用はベンゾジアゼピン受容体への作用によるものではない可能性がある。デルタ活動はノンレム睡眠深度の指標であり、深いデルタ睡眠レベルは良い睡眠をもたらす。従って、フルニトラゼパムは睡眠の質を劣化させる。 不眠治療ではシプロヘプタジンのほうがベンゾジアゼピンよりも優れ、脳波調査によると睡眠の質を向上させると言われている[7]。それは傾眠をもたらす可能性がある。
その他
フルニトラゼパム断薬時には、反跳作用が断薬後4日程度発生する[8](ベンゾジアゼピン離脱症候群も参照)。
各国での状況
- アイルランドでは、フルニトラゼパムはスケジュール3規制物質であり、厳密な規制がなされている[9]。
- アメリカでは医療用に承認されていない。規制物質法のスケジュールIVに指定(一部の州ではさらに厳しい、スケジュールIに指定)される違法薬物である。1996年5月からは、アメリカ合衆国及びカナダへの、フルニトラゼパム製剤の持ち込みは、一切禁止となった[10]。
- シンガポールでは、フルニトラゼパムは薬物乱用法にてクラスC(スケジュールII)規制薬物であり、処方箋なしに所有することは違法である。
- イギリスでは、NHS医療では処方禁止であり(NHSブラックリスト)、プライベート処方箋にのみにて利用可能である[11]。
- オーストラリアでは、フルニトラゼパムはスケジュール8規制物質であり、これはアンフェタミンや麻薬と同等の扱いである。無許可で一定量以上の物質を保持することは1985年薬物乱用・取引法により罰せられる。
- ノルウェーでは、フルニトラゼパムは2003年にスケジュール規制が格上げされ、ロシュ社は市場から製品を取り下げた[12]。
- 日本では1984年3月に中外製薬、エーザイが、それぞれロヒプノール®、サイレース®の販売名で販売を開始し、後に各社がビビットエース®、フルトラース®などの後発医薬品を販売する。第2種向精神薬であり、入手には処方箋を要する。
脚注
- ^ Rickels, K. (1986). “The clinical use of hypnotics: indications for use and the need for a variety of hypnotics”. Acta Psychiatrica Scandinavica Suppl. 74 (S332): 132–41. doi:10.1111/j.1600-0447.1986.tb08990.x. PMID 2883820.
- ^ a b Mattila, M.A.K.; Larni, H.M. (November 1980). “Flunitrazepam: A Review of its Pharmacological Properties and Therapeutic Use”. Drugs (ADIS Press Australasia) 20 (5): 353-374. doi:10.2165/00003495-198020050-00002. http://link.springer.com/article/10.2165/00003495-198020050-00002.
- ^ 深沢 英雄、1978、「健常日本人におけるFlunitrazepamの体内動態」、『臨床薬理』9巻3号、日本臨床薬理学会、ISSN 0388-1601、doi:10.3999/jscpt.9.251、NAID 130002039562 pp. 251-265
- ^ Jonasson B, Jonasson U, Saldeen T (January 2000). “Among fatal poisonings dextropropoxyphene predominates in younger people, antidepressants in the middle aged and sedatives in the elderly”. Journal of Forensic Sciences 45 (1): 7–10. PMID 10641912.
- ^ Ericsson HR; Holmgren P, Jakobsson SW, Lafolie P, De Rees B. (November 10, 1993). “Benzodiazepine findings in autopsy material. A study shows interacting factors in fatal cases”. Läkartidningen 90 (45): 3954–7. PMID 8231567.
- ^ Kales A; Scharf MB, Kales JD, Soldatos CR (April 20, 1979). “Rebound insomnia. A potential hazard following withdrawal of certain benzodiazepines”. Journal of the American Medical Association 241 (16): 1692–5. doi:10.1001/jama.241.16.1692. PMID 430730.
- ^ Tokunaga S; Takeda Y, Shinomiya K, Hirase M, Kamei C (February 2007). “Effects of some H1-antagonists on the sleep-wake cycle in sleep-disturbed rats” (pdf). Journal of Pharmacological Sciences 103 (2): 201–6. doi:10.1254/jphs.FP0061173. PMID 17287588. http://www.jstage.jst.go.jp/article/jphs/103/2/201/_pdf.
- ^ Hindmarch I (November 1977). “A repeated dose comparison of three benzodiazepine derivative (nitrazepam, flurazepam and flunitrazepam) on subjective appraisals of sleep and measures of psychomotor performance the morning following night-time medication”. Acta Psychiatrica Scandinavica 56 (5): 373–81. doi:10.1111/j.1600-0447.1977.tb06678.x. PMID 22990.
- ^ Irish Statute Book, Statutory Instruments, S.I. No. 342/1993 — Misuse of Drugs (Amendment) Regulations, 1993
- ^ 海外旅行と医薬品 (PDF) 愛知県薬剤師会薬事情報室
- ^ “UK Rohypnol: The date rape drug”. BBC News Online . (1999年5月20日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/348986.stm 2006年3月13日閲覧。
- ^ Bramness JG; Skurtveit S; Furu K; Engeland A; Sakshaug S; Rønning M. (February 23, 2006). “[Changes in the sale and use of flunitrazepam in Norway after 1999]”. Tidsskr nor Laegeforen 126 (5): 589–90. PMID 16505866.
外部リンク
睡眠導入剤と鎮静剤 (N05C) |
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GABAA
アゴニスト/PAM |
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GABAB
アゴニスト |
- 1,4-ブタンジオール
- アセブル酸
- GABOB
- GHB (ナトリウムオキシベート)
- GBL
- GVL
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H1 インバース
アゴニスト |
抗ヒスタミン系: |
- カプトジアミン
- シプロヘプタジン
- ジフェンヒドラミン
- ドキシルアミン
- ヒドロキシジン
- メタピリレン
- フェニルアミン
- プロメタジン
- プロピオマジン
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抗うつ薬 |
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抗精神病薬 |
- 定型抗精神病薬
- 非定型抗精神病薬
- オランザピン
- クエチアピンフマル
- リスペリドンなど
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α1-アドレナリン
アンタゴニスト |
抗うつ薬 |
- セロトニンアンタゴニストと再取り込み阻害薬
- 三環系抗うつ薬
- 四環系抗うつ薬
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抗精神病薬 |
- 定型抗精神病薬
- 非定型抗精神病薬
- オランザピン
- クエチアピンフマル
- リスペリドンなど
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その他: |
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α2-アドレナリン受容体
アゴニスト |
- 4-NEMD
- クロニジン
- デトミジン
- デクスメドエトミジン
- ロフェキシジン
- メデトミジン
- ロミフィジン
- チザニジン
- キシラジン
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5-HT2A
アンタゴニスト |
抗うつ薬 |
- セロトニンアンタゴニストと再取り込み阻害薬
- 三環系抗うつ薬
- 四環系抗うつ薬
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抗精神病薬 |
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その他: |
- エプリバンセリン
- ニアプラジン
- プルバンセリン
- ボリナンセリン
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メラトニン
アゴニスト |
- アゴメラチン
- LY-156,735
- メラトニン
- ラメルテオン
- タシメルテオン
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オレキシン
アンタゴニスト |
- アルモレキサント
- SB-334,867
- SB-408,124
- SB-649,868
- スボレキサント
- TCS-OX2-29
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その他 |
- アセカルブロマール
- アプロナール
- ブロミソバル
- カンナビジオール
- カルブロマール
- エンブトラミド
- エボキシン
- フェナジアゾール
- ガバペンチン
- カバラクロン
- メフェノキサロン
- オピオイド
- トケイソウ
- スコポラミン
- UMB68
- バルノクタミド
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UpToDate Contents
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Japanese Journal
- 遅発性呼吸抑制を呈したベンゾジアゼピン大量服薬患者の1例
- 荻野 隆史,福江 靖,岸 大次郎,小平 明弘,山田 拓郎,萩野 周一,大嶋 清宏,飯野 佑一
- The Kitakanto medical journal = 北関東医学 63(4), 365-368, 2013-11-01
- 要旨症例は37歳, 男性. 主訴は意識障害.既往歴は双極性うつ病で精神科通院中であった.家族との会話中に突然興奮状態となりベンゾジアゼピン系薬剤を大量服薬したため当院に救急搬送された. 内服した薬剤は, ロヒプノール(1) 60錠,レンドルミン(0.25) 30錠,デパス(0.5) 14錠,レスリン(25) 14錠であった.来院時所見ではバイタル等は問題なかったが, 入院後経過は服薬後11時間30 …
- NAID 120005345408
- いつでも・どこでも・かんたんチーム医療(2)チーム医療の扉をひらく第1の鍵 捨てる ロヒプノール・ハルシオン全面中止の取組み
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- 睡眠導入剤ロヒプノールの副作用や効果について ... ロヒプノールは、中外製薬から販売されている、医師の処方が必要な睡眠薬の一種です。ロヒプノールは残念ながら市販されていないので、処方なし購入することはできません。
- ロヒプノール錠について徹底解明!1mg.2mg錠の規格があるロヒプノールの効果、耐性、離脱症状、減薬方法などについて説明してます。またアメリカへの持込についても解説しています。 ... 特長 「ロヒプノール錠」 ロヒプノール錠はサイ ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
ロヒプノール錠1
組成
成分(1錠中) 有効成分・含有量
成分(1錠中) 添加物
- 結晶セルロース、乳糖水和物、タルク、ステアリン酸マグネシウム
禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 急性狭隅角緑内障の患者[眼圧を上昇させるおそれがある。]
- 重症筋無力症の患者[重症筋無力症の症状を悪化させるおそれがある。]
効能または効果
- ○不眠症
- ○麻酔前投薬
- 通常成人1回、フルニトラゼパムとして、0.5〜2mgを就寝前又は手術前に経口投与する。
なお、年齢・症状により適宜増減するが、高齢者には1回1mgまでとする。
- 不眠症には、就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、睡眠途中において一時的に起床して仕事等をする可能性があるときは服用させないこと。
慎重投与
- 次の患者には少量から投与を開始するなど注意すること。
- 衰弱患者
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
- 心障害のある患者[呼吸抑制があらわれやすい。]
- 肝障害又は腎障害のある患者
- 脳に器質的障害のある患者[作用が強くあらわれやすい。]
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
- 小児等(「小児等への投与」の項参照)
重大な副作用
依存性
- 大量連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、用量を超えないよう慎重に投与すること。また、大量投与又は連用中における投与量の急激な減少ないし投与中止により、痙攣発作、譫妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想等の離脱症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。
刺激興奮、錯乱
- 統合失調症等の精神障害者に投与すると逆にこのような症状があらわれることがある。
呼吸抑制、炭酸ガスナルコーシス
- まれに呼吸抑制があらわれることがある。また、呼吸機能が高度に低下している患者に投与した場合、炭酸ガスナルコーシスを起こすことがあるので、このような場合には気道を確保し、換気をはかるなど適切な処置を講ずること。
肝機能障害、黄疸
- AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので患者の状態を十分に観察し、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
横紋筋融解症
- 筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、横紋筋融解症による急性腎不全の発症に注意すること。
悪性症候群(Syndrome malin)
- 他の抗精神病薬等との併用により悪性症候群があらわれたとの報告がある。高熱、意識障害、高度の筋硬直、不随意運動、発汗、頻脈等があらわれることがあるので、このような場合には、本剤の投与中止、体冷却、水分補給、呼吸管理等の適切な処置を行うこと。
意識障害
- うとうと状態から昏睡等の意識障害があらわれることがあるので、注意すること。特に高齢者においてあらわれやすいので、慎重に投与すること(【用法・用量】の項参照)。
一過性前向性健忘、もうろう状態
- 一過性前向性健忘、また、もうろう状態があらわれることがあるので、本剤を投与する場合には少量から開始するなど、慎重に行うこと。なお、十分に覚醒しないまま、車の運転、食事等を行い、その出来事を記憶していないとの報告がある。異常が認められた場合には投与を中止すること。
薬効薬理
睡眠作用5)
- 各種動物実験(マウス、ラット、ネコ、カニクイザル)において、他のベンゾジアゼピン系化合物と同様の薬理学的スペクトラム(静穏・馴化・睡眠誘起・睡眠増強・抗痙攣・筋弛緩作用等)を示したが、特に各種刺激によるネコ脳波覚醒反応を著明に抑制し、強力な睡眠作用が認められた。またカニクイザルを用いた試験においても睡眠作用が認められた。
ヒト終夜脳波試験6)
- 健康成人男子に本薬1mg及び2mgを経口投与したときの終夜脳波試験において、入眠潜時の短縮と全睡眠時間の延長が認められた。
作用機序
- 抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜に存在するベンゾジアゼピン受容体にアゴニストとして高い親和性で結合し、GABA親和性を増大させることにより、GABAニューロンの作用を特異的に増強すると考えられている。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
化学式
- 5-(2-Fluorophenyl)-1-methyl-7-nitro-1,3-dihydro-2H-1,4-benzodiazepin-2-one
分子式
分子量
性 状
- 白色〜微黄色の結晶性の粉末である。
酢酸(100)に溶けやすく、無水酢酸又はアセトンにやや溶けやすく、エタノール(99.5)又はジエチルエーテルに溶けにくく、水にほとんど溶けない。
融 点
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- flunitrazepam
- 商
- サイレース、ビビットエース、フルトラース、ロヒプノール
- 関
- ロヒプノール Rohypnol
- C16H12FN3O3。
- 睡眠薬;中程度時間作用型;ベンゾジアゼピン系
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬(中間型)
ADME
血中半減期
- インタビューフォーム
- フルニトラゼパム2mg 錠単回経口投与時の薬物動態パラメータ(n=5)
tmax
|
Cmax
|
t1/2α
|
AUC0-24
|
(hr)
|
(ng/mL)
|
(hr)
|
(ng・hr/mL)
|
1.3±0.3
|
11.5±1.2
|
6.8±0.6
|
116.7±10.6
|
- 健康成人男子5 名にフルニトラゼパム2mg 錠を単回経口投与したとき、未変化体の血中濃度は投与
後1~2 時間で最高に達し、その後、投与後12 時間目までの血中半減期は約7 時間であった。また、
1 日1 回2mgを7 日間反復経口投与したとき投与開始後3 日から5 日で定常状態に達し、その最高血
中濃度は単回投与時の約1.3倍であった。
[★]
フルニトラゼパム flunitrazepam、ロヒプノール