ブプレノルフィン
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ブプレノルフィン
|
IUPAC命名法による物質名 |
IUPAC名
(2 S)-2-[(−)-(5 R,6 R,7 R,14 S)-
9α-cyclopropylmethyl-4,5-epoxy-
6,14-ethanomorphinan-7-yl]-3-hydroxy-
6-methoxy-3,3-dimethylbutan-2-ol
|
臨床データ |
法的規制 |
|
投与方法 |
舌下、筋肉内、静脈内、直腸、パッチ |
薬物動態データ |
生物学的利用能 |
31%(舌下、エタノール溶液)
~10%(舌下、高用量錠剤) |
血漿タンパク結合 |
96% |
代謝 |
肝臓 |
半減期 |
3.7 h |
排泄 |
胆汁、腎臓 |
識別 |
CAS番号 |
52485-79-7 |
ATCコード |
N02AE01 N07BC01 |
PubChem |
CID: 40400 |
DrugBank |
APRD00670 |
KEGG |
D07132 |
化学的データ |
化学式 |
C29H41NO4 |
分子量 |
467.64 g/mol |
ブプレノルフィン (buprenorphine) とは、弱オピオイド薬物の一種で、鎮痛剤、オピオイド依存の治療薬として用いられる化合物。部分アゴニスト、受容体アンタゴニストとして作用する。ブプレノルフィンの塩酸塩(塩酸ブプレノルフィン)は鎮痛剤として、1980年代に Reckitt & Colman 社(現: Reckitt Benckiser)により初めて上市された。日本では「レペタン」という商品名で鎮痛剤として、大塚製薬より注射薬、座薬として、「ノルスパンテープ」が久光製薬よりパッチ剤として市販されている。アメリカでは 2001年後期にオピオイド依存の治療薬として高用量の錠剤が FDA の認可を受け、現在はその用途が主となっている。
国際条約の向精神薬に関する条約におけるスケジュールIII薬物である。麻薬及び向精神薬取締法における第二種向精神薬である。日本の薬事法における習慣性医薬品に指定されている[1]。劇薬である。
薬理作用
ブプレノルフィンはテバインの誘導体であり、その鎮痛作用は μ-オピオイド受容体に対し部分アゴニストとして働くことによる。すなわち、ブプレノルフィンの分子がオピオイドの受容体に結合すると、部分的にだけ活性化をもたらす。一方で、μ-オピオイド受容体に対する結合力は、アンタゴニストとして知られるナロキソンなどと匹敵するほど非常に強い。これらの性質のためブプレノルフィンはオーバードースを避け、注意深く使用しなければならない。完全アゴニストであるモルヒネなどへの依存症患者に処方する場合には離脱症状を引き起こす可能性もある。離脱症状が治まるには 24 時間以上かかる。このためブプレノルフィンに切り替えるときは、以前のオピオイド薬物の服用から十分な期間(半減時間の数倍の期間)をおかなければならない。
ブプレノルフィンはまた、κ-オピオイド受容体へのアンタゴニストとして、リコンビナント ヒト ORL1受容体、nociceptin への部分/完全アゴニストとしても作用する。[2]
塩酸ブプレノルフィンは筋肉内注射、静脈への点滴、経皮吸収、錠剤として舌下吸収により投与される。初回通過効果が高いために経口では投与されない。肝臓でシトクロムP450 の CYP3A4アイソザイムによりブプレノルフィンは代謝され、窒素原子上が脱アルキル化されたノルブプレノルフィンへ変えられる。この代謝産物はグルクロン酸と結合し、主に胆汁へと排出される。ブプレノルフィンの半減時間は 2-7.3 時間、平均 3.5 時間である。ノルブプレノルフィンは δ-オピオイド受容体や ORL1受容体のアゴニスト、μ-、κ-オピオイド受容体の部分アゴニストとして働くが、その作用はブプレノルフィンによって阻害される。[2]
脚注
- ^ 厚生省, “薬事法第50条第9号の規定に基づき習慣性があるものとして厚生労働大臣の指定する医薬品 通知本文” (プレスリリース), 厚生労働省, http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_document.cgi?MODE=hourei&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&EFSNO=627&PAGE=1 2014年2月16日閲覧。
- ^ a b Huang P. et al. "Comparison of pharmacological activities of buprenorphine and norbuprenorphine: norbuprenorphine is a potent opioid agonist", J. Pharmacol. Exp. Ther. 2001, 297, 688-95. PMID 11303059
参考文献
- 大塚製薬 (2013-03) (pdf). レペタン坐剤 (Report). 日本医薬情報センター. http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00003347.pdf 2014年2月16日閲覧。.
UpToDate Contents
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Japanese Journal
- P-15 末期癌疼痛緩和への新たな試み : レペタン坐薬・ソセゴン錠使用の一例
- 笑気‐酸素‐レペタン‐エンフルラン(GOLE)麻酔における低用量ブプレノルフィンの血中濃度の推移と麻酔深度への効果
- 花岡 一雄,小山 亨,河手 真理子,一石 典子,梅山 孝江,平石 禎子
- 日本臨床麻酔学会誌 9(5), 389-392, 1989
- … 笑気-酸素-レペタン-エンフルラン (GOLE) 麻酔において, 5名の手術患者を対象として, 低用量ブプレノルフィン (0.05mg) を静注投与した場合の血中濃度の推移と麻酔深度への効果について検索した. …
- NAID 130003428456
- 上腹部手術の笑気-酸素-レペタン-エンフルレン(GOLE)麻酔におけるブプレノルフィン投与量の年齢層別検討
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- レペタンとは?ブプレノルフィンの効能,副作用等を説明,ジェネリックや薬価も調べられる(おくすり110番:病気別版) ... 概説 強い痛みをおさえるお薬です。 作用 痛みをおさえる強力な作用があります。とくに持続する鈍痛に効果が高く ...
- 販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分 レペタン注0.2mg Lepetan injection 0.2mg 大塚製薬 1149403A1050 145円/管 劇薬 , 向精神薬 , 習慣性医薬品 , 処方箋医薬品 レペタン注0.3mg Lepetan ...
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Japan Pharmaceutical Reference
薬効分類名
販売名
レペタン注0.2mg
組成
有効成分
- 1管(1.0mL)中ブプレノルフィン塩酸塩 0.216mg
(ブプレノルフィンとして0.2mg)
添加物
禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 重篤な呼吸抑制状態及び肺機能障害のある患者[呼吸抑制が増強されることがある。]
- 重篤な肝機能障害のある患者[代謝が遅延し、作用が増強されるおそれがある。]
- 頭部傷害、脳に病変のある場合で、意識混濁が危惧される患者[呼吸抑制や頭蓋内圧の上昇を来すおそれがある。]
- 頭蓋内圧上昇の患者[頭蓋内圧が更に上昇するおそれがある。]
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
効能または効果
下記疾患並びに状態における鎮痛
麻酔補助
鎮痛を目的とする場合
術後、各種癌
- 通常成人には、ブプレノルフィンとして1回0.2mg〜0.3mg(体重当り4μg/kg〜6μg/kg)を筋肉内に注射する。なお、初回量は0.2mgとすることが望ましい。その後必要に応じて約6〜8時間ごとに反復注射する。症状に応じて適宜増減する。
心筋梗塞症
- 通常成人には、ブプレノルフィンとして1回0.2mgを徐々に静脈内に注射する。症状に応じて適宜増減する。
麻酔補助を目的とする場合
- 通常成人には、ブプレノルフィンとして0.2mg〜0.4mg(体重当り4μg/kg〜8μg/kg)を麻酔導入時に徐々に静脈内に注射する。症状、手術時間、併用薬などに応じて適宜増減する。
慎重投与
- 呼吸機能の低下している患者[呼吸抑制があらわれることがある。]
- 肝、腎機能の低下している患者[作用が増強されるおそれがある。]
- 胆道疾患のある患者[動物実験(イヌ)において高用量(0.1mg/kg i.v.以上)でOddi筋の収縮がみられる。]
- 麻薬依存患者[麻薬拮抗作用を有するため禁断症状を誘発するおそれがある。]
- 薬物依存の既往歴のある患者[薬物依存を生じることがある。]
- 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
重大な副作用
呼吸抑制、呼吸困難(0.1〜5%未満)
- 呼吸抑制、呼吸困難があらわれることがある。呼吸抑制から呼吸不全、呼吸停止に至った症例が報告されているので、観察を十分に行うこと。呼吸抑制があらわれた場合、人工呼吸又は呼吸促進剤のドキサプラム塩酸塩水和物が有効である(ただし、心筋梗塞症にはドキサプラム塩酸塩水和物は投与しないこと)。ナロキソン塩酸塩、レバロルファン酒石酸塩などの麻薬拮抗薬の効果は確実ではない。
舌根沈下(0.1%未満)
- 手術後早期に舌根沈下による気道閉塞があらわれることがある。このような場合には気道確保等の適切な処置を行い、投与を中止すること。
ショック(頻度不明※)
- ショック症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、顔面蒼白、呼吸困難、チアノーゼ、血圧降下、頻脈、全身発赤等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
せん妄、妄想(頻度不明※)
- せん妄、妄想があらわれることがあるので、このような場合には、減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
依存性(頻度不明※)
- 長期の使用により薬物依存を生じることがあるので観察を十分に行い、慎重に投与すること。長期使用後、急に投与を中止すると、不安、不眠、興奮、胸内苦悶、嘔気、振戦、発汗等の禁断症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合は徐々に減量することが望ましい。
- 急性肺水腫(頻度不明※)があらわれたとの報告がある。
- 血圧低下から失神に至った症例(頻度不明※)が報告されている。
薬効薬理
鎮痛作用
- ブプレノルフィンは中枢神経系の痛覚伝導系を抑制することにより鎮痛効果を発揮し、化学刺激、熱刺激、圧刺激及び電気刺激を侵害刺激として用いたいずれの試験においてもモルヒネ、ペンタゾシンより強く、かつ長い鎮痛効果を示す。なお、モルヒネに対する拮抗作用はナロキソン塩酸塩とほぼ同程度かやや弱い7)。
有効成分に関する理化学的知見
一般名
- ブプレノルフィン塩酸塩〔Buprenorphine Hydrochloride(JAN)〕
化学名
- (2S)-2-[(5R,6R,7R,14S)-17-(Cyclopropylmethyl)-4,5-epoxy-3-hydroxy-6-methoxy-6,14-ethanomorphinan-7-yl]-3,3-dimethylbutan-2-ol monohydrochloride
分子式
分子量
性状
- 白色〜帯黄白色の結晶又は結晶性の粉末である。
メタノール又は酢酸(100)に溶けやすく、水又はエタノール(99.5)にやや溶けにくい。
融点
★リンクテーブル★
[★]
- 英
- buprenorphine
- 化
- 塩酸ブプレノルフィン buprenorphine hydrochloride
- 商
- レペタン Lepetan
- 関
- 非麻薬性鎮痛薬